3月19日よりザ・スズナリにて、歌舞伎の概念を逆転させた"女歌舞伎"に挑む、Project Nyx。イラストレーターの巨匠・宇野亞喜良氏による斬新な和のビジュアルと、BUCK-TICKの楽曲が炸裂する、スーパーロックエンターテインメントを上演します。演出の金守珍氏、主宰の水嶋カンナさん、主演の、加藤忍さん、寺田結美さん、田上唯さんにお話しを伺いました。
左から田上唯さん、寺田結美さん、金守珍氏、加藤忍さん、水嶋カンナさん
―「新雪之丞宇変化」の上演を決めたきっかけは何ですか?
水嶋「これまでProject Nyxでは、寺山修司作品を中心に公演してきたのですが、2年前くらいに、宇野亞喜良さんがこれやりませんか?と宇野さんが表紙を手掛けた「新雪之丞変化」の戯曲本を出してきて、「え、和物ですか?」とびっくりしたんですが、白石さんの「新雪之丞変化」は、いわゆる「雪之丞変化」とも違うクライマックスの大どんでん返しがあり、「面白い!!」と思い、早速企画を始めました。
―キャスティングは水嶋さんが全て行うとか?
水嶋「はい、まずは憧れの加藤忍さんに、気風のいい女スリ・お初役でご出演をお願いしました。」
加藤「実はニクスには憧れてて、でも遠い存在だったので、私がニクスに出てるって、なんか不思議な感じがしています。」
水嶋「25年前に『宝島』という雑誌で、小劇場の新人女優特集で一緒に取り上げられたんですけど、お会いしたこともなく、本当に二年前に忍さんが新宿梁山泊の公演を見に来てくださって意気投合して、急激に今回のご一緒が叶いました。」
―ニクスの稽古はどんな感じですか?
加藤「台本を読んだだけだとわからない世界だったんですが、今日お稽古でも、BUCK-TICKさんの曲の「誰かが誰かを殺すよって」歌詞のダンスシーンのところで、金さんが『世界』ってワードを言われて、ニクスってこうゆう感性で作るんだって思って、やっぱり世界が大っきいんだなーと思いました。私が今まで触れ合ってこなかった、BUCK-TICKさんと金さんの世界観の融合に感動して、すごくいい作品に出会わせていただいて、頑張らなきゃなって思いました。」
水嶋「ゆっぴ(田上)は青年座で、少女役が多いのですが、浪路というやんちゃで可愛くもあり、オフィーリア的な華憐さも内包するキャラクターにピッタリだなと思って」
田上「毎日新しい感性と、感覚が、新鮮でたまらなくて、自分も楽しんで乗っかれば、新しい自分にも絶対に出会える気がして、いい意味で今までの固定概念を壊して、純粋に身を投じたいと思って、楽しみでしょうがないです。」
―新劇の稽古場とは違いますか?
田上「全然違いますね、それが面白いですね。『そこまでやっていいんだ!』って、最近刺激が快感になってきてます。(笑)」
水嶋「加藤健一事務所さんのお稽古場とも違いますか?」
加藤「そうですね違います。ニクスの稽古場では金さんのパッションが魅力的過ぎて!!」
金「でも今回おとなしいよね?」
水嶋「まあ、今のところおとなしいです!いつ雷が落ちるのかと、、(笑)」
加藤「金さんは、恐ろしいという評判で、金さんの演出受けるの?忍ちゃん!」ってよく言われてます。」
水嶋「演劇界ではそう思われるみたいですね。(笑)でも金さんとやってると強くなりますよ、それだけは確か!」
田上「それは感じます。皆さんタフで逞しいなって!!そのパワーに乗っかりたいなと。」
金「今回はキャスティング、素材がいいからとても演出が楽ですよ。適材適所のいい素材が集まったから、それを最大限に生かして、どう料理して美味しいものを出すのかが演出の仕事だと思ってます。今回、みんな素晴らしいから怒る必要もないし、怒るって時はできないから怒るだけですから。カンナさんの感性でProject Nyxがあるわけだし、魅力ある女性たちの舞台として十数年美女劇やってきて、今回も華やかで艶やかで、振袖の群舞シーンなんて胸躍るよね!」
― 美貌の女形・雪之丞役に寺田さんが大抜擢されとか
寺田「はい、奴婢訓にオーディションで参加してから、丸二年で今回、雪之丞役をやらせていただくことになりました。」
金「寺田はガタイとパワーがあるよね、身長170cmで歌唱力もあり、踊りもできるのに、なぜ宝塚にいかなかったんだって言ってるんだけど。」
水嶋「兵庫出身だし。(笑)」
寺田「宝塚は自分の目指す世界とは違う気がして、、、。きれいなものより、毒のあるものが好きだったのかもしれません。雪之丞役は女形を女性の私がやるという型破りなことへの挑戦だと思っています。宝塚にも通じるところがあるのかもしれませんが、私(女性)の目線があってこそできる雪之丞を出来たらと思っています。」
金「雪之丞は、容姿と情熱はもう申し分ないから、声色をとにかく追求して、女形と男節の振幅の差があればあるほど面白いと思う。あと、男性役の小谷さん、佐野さん、もりちえ、こと美が、カラッと楽しくカッコよく男性役をやってくれるから面白くって、作品に深みが出てると思います。女性が男になるって出来ちゃうんだねって、今回さらに納得しました。それぞれの女性の様を見てるだけでも楽しいよね。」
加藤「カンナさんが稽古場で言われてて思ったんですけど、本当の女性の自立ってどうゆうことなんだろうって、最近私生活でも考えてたりしてて、今回、一人一人の生き方の色が出たらいいなと思うし、お初をパンチのある役にしたくて、金さんの演出についていきながら染まりたいなと思います。」
田上「カンナさんがプレ稽古の時、ぽろっと、『今まで誰もやったことが無いことがやりたい!』って言ってたのが、とても心に刺さって、めちゃめちゃかっこいいなって思って、今の時代に、命がけで恋するってどうゆうことなんだろうと、自分の中で掘り下げながら、金さんのパワーとみんなのパッションに乗っかって、全身全霊で身を投じたいと思います。」
水嶋「アンダーグラウンド宝塚って言ったこともあるんだけど、ニクスでは、辛さとかどん底とかを体現している女性たちが、強く気高く麗しく、美しいパワーを放つようにしたいから、全員が輝いて欲しい。この座組が大好きになったんだけど、終わったらみんな新劇や小劇場に戻っていくと思うけど、、、でもちょいちょいこちらにも遊びに来てください。(笑)」
【公演情報】
2020年3月19日(木)~29日(日) 下北沢 ザ・スズナリ
◆終演後アフタートーク
20日(金)14:00 【小劇場トーク】 加藤忍、高畑こと美、山田勝仁、水嶋カンナ
21日(土)14:00 【新劇女優トーク】 小谷佳加、佐野美幸、田上唯、水嶋カンナ
22日(日)14:00 【雪之丞変化トーク】 宇野亞喜良、白石征、金守珍、水嶋カンナ
25日(水)14:00 【アングラ女優トーク】 もりちえ、佐藤梟、寺田結美、水嶋カンナ