戦争は続いている──沖縄のあるいびつな家族の一夜、開幕

チケット情報はこちら

沖縄のコザ騒動のあった一夜を描く『hana-1970、コザが燃えた日-』が、1月9日(日)東京芸術劇場プレイハウスにて開幕した。沖縄本土復帰50年を迎えるにあたり、関係者たちが丁寧に作り上げてきた作品だ。演出は、沖縄へ思いを寄せ続けてきた栗山民也。脚本は、栗山との再タッグとなる畑澤聖悟。出演者である松山ケンイチらも、実際にコザ市(現在の沖縄市)に足を運び、舞台に臨んだ。

初日前のゲネプロには多くの人が集った。開演前、舞台の頭上にはためくアメリカ国旗だけが照明に照らされ、劇場を見下ろしている。そこは米兵相手のパウンショップ(質屋)兼バー「hana」。米軍基地に通ずる通称・ゲート通りに面していて、米兵達は飲み代が足りなくなると持ち物を質に入れるのだ。

12月20日の晩。hanaを経営するおかあ(余 貴美子)と、娘のナナコ(上原千果)、同居するジラースー(神尾 佑)が談笑している。彼らの話す沖縄弁は、慣れない観客には聞き取れないかもしれない。しかし端々から聞こえる単語や、表情や声音に耳を傾けていると理解できる。まるで沖縄の小さなお店に、実際に訪れたようだ。

その晩、久々にhanaに家族が集まってくる。アシバー(やくざ)になったり家に寄り付かなかった長男・ハルオ(松山ケンイチ)は笑顔ながらも攻撃的で、周囲を翻弄する。しかし演じる松山のかすかな表情や大げさなしぐさからは、抱える孤独や痛みが透けて見える。次男で教師のアキオ(岡山天音)は真面目でしっかりしており、周りに気を遣う好青年だ。しかし岡山が時々見せる困ったような顔や震える声からは、不安や去勢も感じられる。ふたりは血が繋がっておらず、顔を合わせばケンカになる。それは、戦争によって傷つき、いびつさを抱えざるをえなかった家族の姿だ。

終戦から25年経っても、沖縄では戦争は終わらない。hanaの店内にはそこかしこにアメリカのものが並び、異国の空気を感じる。日本からもアメリカからも苦しめられてきた沖縄と、そこで暮らす血のつながらない家族。すべては店の中で起こるワンシチュエーションの会話劇だが、彼らの言葉には、戦争によって虐げられた沖縄の、叫びにならなかった叫びが込められているようだった。

公式noteでは台本の冒頭20ページが公開されている。本作は1月30日まで公演後、2月5・6日に大阪で、10・11日に宮城で上演される。

ハルオ役 松山ケンイチ①.jpgアキオ役 岡山天音.jpgおかあ役 余 貴美子.jpg左から アキオ役岡山天音、ナナコ役上原千果、おかあ役余 貴美子、ハルオ役松山ケンイチ.jpg

取材・文:河野桃子 撮影:田中亜紀

チケット情報はこちら

前の記事「KERA CROSS 第四弾『SLAPSTICKS』 その1 木村達成さん」へ

次の記事「KERA CROSS 第四弾『SLAPSTICKS』 その2 桜井玲香さん」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉