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大ヒット配信RPGゲーム原作とした舞台『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS幻影戦争 THE STAGE』(FFBE幻影戦争)が20242月に幕を開ける。列強に囲まれたリオニスという小国を舞台に、リオニスの王子・モントと双子のシュテルの対立と、親子・仲間との絆を描く本作。モントを演じる吉田仁人(M!LK)とシュテル役の武藤潤(原因は自分にある。)に公演への意気込みや役作りについてなどを聞いた。

 

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――『ファイナルファンタジー』というゲームはご存じでしたか?

 

吉田 有名な作品なのでタイトルはもちろん知っていましたが、あまりゲームをする習慣がなかったので、今回、お話をいただいてすぐにプレイさせていただきました。それが初プレイでした。

 

――初プレイはいかがでしたか?

 

吉田 台本をいただいた後にプレイしたので、また普通のプレイとは違うと思いますが...とにかくモントを自分の分身のように強化しまくって、攻撃力を最大にして、パーティーのリーダーにして遊んでます。

 

武藤 僕もシュテルをめちゃくちゃ強くしてます(笑)。

 

吉田 そうなるよね(笑)。

 

――武藤さんは、ゲームをプレイしたことはありましたか?

 

武藤 僕も普段はあまりゲーム自体しないのですが、『ファイナルファンタジー』に登場するキャラクターのようなビジュアルに憧れていて。髪が白くて長髪で、センター分けにしているセフィロスみたいになりたいと思っていました(笑)。なので、まさか本当に『ファイナルファンタジー』が舞台化されて、その作品に僕が出演できるなんて驚きでした。

 

吉田 本当に驚いたし、嬉しかったよね。

 

――では、台本を読んだ率直な感想を教えてください。

 

吉田 ファンタジーな要素がたくさんある物語ですが、ゲーム自体は戦国時代をモチーフにしているそうです。それを聞いて、なるほどな、やっぱりそうかと。国盗りの話やそれぞれの思惑が交錯する様子が歴史物の雰囲気を感じていたので、すごく合点がいきました。僕は歴史物が大好きなので、演じるのが改めて楽しみになりました。

 

武藤 ファンタジーの世界を描いていますが、人間ドラマでもあると思います。一人ひとりに戦う理由がきちんとあるんですよ。先の展開が読めないということもあり、読み始めたら止まらなかったです。

 

――吉田さんは双子の兄で王子のモント、武藤さんは弟のシュテルを演じます。それぞれの役柄について、今現在はどのように感じていますか?

 

吉田 モントはまっすぐな人間です。ただ、物語の最初と最後では全然雰囲気が違うんですよ。最初はどこにでもいるような普通の兄ですが、様々な出来事を経験し、国を守る王子になっていく。この作品は、そうした成長の物語でもあると思うので、モントに感情移入しながら(台本を)読みました。

 

武藤 シュテルはモントと対立する、いわゆる悪役です。ですが、彼には彼なりの正義があり、過酷な運命に立ち向かっていきます。難しい選択を迫られ、どうにもならない運命を背負って前に進んでいく姿は、この作品の見どころの一つだと思うので、悪役ではありますが、彼の想いが観てくださる方に伝わったらいいなと思います。

 

――ご自身と似ていると思うところはありますか?

 

吉田 僕は、争いごとが好きじゃないので、そこは似ているところだと思います。あとは、周りのサポートなしでは生きていけないところ。モントは周りの人たちの支えがあるから自分がそこにいられることを分かっているし、周りを頼りながらも守っていこうと思っています。そうした気持ちはすごく共感できます。僕もM!LKというグループのリーダーをしているので、似たような境遇にあるのかなと思いました。そういう意味では、モントは演じやすいキャラクターだと思いますが、今回はきっとアクションが過酷だと思うので、そう簡単にはいかないだろうなと。皆さんのお力を借りながら、役を作っていけたらと思います。

 

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武藤 僕が似ていると思うのは、赤色が似合うところかな。

 

吉田 意外なところからきたね(笑)。

 

武藤 それくらいしかない気がします(笑)。あとは...シュテルは剣術に長けているのですが、僕も幼稚園の頃は、木の棒を振り回して遊んでいたので、そんなところは似ているのかもしれません(笑)。

 

――演じる上では、原作のゲームを意識して役を作っていく予定ですか?

 

吉田 もちろんビジュアルの面ではそうしたいと思いますが、内面的なものは僕たちが生で演じることで伝わるものもあるのではないかと考えています。台本をただなぞるだけではなく、それぞれの場面でモントがどんな心の動きをしているのかを考えながら演じたいと思っています。

 

武藤 僕は、この作品に出演できると決まって、まずゲームをプレイしたんですよ。なので、プレイをして感じたことやその時の心の動きを忘れずに演じたいと思っています。お客さまが僕と同じ心の動きができるように、稽古を通して役を作り上げていけたらと思います。

 

――ビジュアル撮影で実際の衣裳を着用したことも役作りの手助けになるのではないかと思いますが、衣裳を着用した感想を教えてください。

 

吉田 モニターで見た自分は僕ではありませんでした(笑)。メイクも服も鎧もまさに原作通りのクオリティーで驚きましたし、モントをしっかり演じ、この作品の世界観を表現しなければと改めて思いました。

 

武藤 (シュテルの衣裳を着用したら)とにかく強そうに見えました。僕はこれまで殺陣をやったことがないので、強そうに見えるように稽古しなくてはと引き締まる思いでした。でも、すごく素敵な衣裳だったので、この公演が終わったらもらえないか相談しようかなと(笑)。

 

吉田 再演したいから、あげないよ(笑)。でも、もし、もらったら着るの?

 

武藤 いや、飾っておきたいです(笑)。

 

――再演のために衣裳は取っておきましょう(笑)。そして、今、お言葉にもあった通り、本作はやはりアクションシーンも見どころの一つだと思います。お二人とも殺陣は初めての挑戦と聞いていますが、今、準備していることはありますか?

 

吉田 殺陣は初めてですが、合気道を習っていた時に、剣術も合わせて習っていたので、その動きや型を思い出してできたらと思っています。合気道の基礎を応用したのが剣術なんですよ。なので、きっと役に立つのではないかなと。それから、ダンスがアクションに生きたらいいなとは思っています。でも、本当に日頃からの体力づくりが大切ですよね。魅せられるカッコいい型で、かつそこにエネルギーを感じられるように、毎公演、フルパワーでいけたらいいなと思います。

 

武藤 僕は空手を10年くらい習っていました。空手の型が生きるのかは分かりませんが、殺陣も空手も相手とのコミュニケーションだというのは共通するところだと思うので、しっかり相手と息を合わせることを心がけて臨めたらと思っています。

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――今作はゲームが原作ということもあり、映像を駆使したアクションになるのではないかと期待してますが。

 

吉田 そうなんですよ。僕たちもまだどうなるのか分かりませんが、セットはもちろん、映像にもこだわった作品になると聞いているので、すごく楽しみです。その分、芝居の難易度は高そうですが(苦笑)。

 

武藤 大きな羽が生えているキャラクターもいるので、それをどう再現するのかも個人的にはすごく気になります。

 

――ところで、お二人は事務所の先輩・後輩という間柄で、昔からのお知り合いですよね。初めて会ったのはいつ頃なんですか?

 

吉田 かなり前ですね。5年前くらいかな?

 

武藤 だと思います。

 

吉田 お互いに学生服を着てました。

 

武藤 懐かしい!

 

――お互いの印象は?

 

吉田 とにかく明るくて、にこやかで、ずっと変わらない、大好きな後輩です。ずっとこの感じなので、楽しい稽古場になりそうだなと思っています。

 

武藤  "兄貴"です。グループの中でもリーダー的な立ち位置をされているので、今回も引っ張っていってくれるのではないかなと思います。あと、声がカッコいい。先輩でいてくれて、嬉しいです。

 

――今回、吉田さんは主演という立場になりますが、座長としてこの座組みをどのように引っ張っていきたいと考えていますか?

 

吉田 初めて主演をさせていただくので、本当にどうしたらいいか分からないんですよ。主演の方は、カッコよくて、背中で見せるタイプの方が多いように思うので、そうなれるよう頑張りながらも、誰よりもひたむきに、誰よりも一生懸命に、皆さんから応援してもらいたくなるような主演でいられたらといいなと。とにかく一生懸命やるしかないですね。

 

――グループのリーダーとはまた違いますか?

 

吉田 違います。グループは(自分以外のメンバーは)4人だけですし、みんながそれぞれ役割を担っていますから。リーダーといえど、みんなが同じ土俵に立って頑張っている。ですが、舞台の座長はキャリアが長い方も多いですし、自分にはまとめるというのは無理だと思います。なので、愛される座長でありたいです。

 

――武藤さんから見た、吉田さんの座長っぷりはいかがですか?

 

武藤 仁人さんの好きなようにやってくれれば、僕は嬉しいです。それでいいです(笑)。

 

吉田 でも、無理をしたってボロが出るだけだと思うので、分からないときは分からないと素直に質問していこうと思います。

 

――ところで、今作は兄弟の愛や確執を描いていますが、お二人はご兄弟はいらっしゃいますか?

 

武藤 僕は一人っ子です。なので、ずっとお兄ちゃんやお姉ちゃんが欲しかったです。話す相手がいたら楽しいだろうなと思いましたし、服やオモチャをお下がりでもらうことに憧れてました。

 

吉田 僕は6歳下に弟がいますが、年が離れているので、甥っ子のような感覚です(笑)。きっと弟も僕のことをお兄ちゃんではなく、身近な大人だと思っていると思います。なので、全然兄弟感がないと思います。欲しいものがある時だけ、弟感を出してくる(笑)。僕自身もあまり兄っぽいことはしていないように思います。仕事ばっかりしてきたので。最近になってようやく弟はライブにも来るようになりましたが。

 

――でも、弟さんから見たら、実は憧れのお兄ちゃんなのでは?

 

吉田 だといいんですが。悩み相談もたまにされますが、甥っ子と叔父さんという感じが自分ではあります(笑)。

 

武藤 いいですね。そういう話を聞くとうらやましい。

 

――一人っ子とはいえ、武藤さんは末っ子感がありますよね。

 

吉田 うん、あるある。

 

武藤 ありがとうございます(笑)。

 

吉田 人から愛されるキャラですよね。だから、この業界にお兄ちゃんをいっぱい作ればいいんだよ。兄貴肌の人も多いんだから。

 

武藤 そうですね。お兄ちゃん、作ります!

 

――ありがとうございました! 最後に公演への意気込みをお願いします。

 

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吉田 素晴らしいスタッフの方々、キャストの方々が集まっている作品です。初主演を言い訳にせず、しっかりと役と向き合いながら、演じたいと思います。何度も観たいと言っていただけるような、皆さんの記憶に残る良い作品にするために、これから稽古も頑張っていきますので、ぜひ劇場に足をお運びください。お待ちしております!

 

武藤 『FFBE幻影戦争』の世界観を表現した舞台ですが、ゲームをプレイしたことがある方もない方も楽しめる物語になっています。ファンタジーの世界が舞台上に広がります。観たことを後悔しない作品にしたいと思っているので、頑張ります。

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韓国で完売が続く、人間の業を描いた衝撃作『狂炎ソナタ』の日本初演となる公演が22日(金)に開幕する。ジョン・ミナとダミロが脚本・歌詞、ダミロが音楽を手掛けた"スリラーミュージカル"の本作は、2017年に韓国で初演されて以来、上演が重ねられてきた人気作だ。物語は、事故を起こしたことで音楽的インスピレーションを得た天才作曲家が、更なるインスピレーションを得るため、殺人を重ねる姿を描く同名小説がモチーフとなっている。死に触れるたびに素晴らしい楽曲を作るJ役の猪野広樹と、Jを見守る友人・S役の杉江大志に公演への意気込みやそれぞれの役への想いなどを聞いた。

 

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――最初に本作へのオファーを受けた時の心境を教えてください。

 

猪野:僕は2ヶ月くらい悩みました。もちろんやってみたいとは思いましたが、ミュージカルの経験が浅いので、3人だけのミュージカルはいきなりハードルが高いなと思って。

――それでもやろうと思った決め手は何だったんですか?

 

猪野:挑戦したいと思っているのにやらないのは負けだなと。人生1回きりなので、やらないで終わるよりは、やって終わったほうがいいなと思いました。


――なるほど。杉江さんはいかがでしたか?

 

杉江:プロットを読んですぐに面白そうと思ったんですが、やっぱり本格ミュージカルというのを聞いて、一度、寝かせようと(笑)。ちょうど仕事が忙しい時にお話をいただいたので、そんな中で決めてしまったら心が折れそうだなと思い、一度、時間をおいて冷静に考える時間を作ろうと思いました。でも、お話をいただいて面白そうだと思った時点で、やりたいという気持ちは決まっていたんだと思います。僕も悩みましたが、きっと最初から心の奥ではやると決めていたので、あとは「やります」というまでに覚悟を決めるという感じでした。

 

――そうすると、今作はお二人にとって大きな挑戦でもある作品なのですね。今、お稽古をしていて、一番、苦労しているのはどんなところですか?

猪野:歌で時間が進んでいくという作品なので、その時間の進め方ですね。歌う前と歌った後で何が変わっていて、どう音楽の中で進めればいいのか。まだ僕には、それが分かる曲もあれば、分からない曲もある。その整合性がとれた時に成立するのかなと。"ミュージカル脳"とでもいうような部分があって、自分の脳をそっちに切り替えられれば、もっとスムーズに表現できるようになるのかなと思います。

 

杉江:曲が多くて、音楽と共に進んでいく作品なんですよ。僕は、これまでお芝居をやってきて、試行錯誤しながら色々な表現方法で、何がどう刺さるのかを模索してきたのですが、その方法がうまく音楽と当てはまるところもあれば、別の技術が必要なところもたくさんある。そうしたところをどう捕まえていくのかという作業が、面白くもあり、難しく、楽しみながら苦しんでおります。

――物語の冒頭からラストまで常に重たい空気が漂っている作品なので、それを表現するのも大変だろうなと感じましたが、お二人は、最初に脚本を読んだ時にどんな感想を持ちましたか?

杉江:僕はめちゃくちゃ面白かったです。サスペンスやミステリーがあまり好きではないんですが、重たい空気の中にも疾走感があるじゃないですか。観た人によってそれぞれ違う救いもあって、すごく秀逸な本だなと僕は思いました。

 

猪野:かわいそうだなとは思った。

 

杉江:それは僕も思った。

 

――それはJを?

 

猪野:そう、Jです。ここまで追い詰められてしまうのは、側から見ているとすごくかわいそう。好きだったものを楽しめなくなっていって、何かにケツを叩かれて、自分の首を絞めて、苦しんで...という過程がかわいそうだなと思いました。

 

――では、それぞれの役柄については、今はどんなところをポイントにして演じようと考えていますか?

猪野:Jが曲作りに苦悩しているところから物語はスタートするので、その時のJがどう変わっていくのか。"落ちる"と言ってしまっていいのか分からないですが、落ちていく過程をどう見せていくのか。そして、ラストでの姿。そういう流れはなんとなくプランニングできているので、それを表現していきたいですね。

 

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杉江:Sのことは脚本ではあまり細かい描写がないので、つかみどころがない天才なのかなと思っていたのですが、稽古の中でJとしっかりと対峙することでだんだんとSの人間像が見えてきたように思います。Jに"与える"立場のSですが、ストーリーテラーでもあるので、そのバランスも難しいですね。最初に脚本を読んだ時は、Jを演じるのは難しいだろうなと思っていましたが、今は、実はSを演じる方が難しいのかもしれないと感じています。「Jに何を与えながら、Jに何を思うのか」ということを考えながら、Jを中心に全てを突き詰めていったら、自然とSが形作られていくのかなと思います。

 

――今回は、K役の畠中洋さんを含めた3人芝居です。畠中さんが演じるKについては、どう感じていますか?

 

猪野:迫力がありますよ。絶唱しています。立ち稽古になってからよりパワフルになられて、歌でもお芝居でもガッと届けてくれる感覚がありますね。

 

杉江:すごいよね、歌もお芝居も。

猪野:思いがすごく伝わってくるので、Jとしてはより追い詰められて...すごく演じやすいです。気性が荒いKをまっすぐ表現されているので、僕、あるシーンで最初はびっくりしました(笑)。

 

杉江:かっこよかったですよね。

 

猪野:かっこよかった。ぜひ観ていただければ。

 

――杉江さんから見た畠中さんのKは?

 

杉江:稽古初日から完成されていると感じました。もはやKにしか見えないです。それから、歌の中の表現は見習いたい部分や盗みたい部分がたくさんあるのですが、何をどうやって盗んだらいいのかも分からず(苦笑)。とにかく、近くで見て少しでも盗めるように頑張りたいです。畠中さんのKは、僕が脚本を読んでイメージしていたKのままだなと思っています。

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――イメージしていたKとはどんな人物なんですか?

 

杉江:したたかでありながら挑発的でもあって、余裕そうに見せて余裕がない。そんなイメージです。

 

――猪野さんからは、Kはどんな人物に見えていますか?

 

猪野:Kのセリフにもありますが、「名声は対価はなくしては得られない。そのための犠牲ならなんだって厭わない。何を犠牲にしても名声を手に入れる」という野心を持っているのだと思います。けれども、没落しかけている。没落しそうな崖っぷちに立っていて、焦りがあるのかなと。その焦りが狂気に変わっていって、使えるものは使おうとしている。そうまでしても名声が欲しい人だと思います。ただ、僕が演じるJから見れば、偉大な先生なんだと思います。JはKの裏の顔を知らずに、純粋にすごい先生だと思って尊敬している。ただ、どこかにヴァイオレンスさも感じていて、その恐怖を感じているのだろうなと思います。

 

――ところで、これまでも共演経験の多いお二人ですが、今回じっくりとお互いに向き合ってお芝居をしていく中でお互いの印象が変わったということはありましたか?

杉江:印象は特に変わってないかな。でも、顔を突き合わせてお芝居したいなと思っていたので、それが叶って嬉しいです。

――杉江さんから見た俳優・猪野広樹の魅力は?

 

猪野:それ、俺がいないところでやって欲しい(笑)

 

杉江:あはは。俳優としての魅力か。芝居が好きなところかな。あとはお芝居に真摯なところ。猪野ちゃんという人自体は、なんでもサラッとこなしてしまいそうな器用さや強さを感じさせますが、芝居は繊細で、芝居だけはサラッとやらない印象があります。特に今回は、じっくり向き合っているなというのを感じますし、そこが役者としての一番の魅力なんじゃないかなと思います。

 

――猪野さんから見た杉江さんは?

 

猪野:大志は頭がいい。考えるタイプなんで、どうやったらいいんだろう、なんでだろうときちんと考えて、自分の答えを持ってきてくれる役者さん。あとは、目が魅力的。目で伝えようとしてくれるので、それは一緒に芝居をする時にもありがたいですし、伝わりやすいんだと思います。

――今回の共演で知った杉江さんの新たな一面はありましたか?

 

猪野:そんなにも真摯なの? と思いました(笑)。大志が僕のことをサラッとやると思ったと言ってましたが、僕も同じような印象を持っていたんですよ(笑)。サラッと芝居をするタイプかなと。でも、実際にこうしてやってみたら、ガチガチに向き合ってる。だから、すごく楽しいです。一緒にやっていて。

 

杉江:意外と同じ印象だよね、同い年だし。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

 

猪野:僕は好きです。(演出の渡邉)さつきさん、畠中さんを含めて、少人数で作り上げる芝居なので、3時間、4時間稽古をすると全員がぐったりしちゃう(笑)。そのほかにももちろん、歌稽古をしたり、ピアノの練習をしたりもあるんですが、すごく集中してやれるし、お互いにディスカッションをする時間も設けられているので、その時間が僕はすごく楽しいです。やっぱり人数が少ないので、共通認識を取りやすいんです。

 

杉江:確かにね。3人しかいないから、知らないところで話が進んでいるということもないですし、3人芝居は楽しいですね。

 

――最後に、改めて本作の見どころと公演への意気込みをお願いいたします。

 

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杉江:タイトルや作品の雰囲気から、骨太そうだなとか、重いお話なんじゃないかと感じているお客さまも多いかなと思います。もちろん骨太な作品ですし、"死"が付きまとっている話ではありますが、それよりは3人がそれぞれに見ている光や3人が合わさった時に見える光の美しさ、儚さがこの作品の魅力だと感じています。畠中さんの歌を聞きに来るだけでも十分価値がある公演だと思いますし、猪野ちゃんの歌、僕たちが畠中さんとどう絡むのかも見どころです。何度も観ていただけるような作品にできるよう頑張ります。

猪野:全体を通してバイオレンスさの漂う作品ですが、メロディーによって美しく見えることを目指したいと思います。個人的には音楽家という役も正気でいられなくなる役も殺人鬼も初めてです。僕はまだ「こうしたい、ああしたい、でもどうすればいいんだろう」と稽古の中で試行錯誤している段階にいますが、稽古を通してより深めていきたいです。きっと満足度の高い作品になると思います。

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「音楽劇『不思議な国のエロス』 ~アリストパネス『女の平和』より~」が2月16日から25日まで東京・新国立劇場 小劇場で上演される。

本作は古代ギリシャの劇作家アリストパネスの「女の平和」をベースに1965年に寺山修司が執筆した戯曲で、寺山ならではのユニークな視点を加え描いた音楽劇となっている。今回の上演では、文学座の稲葉賀恵が演出を手がける。

舞台はアテナイの都。戦争を終わらせる能力がない男たちに愛想を尽かし、戦争をやめさせるためのセックスストライキを始める女たちを中心に、反戦と平和への願い、ジェンダーの概念を覆す挑戦的な視点で描かれた本作において、戦争を止めるために集結したアテネの女たちのリーダー・ヘレネーを演じるのは文学座の松岡依都美、物語の案内人・ナルシスは朝海ひかるが務める。

 

本作へ挑む思いを、出演者の松岡と朝海に聞いた。

 

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今まで抱いていた寺山の印象と違う作品

 

──松岡さんも朝海さんも寺山作品は初挑戦だそうですが、戯曲を読んだ感想はいかがでしたか。

 

松岡 詩的な言葉が散りばめられている作品なのですが、その中にもどこか皮肉っぽいというか、世間に対して「これでいいのか」と問いを突き付けるような言葉がいっぱいあって、それはすごく寺山さんらしいところなのかな、と思いました。今は寺山さんのことを勉強しながら戯曲と向き合っているところで、寺山さんのことをより知ってから改めて戯曲と向き合ってみると、初めに読んだ印象ともまたちょっと変わってくる部分もあって、それがとても不思議だし面白いなと感じています。

 

朝海 寺山作品に対しては、ゴタゴタした人間関係が美しい日本語で書かれている、という印象があったのですが、本作を読んでみたら「あれ、寺山さんってこういう色だったっけ?」と思うようなポップさがあって歯切れがいいなと感じて、今まで抱いていた寺山さんの印象と違うな、と思いました。寺山さんに「何か難しそう」という印象を抱いていた人にも入りやすい作品なんじゃないかなと思います。

 

──松岡さんが演じるヘレネーはどのような役なのでしょうか。

 

松岡 戦争を止めるためにセックスストライキを掲げて徒党を組んだ女たちのリーダーで、平和をとことん求めていくという役どころです。ギリシャ神話に描かれているヘレネーは、女性の象徴であったり、トロイア戦争を起こした元凶の悪女みたいなイメージが強いと思うのですが、本作ではそういったイメージとはまたちょっと違った角度からのヘレネー像が描かれてるような気がしています。彼女が持っている強さと、その裏で実は抱えている孤独も見えるんじゃないかなと思っていて、そのあたりを稽古の中でどういうふうに構築していけるのか、楽しみにしている部分でもあります。

 

──朝海さん演じるナルシスは「せむし男」だと聞いて驚きました。

 

朝海 ナルシスは本作の案内役を担っているので、稲葉さんは「ドローンのような存在で」とおっしゃっていました。お客様に「これは自分たちの物語でもあるんだな」と思っていただけるように、うまく橋渡しをする存在になれればいいのかなと思います。なぜ寺山さんはナルシスをせむし男にしたのか、というところからまずは考えていって、私が演じることによってどんなプラスアルファがあるだろうか、というところを模索していきたいです。

 

音楽の持つ力で大きな波を起こせる

 

──演出の稲葉さんに抱いている印象を教えてください。

 

松岡 私は稲葉と同じ劇団ですが、演出を受けるのは今回が初めてなんです。稲葉の作品を見ていると、内容をストレートに表現するというよりも、いろんなうねりを効かせているような印象があります。それによって生じる"歪み"の中にものすごい鋭さがあったりするところが私はとても好きです。今作を稲葉が演出するということで、もちろん寺山さんの書かれたベースを大切にしながら、それを彼女らしい色に変えていってくれると思うので、そこにすごく期待しています。

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朝海 稲葉さんとは『サロメ奇譚』という作品で一度ご一緒しているのですが、本当に一つひとつのことを役者が納得いくまで付き合ってくださって、導くというよりもお互い膝突き合わせて考えて、役者がちゃんと腑に落ちるところを一緒に探してくださるし、それが見つかるまで絶対にあきらめないでいてくれるところが、とても信頼できる演出家さんだな、と思いました。だから、今回またお声をかけてくださってありがたかったですし、今回も稲葉さんについて行こう、ついて行けば大丈夫! と思っています。

 

──今回は音楽劇ということで、お2人のどんな歌が聞けるのか楽しみです。

 

松岡 私は音楽劇への出演が初めてなので、大丈夫かな、という不安も正直あります(笑)。でも、音楽の持つ力というのはすごく大きいですよね。お芝居にプラスして歌が入ってくると、すごく大きな波を起こせるようなイメージがあります。

 

朝海 言葉とは違う音楽の力というものはありますよね。旋律で感情を揺さぶられちゃうこともいっぱいありますし、ストレートプレイとはまた違う魅力だなと思います。ミュージカルの場合は日本語を歌にのせることがなかなか難しいところがありますが、今回は寺山さんが書いた日本語の音楽劇だということはすごく重要なことだと思います。海外物のミュージカルとはまた全然違う印象を受けるんじゃないでしょうか。

 

──松岡さんは文学座所属、朝海さんは宝塚出身、そして他の出演者も様々なフィールドで活躍されている方々が集まっていて、バラエティ豊かなメンバーが顔をそろえました。

 

朝海 本当に、素晴らしいメンバーを揃えていただいて感謝ですね。

 

松岡 私は初めましての方が多いんですが、花瀬琴音ちゃんは彼女が主演した『遠いところ』という映画で、まりゑちゃんは映画『万引き家族』で共演しました。

 

朝海 私は、占部房子さんとは『M.バタフライ』で、伊藤壮太郎くんは『サロメ奇譚』で、内海啓貴くんは『アナスタシア』で共演しています。個人的には、ミュージカル界の大先輩といいますか、宝塚在団中から舞台で拝見していた北村岳子さんとご一緒できることがとても感慨深いといいますか、とにかく嬉しいですね。

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──この作品を楽しみにしているお客様へのメッセージをお願いいたします。

 

松岡 こんなに豪華なメンバーが集まった音楽劇なので、どんな化学反応が起こるのかを楽しみにして欲しいですし、2024年の2月という今のこの時代にやる意味は絶対ある作品だと思います。とはいえ、肩肘張らずに劇場に足を運んでもらえたらと思います。

 

朝海 このお話は紀元前のお話しなので、その頃の人たちは何を考えていたのかな? とのぞきに来るだけでも、とても有意義な時間になると思いますし、有意義な時間にしていただけるように私たちも精一杯頑張りますので、ぜひ見に来ていただければ嬉しいです。

 

取材・文:久田絢子

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20239月にニューヨークで、日本を代表する若手の和楽器奏者陣と現地オーケストラとのコラボによる「オーケストラ響(ひびき)」公演を成功させた川井郁子。

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自身が奏でる"情熱のヴァイオリン"と日本人の根底に流れる邦楽器の音色(篠笛・尺八・箏・琵琶・笙・篳篥)を融合した、国境やジャンルの垣根を越えた音楽性はデビュー当時からの彼女のテーマであり、同公演はその集大成であった。

現在、大阪を皮切りにレギュラーである和楽器奏者チームと管弦楽団を共演させた「NY公演凱旋記念コンサート」ツアーが進行中だが、最新の映像技術を駆使して葛飾北斎の浮世絵や桜、能、ダンサーなどのダイナミックな立体映像が、音楽と一体になって壮大なロマンを描き出すステージは各地で大きな話題を呼んでいる。

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2016年の日本初演から"劇場で楽しむクリスマス"として、渋谷の冬の風物詩となっている

『ブロードウェイ クリスマス・ワンダーランド』
2023年12月16日(土)から、東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)で開幕する。

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なお、2016年の日本初演から続く演出での上演は今年が最後となる。

初日を前にした15日(金)、ゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われた。

その様子を写真とともにお伝えしよう。

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フランス各地でロングランを続ける「Fallait pas le dire」。この度、六本木トリコロールシアターにて『Fallait pas le dire~『それを言っちゃお終い』ストレートプレーとして、12月7日(木)~12月17日(日)まで上演される。
出演には元宝塚歌劇団の綾 凰華、テレビ・映画・舞台と幅広く活躍する天宮 良、そして「RENT」『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』と大型作品への出演も続く百名ヒロキと実力派キャストが揃った。
まもなく初日を迎える本作の稽古場より、各キャストからコメントが到着した。

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綾 凰華

(1)自身が演じる登場人物の印象、演じていて楽しいこと、難しい部分などがあれば教えてください。
同一の人物をキャスト3名で演じ分けて行くのですが、各場面が進むにつれてその人物像がより鮮やかに描かれていきます。
ちょっとした話し方や受け答えの仕方で、この男女の性格が見えて行くのも面白いですし、なんでこの2人が一緒にいるんだろう?と思わなくもないけど、でも大切な存在として繋がっている。
正反対にも見える2人の男女が寄り添って生きている姿を描ければと思います。

(2)フランス現代劇として本国ではロングラン上演もされている本作ですが、出演者の皆様が感じる戯曲の面白さや、見どころを教えてください。
フランスジョークと言いますか、ちょっとした含みのある皮肉の言い合いとか、とにかく言葉の巧みさが面白いです。
テンポや、感情の起伏の塩梅もとても絶妙で、スタート地点の気持ちの沸点が違えば同じ芝居でも毎回違う感情が湧き起こったり、まさに二度の同じ芝居はできない感覚です!

(3)来場されるお客様へのメッセージをお願いいたします。
12月となり、今年も残り僅か。冬の匂いの中でほっこりして頂けるようなそんな時間をご一緒できればと思います。
ぜひ劇場でお待ち致しております。

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天宮 良
(1)自身が演じる登場人物の印象、演じていて楽しいこと、難しい部分などがあれば教えてください。
彼と彼女の両方を演じるので、そこは凄く楽しいですね。
前の景では男で攻めていたと思ったら、次の景では女になって逆に攻めていたり。色々シュチュエーションが変わるので、役者として演じていてとても楽しいです。
そして女性をやる時は、どこか綾さんに寄せてやっているので、ただ女性をやれば良いということではないと思っているので、そこはなかなか難しいです......。

(2)フランス現代劇として本国ではロングラン上演もされている本作ですが、出演者の皆様が感じる戯曲の面白さや、見どころを教えてください。
コメディーといっても色々ありますが、やはりフランスコメディーという点。日本のコメディーとは違った粋なやり取りや、ストレートな表現等、大人なコメディーという感が強いので、とても新鮮です。
なかなかセクシーなネタもありますが、やはりそこは非常にセンスが良くいやらしくなく書かれているのが、フランスだなぁ~とも感じています。

(3)来場されるお客様へのメッセージをお願いいたします。
師走の慌しい時期ですが、劇場でちょっと小粋なコメディーで心温まっていただけたらと思います。
是非劇場でお待ちしています。

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百名ヒロキ
(1)自身が演じる登場人物の印象、演じていて楽しいこと、難しい部分などがあれば教えてください。
彼も彼女もどちらも行ったり来たりしながら演じたりでノンストップのほぼ二人芝居の連続がスリリングで楽しいです。
難しいのはフランスの題材なのでフランス人の価値観、感覚から来る台詞の読み解きやお客さんにちゃんと意味が伝わるかどうかが難しい所です。

(2)フランス現代劇として本国ではロングラン上演もされている本作ですが、出演者の皆様が感じる戯曲の面白さや、見どころを教えてください。
フランスのお国柄が思う存分に現れていてるこの作品を日本語に訳した事自体が挑戦だと思います。
それを日本で上演しようと思うのはもっと挑戦だと思いました。これからも色んなキャストさんで紡がれていく作品だと思います。
今回だけの色をお楽しみくださいませ。

(3)来場されるお客様へのメッセージをお願いいたします。
六本木のど真ん中で行われるこの作品。限られた時間の中、良い演劇を作ろうと出演者そして演出家と四人で藻搔いています、怒涛の4、5分の短編の連続をお楽しみに!


公演は12月7日(木)~12月17日(日)まで六本木トリコロールシアターにて。チケットは発売中。

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2023年12月7日より有楽町よみうりホールにて上演される
オリジナル・ミュージカル「The Agent」

"アツい"稽古場の様子とTETSUHARUさん、屋良朝幸さんから見どころを含めたメッセージが届きました!

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企画・演出・上演台本]TETSUHARU コメント

屋良君と一緒にやるのは4年ぶりになります。『THE CIRCUS!』シリーズと謳っていますが、新作ということで気合いを入れ、前回を踏襲しつつ、パワーアップしたものをお届けできたらなと思います。稽古は佳境ですが、熱の入った稽古をしています。

レンとザックのナンバーは、今回の見どころの1つでして、個人的にも創作していてテンションの上がった大好きな楽曲です。

まだまだ発展途上の中でのお披露目となりますが、現時点での最高のパフォーマンスをお見せできたらと思います。

[主演]屋良朝幸 コメント

すでに汗だくで(リハーサルを終えて)、それぐらい激しいアクション・ダンスの作品です。

踊り闘うのがTETSUHARUワールドの魅力なので、『THE CIRCUS!』シリーズを観た事がない人も最高のエンターテインメントを楽しみにしていただけたらと思います。よろしくお願いいたします!

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_OK_0105.jpg_OKX_0385_.jpg(撮影:岡千里)

~公演情報~

12月7日(木)~12月24日(日) 有楽町よみうりホール(東京都)

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公式サイト

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2023年11月10日(金)~11月12日(日)にてドラマ・リーディング『庭の木と四つの物語』夏~『ベティ・ド・ラ・ポンシュ』~そして...秋~『トレアドール』~が東京都・六本木トリコロールシアターにて上演される。

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ウォルター・マッソーとイングリッド・バーグマン主演のハリウッド映画「サボテンの花」の原作としても知られるバリエetグレディの恋愛コメディ。四季折々の物語の中から、今回は夏と秋を上演する。主演を務める綾凰華富本惣昭と、演出の白樹栞にインタビューを行った。

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(綾凰華)

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(富本惣昭)

――まずは台本を読んだ印象を教えてください。
綾:「夏」と「秋」で物語の印象が全然違っていて楽しみです。私が演じる女性は、「夏」の方が年上だけど性格的には若くて、「秋」はもう少し若いけど人生に疲れている。その違いが面白いと思いますね。
富本:フランスの戯曲感が強い作品だと感じました。口調もそうだし、庭付きの瀟洒な館を買おうとする人たちも貴族やお金持ちが多い。その人たちの価値観に合わせて作っていけたらと思います。

――演出について、現時点での構想やこだわりを教えてください。
白樹:私は2019年に野坂実さんの演出で渡辺裕之さんと一緒にこの作品を演じたんです。本当にいい作品で、再演したいという話をずっとしていました。面白いのは、春夏秋冬をなるべく少人数のキャストで演じるようにという注釈があるところ。今回、周囲から「一番詳しいあなたがやったら」と言われて演出を手がけることになりました。朗読劇ですが、立って歩き回りながらやっていく作品になると思う。演出補の方にアイデアを話したらすごく面白がってくれています。

――綾さんはミュージカルへのご出演が多いと思います。少人数の会話劇の面白さはどこに感じますか?
綾:普通のお芝居よりも言葉の力でお客様を惹きつけないといけないので、そこを大事にしたいと思います。1人で台本を読んでいる時点ではわからない部分も多いので、皆さんと合わせた時にどうなるか楽しみです。

――富本さんは『ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚』などでフランス戯曲の経験があります。日本の作品との違いはどこでしょう。
富本:まずジョークの質の違いがあります。それこそ『ル・ゲィ・マリアージュ』はコメディだったので、フランスのジョークについていけるかが最初の問題でした。あとは、台本を読んでいて、フランス人って積極的で情熱的だし、行動力もすごいと思います。

――演じるのが楽しみなキャラクターはいますか?
富本:冒頭の運送屋さんですね。
白樹:「春」はやらないから、その役はないですよ。
富本:えっ! 台本全部読んじゃった!
一同:(笑)。
綾:それぞれの人生が見える会話を繰り広げていて、「私の人生ってこの鞄と一緒なのよ。何が出てくるかわからない」みたいなセリフがあったりする。ホロっとくるシーンがあるのも面白いので、大事に演じたいと思います。

――演出・プロデュースを務める白樹さんから期待することはなんですか。
白樹:一番は綾さんが演じるベティとイレーヌ。キャラクターが正反対なので、どれだけ違いを見せてくれるかは、ファンの方も楽しみな部分だと思います。大ベテランのスターさんなので、逆に好きなように演じていただきたいです。(富本は)元々上手だったお芝居もさらに上手になっていると感じます。今回は女性を騙す悪い男の役。どんな姿を見せてくれるか楽しみです。

――小劇場の魅力はどんな部分に感じますか?
綾:距離が近いぶんちょっとした動きで心の機微も伝わると思います。大劇場は目一杯両手を広げてお芝居をしていましたが、違いを意識しておかないとチグハグになってしまうので稽古中から気をつけたいですね。
富本:お客様との距離が近くて、一緒に舞台を作っている感覚が強いし、集中して見てくださっている空気も伝わってきます。本番ではお客様も含めた全員で1つの作品を作っていきたいです。

――最後に、まとめのコメントをお願いします。
富本:悩んでいる女性が主人公で、どんな形であれ最後は悩みを解消して前を向いていける作品なのかなと思います。フランス人の情熱的な行動力、積極性は日本人も見習うべきところがあるのかなと思うので、そういった部分にも注目していただけたら嬉しいです。
綾:フランス文学らしい面白さがありつつ、人生における様々な寂しさやそれを埋めようとするもどかしさなどが詰まっています。共感できる部分もある素敵なお話。今まで以上に近い距離感でもあるので、悩んでいる方がいたら来ていただけたら。上演1時間半と短めで、忙しい方も来やすいと思います。
白樹:綾さんの言う通り、大人の女性の中にある様々な感情にオーバーラップする作品。国に関係なく共感するシーンがたくさんあると思うし、セリフのオシャレさ、皮肉っぽいユーモアや風刺も満載です。何度見ても新たな発見があるので、何回でも見ていただきたい。六本木トリコロールシアターのレパートリーの1つにしていけたらいいなと思っています。

取材・文:吉田沙奈

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「未婚の女」公演レポート

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『未婚の女』1撮影阿部章仁.jpg

能舞台でドイツ劇を上演すると聞いて、一体どんな感じになるのだろう?日本に翻案したりするのかな?と思っていたが、良い意味で裏切られた。

能舞台の正面奥に3つの椅子とナチスヒトラーの軍服が置かれ、真ん中には電球が吊るされている。正面の鏡板には能舞台ならではの松の木。橋掛かりからするすると登場する女たち。暗闇、呼吸音、電球の灯り......厳かな雰囲気のなか、祖母マリアの語りから芝居は始まるが、現代を生きる孫娘ウルリケが登場すると様子は一転。無防備な男の裸をスマホで撮るのが癖(?)という、今時な女子だ。ある日、母イングリッドはマリアが部屋で倒れているのを見つける。入院したマリアをウルリケが見舞うと、マリアは自分の秘密を書いたノートがあることを告げる。ウルリケはそのノートを読み、96歳の祖母の辛い過去を知ることになる......。

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物語は現代と過去を行き来しながら何層にも展開し、時には祖母、母、娘が重なるところが面白い。三世代のつながりと愛憎、そんな彼女らの生き方に実は影を落としている祖母の事件......。祖母マリアと孫娘ウルリケは普通に仲が良さそうだが、母イングリッドとはどちらもギクシャクしている感がとてもリアル。コロス4人は能舞台の四隅にいて、様々な役を演じる。上はタキシードで、下はボリューミーなチュールのドレス。おしゃれでエッジが効いた衣裳だが、この役が「四姉妹」と呼ばれると後から知ってほう!となった(性別云々言うのは野暮だが、男優が演じていた)。

終戦直前の19454月、ある若い兵士が密告によって射殺された事件があったという(実話だとか)。ただ素直に規則に従っただけなのに、戦争が終わり立場が逆転したために、政治犯となってしまう不条理。個人的には最近、アウシュビッツで働いていた人の後悔はしていないという話を聞いて、考えるところも多かった。表と裏、正義と悪、加害者と被害者がいともたやすくひっくり返る戦争の恐ろしさ。ドイツには今なお、戦争時に親ナチスだったかどうか(そして今も)、そんな見極めが燻っていると言われる。日本だって、決して人ごとではないのだろう、とも。

夏川椎菜がウルリケをいきいきと、説得力たっぷりに好演。イングリッド役の宮村優子は緩急自在な演技で観客を惹きつける。山村美智がマリアとして芝居をビシッと締めた。そして西川裕一の音楽が物語をより濃く彩っている。

マリアの心の拠り所として、松の木が効果的に使われているのが印象的だ。能舞台での松の木は神仏が現れる際の形代、そう考えるとこの物語が能舞台で上演された意味がわかる気がした。

 

取材・文:三浦真紀

写真  :阿部章仁

~~公演概要~~
【京都公演】2023年10月18日(水)~10月22日(日) 銕仙会能楽研修所
【原案・原作】エーヴァルト・パルメツホーファー【翻訳】大川珠季

【出演】夏川椎菜 / サヘル・ローズ / 山村美智 / 有川マコト / 宮地大介 / 小田龍哉 / 神農直隆

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名作から珍品まで。空腹注意の"うまい"落語会

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9月14日に予定しております

「文春らくご噺で味わう江戸グルメ」。

屋台育ちの江戸前の四天王、"食"をテーマにした落語会です。
誰もが思いつきそうで実は過去にほとんど例がないこの企画。その理由は当日明らかに!
本公演を企画した演芸評論家・長井好弘さんよりコメントが届きました。

                      文・長井好弘(演芸評論家)

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