7月上演の新作ミュージカル『四月は君の嘘』、ワークショップ&試演会レポート

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今年7月に新作ミュージカル『四月は君の嘘』が上演されます。

原作は新川直司による同名マンガで、2014-15年にはアニメ化、2016年には実写映画化もされた人気コンテンツ。

かつて天才少年ピアニストとして注目を集めていたものの、母の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなってしまった有馬公生、同級生であり自由奔放なヴァイオリニストの宮園かをり、公生の幼なじみの澤部椿、友人の渡亮太、この4人の中学生(今回のミュージカル版は高校生になっています)を軸に、音楽家の苦悩と喜び、青春を甘く切なく爽やかに描いていく物語です。

マンガ原作の舞台はいま"2.5次元作品"として花盛りですが、本作は作詞・作曲に大作曲家であるフランク・ワイルドホーン、編曲にジェイソン・ハウランドというブロードウェイの第一線で活躍しているクリエイターを起用。なんだかとっても、制作陣の"本気"が伝わってくるのです!

その"本気の度合い"がさらに伝わってくる現場があると小耳に挟んだげきぴあ。
なんと本作は、事前にワークショップを重ねながら脚本・音楽を作っていく"ブロードウェイ方式"で制作する、というのです。
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ブロードウェイでは新作ミュージカルを立ち上げる際、ワークショップで実際俳優たちが歌い・演じながら、脚本・音楽を練り上げていく創作方法をとるのはスタンダード。『RENT』などもワークショップで試行錯誤して作られたのは有名な話です。
日本では興行形態の違いから、そこまでじっくり時間をかけて作り上げることはなかなか難しいのですが(とはいえまったくないわけではありません)、本作はその手間隙かかる方式を採用したことに、制作チームの"本気"を感じずにはいられません。

今回、カンパニーがワークショップにとったのは、9日間。
最終日には1・2幕通しての試演会をやる、というスケジュール。
たいていのミュージカルは、本番1ヵ月~1.5ヵ月前から稽古がスタートしますので、本番の約半年前のこの時点である程度の形が作られるというのはすごいことですね。
......と言ったら、なんと実は、1幕の試演会はさらに1年前(2019年2月)にやっていたとか!すごい。

そのワークショップ&試演会、単独潜入取材をしてきました!


 
まず伺ったのは、ワークショップ開始から3日目。
稽古場では、ジェイソンさんのピアノ&キーボードを中心に放射状に皆さんが座っています。
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すぐそばにはフランクさんや、訳詞・演出の上田一豪さんの姿も。
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なおワークショップで作品作りをする際、ブロードウェイでは本番を予定しているキャストで作っていくこともあれば、ワークショップ用にキャストを集めて作っていくこともあります。
この『四月は君の嘘』では、7月の本公演に実際出演するアンサンブルキャストに加え、プリンシパルキャストでは有馬公生の本役である木村達成さん、かをりの母役の木村花代さんが参加。
皆さん実際に出演されますので、ワークショップの場でも何かを掴み取ろう!という熱が伝わってきます。
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取材時、みなさんが当たっていたのは、2幕冒頭付近。
まず感じたのは、ワイルドホーンさんの音楽が、とってもキラキラしている!ということ。

『ジキル&ハイド』『スカーレット ピンパーネル』『デスノート』等々、ワイルドホーンさんの作品は日本でも人気が高く、ミュージカルファンにとっては"お馴染み"の作曲家さん。
どちらかというとスリリングでドラマチックな作品に音楽を提供されることが多いかな......という印象なのですが、今回は本当に......まばゆい音
"青春"にふさわしい音楽。
ワイルドホーン・ファンの方々にとっても『四月は君の嘘』、新鮮なものになるのではないでしょうか。

その楽曲を歌うキャストさんたちも素晴らしい実力です。うまい。
そして皆さん若い! 制服で稽古場にきている人も。高校生たちの青春物語というのが、見ていて違和感なくストンと伝わってきます。
さらに見事な揃いっぷりで驚いたのですが、訊けば、このワークショップに向けて、キャストの皆さんはさらに事前に歌稽古もしていた、とのこと。すごい手間隙かけてる......。

そしてその音楽が、編曲のジェイソンさんの手で、ばっさばっさとテコ入れされていくのです。

「24・25小節目、カットです」
「45小節目、休符じゃなくて歌ってください」
「3つ目の音節、C#じゃなくてCに」
「ソプラノ、アルトと同じところを歌ってください......うん、その方がいいね」
「テナの人、さらに上下に分けます」
 
......私が取材していた間も細かい工事がすごい勢いでされていたのですが、お話を伺ったところ、もっと抜本的な変更が入ることも多々あるようです。
「ここは公生とかをりのデュエットなら、メロディは変えた方がいいね」とガラリと変更するようなこともあるそう。

もともとフランクさんが用意したメロディは"モチーフ"のみで、それを元に仮のボーカルスコアが作られている......という状況でのワークショップだそうですが、それをこの場で実際にキャストとセッションしながらきちんとした形に落とし込んでいる......という感じでしょうか。

もちろん、フランクさん&ジェイソンさんから演出の上田さんに「音楽、これくらいの長さでいい?」といった確認がなされたりも。

一方で、ジェイソンからは「リアリー!? 最後の音、みんな、つぶれてたよ!?」というような歌唱指導や、上田さんから「崩れ落ちる、ってところで音も落ちるけど、エネルギーは逆に上げて」「ここはみんなの歌が公生のトラウマを呼び起こすんだから、公生が歌うエネルギーよりみんなのエネルギーが上回らなければダメ」「ここは歌を聞かせたい歌じゃない、会話をしているテンポで」といった演出がすでについたりも!
クリエイター陣が作品をクリエイトするためのワークショップ、というだけでなく、すでに稽古がスタートしている、という印象。

フランクさんも「ちゃんと意味合いを持って歌って」とキャストたちに繰り返しリクエストしています。

ある曲をあたっている時に上田さんが仰った言葉が印象的だったのでご紹介します。

「これはすごく転調する音楽なんだけど、"音が転調していっちゃう" のではなく、自分たちが "転調させた" という気持ちで歌ってください」

音楽に乗せられるのではなく、こういう感情だから、この音楽が出てくる。
......それはミュージカルとしてとても大切なことであり、この作品はそんな"生"の感情がほとばしる、生き生きとしたミュージカルになりそうな予感がしました。

稽古中はみなさんすごい集中力なのですが、休憩時間にはワイルドホーンさんが「来日していないけど、詞はトレイシー(・ミラー)とカーリー(・ロビン・グリーン)のふたりが作っている。ふたりのために動画を撮るから、みんな、"日本語で"ふたりに喋りかけて!」と動画を撮ったりと、かなり賑やか。
若者たち、元気!
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そしてその数日後、リーディング試演会当日。
関係者も続々と集まり、一種独特な、高揚した空気の中で、そして大きな拍手の中、試演会はスタートしました。
まず音楽チームを代表してフランクさんがご挨拶。
「ワークショップの1週間強、とにかく "息をする"、"呼吸をする" ということを皆さんにお願いし進めてきましたが、自分がいま、息ができない状態です(笑)」

と緊張を語り......kimiuso2-10_1520.JPG

「3年前、美しいこの物語と出会いました。音楽的に、詩的に訴えかけてくるものがたくさんある、美しい物語です。登場人物に、ストーリーに恋をしました。そして、人と人を繋げる音楽、人を癒す音楽、そんな音楽の力を感じる物語に感銘を受けました。

その美しいストーリーのなかに、普遍的なテーマがたくさん宿っていることにも驚かされました。
例えば大人になるということ。子供時代を経て若者として大人の時期を迎えるということ。自分をみつめ、自分を探すということ。こういうテーマはどんな国のどんな言語にも共通するテーマです。

私はNYだけでなく世界各国で作品を作ってきて、30作品くらいやっていますが、今回は本当に正直に「新しい作品です」と言えます。これはとても珍しいこと。それはストーリーと音楽が一緒になって、ひとつの物語を語っているという点においてです。ポップミュージックとクラシックをひとつの作品の中に融合させる。この作品で世界中の若者たちに、クラシック音楽を紹介したい。

ここ10日ほど、皆さんに本当に頑張っていただきました。皆さんを誇りに思います。
私はブロードウェイで自分の作品をかけるたびに言う格言があります。「観客のために我々が作品をかけるのではない、観客と一緒に作品を作るという立場をとろう。毎晩の公演でこちら側もエネルギーを持ち、観客の皆さんからもエネルギーをもらう。お互いの元気と元気が重なり合ってエキサイティングなものが生まれる、そんな日が最高の公演になると信じています。

こちら側からは必ずや最高のものがお届けできると思っています。同じようにそちら(客席側)からもこちらに対し、特別な何かをお届けいただければと思います」

とあたたかいコメントを。

 
続いて演出の上田さんが
「10日ほどワークショップを重ね、やっと発表することができます。(キャストは)だいぶ緊張していますが......しょうがないよね(笑)? 本当に今日、ゼロから作品が立ち上がる瞬間なので、それをみんなで味わって楽しんでいただければ最高です。5月になれば稽古が、7月に本公演が始まるけれど(その経過が)「なんか、めっちゃ楽しかったよね」ってなることを願っています」

とご挨拶ののち、「はじめましょう」とGOサインを出し、試演会はスタートしました。
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本編は主人公の有馬公生役の木村達成さんのモノローグから始まりました。フランクさんの紡いだキラキラの音楽が、観客を一気に『四月は君の嘘』の世界に引き込みます。

公生は誰もが知る天才ピアノ少年だったけれど、母の死をきっかけにピアノの音が聴こえなくなり、弾くのをやめてしまった青年。
白と黒のモノトーンだった彼の世界が、ひとりの少女との出会いで、カラフルに色づいていきます......。
kimiuso2-13_1556.JPGちなみに1年前に行われた「1幕の試演会」と比べると、台本も大きく変化しています。
1年前は、原作を凝縮したような内容でしたが、今回の上演ではミュージカルらしいダイナミズムが加わった印象。より、作品世界に入りこみやすくなりました。

動きはついていないので、スタンドマイクでの歌唱&セリフ。そして本役ではない人も多いのですが、皆さんのキャラの作りこみも、ハンパない!

公生=木村達成さんは優しげな声質に丁寧な歌唱で、トラウマを背負った、でも本心では音楽を愛している青年の心に寄り添っていて、好印象!
眼鏡もかけて、公生らしさもアップ。
kimiuso2-15_1631.JPGほかの学生たちは7月の本公演で演じるキャストとは違う顔ぶれですが、それぞれのキャラクターらしさを出していて、素晴らしかった!
彼らは役は違えど本公演にも出演するので、ぜひお名前、覚えてください。

左から、
宮園かをり飯塚萌木さん
澤部椿田中なずなさん
渡亮太山崎感音さん
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ピアノから距離を置いている公生は、同じ学校に通うヴァイオリニスト、宮園かをりに出会います。
渡のことが好きで、公生のことを「友人A君」と呼ぶかをり。そのかをりの自由で個性的な(そしてコンクールには向かない)演奏に公生は衝撃を受けます。

原作漫画には、かをりや公生らがコンクール等で弾くクラシックの名曲のタイトルがたくさん出てきます。
紙面から音楽が聴こえてくるかのような原作はもちろん素晴らしいのですが、このミュージカルでは、そのクラシックの名曲たちの旋律が、実際に奏でられるのも注目ポイント
フランクさんが「ポップミュージックとクラシックをひとつの作品の中に融合させる」と語っていたところですね。

かをりがコンクールで弾く『クロイツェル』が、そのシーンで彼女の心情を歌うソロナンバーの間奏に登場したり、公生のピアノ『愛の悲しみ』からそのままナンバーに移行したり。
クラシックの楽曲とオリジナルナンバーが別々に登場するのではなく、自然と溶け合っています。

そして、稽古場での試演会にも関わらず、すでにヴァイオリニストさんもいらっしゃいました。
オーケストラが入る演目でも、稽古場では一般的に「稽古ピアノ」と呼ばれるピアノ一本でやることが多いのですが、今回はジェイソンさんが弾くピアノに加え、ヴァイオリンとキーボード(角度的に写真には写ってませんがジェイソンさんのグランドピアノの奥にいらっしゃいます)の3人体制。
このことからも、本作で「音楽」が重要視されていることが、伝わってきます。
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公生のライバルたちも、闘争心むき出しで良かった!このおふたりはいずれも本役としても絵見・武士役として出演します。

井川絵見元榮菜摘さん
相座武士ユーリック武蔵さん
元榮さん、パッツン前髪が絵見っぽいです!
彼らの演奏曲も、原作に忠実でしたので、原作ファンも注目です。
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さらにこの物語、若き音楽家たちの音楽に対する情熱を描くだけでなく、学生たちの青春物語でもあります。
サッカーの試合や学園祭といった、ザ・青春!なシーンでは、実際に若いキャストたちが、その若さを弾けさせていました!
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気付くと立ち上がって(というか飛び跳ねながら...)ノリノリで見ている上田さん、脚本の坂口理子さんはじめスタッフ陣......。
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熱が入ってくると、スタンドマイクをハンドマイクにして歌う皆さん......。
熱演です!
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こちらはかをりの優しいご両親、木村花代さんとUEBOさん。木村花代さんは、本番でも同じ役です。
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登場人物たちは切なさをのみこみ、一歩ずつ成長をしていきます。
木村達成さん演じる公生からは苦しみや悲しみがストレートに届き、青春の痛みが見ている側にも伝わってきます。
でも、その痛みすら甘い。そんな爽やかな青春ミュージカルであり、また、音楽の素晴らしさを高らかに歌い上げている作品でもあります。
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クリエイター陣の "本気" と、若い実力派キャストたちが生み出す、フレッシュなミュージカル。
本公演、大いに期待したいと思います!

音楽を担当したフランク・ワイルドホーンさんと、試演会を終えたばかりの木村達成さんにはインタビューもしてきましたので、次回更新もお楽しみに。

▽試演会は大きな拍手の中、終了しました!kimiuso2-29_1560.JPG

 
取材・文:平野祥恵
撮影:平野祥恵/東宝演劇部提供

 
【公演情報】
7月5日(日)~26日(日) 東京建物ブリリアホール
一般前売:4月4日(土)

[原作]新川直司 [脚本]坂口理子
[作詞・作曲]フランク・ワイルドホーン
[作詞]トレイシー・ミラー/カーリー・ロビン・グリーン
[編曲]ジェイソン・ハウランド
[訳詞・演出]上田一豪
[出演]小関裕太・木村達成(Wキャスト)/生田絵梨花/唯月ふうか/水田航生・寺西拓人(ジャニーズJr.)(Wキャスト)/他

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