1月25日(土)に大阪で開幕、2月1日(土)からは東京で上演される『CHESS THE MUSICAL』。
ABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが手掛けた楽曲の素晴らしさ、東西の冷戦を背負った米ソ・チェスプレイヤーたちの人間ドラマという独創的なストーリーで、世界的にヒットしているミュージカルです。
日本では2012年、13年にコンサート版、2015年にミュージカル版として上演されていますが、今回はキャスト・演出を一新しての新しい『CHESS』、しかも英語上演(日本語字幕あり)!
出演はラミン・カリムルー、サマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀(LE VELVETS)をメインにした、超豪華キャストです!
開幕を目前にした1月某日、フローレンス役のサマンサ・バークスさんにお話を伺いました。
サマンサさんは『レ・ミゼラブル』25周年記念コンサート(2010年ロンドン)でエポニーヌを演じ(なおこの時のアンジョルラスはラミン・カリムルー)、その後2012年に大ヒットとなった映画版でも同役を演じ、一躍人気者に。日本でも「あのエポニーヌ」と言って、通じるのではないでしょうか。
そのエポニーヌから数年たち、今回演じるフローレンスは、ふたりの男性の間で揺れ動く大人の女性。
また新しいサマンサさんの魅力が観られるに違いありません。
ちなみに今年はこのあと、ロンドンで開幕する『アナと雪の女王(FROZEN)』のヒロイン、エルサ役が決まっています。
●『CHESS』STORY●
舞台はチェスの世界大会。
時の世界チャンピオンはアメリカ合衆国のフレディ(ルーク・ウォルシュ)。チェスの天才で、奔放な性格を持つ。彼をセコンドとして支えるのは恋人でもあるフローレンス(サマンサ・バークス)。彼女自身はハンガリー出身で、1956年のハンガリー動乱で親をなくしている。
フレディと対戦するのはソビエト連邦のアナトリー(ラミン・カリムルー)。彼は故郷に妻子がいる。
時は米ソ冷戦の真っ最中。ふたりの試合は単なるゲームの枠を超え、国家を背負った負けられない勝負へ。KGB(旧ソ連国家保安委員会、CIA(米国諜報機関)の思惑も交錯する。
そんな中、フレディの恋人であるフローレンスは、対戦相手であるアナトリーと恋に落ち、アナトリーは亡命を決意する......。
◆ サマンサ・バークス INTERVIEW ◆
―― まずは『CHESS』の出演オファーが、しかも日本から来たときにどう思われたかを教えてください。
「最初、とてもワクワクした気持ちになりました。それから、曲は有名で知っていたのですが出演経験はなかったので、ネットで色々と調べました。「あ、こんなに有名な曲が実は『CHESS』の曲だったんだ」というようなことを知り、いっそうワクワクしました」
―― 公開稽古の囲み取材でも、「『I Know Him So Well』などは子供の頃から聴いていた」と仰っていましたね。『CHESS』との最初の出会いはどんな感じでしたか?
「私が初めて『CHESS』に出会ったのは、おそらく8歳か9歳の頃。その『I Know Him So Well』です。ミュージカルナンバーを集めたアルバムをもらって、その中に『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』、そして『CHESS』のナンバーがたくさん入っていました。それぞれがどの作品の曲かというのはまだ小さくてよく認識していなかったのですが、最初の出会いはここだったと思います」
―― 『I Know Him So Well』はフローレンスとスヴェトラーナのデュエットですので、その曲をご自身が今度、歌うことになるわけですね。
「もう"クレイジー!"っていうくらい、楽しみです!」
―― サマンサさんはやはり『レ・ミゼラブル』のエポニーヌを演じていたことが、日本の観客にとっては印象深い。あの映画公開から8年たって、ご自身がどう変わってきたと感じているかを教えてください。
「8年というのは本当に長い時間ですね。あの時は22歳でしたので、その間に本当に色々なことが変わったと思います。今の29歳という年齢を私は気に入っています。私、ちょっと古風なところがあるので、やっと年齢が自分に追いついた感じ。歳をとることにまったく恐怖を感じていませんので、30歳が来ることも楽しみなんです。そして重要なこと――家族やモラルといったものは不変だなと感じています。例えばすごく仲がいい友だちというのは、10年前も大切で今も大切、それは一切変わらない。私の人生は色々変化してきているし、世界も色々な変化があるけれども、そういう重要なものは変わっていないんです」
―― この『CHESS』を通して、日本のファンにどういうサマンサさんを感じて欲しいですか?
「私の印象は『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役が強いと思うのですが、今回演じるフローレンスはそれとはまったく違うキャラクターです。強く、頭が良い。対してエポニーヌはストリート暮らしをしている少女です。まったく違う女性を演じますが、そのふたりにも共通点があります。それは弱さがあり、でもロマンチックで、その弱い自分をさらけ出すところ。その情熱が彼女たちの人生を変えていくところは共通しているんじゃないかなと思います。そのあたりを感じていただければ」
―― フローレンスは東欧出身で、いまは西側に住んでいる。とても複雑なバックボーンを持っている女性ですね。彼女に何か共感するところはありますか?
「仰るとおりフローレンスと私はバックグラウンドがまったく違いますが、この物語のテーマは万国共通で、"愛" がテーマだと感じています。『CHESS』の物語は、いまの時代にもしっくりくるストーリーラインですし、フローレンスが対面している困難は、現代の女性も共感できるのではないでしょうか。それに個人的には、彼女の恋の旅路にも共感を覚えます。私は役を演じるにあたり、私がその役を好きか嫌いかを判断する立場にはなく、その人物の脳内に入って演じなければいけないと思っているのですが......好きか嫌いかで言えば、フローレンスのことはとても好きですね」
―― 今回の『CHESS』カンパニーは、サマンサさんから見てどんな印象でしょう。
「本当に "大好き" です! 特にアンサンブルの皆さんはとても努力家で、才能があり、そして英語ですべてを演じるということがとても素晴らしいと思っています。発音ひとつとっても素晴らしい。そして私たちをあたたかく受け入れてくださって、とても大好きです。素晴らしい経験をさせていただいているのは、素敵な方々のおかげだと思っています。昨日もイギリスに電話して「本当に素晴らしい体験をしているの!」って話していたんですよ」
―― 稽古場ではラミン・カリムルーさんと楽しそうにお話されていました。ラミンさんとは『レ・ミゼラブル』以来の共演でしょうか。
「そうです。またラミンさんと一緒の仕事が出来て、非常に光栄です。初対面はだいぶ昔で私が17歳の時、『ラブ・ネバー・ダイ』のワークショップでご一緒しました。そのあとに『レ・ミゼラブル』25周年記念コンサートで共演しています。それ以降は(共演はなくとも)共通の友人も多いですし、『レ・ミゼラブル』カンパニーの同じ一員という意識でいました。素晴らしい才能を持ち、友人でもあるラミンさんと今回共演できて、本当に嬉しく思っています」
―― 『CHESS』という作品を通し、お客さまに何を伝えたいですか?
「フローレンスのことを正しくお伝えしたいです。彼女はとても力強く、正直な女性。まわりからは下心があるとか言われがちですが、彼女は心から正直に行動しているだけなんです。フレディに対しても自分をなげうって心からサポートしていますし、そのフレディが彼女を失望させたところに、同じ考えをもったアナトリーが現れ、恋に落ちる。彼女は正しい人間だと私は思っていますので、それをご覧いただきたいです」
―― フローレンスはフレディとアナトリーの間で心が揺れますが......サマンサさん個人としては、フレディとアナトリー、どちらに惹かれますか?
「それはラミンとルークじゃなくてですよね(笑)!? そのおふたりは、おふたりとも素晴らしいんですよ! ......フレディとアナトリーだと、アナトリーですね。フレディとの関係性は、スタートはとてもよかったと思うんです。彼も才能ある男性ですし。ただ、すべて捧げてサポートしていても、期待という期待をすべて彼は裏切ってしまう。彼女としては母親のように何から何まで、すべてを面倒みなくてはいけない。こういう関係って長続きしないと思うんです。そして自己中心的だったフレディに対し、アナトリーは彼女の愛をちゃんと受け止める。そこがすごく重要だと思います。跳ね除けるフレディに対し、受け止めるアナトリー。そこが、私がアナトリーの方がいいと思う理由です」
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:森好弘
【『CHESS』バックナンバー】
●2020年ミュージカル版
#1 公開稽古レポート
●2012年コンサート版
# 開幕レポート
●2013年コンサート版
#1 マテ・カマラス インタビュー
#2 安蘭けい&荻田浩一 インタビュー
#3 石井一孝&中川晃教インタビュー
#4 まもなく開幕
#5 稽古場レポート
#6 開幕レポート
●2015年ミュージカル版
#1 田代万里生インタビュー
#2 公開稽古レポート前半
#3 公開稽古レポート後半
#4 開幕レポート
#5 アフタートークレポート
【公演情報】
1月25日(土)~28日(火) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
2月1日(土)~9日(日) 東京国際フォーラム ホールC