■ミュージカル『CHESS』■
ABBAのメンバーであるベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが音楽を手がけ、『ジーザス・クライスト=スーパースター』『ライオンキング』のティム・ライスが原案・作詞をした伝説のミュージカル『CHESS』。
冷戦時代下に行われたチェスの世界大会を舞台に、その試合を代理戦争として火花を散らすアメリカと旧ソビエト連邦の戦い、そしてその国家同士の争いに巻き込まれ翻弄される個人...という、ドラマチックな物語を描き出す作品です。
なんといっても、ABBAのふたりが手がけた楽曲が幅広く、壮大でありメロディアスであり、素晴らしい!
世界でも、音楽にポイントを絞った<コンサートバージョン>で上演されることが多い作品です。
日本でも2012年、2013年とコンサートバージョンで上演されています。
ただ日本では、音楽の美しさを伝えるのはもちろんですが、現代日本に住む我々にとっては少々縁遠いチェスというゲーム、そして冷戦という時代への理解を近づけるために、<コンサートバージョン>で助走を付けていたような部分もあるのかもしれません。
その目論見は大当たりで、コンサートバージョンは初演・再演とも大盛況。確実に『CHESS』ファンを増やし、このたびのミュージカル版の上演へとなりました。
しかも安蘭けい、石井一孝、中川晃教らメインキャストはじめ、ダンサー・大野幸人やアンサンブルのメンバーも、初演から数多く続投!
これは、熟成され、深みを増した『CHESS』になること間違いありません!
2013年のコンサートバージョンも、げきぴあでは詳しくご紹介していますので、要チェックです☆
→コチラ
さて、このミュージカル版『CHESS』の公開稽古および囲み取材が8月31日、行われました。
披露されたのは冒頭約15分のシーン。
『CHESS』という作品は、ミュージカル上演に先立ち、1984年にコンセプトアルバムがリリースされています。
その後ロンドンで初演、さらにブロードウェイでは脚本や楽曲が大きく変えて上演され、また前述のとおりコンサートバージョンとしても数多く上演されています。
その都度、演出も、楽曲の順序も大きく入れ替わって上演されているので、比較が難しくはあるのですが...。
それでも今回の上演はずいぶん斬新、かつ、日本人にとってわかりやすい気がします!
まずは登場人物をご紹介。
フローレンス=安蘭けい
アメリカ側・フレディ(中川)のセコンドであり、恋人でもある女性。
ハンガリー出身。
アナトリー=石井一孝
ソビエト連邦代表。
国を背負いチェスの戦いに挑む。
のちにフローレンスと惹かれあっていきます。
フレディ=中川晃教
チェスの天才にして、チャンピオン。
アメリカ合衆国代表。
アービター=田代万里生
チェスの審判。
田代さんは今回CHESS初参加!
上記4名がメインで、物語は進みます。
そしてこちらもはずせない面々!
アナトリーの妻、スヴェトラーナ役のAKANE LIV。
AKANEさんもコンサート版からこの役を演じていました。
コンサート版では、スヴェトラーナの出演は2幕がメインでしたが、今回はがっつり冒頭から登場!
KGB(旧ソ連国家保安委員会)、CIA(米国諜報機関)も絡んできます。
ウォルター=戸井勝海
ウォルターは表向きはアメリカのテレビマン...なのですが、それだけではない様子...。
一方でソ連側の黒幕然とした顔を見せているのはモロコフ。
モロコフはコンサート版ではアンサンブルさんが4人一役、のような感じで演じていましたが今回は(冒頭15分を見た限りでは)、ひのあらたさんがひとりで演じるようです。
そして日本版ならでは。
チェスの精(って正式名称なんでしょうか...)=大野幸人
身体表現でチェスの戦いを表現する印象的な存在です。
さてオープニングは『1956 - Budapest Is Rising』。
ハンガリー動乱を歌うナンバーが、冒頭に来ました!(斬新!)
楽曲に加え、ソ連の国旗を持ったモロコフ、アメリカの国旗を持ったウォルターの登場で、米ソの対立...冷戦という時代がわかりやすく表現されます。
演出の荻田浩一さんの手腕が光ります。
また、コンサート版初演ではフローレンス、フレディ、アナトリーの三角関係...恋愛という、非常に分かりやすい部分にスポットをあて、再演で(作品本来の)米ソ冷戦の要素を色濃くした荻田版『CHESS』、今回さらにガツンと国と国の争いに重心を置くものになりそうな、そんな予感もするオープニングなのです。
登場人物の中でハンガリー動乱で人生を変えられたのは、ハンガリー出身のフローレンスですね。
安蘭フローレンスのシリアスな横顔も美しい。
その後、アービターが歌う『ストーリー・オブ・チェス』、
そしてメインキャスト全員が揃う『Diplomats』へと移っていきます。
チェスの支配者=アービターと、チェスの精のコラボレーションも楽しみ!
指揮は先日まで『エリザベート』でタクトをとっていた上垣聡さん♪
合衆国チーム。
同じチームのはずなのに、この戸井ウォルターの意味ありげな表情...。
こちらはソ連チーム。
ひのモロコフ、アナトリーを見張ってます。
中川フレディからは、すでにこの日は歌っていない『Pity the Child 』が聴こえてきそうな雰囲気。
天才キャラが似合う中川さんですが、中でもフレディは当たり役だと思いますよ!
そして苦悩する石井アナトリーの魅力も必見。
色濃くなった国同士の争いですが、
やっぱりこの三角関係が物語を進めていきます...。
公開稽古のあと、囲み取材も行われました。
その模様も後日お伝えいたします。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・9月27日(日)~10月12日(月) 東京芸術劇場 プレイハウス(東京)
・10月19日(月)~25日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪)
☆9月28日(月)13:30終演後アフタートークイベント「CHESS ミュージカル版を語る!」の開催が決定!!
【出 演】 石井一孝 田代万里生 AKANE LIV 戸井勝海
【ゲスト】 浦井健治