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3月19日よりザ・スズナリにて、歌舞伎の概念を逆転させた"女歌舞伎"に挑む、Project Nyx。イラストレーターの巨匠・宇野亞喜良氏による斬新な和のビジュアルと、BUCK-TICKの楽曲が炸裂する、スーパーロックエンターテインメントを上演します。演出の金守珍氏、主宰の水嶋カンナさん、主演の、加藤忍さん、寺田結美さん、田上唯さんにお話しを伺いました。

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左から田上唯さん、寺田結美さん、金守珍氏、加藤忍さん、水嶋カンナさん

―「新雪之丞宇変化」の上演を決めたきっかけは何ですか?

水嶋「これまでProject Nyxでは、寺山修司作品を中心に公演してきたのですが、2年前くらいに、宇野亞喜良さんがこれやりませんか?と宇野さんが表紙を手掛けた「新雪之丞変化」の戯曲本を出してきて、「え、和物ですか?」とびっくりしたんですが、白石さんの「新雪之丞変化」は、いわゆる「雪之丞変化」とも違うクライマックスの大どんでん返しがあり、「面白い!!」と思い、早速企画を始めました。

―キャスティングは水嶋さんが全て行うとか?

水嶋「はい、まずは憧れの加藤忍さんに、気風のいい女スリ・お初役でご出演をお願いしました。」

加藤「実はニクスには憧れてて、でも遠い存在だったので、私がニクスに出てるって、なんか不思議な感じがしています。」

水嶋「25年前に『宝島』という雑誌で、小劇場の新人女優特集で一緒に取り上げられたんですけど、お会いしたこともなく、本当に二年前に忍さんが新宿梁山泊の公演を見に来てくださって意気投合して、急激に今回のご一緒が叶いました。」

―ニクスの稽古はどんな感じですか?

加藤「台本を読んだだけだとわからない世界だったんですが、今日お稽古でも、BUCK-TICKさんの曲の「誰かが誰かを殺すよって」歌詞のダンスシーンのところで、金さんが『世界』ってワードを言われて、ニクスってこうゆう感性で作るんだって思って、やっぱり世界が大っきいんだなーと思いました。私が今まで触れ合ってこなかった、BUCK-TICKさんと金さんの世界観の融合に感動して、すごくいい作品に出会わせていただいて、頑張らなきゃなって思いました。」

水嶋「ゆっぴ(田上)は青年座で、少女役が多いのですが、浪路というやんちゃで可愛くもあり、オフィーリア的な華憐さも内包するキャラクターにピッタリだなと思って」

田上「毎日新しい感性と、感覚が、新鮮でたまらなくて、自分も楽しんで乗っかれば、新しい自分にも絶対に出会える気がして、いい意味で今までの固定概念を壊して、純粋に身を投じたいと思って、楽しみでしょうがないです。」

―新劇の稽古場とは違いますか?

田上「全然違いますね、それが面白いですね。『そこまでやっていいんだ!』って、最近刺激が快感になってきてます。(笑)」

水嶋「加藤健一事務所さんのお稽古場とも違いますか?」

加藤「そうですね違います。ニクスの稽古場では金さんのパッションが魅力的過ぎて!!」

「でも今回おとなしいよね?」

水嶋「まあ、今のところおとなしいです!いつ雷が落ちるのかと、、(笑)」

加藤「金さんは、恐ろしいという評判で、金さんの演出受けるの?忍ちゃん!」ってよく言われてます。」

水嶋「演劇界ではそう思われるみたいですね。(笑)でも金さんとやってると強くなりますよ、それだけは確か!」

田上「それは感じます。皆さんタフで逞しいなって!!そのパワーに乗っかりたいなと。」

「今回はキャスティング、素材がいいからとても演出が楽ですよ。適材適所のいい素材が集まったから、それを最大限に生かして、どう料理して美味しいものを出すのかが演出の仕事だと思ってます。今回、みんな素晴らしいから怒る必要もないし、怒るって時はできないから怒るだけですから。カンナさんの感性でProject Nyxがあるわけだし、魅力ある女性たちの舞台として十数年美女劇やってきて、今回も華やかで艶やかで、振袖の群舞シーンなんて胸躍るよね!」

― 美貌の女形・雪之丞役に寺田さんが大抜擢されとか

寺田「はい、奴婢訓にオーディションで参加してから、丸二年で今回、雪之丞役をやらせていただくことになりました。」

「寺田はガタイとパワーがあるよね、身長170cmで歌唱力もあり、踊りもできるのに、なぜ宝塚にいかなかったんだって言ってるんだけど。」

水嶋「兵庫出身だし。(笑)」

寺田「宝塚は自分の目指す世界とは違う気がして、、、。きれいなものより、毒のあるものが好きだったのかもしれません。雪之丞役は女形を女性の私がやるという型破りなことへの挑戦だと思っています。宝塚にも通じるところがあるのかもしれませんが、私(女性)の目線があってこそできる雪之丞を出来たらと思っています。」

「雪之丞は、容姿と情熱はもう申し分ないから、声色をとにかく追求して、女形と男節の振幅の差があればあるほど面白いと思う。あと、男性役の小谷さん、佐野さん、もりちえ、こと美が、カラッと楽しくカッコよく男性役をやってくれるから面白くって、作品に深みが出てると思います。女性が男になるって出来ちゃうんだねって、今回さらに納得しました。それぞれの女性の様を見てるだけでも楽しいよね。」

加藤「カンナさんが稽古場で言われてて思ったんですけど、本当の女性の自立ってどうゆうことなんだろうって、最近私生活でも考えてたりしてて、今回、一人一人の生き方の色が出たらいいなと思うし、お初をパンチのある役にしたくて、金さんの演出についていきながら染まりたいなと思います。」

田上「カンナさんがプレ稽古の時、ぽろっと、『今まで誰もやったことが無いことがやりたい!』って言ってたのが、とても心に刺さって、めちゃめちゃかっこいいなって思って、今の時代に、命がけで恋するってどうゆうことなんだろうと、自分の中で掘り下げながら、金さんのパワーとみんなのパッションに乗っかって、全身全霊で身を投じたいと思います。」

水嶋「アンダーグラウンド宝塚って言ったこともあるんだけど、ニクスでは、辛さとかどん底とかを体現している女性たちが、強く気高く麗しく、美しいパワーを放つようにしたいから、全員が輝いて欲しい。この座組が大好きになったんだけど、終わったらみんな新劇や小劇場に戻っていくと思うけど、、、でもちょいちょいこちらにも遊びに来てください。(笑)」  

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【公演情報】

2020年3月19日(木)~29日(日) 下北沢 ザ・スズナリ

◆終演後アフタートーク

20日(金)14:00 【小劇場トーク】 加藤忍、高畑こと美、山田勝仁、水嶋カンナ 

21日(土)14:00 【新劇女優トーク】 小谷佳加、佐野美幸、田上唯、水嶋カンナ

22日(日)14:00 【雪之丞変化トーク】 宇野亞喜良、白石征、金守珍、水嶋カンナ 

25日(水)14:00 【アングラ女優トーク】 もりちえ、佐藤梟、寺田結美、水嶋カンナ

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今年、5月~7月に東京・歌舞伎座で行われる市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言および、6月、7月の八代目市川新之助初舞台狂言が2月7日に発表されました。

発表会見には、團十郎を襲名する海老蔵さん、新之助を襲名する堀越勸玄さん、そして松竹・安孫子副社長が登壇しました。

 

▼左から勸玄さん、海老蔵さん、安孫子副社長

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■五月大歌舞伎

5月3日(日・祝)~27日(水)
※休演:15日(金)昼・夜の部
1等 23,000円 2等 18,000円 3階A 8,000円 3階B 6,000円 1階桟敷 25,000円

<昼の部>
「歌舞伎十八番の内 勧進帳」武蔵坊弁慶:團十郎

<夜の部>
十三代目市川團十郎白猿 襲名披露 口上
「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」花川戸助六実は曽我五郎:團十郎


■六月大歌舞伎
6月1日(月)~25日(木)
※休演:12日(金)昼・夜の部
1等 23,000円 2等 18,000円 3階A 8,000円 3階B 6,000円 1階桟敷 25,000円

<昼の部>
十三代目市川團十郎白猿/八代目市川新之助 襲名披露 口上
「歌舞伎十八番の内 暫」鎌倉権五郎景政:團十郎

<夜の部>
「歌舞伎十八番の内 外郎売」外郎売実は曽我五郎:新之助
「歌舞伎十八番の内 勧進帳」武蔵坊弁慶:團十郎


■七月大歌舞伎
7月1日(水)~20日(月)※三部制
1等 18,000円 2等 16,000円 3階A 6,000円 3階B 4,000円 1階桟敷 20,000円

<第一部>
道成寺「歌舞伎十八番の内 押戻し」大館左馬五郎:團十郎
「男伊達花廓」五郎蔵:團十郎

<第二部>
「山姥」山樵斧蔵実は三田仕:團十郎、怪童丸後に坂田金時:新之助
「歌舞伎十八番の内 景清」悪七兵衛景清:團十郎

<第三部>
「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」花川戸助六実は曽我五郎:團十郎

 

安孫子副社長は、この演目に決まった経緯として各所と相談してきたことを明かし、「市川家所縁の代表的な狂言を上演させていただきます。先輩や同世代の方々にもご出演いただきまして襲名披露興行を公演させていただきます。配役は最終的な詰めに入っております」と話しました。

  

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海老蔵さんは「2020年、十一代目市川海老蔵改めまして十三代目市川團十郎白猿を襲名させていただく運びと相成りましてございます。このたびは襲名狂言を発表させていただきます。『勧進帳』『助六』『暫』、そして『男伊達』『押戻し』『景清』という演目を私が勤めさせていただきます。せがれは、勸玄改め八代目市川新之助となりまして、『外郎売』をひとりで演じます。みなさまが想像している以上に、違うハードルがあり大変だと思います。また『山姥』も、祖父十一代目市川團十郎が初舞台の折にこの演目で怪童丸のちに坂田金時やりました、大変ゆかりのある演目です」と挨拶。

勸玄さんはハキハキした元気な声で「堀越勸玄です。今年に市川新之助を襲名します。お願いします。『外郎売』と『山姥』の怪童丸を勤めさせていただきます。どうぞお願いします」と挨拶しました。

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令和元年も残すところあと一ヶ月。

今年の掉尾を飾る「十二月大歌舞伎」が東京・歌舞伎座で上演中です。

その昼の部を観劇してきました。

 

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今月は坂東玉三郎を中心とした座組です。

次世代を担う若手にも大役を勤める機会をと、昼の部は演目や出演者が日にちによって替わる構成になっています。(Aプロ・Bプロ)

ひとつ目の『たぬき』は両方のプログラム共通です。

ふたつ目は、【Aプロ】『村松風二人汐汲』【Bプロ】『保名』となります。

 

▼写真は『村松風二人汐汲』

(左から)村雨=中村児太郎、松風=中村梅枝

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3つ目の『阿古屋』は【Aプロ】が玉三郎、【Bプロ】では中村梅枝中村児太郎が日替りで勤めます。

 

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『たぬき』は1953年に初演された、大佛次郎作の新作歌舞伎。

前回の上演から約5年ぶりで、今回新たに石川耕士が演出を手掛けました。

物語は、コレラが大流行している江戸を舞台に、死んだと思った男が火葬場で生き返り、思案あって元の生活には戻らず、過去と決別して別人として第二の人生を歩むが......というお話。

主人公の男・柏屋金兵衛を演じるのは、これが初役となる市川中車(香川照之)。

金兵衛は、柏屋の婿養子に収まったものの、放蕩三昧でお世辞にも良い夫、良い父とは呼べないような男。

焼かれる寸前に生き返ったものの、自宅へ帰っても妻からは歓迎されないだろうと思い、それならいっそ、若い妾と楽しく暮らす人生も悪くないな、と考えた金兵衛。

ところが、この妾にも裏切られていたとわかり、失意のどん底に落ちていきます。

前半はコミカルな場面もあり、喜劇としても楽しめます。

後半は名前を変え、別人として生きてきた金兵衛が、以前の知り合いにあったことから、ある決断をするまでが描かれています。

 

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▲『たぬき』(左から)太鼓持蝶作=坂東彦三郎、柏屋金兵衛=市川中車

 

この作品は、喜劇というより、シニカルな視点や親子の情愛といった人間の本質を突いた深さがあり、演劇的な視点で観ても面白いなと思いました。

中車は、緩急交えた芝居で場面ごとに違う顔をみせ、複雑な男の心情を表現していました。

また、金兵衛との絡みが多い太鼓持・蝶作を坂東彦三郎が好演、その妹で妾お染を中村児太郎という配役です。

 

ところで、『たぬき』というタイトル、響きは可愛いですが、人間を「化けの皮を被って化かし合いをしているたぬき」に見立てて付けたようで、なんとも皮肉が利いていますね。

 

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11月1日、東京・歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕しました。

ところで、11月の歌舞伎座興行にはなぜ"顔見世"と付くのか知っていますか?
その起源は江戸時代に遡ります。

当時、座元と役者の契約期間は1年で、向こう1年この顔ぶれでやりますよ、と観客にお披露目する"顔見世"興行は一大イベントでした。

けれども時代の変化とともにそうした習慣がなくなり、一時期途絶えていましたが、昭和32年に歌舞伎座の"顔見世"が復活します。

それから60余年、今ではすっかり秋の風物詩となった顔見世興行。

その昼夜の舞台を観劇してきました。

 

 
当月は、昼の部『研辰の討たれ』『関三奴』『髪結新三』

夜の部『菊畑』『連獅子』『市松小僧の女』の6演目を上演しています。

 
さて、『研辰の討たれ』と聞くと、演劇ファンなら野田秀樹が十八代目勘三郎(当時は勘九郎)と創った『野田版 研辰の討たれ』を思い浮かべる方も多いでしょう。

今月歌舞伎座で上演しているのは、作・木村綿花、脚色・平田兼三郎の言うなればオリジナル版"研辰"です。

この作品、上演機会はそれほど多くなく、歌舞伎座での上演は今から37年前の昭和57年以来となります。

 

物語は、元町人で研屋の守山辰次が殿様にうまいこと取り入り、武士に取り立てられたものの、元来の自分本意な性格と口達者が災いし、家老の逆鱗に触れてしまいます。家老への遺恨から騙し討ちで殺したあげく逃亡してしまう辰次。

親を殺された家老の息子たちは、仇討ちをすべく辰次を追って旅に出る。

かくして辰次の運命は、、、というお話。

 

なりふり構わず逃げ回る辰次の行動がコミカルに描かれているので、喜劇として見れば笑える場面が随所にあります。

一方で、武士の矜恃であったり、仇討ちを見物する群衆心理の怖さなど、何が正しくて何が間違っているのか、善悪だけでは語れない観る側に問いかけを残すような側面もあるちょっと変わった作品です。

 

辰次を演じるのは幸四郎

7年前に大阪松竹座で勤めているので2度目の挑戦です。

臆病者で卑怯者という好感度ゼロに等しい男をどう演じるかでドラマの見え方が大きく変わりそうですが、幸四郎は徹底的に"生"に執着する姿を笑いに転換させ、憎めない辰次像を創り上げていました。

特筆すべきは幸四郎の"オモシロ"へのこだわり。

ザ・ドリフターズ好きを公言しているだけあって、そこまでやるの!?と思うような場面も多々あり。

汗だくで奮闘している姿に思わず"アッパレじゃ!"と声援を贈りたくなりました。

 

201911gekipia_togitatsu.jpg『研辰の討たれ』

左より平井才次郎=坂東亀蔵、守山辰次=松本幸四郎、平井九市郎=坂東彦三郎

 

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現在歌舞伎座にて「芸術祭十月大歌舞伎」が上演中です。

第74回文化庁芸術祭参加公演として上演されている、夜の部を観劇してきました。

 

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演目は、通し狂言『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』舞踊『二人静(ふたりしずか)』のふたつです。

『三人吉三巴白浪』を歌舞伎座で序幕から大詰まで通しで上演するのは2004年以来、15年ぶり。

同じ"吉三"という名を持つ3人の盗賊たちと、百両の金と短刀をめぐる因果話を描いています。

和尚吉三を尾上松緑、お坊吉三を片岡愛之助、お嬢吉三を尾上松也(偶数日)と中村梅枝(奇数日)がダブルチャストで勤めます。

通称『三人吉三』と呼ばれる本作は、河竹黙阿弥の代表作のひとつと言われ、特に序幕の「大川端庚申塚の場」は上演回数も多く非常に人気があります。

振袖姿の美しい女に化けた男=お嬢が、正体を現して「月も朧に白魚の~」と謳うように聞かせる七五調の名台詞は、大向こうから「待ってました!」と声がかかるほど有名な場面。

他にも、百両の金を巡って斬りあっていたお坊とお嬢を諌める和尚の男気や、3人が兄弟の契りを結ぶ場面も粋な演出で、見どころ満載です。

 

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 ▲『三人吉三巴白浪』
(左よりお嬢吉三=尾上松也、和尚吉三=尾上松緑、お坊吉三=片岡愛之助)

 

けれども、『三人吉三』の本当の面白さは、物語そのものにあります。

「庚申丸」と呼ばれる名刀、そして百両の金にまつわる因果話は、彼らの親の代にまで遡るなかなかに根深い話なのです。

主人と従者、親と子、男と女、悪事と祟り、、、様々な要素が絡まりあう中、巧妙なパズルを解き明かしていくようにやがてひとつに繋がっていくと......抗いようのない宿命を背負った3人の姿が浮き彫りになっていきます。

ストーリー展開の巧みさや、ままならない運命に翻弄される登場人物たちの切ない思いは、通し上演で観てはじめて全貌がわかる仕掛けなのです。

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P9301947 (1).JPG左からG2、中村七之助、尾上菊之助、スタジオジブリの鈴木敏夫代表取締役プロデューサー、松竹の安孫子正代表取締役副社長

12月に新橋演舞場で上演される新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』の製作発表記者会見が9月30日に行われた。会見には、尾上菊之助、中村七之助、スタジオジブリの代表取締役プロデューサー鈴木敏夫、松竹の代表取締役副社長安孫子正、演出のG2が登壇した。

漫画『風の谷のナウシカ』は、宮崎駿が1982年から雑誌『アニメージュ』で連載を開始し、1994年に完結した全7巻の作品。舞台となるのは、"火の七日間"と呼ばれる戦争によって産業文明が滅び、大地は腐海に覆われ、人間同士が争い続けている世界。"風の谷"の族長の娘ナウシカがさまざまな困難に立ち向かう姿が描かれ、連載途中で映画化されて以来、日本のみならず世界中で愛され続けている。

ナウシカコミック.jpg原作『風の谷のナウシカ』全7巻(徳間書店刊)©Studio Ghibli

会見では、原作漫画全7巻を歌舞伎舞台化し、昼の部・夜の部を通して披露することが発表された。主人公のナウシカ役を務める菊之助は、「5年前からスタジオジブリさんに歌舞伎化をお願いし、製作準備をしていました。今、上演の発表ができることに武者震いをしています」と感慨深く語った。

さらに続けて「環境問題や遺伝子問題といった壮大なテーマを持つ『風の谷のナウシカ』を歌舞伎で表現すると、どのような化学反応が起こるのか、とてもワクワクしています。久石譲さんの曲も何曲かお借りして、和楽器で演奏します。ジブリのファンにも歌舞伎のファンにも絶対に納得していただける作品にしたいですね」と意気込んだ。

P9301908 (2).JPG上演に向けての意気込みを語る菊之助

トルメキアの皇女・クシャナを演じる七之助は、「兄がジブリの大ファンで、ナウシカが初恋の人だそうです(笑)。以前『かぐや姫の物語』で私が御門の声をさせていただいたときも大喜びしていました。それから時を経て、ジブリ作品を自分たちのホームである歌舞伎で上演させていただけることを本当に嬉しく思います」と喜びを語った。

さらにクシャナについて「きっと皆さんの思うクシャナは、悪人のイメージですよね。でも、原作では『生きるためにはこの道を進むしかない』と苦しむかわいそうな一面もある。単なる恐ろしい悪役ではなくて、クシャナの心の揺れも表現していきたいです」と思いを巡らせた。

P9301924 (2).JPGトルメキアの皇女・クシャナを演じる七之助

スタジオジブリの鈴木は、「『風の谷のナウシカ』は宮崎にとって大事な作品。いままで実写化のお話もすべてお断りしていました。菊之助さんから歌舞伎化のお話をいただいたときも、宮崎が断ってしまうと思っていましたが、『やろうよ』と言ったので驚きましたね。歌舞伎を舞台化するにあたって宮崎が出した条件はふたつ。ひとつは『風の谷のナウシカ』というタイトルを変えないこと。もうひとつは僕が会見に出ることです(笑)」と話した。さらに、「楽しい仕事になると感じています。期待しているので、いい作品を作ってください!」とエールを送った。

P9301867.JPG『風の谷のナウシカ』への思いを語るスタジオジブリ鈴木

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東京・歌舞伎座ではすっかり恒例となった「秀山祭九月大歌舞伎」が9月1日(日)に開幕しました。

近代の歌舞伎を代表する名優として知られている、初代吉右衛門の功績を顕彰し、その芸を継承することを目的とした「秀山祭」は今年で14年目、12回を迎えます。

初日の前日、8月31日に「寺子屋」(夜の部)の舞台稽古が行われ、松王丸の中村吉右衛門さん、武部源蔵の松本幸四郎さん、松王の女房・千代の尾上菊之助さんが囲み取材に応じました。

 

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「秀山祭」への意気込みを聞かれた吉右衛門さんは「意気込みですか?もう息も切れていますよ(笑)」と冗談めかしつつも、「初日から千秋楽まで、みなさんが健康に気をつけて無事に終えていただければ、私は責任者としてとても幸いです。初代吉右衛門という人は、湯殿の長兵衞にしろ、沼津にしろ、寺子屋にしろ、松浦にしろ、役の気持ちをつかんだ役者でした。そのことを歌舞伎座に来て、芝居を観ていただいて、少しでもわかっていただけたら幸せです」と話されました。

幸四郎さんと菊之助さんはそれぞれ「毎年参加させていただき、いろんなお役をやらせていただき、本当にありがたいです。私にとって初代吉右衛門は曾祖父にあたりますから、(秀山祭は)特別な興行として取り組まさせていただいております。この9月は、特に大きなお役をやらせていただきますが、一日一日を100%出し切れるよう勤めさせていただきます」(幸四郎さん)、「三代目歌六さんの百回忌追善記念興行に、岳父の下、私、そして丑之助とともに出演が叶いましたこと、こんな嬉しいことはございません。毎年岳父の側に出させていただきまして、ひとつひとつご指導いただきまして財産をいただいている気持ちです」(菊之助さん)とコメントされました。

 

 

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また、「寺子屋」について聞かれると、吉右衛門さんは「初代吉右衛門は源蔵も松王も両方勤めてまして、好評を得たお役でございます。今日(こんにち)、いろいろな型が残っておりますけれども、私のうちに伝わる型を源蔵をされる幸四郎さんにお教えしました。それが忠実に再現されましたら、お客様の御心をつかめるんじゃないかと思います」と話し、それを受けた幸四郎さんは「こんな幸せな時間はないと思っております。毎日、今日が最後というつもりで精一杯勤めます」と真剣な面持ちで答えていました。

吉右衛門さんが勤める松王丸の女房を演じる菊之助さんは「私自身緊張しておりますが、舞台には(息子の)丑之助がおりまして2倍の緊張でございます。その緊張に負けないよう、自分の役になりきって勤めたいと思います」と話すと、吉右衛門さんが「親御さんは緊張しておりますけれども、私としてはこんな嬉しいことはございません。孫が出てきたら"大丈夫かな、大丈夫かな、あーよくできた!"と微笑んでおります」と満面の笑顔で話されていました。

 

 

公演は9月1日(日)から25日(水)まで、東京・歌舞伎座で上演。

吉右衛門さんは昼の部「沼津」の十兵衛、夜の部「寺子屋」の松王丸、幸四郎さんは昼の部「幡随長兵衛」の長兵衛、「寺子屋」源蔵、夜の部「勧進帳」の弁慶を仁左衛門さんと交互出演(仁左衛門さんが弁慶の日は富樫で出演)、菊之助さんは「寺子屋」千代を菅秀才(初役)の丑之助さんと一緒に出演します。

三世歌六の百回忌追善狂言は、昼の部「沼津」、夜の部「松浦の太鼓」の2演目です。

 

チケットはぴあにて発売中

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三谷幸喜が作・演出を手掛ける新作歌舞伎『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』の公開稽古が、5月下旬に行われました。 

 

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歌舞伎座「六月大歌舞伎」夜の部として上演される本作は、"三谷かぶき"と銘打ち、みなもと太郎の歴史漫画「風雲児たち」を原作とする新作歌舞伎です。

三谷が歌舞伎を手がけるのは2006年にパルコ劇場で上演された「PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場」以来、実に13年ぶり。
また、三谷作品が歌舞伎の殿堂である歌舞伎座で上演されるのは今回が初めてとなります。

見知らぬ異国の大地で、どんな困難に直面しても故郷日本へ帰ることを諦めず、闘い続けた男・大黒屋光太夫の物語。
光太夫を務める松本幸四郎をはじめ、市川猿之助、片岡愛之助、そして松本白鸚ら、豪華俳優陣が集結しました!
歌舞伎ファンならずとも、この舞台は是が非でも観たいと思わずにはいられない今夏の注目作です。

 

報道陣に公開された場面は、商船神昌丸が漂流して8か月が経った船上のシーン。

 

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折れた帆の代替にこれはどうだと、畳表を持ってきたものの、皆が着物を縫い合わせて帆の代わりにしようとしていたことを知り、落ち込んでしまう光太夫。

 

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握り飯ばかりの食事に飽きていた庄蔵(猿之助)が悪態をついていると、自前で用意した沢庵をかじる新蔵(愛之助)にくってかかり、船内では喧嘩が絶えない様子。

陸まではあとどのくらいなのか、、、途方に暮れる中、三五郎(白鸚)は「陸が近くなれば昆布がある」と皆に伝えます。

 

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そんな中、具合の悪かった磯八(松之助)の体調が悪化し、今にも息絶えそうになると、突然、新蔵が「昆布をみつけた」と声をあげます。
本当は昆布など流れていないにもかかわらず仲間を思いやり、皆、口々に「昆布だ!昆布だ!」と叫びます。

 

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磯八はその声に安心するように息を引き取ります。
光太夫は、正月には皆で伊勢へ参ろうと、固く心に誓います。

 

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野田秀樹が作・演出を務め、2017年8月に歌舞伎座で上演された歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』がシネマ歌舞伎として4月5日より全国公開された。

公開後、ほどなくして東銀座の東劇を訪ねた。

客席は年配の女性を中心に比較的埋まっている。

若い男女や男性の姿も見られ、客層は広い印象だ。

 

 

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本作はもともとは現代劇だ。

坂口安吾の小説『桜の森の満開の下』と『夜長姫と耳男』を下敷きに野田秀樹が書き下ろし、1989年、当時野田が率いていた劇団夢の遊眠社の第37回公演として『贋作 桜の森の満開の下』という題で初演された。

その後、1992年に同劇団が再演、2001年にキャストを一新して新国立劇場で再演、昨年2018年にはNODA・MAP第22回公演として野田が芸術監督を務める東京芸術劇場のほか、パリ国立シャイヨー劇場でも上演されるなど、野田作品の中でも屈指の人気作品だ。

その『桜の森~』をいつか歌舞伎にしようと野田と話をしていたのが十八世中村勘三郎。
勘三郎と野田は1955年生まれの同い年だったこともあり、ふたりが30代のころに出会ってからすっかり意気投合。

野田作品を歌舞伎として上演したいと考えていた勘三郎(当時勘九郎)からの依頼で、野田が初めて歌舞伎の台本を書き下ろしたのが2001年8月に上演した『野田版 研辰の討たれ』だ。

この時の思い出を野田はこう語っている。

 

「勘三郎と私は、突然怖くなった。

浮かれてこの芝居を作ってしまったけれど、本当に大丈夫か?

四十代半ばだ った私たちが突然半分涙目になるほど、大きな犯罪をやってしまった共犯者の気持ちになった。

初日の舞台が終わっ た。

ありえないことが起こった。

かつて歌舞伎座でおこったことのないスタンディングオベイションが起こったのだ。

その時 の興奮を、私たちは今でも忘れない」

(シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』プログラムより一部抜粋)

  

 

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2018年、歌舞伎座や主要都市で松本幸四郎改め二代目松本白鸚、市川染五郎改め十代目松本幸四郎の襲名披露を行なったおふたりが、今春、全国各地の劇場で襲名披露公演を行います。
公演に先立ち、都内で会見が行われました。 

  

白鸚は「昨年は高麗屋三代襲名を37年ぶりにさせていただきまして、皆様方のお力のおかげで無事に終わりました。ありがとうございました。4月の公演は1日限りでございますので、一期一会の思いで一瞬一瞬を大事に勤めたいと思います」と挨拶。

 

幸四郎も昨年一年の襲名興行が無事終わったことに感謝の念を述べたあと「襲名披露で伺いますのは、私にとりまして一生に1回のことでございます。ご当地の皆様方がご観劇いただくのも1日のご縁ではございますが、その1日で歌舞伎に少しでも興味を持っていただいたり、また現実と違う時間を楽しんでいただければと思います。父と私くしとで、高麗屋なりの"歌舞伎のおもてなし"をさせていただきますので、ぜひとも多くの方にご観劇いただきたいと思っております」と意気込みを語りました。

 

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今回の演目は、白鸚と幸四郎の「襲名披露口上」からはじまり、『菅原伝授手習鑑』「加茂堤」「車引」、そして『奴道成寺』の3つ。 

出し物の順番について白鸚は「1日1日が舞台を通してお客様と交流する機会ですので、最初に俳優が出てご挨拶するのがいいんじゃないかと思いまして、そのようにさせていただきました」と「口上」を最初にもってきた理由を明かしました。
また、「車引」で勤める松王丸については、「度々勤めさせていただいているお役ではございますが、幸四郎と白鸚に名前が変わってからは初めてとなります。皆様へお見せすることができて大変光栄でございます」とにっこり。

 

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「車引」の梅王を勤める幸四郎は「やはり荒事の役といえば高麗屋代々の得意の芸として演じているお役でございます。襲名をご披露させていただくお役としましては、昨年演じました演目と同じくらい高いハードルです」と身を引き締める様子をみせていました。もうひとつ勤める『奴道成寺』については「曽祖父、七代目幸四郎が『奴道成寺』を上演されたときに作られた壺折(衣裳)がありまして、それを身にまとっていつか演じたいと願っていた演目でもあります。高麗屋にとりましても大事な大事な役でございます。まずは私の第一歩を多くの方に観ていただきたいと思っております」と熱く語りました。

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