昨年末、代表作の音楽劇リメイクで月刊「根本宗子」旗揚げ10周年イヤーのフィナーレを飾ったばかりの根本宗子が次の展開へ乗り出す。"女子向け"を前面に打ち出す『THE MODERN PLAY FOR GIRLS』をタイトルに掲げ、新旧2作を連続上演。稽古をスタートさせた根本に聞いた。
なぜこのタイミングで"女子向け"を謳うのか──という問いかけに、根本は「ラジオ(オールナイトニッポン0のパーソナリティ)を1年間やったところ、大学生くらいの男の子が観に来てくれるようになった」と客層が変化したという。一方であまり「女性客は増えていない」と感じ、日ごろ演劇を観ることのない"女の子"に刺さりそうな作品を企画した。
今回根本が重視するのは"ビジュアル"。ニットブランド・縷縷夢兎(るるむう)を手がけるアーティスト・東佳苗による舞台装飾の中、同一セットで2演目が展開される。これまでも自身のステージを彩ったことがある東の仕事に「正統派で王道の演劇作品とは違うところへ行ける」と信頼を寄せる根本は、「佳苗ちゃんがデザインした空間に何を書いたらおもしろいか。(美術に)台本の劇効果を高めてもらう普段とは逆の発想でつくっている」と舞台裏を明かした。
女子への"目配せ"は各作品にも散りばめられている。日本に暮らす女子が大人に成長するまでに経験する葛藤をポップに描いた『Whose playing that "ballerina"?』は"女子あるある"として共感を呼ぶだろう。派生ユニット・別冊「根本宗子」名義で2016年に初演し、そして2018年に再演された作品を、今回根本は全編英語劇としてアレンジ。「同じ性別で同い年で同じ学校にいるのに全然わかりあえない女子たちがしぶしぶ一緒にいる状況って、日本じゃなくてもありそう」と考え、海外にルーツを持つ者を含めた英語の堪能なキャスト4人を起用した。「純日本人だけが演じるよりも、さらに"バラバラ感"を醸せるかなって」。
対する新作『超、Maria』は、チャラン・ポ・ランタンのボーカル・もも(妹)と根本の二人芝居。ももに聖母マリアを重ね、"許す"をコンセプトに女子を肯定する物語が進むという。そう考えたのは「周囲の期待に応え、要望は全て受け入れる度量を持ちながらも"私は私"の姿勢を崩さない」というもものスタンスを根本が感じ取ったから。「現代を生きる上で強い気がして」と語り、創作のヒントに繋がった様子を覗かせる。
『超、Maria』の音楽は、同じくチャラン・ポ・ランタンのアコーディオン奏者・小春(姉)が担当。2018年の『愛犬ポリーの死、そして家族の語』から数えて4度目のタッグとなるが、小春自身がバッグバンドのカンカンバルカン楽団を引き連れ、劇中で生演奏するのは本作が初めて。なお、根本いわく「セリフを全て楽曲に乗せるのも初めて」──。これまでは根本のリクエストをもとに、小春がスポット的な楽曲を作詞・作曲していたそうだが、今回はどんな創作スタイルが取られるのだろうか。信頼するクリエイターに背中を預け、彼女たちの力を借りながら躍進する根本の新境地を見届けたい。
『THE MODERN PLAY FOR GIRLS』は、1~2月に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。公演期間のうち、前半の1月22日(水)~26日(日)に『Whose playing that "ballerina"?』、後半の1月29日(水)~2月2日(日)に『超、Maria』が上演される。チケットは販売中。
取材・文:岡山朋代