芝居とアクションが一体となって劇的効果を高めていく「アクションプレイ」を掲げ、"笑って、泣けて、考えさせられて、かっこいい"をテーマとした作品を送り出している30-DELUX。
国内でも観客動員数を飛躍的に伸ばし続ける注目の演劇ユニットですが、2015年には伝統芸能"殺陣"をひっさげついに海外進出、ロンドン公演も大成功におさめました(現地サイト「WHATS ON STAGE」の初日のレビューでは5つ星を獲得)。
そんな彼らがDynamic Arrangement Theater(ダイナミック アレンジメント シアター)と銘打つ、既存の古典作品を大胆にアレンジし再構築する新しい公演形態の第2弾『新版 国性爺合戦』が9月に登場します。
昨年上演された第1弾『新版 義経千本桜』では古典歌舞伎に挑戦しましたが、今回は近松門左衛門の人形浄瑠璃の代表作『国性爺合戦』を取り上げます。
『国性爺合戦』は、中国人と日本人の混血である主人公・和藤内(国性爺)を主人公にし、今から約300年前、鎖国下にあった当時の日本で大評判となった作品。
"明朝復興"を旗印に、海を越え、壮大な物語が展開します。
演じるのは、佐藤アツヒロ、馬場良馬、緒月遠麻、大湖せしる、清水順二、陰山泰ら、華やかかつ個性豊かな俳優陣。
その中で、宝塚歌劇団出身のおふたり...緒月遠麻さんと大湖せしるさんにお話を伺ってきました!
◆ 緒月遠麻&大湖せしる INTERVIEW ◆
――おふたりは、同じ時期に宝塚歌劇団雪組に在籍されていました。
緒月「そうですね、2学年差で」
大湖「その後はキタさん(緒月)が宙組に異動しちゃったから...」
緒月「タカスぺ(タカラヅカスペシャル/年に一度、組を越えてスターが競演する公演)で顔を合わせるくらいだったね」
大湖「でも私はキタさんが辞める時のタカスぺ(2014年)で、共演できてよかったー、と思ったのを覚えています。共演というか、同じ板の上にいただけだけど(笑)」
緒月「がっつり組むのは久しぶりだよね」
大湖「何の作品で引越しした(雪組の最後の出演)んでしたっけ?」
緒月「『ドン・カルロス』と『Shining Rhythm!』(2012年)で...」
大湖「そうだ、ちょうど私が男役最後だった公演だ!」
※大湖さんは男役を10年経験したのち、2012年に女役へ転向。
――じゃあ女性役としてはお互い初共演ですね。
緒月・大湖「そうですね!」
――お互い、宝塚時代の一番印象的なことは何ですか?
緒月「一番の印象的なことは...」
大湖「いっぱいある~!」
緒月「なんかずっと笑って過ごしてたよね。"何が"というより、何でもかんでも笑っていた...」
大湖「うん、うん(笑)」
緒月「わたしたちふたりともゲラ(笑い上戸)なんです。でも基本、真面目なので。実は真面目にやってるからこそ笑っちゃう、ということが多くて。それでふたりしてどツボにはまっちゃう...っていうことがすごい多かった」
大湖「ツボにはまると、長いんですよ。呼吸困難になりそうなくらい...息が出来なくなるほど笑っちゃって。というよりもう、泣いちゃっていますよね(笑)」
――もともと、仲が良いんですね?
緒月「学年が近いというのもあるし、よく同じ場面にも出ていたんです。同じ場面に出る人たちでも、上下(上手/下手)に分かれちゃう、ってこともあるんですが、私たち、それも一緒だったね。同じ組の中でも、トップさん(の出演シーン)に属する人、二番手さんに属する人...みたいに結構、分かれていたりするんですよ。でもせしるとはそこも同じで、すごくよく絡んでいたなって思う。だからそういう意味でも、たくさん一緒になって、たくさん笑っていた。舞台袖でも...何だったら、舞台上でも笑っちゃったりしてました(笑)。私、面白いことがあると、すぐに人に言いたくなっちゃうんです。でも言うと、自分も笑っちゃって自分の首を絞めることになるので、「もう言わない!」って思ってて」
大湖「でもキタさん、我慢できなくて言っちゃうの(笑)」
緒月「そう、それで相手を笑わせたいのに、自分も思い出して笑っちゃう。その私を見て、せしるも笑っちゃう。それで怒られたりして、もう良いことないから、嫌!ってなるんですよね(笑)」
大湖「(笑)」
――笑いのツボが似てるんですかね?
緒月「周波が一緒なのかもしれないです、もしかしたら。でもそれを他の人に言っても、別に笑わないんですよ、不思議なことに」
大湖「そう。でも私も、逆にみんながわっと笑ってることには冷静に"面白~い"と見ていたりするんですが、なんだかキタさんとの笑いのツボはね...」
緒月「なんなんだろうね」
大湖「まわりから見たら"何が面白いの"ってなることも、たぶんあると思うんですが」
緒月「私、笑いを我慢するのが一番、苦しいかもしれない...生きていく中で」
△ 緒月遠麻
――生きていく中で!
緒月「笑いの我慢が一番、私にとっては厳しいですね。苦しい。しかも舞台の上だからなおさら苦しい」
大湖「その瞬間だけじゃなく、あとからふつふつくるんだよね」
緒月「だからもう、せしるを視界に入れないようにするんですよ」
大湖「ひどーい! ...でも本当に視界に私を入れない時があって。本当にひどいんです」
緒月「今日笑ったらもうシャレにならない、って時があるから、その時はせしるの存在を消す!」
大湖「すごい話しかけているのに、身体が後ろを向いていて」
緒月「でもそこで私が振り向いたら、笑うでしょ(笑)」
大湖「笑う笑う(笑)」
緒月「だからダメなの。共倒れしちゃうからね(笑)」
大湖「でもその、向こうを向いてる姿を見てまた笑う(笑)」
緒月「あははは(笑)! でもせしるが後ろで笑っているんだろうなと思って、私も笑っちゃうんですよ(笑)」
大湖「結局笑っちゃう(笑)」
緒月「そう、結局笑って終わるんです(笑)。もう、一度しこたま怒られちゃえばよかったね、私たち。結構、(あいだを)縫ってきちゃったから。呼び出されてめちゃくちゃ怒られたら、止まったかもしれない」
大湖「理事長に呼ばれて怒られるくらいまでいったら...」
緒月「よかったのかもね~!」
――じゃあ、共演は懐かしいですね。
緒月「そうなのですが...、今回稽古場では、面白いこと言うのやめようと思って。面白いことに気づいても、黙っておこうと」
大湖「稽古場で席がお隣かもって話をしてて、ちょっとやばいなと思って(笑)」
緒月「私たち、まわりがシーンとすればするほど、面白くなっちゃうし」
大湖「だからといって対面の席も...(笑)」
緒月「あはは(笑)。結局どこいっても笑っちゃうんだよ。何をしても笑っちゃうからダメだー!」
大湖「ダメじゃん、共演できないじゃん(笑)!」
緒月「誰かに一度、怒られるしかない!」
――もうすでに笑いが止まらないじゃないですか(笑)。宝塚時代を振り返って、お互いはどんな存在でしたか?
緒月「頼もしい存在でした。私は2012年に雪組を離れて宙組へ行ったのですが、やっぱり雪組のことは、これからどうなっていくのかなと気にかけていたんです。そんな中でせしるが娘役さんに転向して、雪組を支える女役として活躍しているのを見て、安心して旅立てた部分がすごくあります。やっぱり上がしっかりしていないと、下は育たないですし。そういう意味で、安心できる存在でした」
大湖「私は、キタさんが宙組に異動する、となった時はもう不安で。私だけでなく、組全体がそうだったと思います。だからこそ、異動がわかってからは学べるものはすべて学ばなきゃいけないと思ったし、実際そうしていました。それに、キタさんの舞台に対しての気持ちや誠実さ、大切にしてきたもの、私たちに伝えてきてくれたものをちゃんと活かしていかなきゃと思っていました。そういうことも伝えてくれるというのは、やっぱり昔から本当に大きな存在ですね...ちょっと今、偉そうでした?」
緒月「(笑)。でも下級生時代からずっと一緒だったからね」
大湖「いや、でも、今も私ちょっとタメ口になってしまっていますが、こんな喋り方でも受け入れてくれる先輩でしたので。何でも話せたり、お芝居でもぶつかっていけたりできたんだなって思います」
――では今回、共演者のなかに名前を見つけた時はいかがでした?
緒月「びっくりというより「あっ、なんか安心」というのが第一印象。せしるがいるといないとじゃ全然違うし、自分をわかってくれる存在がいるって、すごく心強い。だから公演に対する不安が今のところないんです」
大湖「私も、退団後一作目だった『グレイト・ギャツビー』の時に、共演者にみなこ(愛原実花)がいて、まったく同じことを思いました。宝塚の人が共演にいてくれるって本当に心強い」
緒月「一作品目だったし、特にそうだろうね」
大湖「うん。前回は、みなこがいなかったらどうなっていたのかなって、今でもちょっと考えたりする。特にこうやって、宝塚の中でも近い距離感でお世話になった方がいるって全然違う。今回も、キタさんが出ると聞いて「まじですかー!」って言いましたもん。そこにすごく食いついちゃった(笑)、嬉しくて」
△ 大湖せしる
――じゃあおふたりとも、安心して新しい世界に飛び込めますね! ところで30-DELUXさんには、どんなイメージを抱いていましたか?
大湖「やっぱり"アクション"でしょうか」
緒月「そうね。でも今回、私たちはアクションシーン、なさそうだけど...私はもしかしたらあるかもしれないけど、せしるはないだろうね」
大湖「うん、私が立ち回りをしたら、一回転したらもうそれが武器になりそうな衣裳だから(笑)。でも私、退団公演だった『るろうに剣心』で、森先生(30-DELUXの森大)が殺陣指導でした。といっても役柄的に、私は関わらなかったので、一回、刀を突きつけるところで「先生~!」って聞きにいったくらいですが」
緒月「そうなんだ」
大湖「そうなんです。だから今回、ポスター撮影の時「あ、先生!」と言ったら、外ではあまり先生って言わないんですね、ちょっと皆さんに笑われてしまって」
緒月「あぁ、やっぱりそうだよね。宝塚では振付で来られたら"先生"だよね」
大湖「うん、教えてくださる方は"先生"ですよね。だから今回もたぶんまだ慣れずに「先生」って呼んでしまうと思います。なかった? 外の世界で「先生」ってぽろっと言っちゃうこと」
緒月「あるある! やっぱり我々宝塚出身者は、"生徒"って意識が強いのかも」
――そういえば30-DELUXさんは、本稽古の前に殺陣稽古もきっちりやるそうですが。
緒月「へぇ~! 見るの、楽しみ!」
大湖「めっちゃ楽しみ~! 殺陣、自分もやりたくなるだろうなぁ、絶対」
緒月「うん、2・3人やっつけたいよね~(笑)」
大湖「やっぱり、やられるより、やりたいよね(笑)」
――今回演じるのは、緒月さんが渚、大湖さんが錦祥女ですね。それぞれの役柄をご紹介いただけますか。
緒月「主人公の和藤内のお母さんです。初のママ役です(笑)。宝塚時代は(男役だったので)もちろんなかったですし、辞めてからは...先日『天球儀』という公演で母親役はやりましたが、実際に自分の子どもは役として登場しなかったので。今回は目の前に佐藤アツヒロさんが扮する息子がいます。母性というものが課題になるとは思いますが、やりがいのある役になるんじゃないかと思います」
大湖「まだ深い役作りまでは踏み込めていないのですが、私が演じる錦祥女は、キタさん演じる渚とは血の繋がらない母娘です。芯のある強い女性というイメージですね。私はそういう役をやらせていただくことが多いのですが、生きた時代や状況もそれぞれ違ってきますので、また違う形の"強い女性"を作っていけたらと思います。彼女はすごく"高貴な人"でもありますし。それに錦祥女は、強いだけじゃなく、愛もある。優しいからこその強さや弱さといったようなところまで理解して演じていけたらと思います」
――もともとは人形浄瑠璃、そして歌舞伎でも有名な作品です。
緒月「そうなんですよね。歌舞伎には興味あるのですが、でも詳しいかと言われるとけど...「興味はあるんですが」という状態(苦笑)」
大湖「私も、自分も出演した『心中・恋の大和路』(2014年雪組公演)の基となった『冥土の飛脚』とか、宝塚時代に関わった作品なんかは観に行ったりはしているのですが...」
――この30-DELUXさんの"Dynamic Arrangement Theater"シリーズの前回作品『新版 義経千本桜』では、セリフがそのまま歌舞伎の七五調だったりしていました。漢字も多くて、皆さん台本を読むのも苦労されていたようです。
緒月「よかった~、皆さんもそうなんですね!」
大湖「今ちょっと、ホッとしたよね(笑)」
――読んでみて、どんな印象を抱きましたか?
緒月「難しいです。登場人物の名前からして難しいですよね(笑)」
大湖「難しいけど、難しいお話だからこそ、きっちり伝えていかなきゃって思いました。人間関係も複雑だし、展開も早いので、作ってる側は理解してやっている...ということではなく、初めて観る方にもちゃんと伝えられるようにきっちりやっていかないと。...でも人間の欲望がストレートに表れていて面白いですよね。寝返って、またさらに寝返って、とか。そこまでストレートに行動に起こせるって、勇気がないとできないし。昔の人って強いなって思います」
緒月「小むつさん(和藤内の妻/名塚佳織・加藤雅美のWキャスト)とかも、強い人ですよね」
大湖「ですねぇ」
緒月「でも最初から難しいって思っているから、意外と「そうでもなかった」って思えそうな気もしています」
大湖「プラス思考! 確かに、台本を読んでいると難しく感じちゃいますが、ちゃんとそれぞれの役の顔が見えていけば、すんなり理解できるんじゃないかなと思います」
――ちなみに主演は佐藤アツヒロさん。ちょうど光GENJI世代じゃないですか?
緒月「そうです!」
大湖「うんうん」
緒月「パラダイス銀河!」
大湖「ローラースケート!!」
緒月「ポスター撮りでお会いした時に「あっ、光GENJIだ!」って思いましたもん」
大湖「お会いしているんですね! そうかー。私も楽しみです。小学生だったかな? 私」
緒月「私も小学生だったよ? あの頃はローラースケート、みんな買っていましたもんねぇ」
大湖「練習、めっちゃしていました(笑)」
緒月「でもやっぱりお若いですよね。さすがジャニーズさんだな、当時のイメージのままですもん。私たちが見ていた時と変わらない! どういう芝居をされるのかなって、楽しみなんです。佐藤さんに限らずですが、その時々でご一緒する方が、どういうお芝居を作るのか、いつも刺激になります。今回もたくさんのキャストの方がいらっしゃるので、そこが楽しみですね」
――いろいろ、楽しみですね! 最後に意気込みをお願いいたします。
緒月「いやもう...せしるさんと、おんぶにだっこでやっていきたいと思います(笑)」
大湖「本当にそれだよね(笑)。ふたり、手に手をとって!」
緒月「そうですね、それが出来るのがこの仲だなと思うので。よろしくお願いします!」
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:イシイノブミ
【公演情報】
・9月14日(水)~18日(日) THEATRE1010(東京)
・9月24日(土)・25日(日) 東海市芸術劇場 大ホール(愛知)
・9月30日(金) 福岡市民会館 大ホール
・10月14日(金)~16日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)