【CHESS in Concert:vol.2】安蘭けい&荻田浩一インタビュー

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ABBAのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァースが音楽を手掛けたミュージカル『CHESS』
チェスの世界大会を題材に、東西の冷戦という背景を背負った登場人物たちのドラマを綴っていく物語ですが、その音楽性の高さでコンサートバージョンで上演されることも多い本作、日本でもコンサート版として2012年1月に初上陸しました。
この初演はリピーター続出の大好評を博し、この冬、待望のセカンドバージョンの上演が決定。
メインキャストは安蘭けい石井一孝中川晃教という初演メンバーが続投、さらにアービター(審判)役としてマテ・カマラスが加わります。

げきぴあでは、キャスト陣にこの作品の魅力を伺うインタビューを連続掲載!


第2弾は、ヒロイン・フローレンスを演じる安蘭けい、そして演出の荻田浩一が登場。
たっぷりお話を伺ってきました!
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安蘭けい&荻田浩一 インタビュー



――2012年に行われた前回の公演が、日本初演でしたね。どんな公演でしたか?

安蘭「去年のことなんですが、なんだかすごく記憶の彼方...。すごく楽しかった思い出とともに、難曲を制覇することの大変さが印象に残っていますね。もう、とにかく難曲でした」

――そうなんですか。とても気持ち良さそうに歌っていらっしゃるなと思ったのですが。

安蘭「『Nobody's Side』とかはパワーで押せるんですが、『Heaven Help My Heart』とか『I Know Him So Well』とかは...難しかったですね...。ソロナンバーもですが、みんなでコーラスする曲ですと、自分で音取りしていてもさっぱり曲の全貌が見えなくて。みんなで歌って「あ、こういう曲なんだ」とわかる、自分ではなかなか解読しがたい曲が多かったです。本当に、聴いている分には「あ、歌える!」って思うけど、譜面を前にしたら歌えなくて、びっくりしたんですよ」

荻田「でも『CHESS』は、楽曲は本当に難しいんですが、聴いている方にはとても素晴らしい、いい曲揃い。これまでも『CHESS』を上演するならコンサートバージョンでやりたいという国がいっぱいあり、実際過去にも何度もこういう形で上演されてきています。ただ物語のプロットが難しくて、楽曲の良さに目が行く前に物語を追うのに必死になりすぎちゃうきらいもあり...。日本初演ですので、この素晴らしい楽曲をまずお客さまに知っていただきたいというのが初演の狙いでした」

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――"in Concert"ですもんね。とはいえ、かなり深いところまで心情を掘り下げた演出をされていて、コンサートと呼んでしまうにはもったいない充実の公演でした。

荻田「これが『オペラ座の怪人 in Concert』『レ・ミゼラブル in Concert』だと、お客さんもだいたいストーリーを知っているのでそんな悩まなくても良かったのですが(笑)。前回は『CHESS』という名前は知っているけれど、数曲は知っているけれど、ストーリーは...、というお客さまも結構いらっしゃったと思うので、この歌は何の場面で歌ってるのかがわからないと、楽曲に感情移入もしにくいですよね。ある程度は『CHESS』のストーリーラインがわかるうようにしないと。ただセリフもある一本のミュージカルとしての盛り上がりと、コンサートとして聴いたときの盛り上がりは違いますので、曲順も変えたり、なおかつ最低限のストーリーがわかるように...と前回いろいろ悩みましたが、結果、すごくシンプルな構成ながら、なんとなく『CHESS』という作品自体の理解は多少得られたかなと思います」


――ストーリーを伝えつつ楽曲の魅力も伝えるという、最強のキャストが揃いましたね。手応えもあったのでは?

荻田「そうですね。結構なお手前でした(笑)」

安蘭「なによ、それ!(笑)」

荻田「でも安蘭さんもそうですし、石井一孝さん、中川晃教さんと、作品にふさわしい人たちが集まったというのはラッキーなことでした。今の日本で『CHESS』をするんだったらやっぱりこういう人たちじゃないと。あるいは、こういう人たちが活躍している今だからこそ、やっと『CHESS』ができるのかなというのはすごくありますね。安蘭さんのフローレンスに関しては、自立している女性なんだけど、心に弱い部分やトラウマがあって、でも素直にひとに頼れない...というのが、すごく安蘭さんの印象と似合ってましたし、なにしろ曲自体が彼女に合っていた。コンサートバージョンと言ってもミュージカルの歌なので、芝居的な力がないと聴いていても面白くないじゃないですか。『CHESS』という物語を踏まえた上で芝居的なニュアンスを入れないと歌えない。ちゃんと芝居として構築してくれたのは素晴らしいし、そこが彼女に期待していたところだったので、充分にやってくれてありがとうございました、というところです(笑)」

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――安蘭さんはフローレンスをどういう女性ととらえていますか?
(※フローレンスはアメリカ側の人間だが、もともとはハンガリー出身。ハンガリー動乱でソ連軍に父を殺されたとされている)

安蘭「これといってインパクトがある役じゃなくて、誰かを横で支えているという役だったし、思い悩み方も静か。私がやる役だと、たいてい「悩んでるぞー!」って表現するけど(笑)、フローレンスは静かに悩んでる感じ。今までにないタイプでしたね。背負ってるものが重いし、でもうちに秘めた強さもあり...キャラクターとしては難しかったです。時代とか国とかに翻弄された女性なんだけど、でもちゃんと信念というものを大切にしている人だと思いましたし、ふたりの男性に思いを寄せられるっていうくらい魅力的な女性でもあったので、そういう部分でも女性性の少ない私にとっては難しかったです」

荻田「でも安蘭さん、僕は宝塚に在団していた頃から知っていますが、宝塚を退団して年月が過ぎていく中で、どんどん女性としてのスキルが高まってきていると思います。宝塚時代から培ってきたある種の強さ...男役でトップスターをやってきたからこそ持っている孤独な強さ、それを持ちつつも、より女性的な弱さや優しさも出てきて、女性としての表現の幅が彩り豊かになっている。今回は引き出しが増えた分、複雑な心情を、さらに違う技で繰り出してくれることを期待しています(笑)」

安蘭「私の引き出しが増えていたらいいんですけど(苦笑)。でも前回は歌との格闘に費やしてしまったので、男性ふたりに翻弄されて国に翻弄されて...というフローレンスとしてのより深い部分も、今回はもっと考えられるかなと思います。荻田さんのお話では、国同士の争いも今回より深く描かれるということですし。あと私にはやっぱり足りない女性的な面が(笑)去年やった時より増えていればいいなと、自分にも期待しつつ、ですね」

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――ちなみに安蘭さん個人としてはフレディとアナトリー、どっちに惹かれますか?

安蘭「歌いたい曲はフレディの方が多いですね!『One Night in Bangkok』とか『Pity the Child』とか、あのめちゃめちゃ難しい曲を男だったら歌いたい!」


――あ、そういう視点で見ちゃうんですね(笑)。

安蘭「男性としては比べようがないので(笑)。...でも大人なアナトリーの方がいいかなー。ただアナトリーを好きになることによって不倫関係が生まれるという、そこは許せないところですけどね! 不倫は文化みたいなのはダメ(笑)」


――そして今回はアービター(審判)役で、マテ・カマラスさんが加わりますね。安蘭さんはマテさんとは『MITSUKO』で共演していらっしゃいますが、今回のことですでに何かお話されましたか?

安蘭「うん、しました! 一緒にヤリマース!って喜んでました(笑)。マテ、向こう(欧州)で『CHESS』をやった時にはフレディをやってたみたいですよ。どんな風になるんだろう。まったく健ちゃん(初演でアービターを演じた浦井健治)とは違うキャラクターになりそうですね」

荻田「アービターというのは台本上も個人の名前があるわけではなく、"審判"という名前でしかない。いろんなバージョンで、おじさんみたいな格好で出てくるときもあれば、ロックスターみたいな格好で出てくるものもあります。チェスというゲームそのもののイデア、チェスのルールそのものを体現したような役柄なので、今回マテさんが入ることで、マテさんの存在感、異物感が天上の声みたいに聞こえたらいいですよね。絶対に覆すことができないルールブック。より、神様的な存在になるんじゃないかなと思います。...チェスの帝王。黄泉の帝王じゃなくて(笑)」

安蘭「マテがこの世界を牛耳ってるんですね」

荻田「そうそう、マテが管理しているチェス盤からなんとかはみ出そうとしているけれど、はみ出せない人間たちと、たまにはみ出しちゃった人たちの物語。絶対に変えられない運命と、その運命に抗っている人間たちという構図が見えれば」

安蘭「面白そう~!」

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――さらに、戸井勝海さんが加わります。戸井さんのポジションは、初演にはなかった部分ですよね?

荻田「そうなんです。戸井さんには前回出てなかったキャラクターとして登場してもらおうと思っています。前回はすごくシンプルに、『CHESS』のベースとなっているフローレンスとアナトリーとフレディの物語を中心に置きましたが、ありがたいことに前回キャストのみなさんが大活躍して、難曲の数々を歌い上げてくださり、そのおかげで再演できることになりましたので、前回削ぎ落としたうちのいくつかをちょっとだけ増やしてみようと。戸井さんにはウォルターというアメリカ側の人間をやっていただきます。これはチェスの世界大会の話で、アメリカのフレディと、ソ連のアナトリーが対決します。そこにそれぞれセコンドがついているんですね。『あしたのジョー』で言うところの丹下段平(笑)。フレディ側の丹下段平はフローレンスで、アナトリー側にはモロコフという人がついているのですが、それは前回同様コーラスの皆さんで分担してやっていただきます。戸井さんにやっていただくのはフローレンスと同じでフレディ側についているウォルターという人。彼はテレビ局の人というふれこみで始まるんですが、本当はCIAの人で、いわゆる東西冷戦のスパイ合戦に絡んでいる人なんです。初演で中心においた恋愛の三角関係というところのさらに外側にある、アメリカとソ連の代理戦争的な意味合いとしてのチェス、という部分をより色濃く出すために登場してもらうキャラクターです。3人の人生が、もっと大きく国との争いに翻弄されていたんだということがより見えるようになればと思っています」

安蘭「かなりのバージョンアップですね~!」


――でも、チェスというゲームも東西冷戦も、ちょっと日本人には縁遠い題材で、そのあたりも大変だったのでは?

荻田「そうなんですよね。楽曲、歌詞にしてもチェスになぞらえたものが結構いっぱいあるんですよ。だから逆にそれをなるべく際立たせないようにしました。あまりそこにこだわっちゃうと、チェスという競技がわからない、とお客さまに引かれてしまう。それは嫌なので。チェスの細かい用語とか、多分欧米の方はものすごく楽しむんだろうなという部分でも、これを言っても日本人はピンとこないかもというところはかなり減らして、まずは耳から入ってくる言葉がお客さんにとって馴染みあるものに作っています」

安蘭「もう、わかりやすく『ミュージカル 将棋』にしちゃうとか(笑)。そういえば(石井)カズさんがチェスの駒を置くところの手つきが、「それ、将棋ですよ」って荻田さんに言われてましたね(笑)」

荻田「あの人、下町の人だからね(笑)。でも「ポーンの駒はポーランド」みたいな歌詞があるけど、「桂馬の駒はポーランド」にしちゃったら、なんの状況だかわからなくなっちゃう(笑)。でも世の中何が起こるかわからないからね、いつか梅芸さんが『王将』ってミュージカルを作りたくなる日が来るかもね!
 ...カズさんと言えば、あの人いろんなマニアを自称してるんだけど、その中に「僕、譜面マニアだからね!」というのがあって。その彼が「この作品は譜面を書くのが楽しくて楽しくてしょうがない人が書いた譜面だよ!」って言ってて。必要以上に書き込まれているんだよね。コードとメロディ譜だけだった方がまだ良かった。いろんな情報が多すぎて惑わされるんです」


――じゃあ譜面を読み解くと、そこからも複雑な心理が読み取れたりするんでしょうか?

荻田「ああ、それはあると思いますよ。不思議なテンションコードが多いし不協和音も多いし、それはやっぱり、音楽からもまっとうに生きている人たちの物語ではない感じが伝わります。居場所がないというか。フレディは彼自身の精神的なことで悩んでいるし、アナトリーは住んでいるソ連という国の中に自由がない。さらにフローレンスは東欧出身者で、当時の東西冷戦下で国自体を奪われてしまった。ルーツを亡くしてしまった人なので、やっぱり不安定さがあるし、それにより人は恋しいんだけど、最後の最後で人を信用しきれない。相反するものを背負っています。ただ前回は、実は曲数も減らして、日本のお客さまに受け入れられやすいヒロイン像にしたのですが、もともとの台本にはかなりフローレンスはエゴイスティックに立ち回るところがあったり、自分の主張を強くぶつけたりするところもあるので、今回はそういうところももうちょっと踏み込んでもいいかな。 ただそれが自分勝手なのではなく、そうしないと多分耐えられないという寂しさまで出せるようになったら、さらに素敵かな、と思いますね。コンサートバージョンなのでどこまで出せるかわからないですけど、そこまで見えたら味わい深いものになるかな。
 ...結局、みんながチェスのゲームと一緒で自由には動けていない。相手の出方を見ながら、すごく行き詰るような思いをしながら、なんとか生き延びるためにいろんなゲームを繰り返している。そこを、闘ってる人の強さとか美しさというものとして出せればいいなと思います」


撮影:源賀津己



公演は
12月12日(木)~15日(日) 東京国際フォーラム ホールC(東京)
12月20日(金)~22日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
で上演されます。
チケットはともに発売中です。

チケットぴあでは、特典付チケットも発売中!
★第2弾★
洋菓子&直筆サイン(プリント)入りクリスマスカード付チケット
【販売期間】受付中~12/2(月)23:59


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『CHESS in Concert』では下記イベントも決定しています。

◆東京公演初日 スペシャルカーテンコール◆
対象公演:12月12日(木)14:00
※公演終了後、スペシャルカーテンコールを予定しております。内容はお楽しみに!!

◆東京公演 アフタートークショー◆
下記公演終演後、アフタートークショーを開催
対象公演:12月13日(金)14:00公演
出席者(予定):安蘭けい、石井一孝、中川晃教、マテ・カマラス、AKANE LIV、戸井勝海
※当日のチケットをお持ちの方に限りご参加いただけます。

◆マテ・カマラス サイン会◆
下記公演終演後、マテ・カマラス サイン会を実施
対象公演:
12月14日(土)17:30公演(東京)
12月20日(金)14:00公演(大阪)
※当日、公演プログラムをご購入の方のみご参加いただけます。
※当日のチケットをお持ちの方に限りご参加いただけます。
※終演後、ロビー所定の位置に並んでお待ちください。
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