甲斐翔真のミュージカルコンサート「KAI SHOUMA MUSICAL CONCERT on Christmas Day 2021 Featuring MAAYA KIHO and HIRAMA SOICHI」が12月25日、有楽町・オルタナティブシアターで開催された。甲斐は2016年『仮面ライダーエグゼイド』のパラド/仮面ライダーパラドクス役で注目され、2020年には『デスノート THE MUSICAL』の主役・夜神月役で華々しくミュージカルデビュー。以降『RENT』ロジャー役、『ロミオ&ジュリエット』ロミオ役など、若手俳優なら誰もが憧れる大役を次々と演じてきているミュージカル界期待の新星だ。ゲストに真彩希帆、平間壮一という先輩俳優ふたりを迎えた、甲斐にとって初のこの単独ライブの模様をレポートする。
開催日はクリスマス当日。静寂の中登場した平間の「クリスマスに始める......」というひと言から始まるオープニング。これは物語がクリスマス・イブに始まるミュージカル『RENT』の冒頭を模したもの。甲斐と平間は2020年11月に『RENT』で親友役として共演、だがこの作品は公演期間中盤に新型コロナウイルスの影響で突如中止となり、そのまま再開は叶わなかった。おそらく公演を観ることができなかったファンも多くいただろう。そんなファンの思いを昇華させるかのように『RENT』のオープニング「Tune Up #1~RENT」を平間とともに熱唱。その選曲からすでに甲斐のミュージカルへの、そしてファンへの愛が感じられる。これはファンにとっては嬉しいクリスマスプレゼントだ。
直後のMCで少し興奮気味に「絶対に(このコンサートは)この言葉から始めたかった」「1年越しで『RENT』をお届けできた」と語り、笑顔を見せる甲斐。そして自身がミュージカル俳優という道を進むにあたり大きな影響を受けたふたつの存在、世界的ミュージカル俳優ラミン・カリムルーと韓国ミュージカルへの思いを話し、韓国ミュージカル『マタ・ハリ』『フランケンシュタイン』の楽曲に加え、韓国で絶大な人気を誇るブロードウェイミュージカル『ジキル&ハイド』の「時が来た」を韓国語で歌唱。さらにラミン・カリムルーの代表作『ラブ・ネバー・ダイ』の「'Til I Hear You Sing」を英語で披露。ミュージカル界屈指のビッグナンバーの数々を堂々と歌い上げ、観客を魅了した。
続くコーナーでは甲斐がこれまでに出演した作品『デスノート THE MUSICAL』『RENT』『マリー・アントワネット』『ロミオ&ジュリエット』からのナンバーを感情豊かに聴かせたかと思えば、現在映画も公開中の『ディア・エヴァン・ハンセン』のナンバーなど多彩な楽曲を歌っていく。甲斐の出演作以外の楽曲はどうやら本人セレクトらしく、いずれも曲紹介で「この曲を初めて聴いた時に、絶対歌いたいと思った」という思いを語っており、途中で「僕、どの曲にも同じこと(動機)言ってますね......」と苦笑していたが、それだけ甲斐の各作品、各楽曲へ対する熱い思いが伝わってくる。実際、1曲1曲を丁寧に歌う姿が好印象だ。
ゲストのふたりも、真彩が「スィンク・オブ・ミー」(オペラ座の怪人)で美しいソプラノを聴かせ、平間が次回出演作『The View Upstairs -君が見た、あの日-』の劇中歌「The Future is Great」を一足早く披露するなどソロナンバーで魅了すると同時に、甲斐とのデュエットナンバーでも息のあったところを見せる。
中でも甲斐の夜神月に対し平間がLのパートを歌った「ヤツの中へ」(デスノート THE MUSICAL)、甲斐&真彩で歌った大ヒット映画『グレイテスト・ショーマン』のデュエット曲「Rewrite The Stars」などはこの日限りであるのがもったいないほどの印象深さ。真彩と平間は少し緊張気味の甲斐をトークでも和ませ、「せっかくクリスマスなんだから」とクリスマスエピソードを甲斐にふってみたりと(ちなみにサンタクロースの存在は甲斐さんは小学校3年生くらいまで、平間さんは中学生の頃まで信じていたそう)、この日のライブを盛り上げていた。
後半では、先日まで主演していた『October Sky』の楽曲に加え、来年3月に出演が控えている『ネクスト・トゥ・ノーマル』のナンバーも早くも披露。甲斐のミュージカル俳優としてのこれまでを、そしてこれからの未来をも詰め込んだかのようなコンサートになった。2020年1月のミュージカルデビューからわずか2年弱、出演作は5作。まだまだフレッシュ、「これから」を感じさせる伸びやかな魅力がありながらも、ロックナンバーからポップス、クラシカルで重厚なナンバーと多彩な楽曲を歌いこなした甲斐。何より、誠実な人柄と溢れんばかりのミュージカル愛が伝わり、この人は今後、貪欲にミュージカルに対し熱を注ぎ、どんどん成長していくのだろうと感じる。今後の甲斐の未来を頼もしく思うと同時に、これから歩む道に幸いあれと祝福を送りたくなる、輝かしいコンサートだった。
取材・文:平野祥恵