●ヒラノの演劇徒然草●
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が9月7日、東京・赤坂ACTシアターで開幕しました。
この作品は、世界で500万人を動員した大ヒットミュージカル。
日本では昨年、宝塚歌劇団星組で、次いで今年雪組でと上演されていますが、今回は男女混合の日本オリジナル版としての登場です。
初日前には、公開舞台稽古と囲み取材も行われました。
ロミオ役は、城田優と山崎育三郎。
ジュリエット役は、ともにこれが本格的デビューとなる昆夏美とフランク莉奈。
とても若く、フレッシュな恋人たちです。
「皆さんそれぞれ、役がすごく立つ声を持った方たちが集まっているし、ダンスは(振付の)TETSUHARUさんがすごく素敵に仕上げてくれたし、音楽も世界500万人が観たという、僕も初めて聴いた時に"これは素晴らしいな、これは好きだな、やりたいな"と思ったくらいに素晴らしいミュージック。全部がみどころなんですが、最大のテーマであるロミオとジュリエットの悲恋、悲劇を通して愛の尊さや素晴らしさ、争いの愚かさを描いているところ。観てくださったお客様がとても切ない思いと一緒に温かい気持ちや、愛に対してピュアな心に戻れる時間を提供できる作品だと思っています」
と城田さん。
山崎さんは「ハードな稽古をみんなで重ね、本当にゼロから作り上げている感じだったので、(開幕して)感動です。今まで出た作品の中でも、各ジャンルのプロフェッショナルが集まっていて要求されることも高かったし、音楽も本当に音域が広くて、ロミオは特に喉への負担も大きいしダンスもしなきゃいけない、ほんとに24時間じゃ時間足りないくらい、この作品に没頭しました」とその苦労を。
またジュリエットへ質問が飛ぶと、まず城田さんが
「いま大変緊張しているんで和ませてください(笑)。舞台上ではもっと緊張しちゃうから今は訊かれたことに素直に答えればいいんだよ」と話し、報道陣に向かっても「優しくしてあげてください!」。優しい~。
そんなジュリエット、まず昆さんは
「最初は(ロミオのふたりと)お話するのも緊張、って感じだったんですが、ふたりともほんとに優しくて、楽しく接してくださったので、本当にロミオがこのおふたりで良かったなと思います」。
(ここで「ねー、良かったねー」と保護者のような合いの手を入れる城田さん...)
フランクさんも
「もう初めてのことだらけで、すごい不安の中、でも(ロミオのふたりが)リラックスさせてくれようとしてくださったり、毎日たくさんアドバイスしてくださった。本当に優しくて素敵な方たちだなといつも思います」。
...と話すフランクさんを優しく見つめるロミオズ...。
またダブルキャストであることに関しては、
「ほんとに僕はまずWキャストでよかったと思っているし、そのWキャストの相手が山崎育三郎くんでよかった。稽古に入る前からふたりでいろんな話をしました。今日から劇場で会うことはなくなるんですが、でも僕は毎公演どこかにいる育ちゃんに向かって「育ちゃんよろしくね!」って言って公演に出る次第でございます(笑)」
と城田さん。
また
山崎「本当にこの夏はこの稽古が毎日あって休みもなくて。朝から寝るぎりぎりまでやっていました」
城田「俺がジュリエットだよね、育ちゃんの」
山崎「この夏は本当に一番一緒にいたのは優君...」
城田「毎日一緒にいて、毎日ごはんを一緒に食べて、毎日一緒に帰って、毎日朝一緒に行って...」
山崎「実際、ジュリエットパートを交換して練習をやったりもして...」
なんて、ラブラブ(?)なお話も...。
さて、本編の方は、同じ小池演出とはいえ、前述の宝塚版とはまったく違ったものに。
ヴェローナの町、モンタギューとキャピュレットの2家の争いが描かれる冒頭から、荒々しさとヒリヒリとした緊張感が漂います。
そんな中、モンタギューの跡継ぎながら争いを好まないロミオは、まだ見ぬ恋人を思って夢見心地。
城田ロミオ、とにかくカッコイイです。王子様です。
キャピュレットの娘、ジュリエットも恋に憧れる少女。
昆さんは透明感のある声、キュートな笑顔!そして初舞台とは思えない舞台度胸、臆することなく堂々と演じています。すごい。
舞踏会で出会い一目で恋に落ちたふたりは、愛を誓い合います。
有名なバルコニーのシーン。
城田ロミオの優しいまなざし、昆ジュリエットの嬉しそうな表情。ロマンチックで素敵!
ロミオの仲間、ベンヴォーリオの浦井健治さんと、マーキューシオの良知真次さん(石井一彰さんとのWキャスト)。
1幕の彼らは、向こう見ずな青春真っ只中、のライトな若者たちです。
が、後半は一転、浦井さんは最後に生き残るベンヴォーリオの嘆きや憤りが、浦井さんらしい実直さもにじみ出て、なんともやるせない気分にさせられます。
良知さんも、微妙なコンプレックスを抱えているがゆえの反動での怒り、などマーキューシオの繊細な心情をうまく演じていました。そして良知さん、身体のキレが抜群!見ていて楽しい。
こちらはそんなモンタギュー3人衆が「俺たちこそが王」とアイドル顔負けに歌い踊る「世界の王」のシーン。
ちなみにここのダンスに関しては、囲み取材で
「今回はアンサンブルという方たちがおらず、ダンサーの方が出ている。本当にダンスが長けている皆さんが後ろにいる前で僕たちも一緒に同じ振りを踊るので、多分、育ちゃんとふたり、一番練習したのがダンスです。この曲は僕らが間違いなく一番(練習で)踊った」(城田)
「毎日、稽古でみんなが帰ったあと必ず踊りました。何千回踊った?ってくらい...。ロックだったりヒップホップだったり、ちょっと普段のミュージカルとは違う動きだったりするのがすごく難しくて、ふたりでいつも居残りしていました」(山崎)
なんて話も。
そういえば先月私が稽古場に伺ったときも、城田さん&山崎さんはこのシーンの練習していました。
一方でロミオはやがて来るだろう死への恐怖も抱いています。
仲間たちと楽しそうにすごしていても、ひとりになったとたん不安が押し寄せる。
若者らしい繊細に揺れる感情を城田ロミオは鮮やかに演じます。
後ろは死のダンサー・中島周さん(大貫勇輔さんとWキャスト)。
宝塚版で演出の小池修一郎さんは"死"に相対する存在として"愛"を出しましたが、今回はオリジナル同様"死"だけ。
そのことが、作品全体を暗い予兆が包み込む効果を生み出し、これが悲劇であることがくっきり浮き彫りにしています。
またこの"死"が男性ダンサーというのも、時に妖しく時に恐ろしく、存在感があっていいですねー!
キャピュレット家の跡継ぎにして、ジュリエットの従兄弟ティボルト、平方元基さん(上原理生さんとWキャスト)。
初ミュージカル出演の平方さんですが、ジュリエットへの報われない愛を抱きながらその母・キャピュレット夫人と不倫関係にある複雑な役どころを情熱的に演じています。
若者たちを取り囲む大人たちは、ミュージカル常連の実力派ぞろい。
この演出では、さらに深い業を背負わされたジュリエットの両親。キャピュレット卿の石川禅さんは、家のために娘を伯爵家に嫁がせようとする一面を持ちながらも、間違いなく娘を思っている父親を熱演。卿のナンバー「娘よ」はこの一曲だけでも泣かされること間違いなし。
涼風真世さんは"女"であることを前面に出しキャピュレット夫人を造形。時に争いを煽り、時に争いを止め、最後にはロミオとジュリエットの愛を理解する。その時々で主張が変わるのもまた"女"なんだなあ、となぜか納得してしまいます。
モンタギュー夫人・大鳥れいさんも美しく、この2夫人の並び・ハーモニーの美しさは、非常に豪華です!
そして乳母役の未来優希さんはジュリエットを思う深い心を持ちながらも、調子良さもある、いわば普通の女性。でもその思いが普遍的なものとして観客の心に深く届きます。数々の重要なナンバーも持ち前の美声で響かせました。
現代的なアイテムも取り入れた斬新な『ロミオ&ジュリエット』ですが、舞台が現代に置き換えられたわけではなく、なんとも言えない不思議な魅力的な世界を生み出していました。
とにかく出演者の熱気、パワーがすごい。
悲劇に突っ走る若者たちの姿を、キャストがまさに若さほとばしる熱演で魅せていく世界にぐいぐい惹きつけられました。
こちらは山崎育三郎(ロミオ)&フランク莉奈(ジュリエット)バージョン。
また全然違った魅力的なロミオ&ジュリエットです。
見比べるのもまた、演劇の楽しみのひとつです!
公演は10月2日(日)まで東京・赤坂ACTシアター、10月8日(土)から20日(木)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。チケットは東京公演は好評につき予定枚数終了、大阪公演が現在発売中です。