左からG2、中村七之助、尾上菊之助、スタジオジブリの鈴木敏夫代表取締役プロデューサー、松竹の安孫子正代表取締役副社長
12月に新橋演舞場で上演される新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』の製作発表記者会見が9月30日に行われた。会見には、尾上菊之助、中村七之助、スタジオジブリの代表取締役プロデューサー鈴木敏夫、松竹の代表取締役副社長安孫子正、演出のG2が登壇した。
漫画『風の谷のナウシカ』は、宮崎駿が1982年から雑誌『アニメージュ』で連載を開始し、1994年に完結した全7巻の作品。舞台となるのは、"火の七日間"と呼ばれる戦争によって産業文明が滅び、大地は腐海に覆われ、人間同士が争い続けている世界。"風の谷"の族長の娘ナウシカがさまざまな困難に立ち向かう姿が描かれ、連載途中で映画化されて以来、日本のみならず世界中で愛され続けている。
原作『風の谷のナウシカ』全7巻(徳間書店刊)©Studio Ghibli
会見では、原作漫画全7巻を歌舞伎舞台化し、昼の部・夜の部を通して披露することが発表された。主人公のナウシカ役を務める菊之助は、「5年前からスタジオジブリさんに歌舞伎化をお願いし、製作準備をしていました。今、上演の発表ができることに武者震いをしています」と感慨深く語った。
さらに続けて「環境問題や遺伝子問題といった壮大なテーマを持つ『風の谷のナウシカ』を歌舞伎で表現すると、どのような化学反応が起こるのか、とてもワクワクしています。久石譲さんの曲も何曲かお借りして、和楽器で演奏します。ジブリのファンにも歌舞伎のファンにも絶対に納得していただける作品にしたいですね」と意気込んだ。
トルメキアの皇女・クシャナを演じる七之助は、「兄がジブリの大ファンで、ナウシカが初恋の人だそうです(笑)。以前『かぐや姫の物語』で私が御門の声をさせていただいたときも大喜びしていました。それから時を経て、ジブリ作品を自分たちのホームである歌舞伎で上演させていただけることを本当に嬉しく思います」と喜びを語った。
さらにクシャナについて「きっと皆さんの思うクシャナは、悪人のイメージですよね。でも、原作では『生きるためにはこの道を進むしかない』と苦しむかわいそうな一面もある。単なる恐ろしい悪役ではなくて、クシャナの心の揺れも表現していきたいです」と思いを巡らせた。
スタジオジブリの鈴木は、「『風の谷のナウシカ』は宮崎にとって大事な作品。いままで実写化のお話もすべてお断りしていました。菊之助さんから歌舞伎化のお話をいただいたときも、宮崎が断ってしまうと思っていましたが、『やろうよ』と言ったので驚きましたね。歌舞伎を舞台化するにあたって宮崎が出した条件はふたつ。ひとつは『風の谷のナウシカ』というタイトルを変えないこと。もうひとつは僕が会見に出ることです(笑)」と話した。さらに、「楽しい仕事になると感じています。期待しているので、いい作品を作ってください!」とエールを送った。