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甲斐翔真のミュージカルコンサート「KAI SHOUMA MUSICAL CONCERT on Christmas Day 2021 Featuring MAAYA KIHO and HIRAMA SOICHI」が12月25日、有楽町・オルタナティブシアターで開催された。甲斐は2016年『仮面ライダーエグゼイド』のパラド/仮面ライダーパラドクス役で注目され、2020年には『デスノート THE MUSICAL』の主役・夜神月役で華々しくミュージカルデビュー。以降『RENT』ロジャー役、『ロミオ&ジュリエット』ロミオ役など、若手俳優なら誰もが憧れる大役を次々と演じてきているミュージカル界期待の新星だ。ゲストに真彩希帆平間壮一という先輩俳優ふたりを迎えた、甲斐にとって初のこの単独ライブの模様をレポートする。

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開催日はクリスマス当日。静寂の中登場した平間の「クリスマスに始める......」というひと言から始まるオープニング。これは物語がクリスマス・イブに始まるミュージカル『RENT』の冒頭を模したもの。甲斐と平間は2020年11月に『RENT』で親友役として共演、だがこの作品は公演期間中盤に新型コロナウイルスの影響で突如中止となり、そのまま再開は叶わなかった。おそらく公演を観ることができなかったファンも多くいただろう。そんなファンの思いを昇華させるかのように『RENT』のオープニング「Tune Up #1~RENT」を平間とともに熱唱。その選曲からすでに甲斐のミュージカルへの、そしてファンへの愛が感じられる。これはファンにとっては嬉しいクリスマスプレゼントだ。

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直後のMCで少し興奮気味に「絶対に(このコンサートは)この言葉から始めたかった」「1年越しで『RENT』をお届けできた」と語り、笑顔を見せる甲斐。そして自身がミュージカル俳優という道を進むにあたり大きな影響を受けたふたつの存在、世界的ミュージカル俳優ラミン・カリムルーと韓国ミュージカルへの思いを話し、韓国ミュージカル『マタ・ハリ』『フランケンシュタイン』の楽曲に加え、韓国で絶大な人気を誇るブロードウェイミュージカル『ジキル&ハイド』の「時が来た」を韓国語で歌唱。さらにラミン・カリムルーの代表作『ラブ・ネバー・ダイ』の「'Til I Hear You Sing」を英語で披露。ミュージカル界屈指のビッグナンバーの数々を堂々と歌い上げ、観客を魅了した。

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続くコーナーでは甲斐がこれまでに出演した作品『デスノート THE MUSICAL』『RENT』『マリー・アントワネット』『ロミオ&ジュリエット』からのナンバーを感情豊かに聴かせたかと思えば、現在映画も公開中の『ディア・エヴァン・ハンセン』のナンバーなど多彩な楽曲を歌っていく。甲斐の出演作以外の楽曲はどうやら本人セレクトらしく、いずれも曲紹介で「この曲を初めて聴いた時に、絶対歌いたいと思った」という思いを語っており、途中で「僕、どの曲にも同じこと(動機)言ってますね......」と苦笑していたが、それだけ甲斐の各作品、各楽曲へ対する熱い思いが伝わってくる。実際、1曲1曲を丁寧に歌う姿が好印象だ。

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ゲストのふたりも、真彩が「スィンク・オブ・ミー」(オペラ座の怪人)で美しいソプラノを聴かせ、平間が次回出演作『The View Upstairs -君が見た、あの日-』の劇中歌「The Future is Great」を一足早く披露するなどソロナンバーで魅了すると同時に、甲斐とのデュエットナンバーでも息のあったところを見せる。

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中でも甲斐の夜神月に対し平間がLのパートを歌った「ヤツの中へ」(デスノート THE MUSICAL)、甲斐&真彩で歌った大ヒット映画『グレイテスト・ショーマン』のデュエット曲「Rewrite The Stars」などはこの日限りであるのがもったいないほどの印象深さ。真彩と平間は少し緊張気味の甲斐をトークでも和ませ、「せっかくクリスマスなんだから」とクリスマスエピソードを甲斐にふってみたりと(ちなみにサンタクロースの存在は甲斐さんは小学校3年生くらいまで、平間さんは中学生の頃まで信じていたそう)、この日のライブを盛り上げていた。

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後半では、先日まで主演していた『October Sky』の楽曲に加え、来年3月に出演が控えている『ネクスト・トゥ・ノーマル』のナンバーも早くも披露。甲斐のミュージカル俳優としてのこれまでを、そしてこれからの未来をも詰め込んだかのようなコンサートになった。2020年1月のミュージカルデビューからわずか2年弱、出演作は5作。まだまだフレッシュ、「これから」を感じさせる伸びやかな魅力がありながらも、ロックナンバーからポップス、クラシカルで重厚なナンバーと多彩な楽曲を歌いこなした甲斐。何より、誠実な人柄と溢れんばかりのミュージカル愛が伝わり、この人は今後、貪欲にミュージカルに対し熱を注ぎ、どんどん成長していくのだろうと感じる。今後の甲斐の未来を頼もしく思うと同時に、これから歩む道に幸いあれと祝福を送りたくなる、輝かしいコンサートだった。

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取材・文:平野祥恵

ミュージカル「リトルプリンス」稽古場レポート

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ミュージカル『リトルプリンス』が、18()より東京・シアタークリエにて上演される。サン=テグジュペリの『星の王子さま』を原作に、音楽座ミュージカルが1993年に初演して以降、上演を重ねている人気作だ。今回、演出を手掛けるのは、近年『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』『マドモアゼル・モーツァルト』と音楽座ミュージカルのリメイクを次々と手掛けている小林香。主人公の王子を加藤梨里香と土居裕子がWキャストで演じ、飛行士/キツネ役を井上芳雄、ヘビ役を大野幸人、花役を花總まりが務めるという豪華配役で新たに生まれ変わる名作に注目が集まっている。この稽古場を取材した。

この日の稽古メニューは、最初から最後のシーンまでを通す"荒通し"。初めて全シーンを繋げるということで、演出の小林より「目的は流れの確認です。何か危険だなと思ったら止めてください。ケガをしないように」と注意喚起があったのち、スタート。冒頭は井上芳雄扮する飛行士が嵐の中、飛行機を飛ばそうとする場面だ。この物語、本筋は原作の『星の王子さま』から大きく乖離しないが、ところどころ、飛行士の背景に作者のサン=テグジュペリの人生をオーバーラップさせることで、ファンタジックな世界と現実世界をリンクさせる。井上の演じる飛行士は少し厭世的な雰囲気も漂い、この人の抱える悲しみの元は一体何なんだろう? ......と、冒頭から心を掴まれてしまう。

飛行機は砂漠に不時着し、飛行士はそこでひとりの不思議な少年――王子と出会う。王子は子どもらしい純粋さで飛行士を質問攻めにし、絵をねだり、自分の星の話を語り、飛行士を戸惑わせる。取材日の王子役は加藤梨里香。Wキャストのもうひとりの王子・土居裕子は本作の初演でも王子役を務め、そのオリジナルキャストである土居がふたたび王子を演じるということで話題だが、加藤もまだ23歳ながら子役時代から数えキャリアは十分、2016年にはミュージカル『花より男子』で3000人以上の中からオーディションで主人公・牧野つくし役を勝ち取ったスター性と実力の持ち主だ。加藤は目を輝かせて自分の星のことを語ったかと思えば目をまんまるにして驚き、次の瞬間にはこぼれる笑顔を見せる。マスク越しであることすら気にならなくなってしまうほどの、表情の豊かさだ。何よりボーイソプラノのように透き通った健康的な歌声は、王子の純粋さにぴったり。加藤、実は生まれながらの"星の王子さま"なのでは......!? と思ってしまうほどの天然王子っぷり!

王子は飛行士に、これまでにめぐってきた星での出来事を語る。それらをダイナミックなダンスで繋いでいくことで、オムニバスのように語られるエピソードの数々が、王子の旅路という大きな流れにまとめられていく。星々で出会った人々もユニークだ。王様、実業家、呑み助、うぬぼれ屋、点灯夫、地理学者といったキャラクターを演じるのは縄田晋、木暮真一郎、桜咲彩花。童話的でユーモラスな役どころを彼らがめまぐるしく演じていくさまは楽しく、ミュージカルとして盛り上がるポイント。黄花役の加藤さや香の美しいダンスも印象的だ。

さらに王子が星を飛び出る、そして星に帰りたいと思う原動力となる花を演じる花總まりが絶品だ。王子の星に咲いた、たった一輪の美しい花。花總の花は、ワガママだけれど高貴で品があり、まさに"唯一の存在"。そのワガママも、王子の気を引きたいという感情が伝わり、憎めないのだ。花の世話を真剣な表情で懸命にする加藤の王子の可愛らしさも相まって、忘れがたいシーンになりそう。また、妖しい魅力としなやかなダンスで異質の存在感を出していたヘビ役の大野幸人も、インパクト大。井上が二役で演じるキツネも忘れてはいけない。キツネは作中の非常に有名なフレーズ「大切なものは、目には見えないんだよ」という言葉を口にし、また王子に"自分にとっての特別"を気付かせる重要な存在だ。井上の、小道具も巧みに使って演じる芸達者ぶりはさすがで、共演者たちからも笑い声があがる。だがキツネはちょっと今までの井上にはない意外なキャラクターにもなりそうなので、お楽しみに。

宇宙への憧れを歌う『アストラル・ジャーニー』、自分の星への思いを歌う『シャイニング・スター』など、作品を彩る音楽も美しく、心にすっと届くものばかり。王子は星々をめぐり、地球の砂漠で飛行士と旅をする中で、自分の花がほかの花たちとは違う、ただ一輪の花だったことに気付く。同時に、キツネがほかの多くのキツネたちとは違うただ一匹のキツネになり、飛行士は大勢の人間の中のひとりではなく"友だち"になる。それは飛行士にとっても同じで、王子は飛行士にとっての希望となる。"誰か"が、"特別なひとり"であることに気付く旅路を、美しい音楽、夢のようなダンスで詩的に美しく描くミュージカル。美しいのに悲しく、悲しいのに、心が洗われる。なんだか自分の心の奥にたまった澱が洗い流されていくような感覚だ。年明け、"気持ちを新たに"一年を始めるには、ぴったりの作品になりそうだ。

公演は202218()から31()まで、シアタークリエにて上演。2月には愛知公演もあり。(取材・文・撮影:平野祥恵)

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年明け1月より東京・シアタークリエにて上演されるミュージカル『リトルプリンス』。サン=テグジュペリの『星の王子さま』を原作に音楽座ミュージカルが1993年に初演し、数々の演劇賞を受賞している傑作が、装いも新たに登場する。この作品で主人公の王子役を務める加藤梨里香が、『星の王子さま』とその作者サン=テグジュペリをテーマにした「星の王子さまミュージアム」(神奈川県箱根町)を訪問。作品背景やサン=テグジュペリの生涯を学び、作品への理解を深めるとともに、『星の王子さま』の世界を楽しんだ。

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『星の王子さま』といえば、示唆に富んだ奥深い内容や、人生の折々にふと道筋を照らしてくれるような名言の数々とともに、サン=テグジュペリ自身が描いた可愛らしいイラストも印象的だ。ミュージアムに入ると、多くの人が思い浮かべるであろうその表紙のイラスト――小さな星の上にひとり立つ王子の姿――が像となり、来場者を出迎える。この日の天気予報は残念ながら一日中、雨。しかし奇跡的に雨があがり、これは幸先がいいぞと思ったところで、弾ける笑顔で加藤が登場。加藤さん、"持って"ますね!

エントランスから展示ホールへ行く道中は、「出会いの庭」「アジサイの小径」などのヨーロピアン・ガーデン、ローズガーデン、「王さま通り」など、テーマ性がありつつ、思わず写真を撮りたくなる可愛らしいスポットだらけ。特に「王さま通り」は、サン=テグジュペリの生まれた1900年頃のフランス・リヨンの街並みを再現しているそうで、盛りの紅葉とあいまって、"ヨーロッパの秋の風景"といったおしゃれな雰囲気だ。加藤も足取り軽く、楽しそうにキョロキョロとあちらこちらに視線を送っている。

そして館内へ。ここではサン=テグジュペリの生涯が代表作とともに9つのエリアに分けて紹介されている。作家であり、飛行士であったサン=テグジュペリ。少年時代から空に憧れ、陸軍飛行連隊で飛行機の操縦士となり、その後、民間の郵便輸送のパイロットとして勤務した経緯や、砂漠のただ中の中継基地キャップ・ジュビーの飛行場長として13ヶ月を過ごしたことなどを、加藤は展示物を見て、またミュージアム広報担当・都路さんの説明を受けて学んでいく。サン=テグジュペリがキャップ・ジュビーで実際に砂漠のキツネ(フェネック)を飼っていて、それが『星の王子さま』のキツネの原型であることなど、作家本人の経験がこの物語の様々なところに投影されていることも新鮮に受け止めていた模様。特に加藤が胸を打たれたようなのは、サン=テグジュペリの弟・フランソワの死。フランソワが死の直前に言ったという言葉「僕は苦しくなんかない。痛くもない。ただ、どうにもとめられないんだ。これは僕の体がやっているんだ」は、肉体より精神が優位に立つという意味で、『星の王子さま』ラストシーンに大きく影響を与えている、という説明を真剣な表情で受け止めていた。

ほか、『星の王子さま』の献辞がユダヤ人の親友レオン・ヴェルトに宛てられていることから読み取れる戦争の影や、サン=テグジュペリの最期など、ファンタジーの裏側にある時代背景も学び、展示ホールラストの『星の王子さま』エリアへ。ここでは、キツネを見ては「キツネの言葉は大人になっても心に響きます。井上(芳雄)さんがどう演じるのか楽しみ」、バラの花を見ては「花總(まり)さんですね!」と声を上げるなど、自然と加藤の表情も楽し気なものに。ちなみにバラの花はサン=テグジュペリの妻コンスエロがモデル。「王子さまとバラのように、仲違いやすれ違いもあった結婚生活だったようですが、きっと最後まで愛し合ったことでしょう......」という都路さんの説明に感慨深い様子の加藤。

その後も館内・屋外の様々なフォトスポットで写真を撮り、ミュージアムを堪能した様子。ミュージアムショップでも「これ、可愛い!」「楽屋で使えそう」と、何を見ても心惹かれて目移りしてしまうようで、スタッフから「加藤さん、あと10分くらいで......」と言われ慌てるひと幕も。カードに願い事を書けるコーナーでは公演成功のお願い事もばっちり記した。最後に「とっても素敵なミュージアムで、作者の生い立ちや、『星の王子さま』の誕生秘話も学んで、私もより一層『星の王子さま』への理解を深められました。この経験をミュージカル『リトルプリンス』に活かしていきたいと思います。見どころや可愛いフォトスポットもたくさんあるので、皆さまにも遊びに来ていただきたいです」と感想を話した。

ミュージカル『リトルプリンス』は202218()から31()まで、シアタークリエにて上演。2月には愛知公演もあり。なお、王子役は加藤と土居裕子のダブルキャスト。星の王子さまミュージアムは神奈川県足柄下郡箱根町仙石原に位置し、箱根登山バス「川向・星の王子さまミュージアム」バス停下車すぐ。開園時間は10:0018:00(最終入園17:00。第2水曜日は休園 ※3月と8月は無休)。

(取材・文:平野祥恵)

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※写真:Le Petit Prince™ Succession Antoine de Saint-Exupéry licensed by(株)Le Petit Prince™ 星の王子さま™より

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稽古場は緊迫感につつまれ、今にもなにかが弾けそうだった。

この日の『hana-1970、コザが燃えた日-』の稽古は、クライマックスのあるワンシーン。照明を落とした薄暗い稽古場で、兄弟──松山ケンイチ演じるハルオと、岡山天音演じるアキオ──が向かい合う。二人のいる場所は、実家である嘉手納基地近くのパウンショップ(米兵相手の質屋)&バー『hana』。敗戦から25年経ち、しかし"まだ戦争は終わっていない"沖縄の地で、二人の思いがぶつかる。

演出の栗山民也が台本を片手に舞台へあがり、「この台詞でここに立って」と自分で動きながら立ち位置を指示する。松山と岡山は瞬時に対応し、身体の動きの変化に連動して、声のトーンも変化していく。

また、栗山は「この台詞は立たせて」と声の強弱をつけたり、たとえば小道具を持たせて目立たせたりする。すると、舞台上においてどの瞬間になにが重要になるのかが整理され、俳優たちの会話かスムーズに流れだす。客席側から見ていても、視線がなめらかに誘導されて見やすくなった。

次のシーンでふたたび、栗山が「この台詞でここに立って」と松山と岡山に指示する。すると、二人の立ち位置が最初と真逆になっていた。気づけば、二人の関係性も真逆になっていた。

方言指導にしっかりと時間をかけたそうで、沖縄のイントネーションで話す。なかには本土の人間ではおそらく理解できない言葉も混ざるが、それがまた生々しい。そこに米兵の英語も入り乱れる。壁や床にはアメリカの看板やインテリアがたくさん並び、なんだか陽気で明るい雰囲気もある。けれども同時に、沖縄の冬の暖かさと、汗の臭いと、目には見えない生々しい憤りが渦巻いているようだ。

稽古では、演技、確認、演技、確認......と繰り返される。時には全員で円になり、シーンを振り返りながら、動きや台詞の方向性などを共有する。つねに静かで集中の糸は切れないけが、合間には笑い声もあり、緊張しながらもリラックスしているようだ。

来年は、沖縄返還50周年だ。沖縄やコザのこと、そしてこの日の出来事を知ってもらいたい。脚本の畑澤聖悟は、綿密な取材を重ね、丁寧に作品に反映していく。松山と岡山は実際にコザを訪れ、舞台となった場所を歩いてきたそうだ。

沖縄返還前のある日。アメリカと一触即発の空気のなか、血の繋がらないいびつな家族の行き場のない愛憎が、稽古場に充満していく。

取材・文 河野桃子

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新国立劇場の作品創造プロジェクト「こつこつプロジェクト」の第一期作品『あーぶくたった、にいたった』(作:別役実、演出:西沢栄治)が2021年12月7日(火)から同劇場で開幕した。

同劇場の演劇芸術監督を務める小川絵梨子の肝煎りの企画の一つである「こつこつプロジェクト」。「矢継ぎ早にどんどん作品をつくっていく良さはもちろんあると思うが、作り手によっては、じっくり、時が来た時に舞台にあげるようなシステムができないか」と思案した小川は、公共劇場で、通常1ヶ月程度の稽古期間を1年という長い時間をかけ、〈試し〉〈作り〉〈壊し〉〈また作る〉というプロセスを踏めるようにした。英国のナショナルシアターでの事例などを参考にしたというが、なかなか日本の演劇界ではない取り組みと言えるだろう。

こつこつプロジェクトの第一期には、大澤遊、西悟志、西沢栄治という3人の演出家が参加。それぞれに作品を育て、試演会と協議を経て、この『あーぶくたった、にいたった』が本公演として上演される運びとなった。

1976年に文学座で初演された本作は、別役実の"小市民シリーズ"と呼ばれる作品群の一つだ。

演出の西沢は、今回初めての別役作品に挑んだ。過去のインタビューで西沢は「完全な喰わず嫌いで、ろくに観たこともないのに"あの独特の空気感が面白くない"と決めつけていたところがあるんです」と明かしつつも、「選んだ『あーぶくたった~』はもちろん、参考のためにと読んだ別役戯曲は、どれも本当に演劇的で興味深く、現状とあまりに符合する設定やドラマが多すぎて"予言の書か!"と驚くほど」と語っている。そして、「ひたすら普通に、つつましく生きようとした劇中の名もなき人々に思いを馳せることで、僕らなりの"日本人論"にたどり着きたい」とコメントしている。

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   (左から) 山森大輔、浅野令子 撮影:宮川舞子

公演初日を見た。

舞台には、一本の古い電信柱がスッと象徴的に立っている。雨にさらされて汚れた万国旗が垂れ下がっている。土に埋もれた赤ポストも見える。客入れ時に『チャンチキおけさ』や『世界の国からこんにちは』など、昭和の歌謡曲が流れていて、おおよその時代設定が推察される。

始まりは、山森大輔が演じる男1、浅野令子が演じる女1の婚礼の場面から。新郎新婦は、子どもの頃の思い出話をして、まだ見ぬ子どもの将来などを語り始めるも、会話は思わぬ方向に。楽しい新婚時代、子を持ち落ち着いた生活、そして老境へ―。全10場、人々の"日常"を断片的に切り取りつつ、1時間45分(途中休憩なし)で紡いでいく。

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    (左から) 山森大輔、浅野令子 撮影:宮川舞子

2019年6月に1st試演会、同年8月に2nd試演会、そして、20年3月に3rd試演会を経て、今回の上演に至った。プロジェクトが始まった当初、未知のウイルスがこんなに世界中で広がるとは誰も思っていなかったし、東京五輪が延期になるなんて想像もしていなかったと思う。そんな苦難の時代の中でも"こつこつ"と作りあげ、作品の強度をあげてきた。稽古の過程で、他の別役作品を読むなど"寄り道"も許される限りしてきた。

どこにでもありそうな日常の可笑しみを楽しんでいたら、ふと気がついたときには、大きな物語に飲み込まれて、動けなくなっていく。かつての「小市民」と、今を生きる私たちがどうしても重なり、この不条理に立ち尽くしてしまう。「いいじゃないか、ただ生きてみるだけなんだから......。ね、ほんのちょっとだよ。ほんのちょっとだけなんだから......」。そんなセリフが胸を打つ。雪に埋もれた夫婦の姿は、遠い昔の他人事とはどうも思えない。これが別役実の世界なのか。それとも"こつこつ"積み重ねてきたからこそ、見える景色なのか。

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(右から) 浅野令子、山森大輔、龍 昇、稲川実代子 撮影:宮川舞子

役者もよかった。プロジェクトの各段階に携わった俳優陣からバトンを引き継ぎ、本公演では山森と浅野のほか、龍 昇、稲川実代子、木下藤次郎が出演する。それぞれ舞台経験を十分に持った実力派ぞろいなのだが、いい意味で素朴な雰囲気を醸し出し、絶妙な「小市民」を体現。派手な演出もなく、地味といえば地味なのだが、彼ら彼女らの半生がいい味を出していた。

ちなみに、千穐楽の19日まで本作の戯曲が無料公開されている(https://www.nntt.jac.go.jp/play/bubbling_and_boiling/)​​。予習として読むよりは、終演後に読み返すと、また新しい発見が生まれるかもしれない。

公演は12月19日(日)まで。なお、14日(火)13時公演終演後は、出演者と演出家によるシアタートーク(無料)が予定されている。チケット発売中。

取材・文:五月女菜穂 写真提供:公益財団法人 新国立劇場運営財団

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1212()より東京・シアタークリエほかで上演される『ガラスの動物園』の稽古場を取材した。1930年代、大恐慌下のアメリカに生きる家族を描いた『ガラスの動物園』は、テネシー・ウィリアムズの出世作にして、アメリカ文学の最高峰とも称される戯曲。1945年のブロードウェイ初演以降世界中で繰り返し上演され、のちの演劇・文学作品にも大きな影響を与えたこの作品を、今回は上村聡史の演出、岡田将生、倉科カナ、竪山隼太、麻実れいの出演で上演する。

物語はトム・ウィングフィールド(岡田将生)の回想から始まる。トムはこの物語は追憶の劇だと宣言する。そう語る姿はくたびれた風情だ。しかしどこか甘い香りが匂い立つようで、それは郷愁の甘さに加え、岡田自身の持つ少し悲し気で優しい雰囲気がそうさせるのだろう。バンドネオンが奏でる物悲しいBGMとトムの独白が、閉じられた、息苦しい、しかし懐かしい家の中に観る者を誘っていく。

ウィングフィールド一家の住むアパートの中には、アンティークの調度品が設えられ、舞台中央の机の上にはガラス細工の動物が置かれている。父親は16年前に家を出ていったっきり。この家の空気を司っているのは母親のアマンダ(麻実れい)だ。南部のお嬢様育ちのアマンダはかつての栄華を未だに忘れられず、子どもたちを無意識のうちに支配しようとしている過干渉な母親。すべてにおいて大げさで、芝居がかっているが、麻実は"芝居がかっているのに、リアリティがある"という人物を演じるのに長けている。そしてこの一家を覆う一種病的な空気を生み出しているのがアマンダであるのが一瞬で伝わる求心力。なのにチャーミングさもチラリと覗くところはさすがだ。

空気を司るのがアマンダなら、一家の要は娘のローラ(倉科カナ)だ。脚に障害があることから極度に内向的、ガラス細工の動物を大切にしている娘。母アマンダが極端に可愛がり、かつて自分のもとに数多くの青年紳士の来訪があったように、ローラの元にもそんな紳士がやってくることを期待している。家族の......というより、アマンダの行動原理がすべて「ローラのために」である分、負担はトムの両肩にのしかかってくるわけだが、一方で一家の緩衝材になっているのもローラの優しさだ。倉科のローラからまず伝わってくるのは、そんな優しさ。倉科の可憐さと相まって本番の舞台ではさらに繊細なローラになるに違いない。

いびつな家族がなんとか破綻せずに保っているのは、やはりお互いへの愛ゆえなのだろう。岡田、麻実、倉科の3人は自身の感情を爆発させた瞬間、ぱっと罪悪感が広がるような、そんな繊細な感情を巧みに紡いでいく。演出によってはこの登場人物たちがどうしようもなく自分勝手に思える場合もあるのだが、上村演出版は、どのキャラクターも息苦しさと相手への愛情の間で葛藤しており、痛々しく悲しい。しかし綻びは少しずつ大きくなる。ずっと自分を抑えてきたトムが、この家には何一つ自分の自由になるものはないと嘆くシーンの岡田の悲痛さは胸に迫るものがある。

取材できたのは1幕のみだったが、このあと2幕になると、危ういバランスで保たれていた家族は、ひとりの青年――ジム・オコナーの来訪によって大きく揺れる。アマンダからローラのために知り合いの紳士を紹介してくれと懇願されたトムが連れてきたジムは、アマンダの期待する"ローラの青年紳士"となりえるのか。現実世界からの使者・ジムを演じるのは竪山隼太。1幕では幻想の紳士として印象的に佇んでいた竪山が、どんな"現実の青年"になるのだろう。そしてそれぞれの抱く期待や痛みがさらに増幅される2幕で、演出の上村がどんなところにフォーカスを当てるのかも楽しみである。ただ、1幕を観た感触では、上村演出は家族に対する期待や失望、義務、閉塞感、将来への不安や自由への憧れ、そして悔恨といった幾重にも重なる感情を丁寧に紡ぎ、そのすべてを家族愛という糸で繋ぎ合わせて見せてくれそう。それぞれが少しずつ破綻しているが、この一家は非常に優しい人たちなのだ、と思えた。戯曲本来のノスタルジックで繊細な美しさが際立つ『ガラスの動物園』になりそうな予感がする。

公演は1212()から30()までシアタークリエにて。その後、福岡、愛知、大阪でも上演される。(取材・文:平野祥恵、写真提供:東宝演劇部

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倉持裕の作・演出による『イロアセル』が1111日に新国立劇場にて開幕した。2011年に倉持が同劇場での上演のために書き下ろし、鵜山仁の演出で上演された戯曲が、今回は倉持自らの演出で、フルオーディションで選ばれたキャストによって上演される。10年前、SNSの隆盛により、多くの人々が匿名で社会に向け発信するようになったことを念頭に、その結果、露わになる社会のひずみや人々の黒い本音をえぐり出した本作だが、10年を経て、このテーマ性がさらに際立つ仕上がりになっている。

物語の舞台はとある島。ここで暮らす島民は、それぞれに特定の"色彩"を持っており、言葉を発したり、文字にしたためると、その言葉が個々の色を帯びて浮かび上がるという特異な性質を持っている。多くの島民はスマホのような機器を持ち歩き、それによってこの"色"を感知・識別することができる――つまり、誰がどんな発言をしたかが全島民の間で共有されるという状況で生きている。この島に、本土からひとりの囚人と看守がやって来て、丘の上の檻に収容される。そして、この丘で囚人と面会している間は、島民の言葉に色がつかなくなることが発覚する。発言の"匿名性"を手にしたことで、島民の間で様々な変化が生じることになり...。

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撮影:引地信彦

囚人がやって来る以前の島では、上記の通り、誰がどんな発言をしたのかが即座に共有されてしまうため、人々が"悪意"のこもった言葉を他者にぶつけたり、誰かを貶めたりすることは、一部の例外を除いてなかった。例えば、島民の必需品である"ファムスタ"と呼ばれる、人々の言葉の色を集めたり調整する機器を販売する会社「ブルプラン」の社長・ポルポリが、同機器新作の開発を、下請けの「グウ電子」一社に任せることを発表した際には(※正確には発表したというより、ポルポリとグウが2人で応接室で会話しているだけなのだが当然、その内容は全島民に筒抜けになる)、ライバル会社の人々からさえも祝福の言葉が贈られ、妬みや誹謗などは見えない。

そうした状況は濁りのない"キレイ"な社会であると言えるかもしれないが、見方を変えれば人々が本音を押し殺した、表面的な建前の言葉だけで成り立っている社会とも言える。

だがこの状況は、囚人の出現で一変する。囚人と話す時だけ、自分の言葉の色がなくなることを知った島民たちは、こぞって囚人の元を訪れ、これまで胸にため込んだ"本音"を吐き出すようになる。さらに、囚人はそこで知った事実を紙に書きとめ、その内容を記した"文書"が島中にバラまかれたことから、それまで無垢だった社会は一気に濁りを帯びていくことになる。

緊急事態宣言が開けたばかりの、2021年10月2日・3日、CBGKシブゲキ!!で、5年目を迎え恒例となった『ゾンビフェス  THE END OF SUMMER 2021』が開催された。

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今年は、主宰の入江雅人の呼びかけの下、入手杏奈、清水宏、立川志ら乃、塚本功、オクイシュージ、という常連メンバーに加え、シンガーソングライターの中村 中が初参戦となった。
オープニングは入江雅人とオクイシュージの二人芝居からスタート。映画のゾンビ役のエキストラとして偶然再会したかつてのバンドメンバーが、本物のゾンビに追われ幽霊屋敷に迷い込むという入江の書き下ろし新作「ゾンビ!ゴースト!ソンビ!」を上演。入江とオクイ二人の呼吸はぴったり。山奥の幽霊屋敷やゾンビと幽霊の対決の光景が広がり、冒頭から笑いに包まれた。

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撮影:市川唯人 


"ソンビフェスの舞姫"入手杏奈のダンスとともにオープニングムービーが流れる。「また今年もこの祭りがやってきた」といった気持ちがこみ上げてくる恒例のオープニングだ。

opening211002ZF-138.JPG撮影:市川唯人 


次に登場したスタンダップコメディの清水宏は、様々な日本人にとっての"型"というものが何故生まれて来たのか、五反田駅のホームのアナウンスから様々な伝統芸能に到るまで、弾丸トークで、はっとさせられる持論を展開し、それがゾンビに繋がる流れに客席は大爆笑。

shimizu 211002ZF-403.JPG撮影:市川唯人 

次は、入手杏奈が創作ダンス「DANCE OF THE DEAD V」を披露。入手の体の自在な動き、時に手足を硬直させながら特に伸び伸びと、ワンピースを着た入手が"美しきゾンビ"のように舞う姿にうっとりする。

irite 211002ZF-584.JPG撮影:市川唯人 


続いて登場の落語の立川志ら乃は、新作「魚をキレイに食べましょう」をネタ下ろし。志ら乃が最近気にかけている"流行のお菓子"と"魚をキレイに食べる人"をモチーフに、江戸のゾンビに侵された町で、魚をキレイに食べる能力を買われてゾンビ退治をしようとする奇想天外な物語で笑いを誘う。
一部はここで終了。

shirano 211002ZF-681.JPG撮影:市川唯人 


二部のトップバッターは、ギタリスト塚本功。「THE END OF SUMMERTIME」と題し3曲を演奏し、更に入手杏奈とのコラボパフォーマンスも披露。コロナ禍の中でも定期的にライブに出演している塚本は、マスクをしてパフォーマンスをするのが慣習化したということで、この日もマスク姿で歌唱。この時期ならではの粋なパフォーマンス。「HIMATSU」という楽曲も披露。塚本ならではのギターの音色と歌声に引き込まれながら、心地よい時間が流れる。最後は入手杏奈のダンスとの即興セッション。ここでしか見られないコラボレーションに、会場全体が引き込まれていった。

tsukamoto &irite 211002ZF-1020.JPG撮影:市川唯人


そして、次に登場したのは、今回初出演となる中村 中。入江雅人が以前から中村の大ファンでもあり出演オファー。満を持しての登場となった。妖艶な空気をまといながら、ギター1本で、ゾンビフェスの為に書き下ろした「死に損ないの歌」を含む4曲を披露した。「死に損ないの歌」は、ゾンビを現代社会に生きる人々に擬えた、テーマ性のある一曲だ。

nakamura 211002ZF-1396.JPG撮影:市川唯人
 

そして、トリは入江雅人。毎年恒例の「帰郷」。ゾンビになってしまった幼馴染のしげちゃんと最後のドライブに出かける物語。毎年ゾンビフェスの最後に上演される恒例の演目だが、毎年異なるアレンジがされ、初めて観る人にとっては新鮮な感動もあり、何度見た人でもまた新しい発見があり、物語に奥行きが加わる不思議な演目だ。観れば観るほど深まるしげちゃんと僕のストーリー、来年はどんな進化を遂げるのか楽しみだ。

irie 211002ZF-1686.JPG撮影:市川唯人 

前年は、コロナ禍の影響が大きく縮小版での実施となったが、今回は、また華やぎが戻って来たゾンビフェス、入江も来年以降も続けて行きたいと抱負を語っていた。
それぞれの分野のプロが技を持ち寄り、"ゾンビ"という無限のイマジネーション秘めた創作物をテーマに、意外性と面白みに溢れるパフォーマンスを繰り広げるゾンビフェス。"プロたちの文化祭"そんな手触り感もある、年に一度の祝祭に来年以降も期待したい。

<公演情報>
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『ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2021』

10月2日(土)17:00開演(16:30開場)
10月3日(日)14:00開演(13:30開場)会場:CBGKシブゲキ!!
【出演】※50音順
入江雅人(一人芝居)
入手杏奈(ダンス)
オクイシュージ(演劇)
清水宏(スタンダップコメディ)
立川志ら乃(落語)
塚本功(エレクトリックギター演奏と歌)
  中村 中(弾き語り)

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中山優馬さんが主演を務める、ロック☆オペラ『ザ・パンデモ二アム・ロック・ショー』が2021年9月18日(土)から、日本青年館ホールで開幕しました。

初日を前にした17日(金)、記者会見とゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われ、作・作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞さん、音楽の亀田誠治さん、演出の河原雅彦さん、出演する中山優馬さん、浜中文一さん、桜井玲香さん、水田航生さん、玉置成実さんが登壇しました。

この記事では、記者会見とゲネプロの様子を写真と共にお伝えします。

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ーーまずは、一言ずつご挨拶をお願いします!

森:オリジナルミュージカルを立ち上げるという作業は、本作で5作目。ブロードウェイでは、例えばキャロル・キングの『ビューティフル 』や、フォー・シーズンズの『ジャージー・ボーイズ』など、音楽の史実に基づいた話をミュージカル仕立てで紡いでいく作品があります。日本でもそんなオリジナルミュージカルが作れたらいいなと思って、本作を書きました。

ビートルズが初来日したとき、僕は中学1年生。校長から「武道館の周りにはいくなよ」と言われたんですけども(笑)、そんなことも物語の背景です。そこから日本の音楽はどんどん加速していき、それとともにいろいろな時代の流れが押し寄せていく。その中で、1人の少年が、ロックに夢を見て、夢と現実の間で揺れ動く。そんな物語を作れたらいいなと思いました。
 
今回、亀田誠治さんをお招きしました。まさに僕たちの肉となり血となっている先輩たちのロックが流れていて。亀田さんは、昭和の時代をモチーフにした素敵なロックを作ってくれました。格好いいです。どうぞお楽しみに!

亀田:3年前ぐらいに、雪之丞さんからお話をいただきました。「史実に基づいた音楽劇を作りたいから、亀ちゃん、腕を振るって!」みたいな(笑)。任せたよというのが一番ハードルが高いんですけども、脚本を読みながら、楽しく、たくさんの楽曲を手掛けさせていただきました。

コロナ禍ということもありまして、稽古場にはなかなか行けなかったんですが、キャストの皆さんが僕の作った曲を歌って、踊ってくれた時に、涙が出そうになることが何度もありました。パンデミックの中、エンターテイメントの力、音楽の力、演劇の力で、みんなを元気にできるのではないかな。この作品に関わることができて、大変光栄です。

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河原:いつも通り、いい演劇つくっています。それだけです。さきほど、ヘアメイクさんが「お肌、抑えましょうか?」と来てくれたんですけど、僕は現場の人間なので、僕は抑えないプライドをもって、ここに立っています(笑)。いい初日になるように頑張ります。

中山:やっとこの日が来たかというような気分です。稽古が始まって、どこか毎日不安を感じるような感覚はあったんですけど、早くこの世界を皆さんにお届けしたい、お披露目したいという思いは、本当に1日ずつ強くなっていきまして。
こんな厚底を履かせていただいて......今、この格好で皆さんの前に立てることが本当に嬉しいです。この世界を早くみなさんにお伝えしたかったです。この作品を上演している時間はですね、本当に苦しい状況や不安というものを拭い去れる時間だと思いますので、そういう時間をしっかりと提供できるように、一生懸命明日の初日から頑張っていきたいと思います!

桜井:本当に魅力あふれる作品。お話も見応えがあって面白いですし、音楽も素晴らしい曲ばかりで、どこを見たらいいのか分からないぐらい、見どころがたくさんある作品になっていると思うので、早く皆さんに見ていただきたいと思います。楽しみです!

水田:さっき優馬くんも言っていたんですけど、この格好がきょうから世間に広まっていってしまうんだなというドキドキとワクワクがあります(笑)。自分自身、こういう格好をすると、タイムスリップしたような気持ちになれて、この世界にのめり込むことができるので、見に来てくれた皆さんも、昭和のロックというものをたくさん吸収して、気持ちの良い、明るい気持ちになってくださるのではないかなと思います。
これまで、河原さん先頭に僕たちも稽古を重ねてきて、このご時世に演劇をできることに感謝をしつつ、最後まで駆け抜けるように、日々精進していきたいなと思います。

玉置:今回、雪之丞先生、亀田さん、そして河原さんという本当に大尊敬しているみなさんとご一緒できる、そして、新たなオリジナルミュージカルをいちから作れるということで、とても光栄に思っております。
そして、キャストの皆さんも一人ひとり全然違う個性があって、その個性がぶつかり合って、すごくパワフルな舞台になっています。みなさんに楽しんでいただけるように千秋楽まで楽しんでいきたいと思います。応援よろしくお願いします。

浜中:昭和の古き良き八百屋で唯一売れ残ってしまった、キノコ役を演じます。

中山:全然違う!そんな役ないから!ほら、河原さん、全然笑っていない(笑)

浜中:(笑)。みんなで楽しんでやって、はしゃいでおりますので、ぜひ楽しみに見てください!

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ーー本作は森雪之丞さんの自叙伝的にも感じる物語ですが、実際に扮装された中山さんを見ての印象はいかがでしょうか。期待することをお聞かせてください。

森:2人(中山さんと水田さん)を比べると分かるんですけど、優馬は、ハンサム系というか、昔サラリーマンの新入社員でもこういう格好をしていて、ヒールはここまでないんですけど、そこそこ厚い靴を履いている。でも、ルックスとかスタイルに自信がない人は、なかなかできない格好です。
それに比べて、航生の格好は、これ、実は僕はこんな格好していたんです。(水田さんと自分自身は)きれいさは全然違うんですけど、あまりルックスがよくない人間がこれを着ると、ただ汚いだけになっちゃう(笑)。(水田さんのように)きれいな男に生まれたかったと思います。

ーー本作は、中山さんが生まれる前の時代、昭和の音楽界が描かれています。豪華なクリエイター陣に囲まれて演じてみて、いかがでしょうか。

中山:本当に豪華さにまずはびっくりしました。本当に素晴らしい音楽と詞と本なんですけど、毎日の稽古の中で、河原さんの演出が加わると、日々進化する。

その進化を目の当たりにできて、こんなにパワーを持ったものだったんだと、毎日感じていましたね。本当に、豪華な日々を過ごさせていただきました。

ーー亀田さんは今回、初めての舞台音楽を担当されたわけですが、普段の音楽プロデュースとの違いはありましたでしょうか。また、苦労した点を教えてください。

亀田:音楽を作る者として、僕はよかれというものを自分の方から提供していく、提案していくということをしてきました。いい曲を書き、アレンジをすることは、舞台でも同じ感じでできましたね。

ただ、50代半ばにして、初めてミュージカルの音楽を担当させていただくというのは、運転免許を取りに教習場にも行ったにも関わらず、いきなり路上に出て運転をするような、それぐらいスリリングな展開で。素晴らしい役者さんたちと、河原さん、雪之丞さんという制作陣に囲まれて、スタートから最高の景色を見させていただくことができました。

自分の作った曲を、キャストのみんなが演じてくれることによって、「あぁミュージカルの音楽になるんだ、ありがとう」という気持ちになりました。今回、この作品に関われること光栄に思います。

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ーーコロナ禍での稽古は大変だったかと思いますが、キャストの印象はいかがでしょうか。

河原:まず、コロナ禍からいいますと、一番大変な時期だったんですね。感染爆発みたいに言われていた時期だったので、そういうこと触れずに稽古場に通うこと自体が、逆に不自然なぐらいだったから。

この長いコロナ禍で、僕も別のお芝居で稽古が止まったり、初日が延びたり、いろいろなことを経験しています。だから、明日誰か感染者が出て、急に稽古がなくなっちゃってもいいぐらいに、稽古場に集まれた時はすごく楽しくやるというお話をして。とにかく無駄に楽しくやっていた感じですかね。
こうして今ここまできましたが、明日できるかどうか、そういうことも思っていた方がいい世の中。(とりあえずは開幕するということで)幸せですけども、瞬間瞬間楽しんで作品をやれたらいいなと思います。

キャストの印象は、マスクを当然したままで、激しく歌ったり踊ったりするので、半分みんなキレていたというか(笑)。息ができないから、こんなマスクがペコペコするかというぐらい大変だったので、そんな印象ですよ。マスクぱかぱかしているなという(笑)。舞台稽古になって、マスクを外していますが、役者さん同士もマスクなしの状態の顔に慣れなきゃいけなくて大変だと思います。

ーー最後に上演を心待ちにされているみなさんに一言お願いします!

中山:昭和の時代を知っている方は懐かしいと思ったり、あったあったという出来事があったりすると思いますし、僕らの世代だと、こんな魅力的な時代があったのかという新しい発見があって、本当に楽しい作品だと思います。

愛すべきキャラクターが本当にたくさん出てきますので、楽しんでいただけると思います。こんな時代だからこそ、この上演中はですね、何もかも忘れて、大いに笑って楽しんでいただけたらなと思いますので、劇場でお待ちしております!

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【あらすじ】
1966年6月30日、ザ・ビートルズの来日に日本中がわいていた。中学生の楠瀬涼(中山優馬)は隣に越してきた"お姉さん"荒木三枝子(玉置成実)にロックを教わり、次第に夢中になっていく。三枝子が人気のグループ・サウンズ「ザ・カニバルズ」のボーカル・野村正嗣(浜中文一)と付き合いだし、失恋をした涼はますます音楽にのめり込む。

時は1973年、20歳になった涼は山下勝也(水田航生)、岡島大樹(汐崎アイル)、伊丹俊介(小松利昌)、真柳満(山岸門人)とロックバンド「THE REASON」を結成し、若者から熱狂的な支持を受けるように。そんな中、歌番組で姉妹アイドルデュオ「ウエハース」として活動する及川真実(桜井玲香)と出会い、互いに惹かれ合う。

だが、夢のような日々は、1980年12月8日、ジョン・レノンの射殺を契機にボロボロと崩れ落ち、やがて涼は悪夢と現実の間をさまよい始めるのだったーー。

作品の中では、ついつい口ずさみたくなるような楽曲はもちろん、時代を反映したファッションや、流行語を交えたセリフなど、"昭和"のあれこれが散りばめられている。1960年代後半〜70年代の同時代を生きたり、その時代のカルチャーに詳しかったりする人は、よりディテールを楽しめると思う。

とはいえ、平成生まれであっても、あの頃の世界観が年号表示と共に丁寧に描かれているので、十分に理解できると思うし、中山が語っていたように「新鮮さ」を感じるかもしれない。

ネタバレになるので、詳しくは書かないが、特に2幕以降は、河原の演劇的手法も相まって、怒涛の展開。最後の最後まで目が離せないと思う。

上演時間は、1幕65分、20分の休憩を挟み、2幕80分の計2時間45分。お見逃しなく!

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取材・文・撮影:五月女菜穂

チケット情報はこちら

スイスの劇作家フリードリヒ・デュレンマットによる戯曲を、ノゾエ征爾の上演台本・演出で立ち上げる『物理学者たち』。げきぴあ編集部は、この稽古場をリアルタイムで"リモート見学"し、後日動画でも視聴しました。

稽古場レポートの前編では、タイトルロールの"物理学者たち"が入院するサナトリウムの院長マティルデ・フォン・ツアーントを演じる草刈民代さんの登場シーンをお届け。後編はその翌日に行われた稽古の様子をお伝えします!

▼『物理学者たち』について
                            
■INTRODUCTION
とあるサナトリウムを舞台に、自らをニュートンやアインシュタインと名乗る精神病棟の患者と、院長をはじめとする施設スタッフの会話で構成される本作。第二次世界大戦での原爆被害も記憶に新しく、ベルリンの壁建設や水爆ツァーリ・ボンバの爆発実験など世界
情勢が緊迫した1961年に執筆され、時代背景にあった"科学技術"や"核"をめぐる人間のモラルと欲望が描かれます。

■あらすじ
舞台は、富裕層向けのサナトリウム「桜の園」の精神病棟。ここに入所する自称ニュートン(温水洋一)、自称アインシュタイン(中山祐一朗)、「ソロモン王が現れた」と言うメービウス(入江雅人)の患者3人はいずれも"核物理学者"だ。

ある日、自称アインシュタインが若い看護婦を絞殺してしまう。数ヵ月前には、自称ニュートンも看護婦の命を奪ったばかり。院長のマティルデ・フォン・ツアーント(草刈民代)は「放射性物質が物理学者である彼らの脳を変質させた結果、常軌を逸した行動を起こさせたのではないか」と疑う。

そんな中で起きる第三の殺人によって、事態は思わぬ方向へ。彼ら3人はなぜこのサナトリウムに入所しているのか、タブーを犯すのか──。

詳しくは、翻訳を手がけた山本佳樹さんによる"作品解説"をご一読ください。

▼稽古場レポート後編
                               
8月30日。セミの鳴き声が背後に聞こえる稽古場では、2場面のブラッシュアップが行われていました。外の猛暑に負けないほど熱いキャストの演技に、画面越しながら手に汗を握ってしまいます!

①メービウスとモーニカ
サナトリウムの精神病棟に入院している物理学者の一人、メービウスに扮するのは入江雅人さん。長らく彼の世話を焼いてきたと思われる看護師モーニカ(瀬戸さおり)との応酬は、1幕ラストの急展開を飾る迫力に満ちたものでした。

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患者と看護師の関係性を超えた結びつきを感じさせる二人。精神病棟で起こった2件の連続殺人をきっかけに担当を外れることになったモーニカは、メービウスと離れがたい様子です。演出を手がけるノゾエさんは、モーニカ演じる瀬戸さんに「メービウスのペースを
崩しているように見えるといいね」と声をかけました。

●後せとDSC_0082.JPG

その最たる例と感じたのが、いきなり放り込まれるモーニカの英語。椅子の上に乗ってメービウスへの想いを高らかに宣言するひと幕では、ノゾエさんから「I Love You, I Love You, I Love You!!!!!と3回くらい続けて言ってみて」と指示が飛びます。これを受けてすぐ実践した瀬戸さんは、2回も増量して応戦。毎回ニュアンスを変える変幻自在の「I Love You」に、入江さんがアドリブで「I Love You"Too!!!"」と返すと稽古場は爆笑に包まれました。

モーニカの勢いに圧される様子を、入江メービウスとノゾエさんは巧みな動きで表していきます。後ずさりのタイミングを緻密に計算したり、モーニカの耳打ちから逃れるような仕草を取り入れたり。二人の心理的なマウント合戦が観客にしっかり伝わるほど、1幕ラ
ストでメービウスが見せる激情が映える構成になっていることに気づきました。本番でも固唾を飲んで見守ることになりそうです。

●せとDSC_0088.JPG
②物理学者3人(ニュートン・アインシュタイン・メービウス)
続いて行われたのは、物理学者たち3人が一同に会するシーン。殺人が行われた現場で食事を楽しもうとする自称ニュートン(温水洋一)のもとに、気が滅入った様子のメービウスが現れます。やがて自称アインシュタイン(中山祐一朗)も加わると、次第にそれぞれ
が唱える説を戦わせる不穏な展開に──。

●後DSC_0138.JPG

ここで論じられているのは、科学者の責任について。内容が少々難しいということもあって、ノゾエさんは「流してしまわず、キーワードになりそうな"責任"や"自由"って言葉を立てて発してください」と3人にオーダーします。続いて「黒板を使って議論してみましょう」と言って温水ニュートンと中山アインシュタインに実践させると、何のアクションもない状態より長ゼリフが耳に残るような気がしました。

中山さんは、時間を見つけては一人セリフをそらんじる姿を見せるなど準備に余念がない様子。常にいつの間にかその場に現れる、飄々とした自称アインシュタインのたたずまいは、こうした地道な努力から生まれているのかもしれません。ノゾエさんとのやりとりにも、信頼関係を感じさせます。

しまいにはメービウスの存在をめぐる緊迫感あふれるシーン。にもかかわらず、食事と殺人が並列で語られるなどシュールな"不協和音"が鳴り止みません。彼ら物理学者たちは何者で、本当に狂ってしまっているのか、いないのか──。真相はぜひ劇場でお確かめを。

●後DSC_0132.JPG

取材・文:岡山朋代
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ワタナベエンターテインメント DiverseTheater『物理学者たち』

2021年9月19日(日)~26日(日)
本多劇場
[作]フリードリヒ・デュレンマット
[上演台本・演出]ノゾエ征爾
[プロデューサー]渡辺ミキ、綿貫凜
[出演]草刈民代、温水洋一、入江雅人、中山祐一朗、坪倉由幸(我が家)、吉本菜穂子
、瀬戸さおり、川上友里、竹口龍茶、花戸祐介、鈴木真之介、ノゾエ征爾

稽古場プレトーク配信中!
温水洋一×入江雅人×中山祐一朗
前編 https://youtu.be/MpNJwkkKSyo
後編 https://youtu.be/2Zb6tYjrY6U
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