ミュージカル『CHESS』公開稽古&囲み取材レポート Part2

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■ミュージカル『CHESS』■

二度のコンサート版での上演を経て、いよいよミュージカル版初演を迎えるミュージカル『CHESS』

冷戦時代下に行われたチェスの世界大会を舞台に、その試合を代理戦争として火花を散らすアメリカと旧ソビエト連邦の戦い、そしてその国家同士の争いに巻き込まれ翻弄される個人...という、ドラマチックな物語を、ABBAが手がけた名曲群に乗せて描き出す作品です。

8月末に行われた稽古場取材会レポートの後半、安蘭けい石井一孝中川晃教田代万里生の囲み取材の模様をお届けします!
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【『CHESS』バックナンバー】



――ご自身が演じる役は?

安蘭「私はフローレンスという、ハンガリー動乱で両親を亡くした暗い過去を持つ女性を演じます。フローレンスは中川君扮するアメリカのチェス・チャンピオンのセコンド。『あしたのジョー』で言えば丹下さん的な役割をする女性です」
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石井「僕はロシアのチェス・チャンピオン、アナトリー役。安蘭さん扮するフローレンスを中川君と取りあってみごとにゲットします!」
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田代「この作品でもっともミステリアスな役、アービターを演じます。アービターというのは名前ではなく審判という意味。つまり名前もない役なんです。ほかの登場人物とは違って、生い立ちやルーツや国籍を伏せて、何者かわからないアービターですが、シーンによってはストーリーテラーをに担ったり、この自由な(共演の)方々の審判を務めます」
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中川「僕はボビー・フッシャーという、実在した天才チェスプレイヤーがモデルになっている、フレデリック・トランパー(フレディ)というアメリカ人のチェス選手を演じます。モデルになっている天才チェスプレイヤーが実在しているということ、物語が冷戦時代を舞台にしていること、その時代で生きている人間たちの心の動きみたいなものがチェスというゲームと重なって見えたとき、洪水のように物語が客席に押し寄せて行くんだろうなと、稽古しながら日々実感しています。音楽も素晴らしい。一日も早く本番の幕を開けたいなと思って頑張っています」
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――安蘭さん、石井さん、中川さんはコンサート版からの続投です。コンサート版とミュージカル版の違いを教えてください。また田代さんという新メンバーが加わった稽古場の雰囲気は。

安蘭「コンサート版とミュージカル版はまったく違います。ミュージカルでは、演出の荻田(浩一)さんらしい摩訶不思議な世界観を持ちつつも、例えば私だったらハンガリー動乱といった過去の出来事、バックボーンを深く考えたり、お客様に想像していただいたりできる場面が増えて、深みが増している。ストーリーがよりわかりやすくなって、それぞれのキャラクターの個性が色濃く出ていると思います。
そして稽古場は、とても自由な中川君と、石井さんなのですが(笑)、私が仕切れなかった部分をすべて万里生君にやっていただいているようなかんじ(笑)。審判という役柄のように俯瞰しながらこの自由な人たちを見ているんですが、この中では一番若いですが一番しっかりしているので、頼りにしています」

※<自由な皆さん>については、2013年公演でもすでに語られていました...。


石井「歌の比重が強い、歌の分量が多い作品なので、ミュージカル版になっても台本の厚さが倍に膨らむということはなく、「そんなに変わらないのかな」と最初思ったんですが、荻田先生の演出が始まり、動きがついたり感情表現の説明をしてもらうと、いま、ずいぶん手触りが違うような気がしています。僕に関して言えば、AKANE LIVさんが演じる妻・スヴェトラーナが、コンサート版では2幕中心に登場する役だったのですが、今回は1幕からかなり僕のそばにいます。これから安蘭さん演じるフローレンスに恋心を持ち、国を発つ...というのが、ものすごくやりにくいな、と(笑)。
万里生はすでに歌唱力で稽古場を支配しています。ものすごいオーラを持った新人・万里生に刺激をもらって、それがいい方向に向かっていると思います」

中川「この作品の一番の要であるABBAが書いた音楽が、すごく私たちの中で熟成されてきているというのを今、感じています。一方で、コンサートの時に容易に歌えた歌詞の内容やフレーズが、やっぱりミュージカルになり、ストーリーの中でその役として生きることによって歌詞がもっと意味を持ってきます。音楽の中に自分自身の歌がどんな意思をもって聴こえていくのかというのをすごく感じずにいられなくなる。難しい、決して簡単ではない、ということを実感しています」


――初参加の田代さんは、『CHESS』の音楽の魅力をどこに感じているか。

田代「もともと好きで、コンサートでカズさんの役が歌う『Anthem』を歌わせていただいていました。今回出演のお話をいただいて全部の音楽を聴いたら、ABBAというとダンスナンバーが印象的ですが、これはラップがあったりクラシックがあったりロックがあったりと、色々なジャンルが入り乱れている。楽譜を見ながらCDを聴いていたら、だんだん五線譜がチェス盤に見えてくるくらいでした。『CHESS』の奥深さと音楽の奥深さがリンクし、その上でこの人間模様、政治、歴史、色々なものが重なる。難しいかもしれないですが、今の時代だからこそやる作品なんだなと思いました」
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――それぞれの役作りのポイントは?

安蘭「色々なミュージカルで色々な女性を演じていますが、今回は本当に難しい。すごく濃い何かがあるとか、大女優だったとかの強い個性があるとかが、ないんですよ。でも過去に両親を殺されたよいう誰よりも深い傷は持っている。でもそれは内面に秘めている。内面で戦っているのをどう表現するか、そういうところで今すごく苦戦しています。
それにチェスというと、私にとっては頭のいいゲーム、頭を使うゲームという印象で、ただ楽しく遊ぶ"ゲーム"じゃないと思っていて、自分の居方もすごく真剣になっちゃう。そこに笑顔はないんじゃないか、とか。でも実際は、競技は真剣かもしれませんが、日本で言ったら将棋のように、公園でおじさんたちが打つような楽しいもの。娯楽だったものを競技としてやっていますので、シリアスだけでなく、もっと面白いもの楽しいものと考えれば、フローレンスの喜怒哀楽ももっとだせるのかなと思っています。今は「チェスだから」と変にかしこまってしまって、角ばったところに自分が入っているような感じがしているので、そこを抜けて表現豊かになればいいなと考えています」

石井「やっぱりチェス盤になぞらえた米ソの対立、という物語。アッキーの演じる役がすごく奔放でロックで、ファンキーな役なので、僕は対比するように寡黙で大人なアナトリーを意識しています。僕のもっとも遠いところにあるものなんですが(笑)。歌うナンバーも『Anthem』をはじめクラシカルな曲という設定もありますし、その対比が出せたら面白いんじゃないかな。中には燃え滾るような情熱がありますが、見た目は違って見えるといいかな。(フレディと)白と黒になるようなことをすごくイメージしています」

中川「実際にボビー・フィッシャーという人間がいたので、この方の生い立ちを勉強しながら、天才といわしめた部分はなんなのかというのを役作りとして掘り下げていきたいなと思っています。ボビーではなく、この作品のフレディはすごくエキセントリックな人間だったと書かれているんです。ただ実際、本当に本人がエキセントリックだったのかというと、そうでもないんじゃないかなと考えています。エキセントリックに演じている部分と、演じてしまう理由。心の中にある孤独、彼自身の生い立ちが、役作りの中で重要になっていくのかな。
さらに全体を通して言えば、いでたち。トウコちゃん(安蘭)演じるフローレンスは、実際一緒にいてもお姉さん的に僕自身思ってしまうところがあるんです。甘えてしまう。でも実際この設定の中ではフレデリックの方が年齢が上らしいというのがわかってきたので、立ち方、居方の中で、男のセクシーな部分をみせられたらいいなと思っています。思考だけでなく、意外と見せ方というところでも役作りが今回は必要なのかなと思っています」
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田代「アービターはほかの登場人物とはまったく違うアプローチでこの作品に向き合わないといけない。最初に荻田さんに言われたのは、アービターは芝居のキャッチボールをするな、ということ。相手に合わさずに常に中立でペースを乱されず、自分が見たい時しか相手の目を見ない。彼はすごく抽象的な存在でもあるんです。各国で『CHESS』が上演される際、このアービターというのは、皮パンに上半身裸のマッチョだったり、ビジネスマンみたいだったり、色々なイメージになっていますが、今回荻田さんが作ろうとしている、僕がいま少しずつ作っているアービターというのが、きっと世界で今までにないアービターになると思います。まだ見ぬこのアービター、そして『CHESS』という作品をはやく完成させたいです」


――おすすめのシーンを教えてください。

安蘭「難しいなあ。まだ稽古序盤なので、演出がついた中で言えば、皆さんに(公開稽古で)観ていただいた、チェスゲームの始まりをアービターが歌うところ。あの曲がすごくワクワクします。人の動き方も荻田さんならでは。人物の紹介を兼ねたた登場になっているのですが、(稽古がすすみ)よりキャラクターがもっと立っていけば、すごく面白いシーンになるんだろうなと今、想像しています」

石井「未来の想像で言うと、『カルテット』というものすごく難しいクラシカルなナンバーがあって、僕は最初これは出来ないんじゃないかと思ったほどなのですが、さすがに3度目なので、もう手中に収めた感じなんですね(笑)。それをまだ万里生君はやっていないのですが、こんなに歌の上手い万里生が「僕、出来ないかもしれない」と言ってるので、早くそのシーンであえぐ彼が見たい。おすすめとは関係ない話になりましたが(笑)」

田代「本番ではその姿は見せないように頑張ります...」

石井「本番ではカンペキに手中に収めていると思うので、そこがきっとおススメになると思います!」

※『カルテット』の難しさについては、前回のアフタートークで語られていましたよ!
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中川「僕はちょっとまじめなところになっちゃうんですが、この物語は、冷戦時代が下敷きになっていて、それぞれの役は、どうしようもないものを抱えて生きている。それは今の時代、日本の近隣各国の状況にも置き換えることができると思うんです。仲良くなりそうだったのに、次の瞬間いきなり戦いだすんじゃないかという緊張感。それはさらに置き換えて私たちのこととも考えられる。この物語で僕は、フローレンスと最初は恋人同士でありパートナーですが、最終的にはアナトリーとフローレンスが物語を担っていく。その末にある美しいナンバー『You & I』という曲が物語の後半の方、クライマックスに出てくるんですが、この曲は、すごく感動すると思うんです」

田代「僕は初参加なので全貌はまだ見えていないんですが、本当にこのミュージカル『CHESS』みたいなミュージカルってほかに見当たらないんですよね。それは脚本の内容も、音楽的にも。ミュージカル『CHESS』そのものが見どころ、としか言えないです」


――初めて観る方は、歴史の勉強をしてから行ったほうがいい?

安蘭「勉強されなくてもこの舞台を観ればわかると思います。冷戦時代もそんなに昔の話じゃないので。今アッキーが言ったように、日本の近国でこの作品のようなことが行われている状況は容易に想像できるので、今の世界情勢を再確認できる作品だとも思う。もちろんハンガリー動乱や、1970年・80年代のソビエトとアメリカの関係を少しでもわかっていればより面白いかもしれませんが、勉強する必要はないと思う。わかると思います」

石井「導入の荻田さんの演出が、戦争の空気をウワーッと醸し出すようなものになっているから、あそこだけでもかなり時代を感じられる」

田代「オーバーチュアから始まらないというところが今回かなりミソ。コンサート版と楽曲が入れ替わっていて、説明にもなりうる楽曲が冒頭にきて、そのあとにオーバーチュアが来るので、ちょっと面白いですよね」



今回は休憩時間にみんなチェス(ゲーム)をやっている、今までコンサート版では全然やらなかったのに...というような話なども和気藹々とされていました!


取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
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【公演情報】
・9月27日(日)~10月12日(月) 東京芸術劇場 プレイハウス(東京)
・10月19日(月)~25日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪)

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