■『レディ・ベス』2017年公演特別連載 vol.8■
10月8日、ミュージカル『レディ・ベス』が東京・帝国劇場で開幕しました。
『エリザベート』『モーツァルト!』などのクリエイター、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイが脚本と音楽を手がけ、日本ミュージカル界が誇る鬼才・小池修一郎が演出し2014年に同劇場で世界初演された作品の待望の再演です。
初日前日にあたる10月7日には、主人公レディ・ベス役の花總まりと平野綾、ベスが恋をするロビン・ブレイク役の山崎育三郎と加藤和樹の囲み取材がありました。
その模様をレポートします。
●初日を目前に控えた心境
花總「まるで初演かのような濃密さでお稽古をしてきました。初演から3年を経て、変更点もかなりあります。新しい『レディ・ベス』をお客さまにお見せできる日がいよいよ来たんだなと、ちょっとドキドキしています。今回は(初演に比べ)濃縮されたというか、ぐっと中身が濃いものになりました。お芝居のタッチもも深くなっています。ベスについて言うと、母親(アン・ブーリン)との関係、父に対する思い、姉のメアリーとの関係を、より深くまで要求された稽古期間でしたので、その分、芯が太くなったと思います。「ベスの決断までの物語」というところをよりお客さまにしっかり伝え、かつ共感していただけるような作り方をしてきたので、そのあたりがうまく伝わればと思います」
(初演時は、帝劇初主演だったが...)
初演の時は、とにかく "世界初演" でしたので、すごく大変で、必死で必死でやっていました。幕を開ける必死さと、自分が初めてベスをやらせていただく必死さがおそらく重なった部分もあったと思うのですが、今回は、ベス自身の人生がどうだったかというところにちゃんと焦点をあてて深めていきたいと取り組んでいます」
平野「花總さんが仰ったように、まるで初演かのような熱量で取り組んできました。変わるところはガラッと変わって、ベスも新曲が増え、ロビンとのデュエットも新しい曲になっています。早く演じたいという思いと、果たしてどうなるんだろうというドキドキの中にいます。
全体としては、再演でブラッシュアップされたなという印象を受けます。キャラクターひとりずつの心情がすごく繋がって、シリアスな面が出た。花總さんが仰ったように親子の関係性、家族間の問題、当時のイギリスの状況を掘り下げることで、ベスとロビンとの恋が浮き彫りになっています」
山崎「僕も、初演を迎えるような気持ちです。個人的にはカツラも新しくなり、衣裳も変更になっています。ロビンとしては、ロビンとベスがなぜ恋に落ち、最終的に彼がベスに何を与えたのか、というところが前より明確になった。
そして作曲のシルヴェスター・リーヴァイさんが来日されていて、いま一緒に舞台稽古をすすめているのですが、昨日も歌のメロディが新しく変わったりしています。まだドキドキするところは沢山あるのですが、初演から約3年半たって、みんな色々な経験をしてまたここに集まってこれたので、パワーアップした、濃密な、深い『レディ・ベス』になると思います。楽しみです。
(久しぶりの舞台出演だが...)
ずっとドラマなどをやらせてもらっていて、1年ぶりに舞台の世界に戻ってきて、稽古初日に「みんな声デカイな!」「こんなに大きい声でミュージカル俳優って喋ってるんだ!」と思いました(笑)。でも僕はここで育って、舞台は自分のホームグラウンド。僕は2007年に『レ・ミゼラブル』で帝国劇場に初めて立ったので、ちょうど今年は10年目なんです。色々なことを思い返したりしています。自分がこの3年のあいだで新しいチャレンジをする中で、ミュージカルに縁のなかった方も今回、たくさん劇場に足を運んでくださるときいています。そういう方たちにも「これがミュージカルなんだぞ」という素敵なものをお届けできたらいいなという気持ちでいます」
加藤「皆さんが仰ったように、変更になった箇所もあり、初演を迎えるような気持ちです。今回は「自由とは何なのか」「自分は何者なのか」という作品のテーマを、演出の小池さんがそれぞれの役に対してもすごく与えてくださった気がします。ロビンは自分のことを自由なアーティストと言っていますが、旅をしながら自由を追い求めている。その中でベスと出会い、人間として成長する過程、ベスとの関係性が深まることで、初演にはなかったロビンの一面が見えてきた気がします。
3年という時を経て、皆さん経験も積んでいらっしゃいますし、それぞれの役へのアプローチも稽古場で観ていてとても面白かったです。今はこの積み上げきたものを、いかにお客さんに届けることが出来るかという、楽しみな気持ちです」