ベトナム戦争を背景に、命を懸けた究極の愛を描くミュージカル『ミス・サイゴン』が、2年ぶりに上演される。
本作に初参加する、キム役のキム・スハ、ジジ役の中野加奈子。2人は、ロンドンのウエスト・エンドで『ミス・サイゴン』の舞台でそれぞれ今回と同じ役を演じていた経験の持ち主。日本では初舞台となる2人に話を聞いた。
ロンドンで同じ舞台に立っていたキムと中野。
「ロンドンの楽屋で、スハはいつも私の横に座って妹みたいな感じで。日本の『ミス・サイゴン』に合格したときに、2人で『楽しみだね』って言い合っていました。そんな彼女が、(制作発表で)日本語を喋れないのに日本語で素晴らしい歌唱力で歌ってるのを目の前にして感動しました」(中野)
「ウエスト・エンドで精神的にもすごく頼っていたお姉さんが加奈子さんでした。なのでこうして一緒にできることがすごく嬉しいです」(キム)
キムは日本の『ミス・サイゴン』のオーディションがきっかけで、ウエスト・エンドでのデビューを果たした。日本の舞台に立ちたかったという。「私の先生でもありますヤン・ジュンモさんが日本で『レ・ミゼラブル』に出演しました。そこで演じている姿を観て、その挑戦や苦労を知り、日本で素晴らしい舞台に立っている先生をすごいな、うらやましいなという想いを込めて見つめていました」(キム)
中野は、2001年に英国でデビューした作品が『ミス・サイゴン』だった。以後、トータルで6年間出演している。「日本での作品の評判は聞いていました。その方々を目の前にして、これから一緒に演じられるのが信じられないことで、楽しみです。海外でアジアの物語を演じるとき、どうしても文化の違いが仕草に出るんですよね。それで曖昧になってしまう部分があって。日本人は文化的にもベトナム人に近いと思うので、確かなところをちゃんと演じられるんじゃないかと思っています。だからどんな風に演出されるかもすごく楽しみです」(中野)
中野「今までずっと英語でがんばってきたのですが、今回初めて自分の母国語でこの素晴らしいミュージカルを歌える機会があって、これから新たな発見がありそうです!」
キム「一人の俳優の姿を見せるのではなくて、『ミス・サイゴン』という作品を皆さんにお届けできるように準備したいです。観客の皆さんに、この作品が持つ力強さを胸に抱いておうちに帰って頂ければなと思います」
公演は帝国劇場にて、10月19日(水)から11月23日(水・祝)まで(10月15日(土)からプレビュー公演あり)。その後岩手、鹿児島、福岡、大阪、愛知でも上演される。
ライター:中川實穗