『狂炎ソナタ』猪野広樹×杉江大志インタビュー 覚悟を決めて挑む本格ミュージカルは「きっと満足度の高い作品になる」

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韓国で完売が続く、人間の業を描いた衝撃作『狂炎ソナタ』の日本初演となる公演が22日(金)に開幕する。ジョン・ミナとダミロが脚本・歌詞、ダミロが音楽を手掛けた"スリラーミュージカル"の本作は、2017年に韓国で初演されて以来、上演が重ねられてきた人気作だ。物語は、事故を起こしたことで音楽的インスピレーションを得た天才作曲家が、更なるインスピレーションを得るため、殺人を重ねる姿を描く同名小説がモチーフとなっている。死に触れるたびに素晴らしい楽曲を作るJ役の猪野広樹と、Jを見守る友人・S役の杉江大志に公演への意気込みやそれぞれの役への想いなどを聞いた。

 

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――最初に本作へのオファーを受けた時の心境を教えてください。

 

猪野:僕は2ヶ月くらい悩みました。もちろんやってみたいとは思いましたが、ミュージカルの経験が浅いので、3人だけのミュージカルはいきなりハードルが高いなと思って。

――それでもやろうと思った決め手は何だったんですか?

 

猪野:挑戦したいと思っているのにやらないのは負けだなと。人生1回きりなので、やらないで終わるよりは、やって終わったほうがいいなと思いました。


――なるほど。杉江さんはいかがでしたか?

 

杉江:プロットを読んですぐに面白そうと思ったんですが、やっぱり本格ミュージカルというのを聞いて、一度、寝かせようと(笑)。ちょうど仕事が忙しい時にお話をいただいたので、そんな中で決めてしまったら心が折れそうだなと思い、一度、時間をおいて冷静に考える時間を作ろうと思いました。でも、お話をいただいて面白そうだと思った時点で、やりたいという気持ちは決まっていたんだと思います。僕も悩みましたが、きっと最初から心の奥ではやると決めていたので、あとは「やります」というまでに覚悟を決めるという感じでした。

 

――そうすると、今作はお二人にとって大きな挑戦でもある作品なのですね。今、お稽古をしていて、一番、苦労しているのはどんなところですか?

猪野:歌で時間が進んでいくという作品なので、その時間の進め方ですね。歌う前と歌った後で何が変わっていて、どう音楽の中で進めればいいのか。まだ僕には、それが分かる曲もあれば、分からない曲もある。その整合性がとれた時に成立するのかなと。"ミュージカル脳"とでもいうような部分があって、自分の脳をそっちに切り替えられれば、もっとスムーズに表現できるようになるのかなと思います。

 

杉江:曲が多くて、音楽と共に進んでいく作品なんですよ。僕は、これまでお芝居をやってきて、試行錯誤しながら色々な表現方法で、何がどう刺さるのかを模索してきたのですが、その方法がうまく音楽と当てはまるところもあれば、別の技術が必要なところもたくさんある。そうしたところをどう捕まえていくのかという作業が、面白くもあり、難しく、楽しみながら苦しんでおります。

――物語の冒頭からラストまで常に重たい空気が漂っている作品なので、それを表現するのも大変だろうなと感じましたが、お二人は、最初に脚本を読んだ時にどんな感想を持ちましたか?

杉江:僕はめちゃくちゃ面白かったです。サスペンスやミステリーがあまり好きではないんですが、重たい空気の中にも疾走感があるじゃないですか。観た人によってそれぞれ違う救いもあって、すごく秀逸な本だなと僕は思いました。

 

猪野:かわいそうだなとは思った。

 

杉江:それは僕も思った。

 

――それはJを?

 

猪野:そう、Jです。ここまで追い詰められてしまうのは、側から見ているとすごくかわいそう。好きだったものを楽しめなくなっていって、何かにケツを叩かれて、自分の首を絞めて、苦しんで...という過程がかわいそうだなと思いました。

 

――では、それぞれの役柄については、今はどんなところをポイントにして演じようと考えていますか?

猪野:Jが曲作りに苦悩しているところから物語はスタートするので、その時のJがどう変わっていくのか。"落ちる"と言ってしまっていいのか分からないですが、落ちていく過程をどう見せていくのか。そして、ラストでの姿。そういう流れはなんとなくプランニングできているので、それを表現していきたいですね。

 

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杉江:Sのことは脚本ではあまり細かい描写がないので、つかみどころがない天才なのかなと思っていたのですが、稽古の中でJとしっかりと対峙することでだんだんとSの人間像が見えてきたように思います。Jに"与える"立場のSですが、ストーリーテラーでもあるので、そのバランスも難しいですね。最初に脚本を読んだ時は、Jを演じるのは難しいだろうなと思っていましたが、今は、実はSを演じる方が難しいのかもしれないと感じています。「Jに何を与えながら、Jに何を思うのか」ということを考えながら、Jを中心に全てを突き詰めていったら、自然とSが形作られていくのかなと思います。

 

――今回は、K役の畠中洋さんを含めた3人芝居です。畠中さんが演じるKについては、どう感じていますか?

 

猪野:迫力がありますよ。絶唱しています。立ち稽古になってからよりパワフルになられて、歌でもお芝居でもガッと届けてくれる感覚がありますね。

 

杉江:すごいよね、歌もお芝居も。

猪野:思いがすごく伝わってくるので、Jとしてはより追い詰められて...すごく演じやすいです。気性が荒いKをまっすぐ表現されているので、僕、あるシーンで最初はびっくりしました(笑)。

 

杉江:かっこよかったですよね。

 

猪野:かっこよかった。ぜひ観ていただければ。

 

――杉江さんから見た畠中さんのKは?

 

杉江:稽古初日から完成されていると感じました。もはやKにしか見えないです。それから、歌の中の表現は見習いたい部分や盗みたい部分がたくさんあるのですが、何をどうやって盗んだらいいのかも分からず(苦笑)。とにかく、近くで見て少しでも盗めるように頑張りたいです。畠中さんのKは、僕が脚本を読んでイメージしていたKのままだなと思っています。

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――イメージしていたKとはどんな人物なんですか?

 

杉江:したたかでありながら挑発的でもあって、余裕そうに見せて余裕がない。そんなイメージです。

 

――猪野さんからは、Kはどんな人物に見えていますか?

 

猪野:Kのセリフにもありますが、「名声は対価はなくしては得られない。そのための犠牲ならなんだって厭わない。何を犠牲にしても名声を手に入れる」という野心を持っているのだと思います。けれども、没落しかけている。没落しそうな崖っぷちに立っていて、焦りがあるのかなと。その焦りが狂気に変わっていって、使えるものは使おうとしている。そうまでしても名声が欲しい人だと思います。ただ、僕が演じるJから見れば、偉大な先生なんだと思います。JはKの裏の顔を知らずに、純粋にすごい先生だと思って尊敬している。ただ、どこかにヴァイオレンスさも感じていて、その恐怖を感じているのだろうなと思います。

 

――ところで、これまでも共演経験の多いお二人ですが、今回じっくりとお互いに向き合ってお芝居をしていく中でお互いの印象が変わったということはありましたか?

杉江:印象は特に変わってないかな。でも、顔を突き合わせてお芝居したいなと思っていたので、それが叶って嬉しいです。

――杉江さんから見た俳優・猪野広樹の魅力は?

 

猪野:それ、俺がいないところでやって欲しい(笑)

 

杉江:あはは。俳優としての魅力か。芝居が好きなところかな。あとはお芝居に真摯なところ。猪野ちゃんという人自体は、なんでもサラッとこなしてしまいそうな器用さや強さを感じさせますが、芝居は繊細で、芝居だけはサラッとやらない印象があります。特に今回は、じっくり向き合っているなというのを感じますし、そこが役者としての一番の魅力なんじゃないかなと思います。

 

――猪野さんから見た杉江さんは?

 

猪野:大志は頭がいい。考えるタイプなんで、どうやったらいいんだろう、なんでだろうときちんと考えて、自分の答えを持ってきてくれる役者さん。あとは、目が魅力的。目で伝えようとしてくれるので、それは一緒に芝居をする時にもありがたいですし、伝わりやすいんだと思います。

――今回の共演で知った杉江さんの新たな一面はありましたか?

 

猪野:そんなにも真摯なの? と思いました(笑)。大志が僕のことをサラッとやると思ったと言ってましたが、僕も同じような印象を持っていたんですよ(笑)。サラッと芝居をするタイプかなと。でも、実際にこうしてやってみたら、ガチガチに向き合ってる。だから、すごく楽しいです。一緒にやっていて。

 

杉江:意外と同じ印象だよね、同い年だし。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

 

猪野:僕は好きです。(演出の渡邉)さつきさん、畠中さんを含めて、少人数で作り上げる芝居なので、3時間、4時間稽古をすると全員がぐったりしちゃう(笑)。そのほかにももちろん、歌稽古をしたり、ピアノの練習をしたりもあるんですが、すごく集中してやれるし、お互いにディスカッションをする時間も設けられているので、その時間が僕はすごく楽しいです。やっぱり人数が少ないので、共通認識を取りやすいんです。

 

杉江:確かにね。3人しかいないから、知らないところで話が進んでいるということもないですし、3人芝居は楽しいですね。

 

――最後に、改めて本作の見どころと公演への意気込みをお願いいたします。

 

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杉江:タイトルや作品の雰囲気から、骨太そうだなとか、重いお話なんじゃないかと感じているお客さまも多いかなと思います。もちろん骨太な作品ですし、"死"が付きまとっている話ではありますが、それよりは3人がそれぞれに見ている光や3人が合わさった時に見える光の美しさ、儚さがこの作品の魅力だと感じています。畠中さんの歌を聞きに来るだけでも十分価値がある公演だと思いますし、猪野ちゃんの歌、僕たちが畠中さんとどう絡むのかも見どころです。何度も観ていただけるような作品にできるよう頑張ります。

猪野:全体を通してバイオレンスさの漂う作品ですが、メロディーによって美しく見えることを目指したいと思います。個人的には音楽家という役も正気でいられなくなる役も殺人鬼も初めてです。僕はまだ「こうしたい、ああしたい、でもどうすればいいんだろう」と稽古の中で試行錯誤している段階にいますが、稽古を通してより深めていきたいです。きっと満足度の高い作品になると思います。

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