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■浦井健治ソロコンサート『Wonderland』#1■
ミュージカル界が誇る若手実力派スター・浦井健治さんが、デビュー15周年を記念し、ソロコンサートを9月29日(木)に開催します!
浦井さんといえば先日、初の帝国劇場単独主演作『王家の紋章』が大成功のうちに千秋楽を向かえたばかり。
こちらは全公演チケット完売、はやくも来年の4月・5月に東京・大阪での再演が決定しています。
井上芳雄さん、山崎育三郎さんと組んでいるユニット"StarS"でも活動している浦井さんですが、ソロコンサートは初開催。
もちろんストレートプレイも数多く出演していますが、ミュージカル俳優として、これまでに出演したミュージカルの楽曲も数多く盛り込まれたコンサートになるようです。
ということでげきぴあでは、実は当サイト登場率ナンバーワンではないか!? という浦井さんの初のソロコンサートまでの密着取材を敢行します!
彼が15年のあいだに出演してきた作品も振り返りつつ、その開催までの道のりを追っていく予定。
もちろん、お稽古場なども取材していきたいと思いますので、ご期待ください!
長塚圭史さん、中山祐一朗さん、伊達暁さんによる演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」。旗揚げ20周年というこの年に、12年ぶりの『はたらくおとこ』を再演します。
その『はたらくおとこ』について主宰・長塚さんに話していただいた内容はぴあニュースで配信済みですが、そのときに実は、ずっと一緒にやってきた中山さんと伊達さんへの気持ちもお聞きしました。
「笑って、泣けて、考えさせられて、カッコいい」、そんな芝居とド迫力のアクションが一体となったエンターテイメント作品を発信し続ける30-DELUXが2015年7月に新たな試みとして上演したDynamic Arrangement Theater『新版 義経千本桜』。歌舞伎の三大名作を独自の解釈と大胆なアレンジで上演し、公演は大成功!
その後、初の海外公演も果たし、その勢いはとどまることを知らない30-DELUXがDynamic Arrangement Theater第二弾として選んだのは近松門左衛門の人形浄瑠璃の傑作『国性爺合戦』。主演は『デスティニー』以来、3年ぶりの30-DELUX参戦となる佐藤アツヒロ。
いよいよ本格的な稽古が始まろうとする8月某日、主宰の清水順二、主要メンバーの森大、田中精に話を聞いた。
芝居とアクションが一体となって劇的効果を高めていく「アクションプレイ」を掲げ、"笑って、泣けて、考えさせられて、かっこいい"をテーマとした作品を送り出している30-DELUX。
国内でも観客動員数を飛躍的に伸ばし続ける注目の演劇ユニットですが、2015年には伝統芸能"殺陣"をひっさげついに海外進出、ロンドン公演も大成功におさめました(現地サイト「WHATS ON STAGE」の初日のレビューでは5つ星を獲得)。
そんな彼らがDynamic Arrangement Theater(ダイナミック アレンジメント シアター)と銘打つ、既存の古典作品を大胆にアレンジし再構築する新しい公演形態の第2弾『新版 国性爺合戦』が9月に登場します。
昨年上演された第1弾『新版 義経千本桜』では古典歌舞伎に挑戦しましたが、今回は近松門左衛門の人形浄瑠璃の代表作『国性爺合戦』を取り上げます。
『国性爺合戦』は、中国人と日本人の混血である主人公・和藤内(国性爺)を主人公にし、今から約300年前、鎖国下にあった当時の日本で大評判となった作品。
"明朝復興"を旗印に、海を越え、壮大な物語が展開します。
演じるのは、佐藤アツヒロ、馬場良馬、緒月遠麻、大湖せしる、清水順二、陰山泰ら、華やかかつ個性豊かな俳優陣。
その中で、宝塚歌劇団出身のおふたり...緒月遠麻さんと大湖せしるさんにお話を伺ってきました!
◆ 緒月遠麻&大湖せしる INTERVIEW ◆
――おふたりは、同じ時期に宝塚歌劇団雪組に在籍されていました。
緒月「そうですね、2学年差で」
大湖「その後はキタさん(緒月)が宙組に異動しちゃったから...」
緒月「タカスぺ(タカラヅカスペシャル/年に一度、組を越えてスターが競演する公演)で顔を合わせるくらいだったね」
大湖「でも私はキタさんが辞める時のタカスぺ(2014年)で、共演できてよかったー、と思ったのを覚えています。共演というか、同じ板の上にいただけだけど(笑)」
緒月「がっつり組むのは久しぶりだよね」
大湖「何の作品で引越しした(雪組の最後の出演)んでしたっけ?」
緒月「『ドン・カルロス』と『Shining Rhythm!』(2012年)で...」
大湖「そうだ、ちょうど私が男役最後だった公演だ!」
※大湖さんは男役を10年経験したのち、2012年に女役へ転向。
――じゃあ女性役としてはお互い初共演ですね。
緒月・大湖「そうですね!」
――お互い、宝塚時代の一番印象的なことは何ですか?
緒月「一番の印象的なことは...」
大湖「いっぱいある~!」
緒月「なんかずっと笑って過ごしてたよね。"何が"というより、何でもかんでも笑っていた...」
大湖「うん、うん(笑)」
緒月「わたしたちふたりともゲラ(笑い上戸)なんです。でも基本、真面目なので。実は真面目にやってるからこそ笑っちゃう、ということが多くて。それでふたりしてどツボにはまっちゃう...っていうことがすごい多かった」
大湖「ツボにはまると、長いんですよ。呼吸困難になりそうなくらい...息が出来なくなるほど笑っちゃって。というよりもう、泣いちゃっていますよね(笑)」
シェイクスピアの不朽の名作を、情熱的で美しい音楽でミュージカル化した『ロミオ&ジュリエット』。
2001年にパリで開幕、その後世界各国で上演されて500万人以上を動員している、世界的ヒット作です。
日本では2010年に宝塚歌劇団星組が初演、その後宝塚でも繰り返し上演されるとともに、2011年・2013年には男女混合の日本オリジナルバージョンも登場。ともに、大反響となりました。
魅力は、モンタギュー家とキャピュレット家の対立を表すアクロバティックな激しいダンス、青春を謳歌する若者たちのまぶしさと一転して起こる悲劇の対比、登場人物の上に覆いかぶさる"死"の影、そしてその中に咲くロミオとジュリエットの愛の純粋さ......。
耳に残る印象的なロックナンバーとともに、ドラマチックな物語が繰り広げられる、これぞ"フレンチ・ミュージカル"の傑作です。
【『ロミオ&ジュリエット』バックナンバー】
●2011年公演
・開幕記事
●2013年公演
・開幕記事
さて、4年ぶりの待望の上演となる2017年、キャストはオーディションを経てガラリとフレッシュな顔ぶれに!
しかも今回は"新バージョン"となることが発表されており、注目を集めています。
そんな2017年版、ロミオは古川雄大さんと大野拓朗さん。
ジュリエットは乃木坂46の生田絵梨花さん、そして新人・木下晴香さんがキャスティング。
ほぼ全配役が新キャストとなる中、2013年公演に引き続きの出演となるロミオ役・古川雄大さんにお話を伺ってきました。
◆ 古川雄大 INTERVIEW ◆
――4年ぶりのロミオ役ですね。2回目のロミオに挑戦しようと思ったのはなぜでしょう。
「何かをやり残したという感覚もありますが、単純にロミオは魅力的な役。男だったらたぶん、誰しもがやりたいような役だと思います。やりたいという憧れの気持ち...でしょうか。もちろん、前回感じた悔しさを晴らしたいという思いもありますが」
――近年、古川さんは大作ミュージカルにひっきりなしにご出演ですが、2013年公演はグランドミュージカルとしては初主演でしたよね。大劇場でセンターに立ったお気持ちはいかがでしたか?
「やっぱり(カーテンコールで)一番最後に出ていく時には、なんだかもう...。何て言えばいいんでしょう。感動もあり、複雑な気持ちもあり...」
――複雑、とは。
「最後に拍手で迎えられる瞬間というのは、ちゃんと"背負った"人しか出ちゃいけない、というような重みがあるんです。前回は、城田優君という存在が、船長としていましたので...。でも、やっぱり感動ではありました」
――そうなんです、『ロミオ&ジュリエット』といえば、初演からずっと城田優さんが作品をひっぱってきたイメージがあります。今回はその城田さんが卒業し、作品としても新しい一歩となりそうですが、その中でダンサーさんを除けば古川さんだけが、唯一の作品経験者です。
「はい、僕が城田君みたいな存在になれるように頑張りたいな、と思ってます。前回とはちょっと違うプレッシャーのかかり方が予想されますよね...。(大野)拓朗は「頼ります」って言ってくるんですよ。といっても彼も..."ちゃんとした子"ですから(笑)。ふたりで一緒に作品を引っ張っていけたらなと思っているんですが。...僕、あんまり頼られたりするタイプじゃないので(苦笑)」
■ミュージカル『王家の紋章』#19■
帝国劇場にて現在絶賛上演中のミュージカル『王家の紋章』。
開幕前からインタビュー、稽古場取材等々、さまざまな形でこの公演を追っている当連載、最後の更新はメンフィス役・浦井健治さんと、ライアン役・伊礼彼方さんの対談をお届けします。
『エリザベート』ルドルフ役を同じ時期に努めていたおふたりが、6年ぶりにこの帝国劇場の地で顔を揃えています。
爆笑の中にも、ふたりの同志としての絆や友情が垣間見える対談となりました。
◆ 浦井健治 & 伊礼彼方 ロングインタビュー ◆
●帝劇にいたのは、魔物ではなく天使でした
――おふたり、待望の帝国劇場での初共演ですよね。『エリザベート』ルドルフ役を同じ時期に演じていらして、でもその時は同じ役だから共演はされていませんから。
伊礼「完全に俺、健ちゃんの主演だから、出演オファーを受けたからね!」
浦井「かなり...ありがたいです」
伊礼「本当にもう、その一心だよ」
――伊礼さん、ビジュアル撮影時の取材でも「楽しみは健ちゃん」って仰ってました。なぜそんなに「健ちゃんだから」って?
伊礼「やっぱりそれは...約束したから。ルドルフの頃「いつか一緒にやりたいね」って言っていたんです。しかも主演はもう何度もやっているけど、帝国劇場のセンターに立つ、というのは、ひとつの...」
浦井「そうですね、ひとつの大きな、特別な何かがありますよね。帝国劇場はやっぱり"聖地"ですから」
伊礼「うん。だから、僕もそこには絶対に入りたいなって」
――実際、帝国劇場のセンターに立っていかがでしたか? 初日、終幕したときのお気持ちは。
浦井「見ている景色が、明らかに自分の中で違っていました。ああ、これが帝国劇場なんだなぁと。しかも、(『エリザベート』の)ルドルフの時とも、『ダンス オブ ヴァンパイア』のアルフレートの時とも違うな、とすごく感じました。でも同時に真ん中って、ひとりじゃなく、みんなと一緒にやってるんだ...って。"支えられている感"、それに気付けたことが、嬉しかった」
伊礼「主演の言葉だねー!」
浦井「あと、「帝劇には魔物がいる」ってよく言われているらしいんですが、僕にとってそこにいたのは、天使だった。魔物じゃなくて、すごく見守ってくれていました。帝劇の空間も...それが神様なのかもしれないけど...、お客さまも、スタッフさんも、オーケストラも。みんなが本当に舞台を愛していて、このすべてが合わさって、一回一回を大切にライブとして楽しんでいた。帝国劇場にいらっしゃる約2千人のお客さま、すべてからそれを感じたので嬉しかったですね」
――初日、客席で観ていたのですが、すごくピースフルな空間でした。
浦井「すごかったですね! お客さまからの熱い拍手とスタンディングオベーション。胸の中に熱いものがじわーっとしみわたりました。初日に感じたそれが、今も続いています。やっぱり皆さんに支えられ、見守られているんだなって感じます」
――あと、2幕でメンフィスとライアンとイズミルとで、3人で歌うところ。あそこを平方元基さんイズミル回で観た時に、「元ルドルフ3人が帝劇の空間を埋めている!」と、勝手に感慨深くなりました。
伊礼「あっ、ホントだ」
浦井「そうだった!みんなルドルフやってるね」
伊礼「やっぱこの仕事、受けてよかったわ~」
浦井「今!?」
王政に対する不満を民衆が爆発させ、その怒りを動力に革命を成功させた「フランス革命」。
その革命期のフランスをテーマにしたミュージカルは『レ・ミゼラブル』『ベルサイユのばら』、そして今春上演されたばかりの『1789-バスティーユの恋人たち-』と、日本でも数々愛されていますが、その中でも異色の作品が『スカーレット・ピンパーネル』です。
この作品は、権力を得た民衆側が暴走し、元貴族らを次々と処刑していく中、無実の彼らを救おうと立ち上がったイギリス貴族側の視点で描かれた、いわば"裏から見たフランス革命"の物語。
といっても重いテーマを扱った作品というより、身分を隠し人助けをする正義のヒーローの冒険活劇、といった華やかさと爽快さのあるミュージカルで、日本では2008年に宝塚歌劇団星組が初演、好評を得て2010年には月組が再演、さらに2017年にも星組で上演が決定している人気作です。
その作品が、日本では宝塚歌劇団外で初めて上演されます。
時はフランス革命の最中、無実のフランス貴族たちが次々と革命政府により断頭台へ送られていく。
そんな混乱のパリでは、彼らを救い出す謎の集団"スカーレット・ピンパーネル"の存在が話題になっていた。
"スカーレット・ピンパーネル"のリーダーは、実はイギリス貴族のパーシー・ブレークニー。
その正体は誰にも明かさず、そのことから妻マルグリットとの間にも大きな溝ができていた。
一方でマルグリットの元恋人であり、フランス政府特命全権大使のショーヴランはマルグリットに近づき、ピンパーネル団の素性を暴こうと執念を燃やし...。
"スカーレット・ピンパーネル"のリーダーであるイギリス貴族、パーシー・ブレークニーを演じるのは、石丸幹二。
その妻マルグリットは、日本初演となった2008年宝塚歌劇星組公演でパーシーを演じた安蘭けい。
これ以上にない豪華キャストが、ブロードウェイをはじめ各国で活躍しているガブリエル・バリーの演出のもと、待望の男女混合ミュージカルとしての『スカーレット・ピンパーネル』を上演します!
パーシーを演じる石丸幹二さんに、お話を伺ってきました。
◆ 石丸幹二 ロングインタビュー ◆
●今回は"大人で魅せる『スカーレット・ピンパーネル』"。行き着くテーマは"勇気"です
――石丸さんが「ひとかけらの勇気」(2008年宝塚歌劇星組公演時に書き下ろされた、劇中を代表するナンバー)を色々なところで歌っていらっしゃるのを聴いていましたので、ついに来たか!と思いました。
「『スカーレット・ピンパーネル』はいつか演じてみたいと熱望していました。ブロードウェイ・ミュージカルの翻訳上演として、宝塚歌劇で上演を繰り返していますが、これまで日本では男性が演じたことがなかったので、その"最初に関われる男"になれることが嬉しいです(笑)」
――石丸さんはこの作品、ご覧になっていらっしゃいましたか?
「宝塚星組版を観ました。そのあとブロードウェイ版を映像で観て、さらにヨーロッパではいくつかドラマにもなっているので、DVDを色々と観ました。ヨーロッパでは非常に人気のある物語。やはり身近な歴史だし、何よりテーマが人を惹き付けるのだなと思っています」
90年代、小劇場界で人気を博した関西発の劇団惑星ピスタチオ。
白血球といったミクロの世界から大群衆、果ては宇宙までを繊細かつパワフルに描く物語世界、そしてカメラワークを駆使された映像を見ているかのような独特の効果を俳優の肉体と観客の想像力で生み出す演出方法は、当時の演劇界に大きな衝撃を与えた。
その脚本・演出を担当していたのが西田シャトナーである。
シャトナーは2000年の劇団解散後も、舞台『弱虫ペダル』など人気作を数多く手掛けているが、彼の戯曲を上演するプロジェクトが「シャトナー of ワンダー」。
これまでも自らの作品を新しく再構築してきたこのシリーズ第4弾は、2009年に初演されて以来、上演を繰り返している代表作『ソラオの世界』に挑む。
なぜ今この物語を上演するのか、2016年版『ソラオの世界』の見どころは、そして自身が求める「一生で一本の作品」とは......。
西田シャトナーに話を聞いた。
●あらすじ(公式サイトより)
ある日昏睡状態に陥り、自分の夢の中に閉じ込められてしまったソラオ。
普通なら目覚めようと必死になるところだが、人一倍能天気なソラオは、どうせ目覚められないのならと、
夢の中を楽しんで過ごしはじめる。
現実の世界ではテキトーだったバンド活動もメジャーデビューを果たし、
現実の世界では片思いだった年上の女性ヨルダさんとも恋人同士になり、
夢の世界でのソラオの生活は光り輝いてゆく。
だがやがて、この世界の遠い果てから、夢の主を食い殺すほどに凶暴な魔物たちが近づいてくる。
それは所詮、夢の中の出来事にすぎないのか?
それとも夢の中では済まされないほど恐ろしい何かの
始まりなのか?
答えを知りたくないソラオは、最愛のヨルダを連れて、夢のもっと奥深く、誰も来ることのできない海の向こ
うの孤島へと逃げようとするのだった。
果たしてソラオに目覚めの日はくるのか...?
我々の住んでいるこの世界も、誰かの見ている夢なのかもしれない――。
人類の永遠の疑問をめぐる、孤独なソラオの冒険譚。
◆ 西田シャトナー INTERVIEW ◆
――『ソラオの世界』は2009年の初演から数えて、これで5回目の上演ですね。今ふたたびこのタイミングでやろう、と思ったのはどうしてですか?
「実は公演中止になった2008年版というものもありますので、それを入れると6回目ですね。確かに、かなりやっています。でも僕、あまり上演するタイミングを考えたことはなくて。そもそもどんな作品も、常に上演は終わっていないと思っています。もちろんみんなのスケジュールもありますし、劇場がとれている日程で公演は終わりますが、それはビジネス的側面でいったん休止を余儀なくされているだけ。もともとお芝居ってそういうものですよね。今日7時に公演が終わって、明日5時にまた幕が開く、その間休んでいるというのと同じだと思うんです。『ソラオの世界』も僕の中では上演は終わっておらず、上演できるのは第一にビジネス的にやらせてもらえる日が来た、というだけで、僕の心の中ではずっと続いていたんです」
――ご自身の中では終わっていなかった。しかも常にどんな作品も、ですか?
「そうです。あらゆる表現形態の中でも芝居の面白いところは、料理と同じで、作り手がここにいる限り、今日も明日も新しいものを作って出すということ。そして作り手とお客さまがその時間、一緒に過ごす。『ソラオの世界』も料理と同じで、注文が来たからお出しできることになりましたし、いつでも出せるよう、磨いていました」
ベトナム戦争を背景に、命を懸けた究極の愛を描くミュージカル『ミス・サイゴン』が、2年ぶりに上演される。
本作に初参加する、キム役のキム・スハ、ジジ役の中野加奈子。2人は、ロンドンのウエスト・エンドで『ミス・サイゴン』の舞台でそれぞれ今回と同じ役を演じていた経験の持ち主。日本では初舞台となる2人に話を聞いた。
本読み稽古が始まったばかりの6月下旬の東京。台詞の一言一句に細かく耳を傾ける演出家の元、緊張感ただよう稽古場。夫婦役を演じる田中哲司さん、原田夏希さん、そして演出の長塚圭史さんからお話を伺ってきました。
-今回の再々演を迎えるにあたり-
長塚:
『浮標』を再々演するにあたり、勿論田中哲司さん演じる久我五郎ありきで考えていました。ただいつどのように3回目のオファーをするかが難しくて、かなりタイミングを伺いました。何せ大変な芝居ですからね。
田中:
長塚さんからお話をいただき、「やるならやろうか」とお受けしました。新しい共演者と新しい作品を創り上げていくのはとても楽しみです。
長塚:面子が随分とまた変わったので、作品の「色」もまたぐんと変わってくると思います。濃くなると思いますよ、また一層。いずれにしても全員でこの作品をシェアしながら改めて真摯に創作してゆくのですけど。
原田:
再演の『浮標』は観ました。静かでとても印象的な作品でした。その時美緒を演じた松雪泰子さんが語った言葉が今でも心に残っています。舞台に出たいと思っていましたが、まさか『浮標』に出演できるとは思いませんでした。田中哲司さんとは以前テレビドラマで一度兄妹役としてご一緒したことがありますが、舞台では初めてです。ご出演の舞台は何度か拝見したことがあり、物静かで穏やかなイメージがあります。
田中:
以前の兄妹役も原田さんは自分より「若いな」と思いましたが、今回は夫婦役でどのように見えるか期待しています。
長塚:
演劇としては二人の実年齢の差は関係なく、気にならないものと考えています。上演を繰り返す中で、新しい世代をどんどん加えて上演していくことで、現在の『浮標』像がみえてくると考えていまして、それは初演からブレないコンセプトです。
-自分が演じる「人物像」について-
原田:
猛勉強中です。美緒が置かれた状況を一生懸命理解しようとしています。本を読んでいるだけで泣けてきます。ただ、泣けてくるのは客観的に感じているからであり、本当にこのような環境だと自分なら「泣いている場合ではない」と感じると思います。
美緒が患う結核についても調べました。今でこそ「不治の病」ではなくなっていますが、当時この病気を患い、死を迎え揺れ動く境地を如何に顕していくか、考えながら取り組んでいます。美緒は舞台上でほとんど動きがなく、横になっています。前回美緒役の松雪泰子さんとは映画でご一緒したご縁もあり、「腹筋が大事」とアドバイスをいただきました。そして、砂埃が凄いので「喉に気を付けて」とも言われました。
長塚:
動作は演じるにあたり大きな助けになるのですが、それがないわけですからね。物凄い集中力を要求されるとても大変な役です。
田中:芸術創作活動に携わる人間として久我五郎に共感できるところはありますが、自分と久我五郎は全くの別人です。でも別人を演じるほうが楽しいですね。あと僕は久我五郎ほど怒りっぽい人間ではありません(笑)
-『浮標』の魅力とは-
田中:
一つ一つの台詞がとても力強く感じます。古い文体で書かれているので喋りづらいのですが、体に馴染んでくると快感を覚えます。現代では使われないような台詞回しも出てきます。昭和感溢れる、和の言葉です。
長塚:日本の戯曲でこれだけ哲学が込められている本があるということ。今の日本で日常的には実感しにくい「死」に強烈に向き合い、それが故に「生きること」が輝いてきます。三好十郎の言葉は詩情あふれる言葉使いをされている訳ではありません。いってみれば、状況を淡々と説明しているようなイメージですが、ひとつひとつの台詞がとても「熱い」ので、想いを乗せやすいのです。手強い台詞も多く、最初はみんな翻弄されましたが、ある時ぐんと世界に連れて行かれるような不思議な魅力があります。
田中:
『浮標』の久我五郎は、カンパニー全体を背負わざるを得ない存在で、これほど自分の役割を求められる作品に向き合ったことはほとんどありません。台詞量も多く、どこかでセーブしたくても全力で立ち向かわなければ乗り越えられない。くれぐれも体調管理だけはしっかりしていきたいです。また3回目の出演に臨み、新たな課題を持ち、取り組みたいです。前回の感じをなぞるのはたやすいことですが、2回の上演を経て自分に取り込まれたものを表現できるようしたいです。
-お客様にひとこと-
原田:
実は昨日まで神戸で撮影の仕事をしており、今朝東京に戻ってきました。これまでも兵庫県にはNHKの連続テレビ小説「わかば」のロケ等で何度も伺っており、港町特有の大好きな風景でとても親しみのある懐かしい場所です。井戸知事とも震災関連のセレモニーでお会いしたことがあります。今回この舞台で兵庫にお伺いできること、とても楽しみにしております。
田中:
とにかく、頑張ります。それしかないです。
【横浜公演】
8月4日(木)~7日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
【豊橋公演】
8月11日(木・祝)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【兵庫公演】
8月13日(土)・14日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【東京公演】
9月2日(金)~4日(日)
世田谷パブリックシアター