日本オリジナルミュージカルの金字塔『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』が2020年1月に上演されます。
1980年代から数々のオリジナルミュージカルを発信している「音楽座ミュージカル」。
『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』はその旗揚げ作品として1988年に初演、その後も幾度となく上演を重ねている名作中の名作。
子どもの頃、思春期の頃に観たというミュージカルファンも多いと思いますし、
現在活躍中のミュージカル俳優の中にも、『シャボン玉~』を観たことがきっかけでその道に進んだ、と公言する人も少なくありません。
日本ミュージカル界のDNAに刻まれている、そんな作品なのです。
ミュージカルというジャンルが大きな盛り上がりをみせている近年、良質な海外産の輸入もいいけれど、日本オリジナル作品を生み出したい! という機運も高まっています。
昭和63年に初演され、いまなお愛されている『シャボン玉~』こそ、日本オリジナルミュージカルの原点のひとつであるのかもしれません。
その、昭和から続く名作が令和の時代に、新たなプロダクションで上演されます!
しかも、ミュージカル界きっての大スター井上芳雄が主演。
さらに初演でヒロイン・佳代を演じていた『シャボン玉』の代名詞たる土居裕子をはじめ、畠中洋、吉野圭吾、濱田めぐみといったかつて音楽座で本作に出演していたレジェンドキャストも出演!
...という、新しい世代も喜び、オールドファンは感涙する超豪華キャストです!
大注目の新生『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』の稽古場を取材しました。
物語は、筒井広志による小説『アルファ・ケンタウリからの客』が原作。
作曲家を志すちょっと頼りない青年・悠介と、スリで生計を立てている少女・佳代というふたりを主人公に、宇宙規模の壮大な視点で描かれていくSFであり、愛をいつくしむ普遍的なラブストーリーでもあります。
宇宙人が登場するあたり、80-90年代の小劇場らしいファンタジックさも。
作曲家志望の青年・三浦悠介=井上芳雄さん。
ミュージカル界が誇るプリンスオブプリンスが、頼りないユーアンちゃん!? どうなるんだろう!
...と思いきや、いい感じに人の良さそうで、でも愛情深そうな青年になっています!さすが。
井上さんもこの作品について「舞台中継を録画したビデオは何度も何度も見ました。どの曲も歌えるくらいです」というコメントを発表しています。
ヒロインの折口佳代=咲妃みゆさん。
孤児で、梅田駅の降り口に捨てられていたから「折口」。
育ての親もひどい男で、佳代はスリをさせられて生きてきました。
重い過去を背負っているものの、本来の彼女はピュアでけなげ、悠介との出会いによって幸せになっていくかと思われましたが...。
関西弁の悪口などがポンポン飛び出す佳代。その関西弁はコミカルなシーンでは軽妙な味わいにもなるのですが、咲妃さん、可愛らしく、時にユーモラスに演じています!関西弁も軽快!
さらに応援したくなるひたむきさは、抜群。けなげな「お佳代」にピッタリです!
ちなみに悠介と佳代はお互いを「ユーアンちゃん」「お佳代」と呼び合っています。
『シャボン玉~』ファンの多くは、このキャラをふたりの呼び方にならって「ユーアンちゃん」「お佳代」と呼んでいる...はず(私はそうです)!
佳代と悠介は、紆余曲折を経て、結婚をします。
こちらは幸せなシーンのひとこま。
場所は、悠介がアルバイトをしている(のちに佳代もここで働きます)喫茶店・ケンタウルス。
マスター=吉野圭吾さん(福井晶一さんとWキャスト)。
吉野さんもかつては音楽座に在籍していました。そして『シャボン玉~』にも出演していました!
吉野さん、ご自分の出演していない場面の稽古を見つめる表情も、とっても嬉しそうでした。
春江=濱田めぐみさん。
濱田さんも音楽座出身。『シャボン玉~』には出演経験あり(里美役)。
「シャボン玉は自分にとってかなり思い入れの深い大切な作品」とコメントしています。
マスターと春江さんはご夫婦です。
吉野さんと濱田さんの夫婦、とっても素敵です。
常に悠介を気にかける、マスター夫妻です。
(というか、1989年のイチ喫茶店...なんて豪華...ミュージカル界を牽引するスター揃いじゃないですか...)
ダンスナンバーもありますよ~。
ケンタウルスのシーンは、何気ない会話をしていてもオールドファンが興奮するシーンにもなりそうです。
藤咲みどりさん、照井裕隆さんも元音楽座メンバー。
さて、実はある理由があり、佳代のことを宇宙船から見守っている存在がいます。
それは "ラス星人"たち。
ピア=土居裕子さん
伝説の初代お佳代、土居さん!
きっと土居さんのお佳代に恋した人、男女問わず山ほどいたと思います...。
土居さん、今度はピアとなって、咲妃さんのお佳代を見守っています。
その姿を見るだけで、なんだか、大いなる輪廻ではないですが、胸がいっぱいになります。イマドキの言葉で言うと「エモい」。
そして土居さん、変わらぬ可憐な歌声...。でもラス星人だから面白くもあって最高です。
テムキ=畠中洋さん
畠中さんも音楽座時代の『シャボン玉~』の顔のひとり。
宇宙人、そしてのちには悠介も演じています。
つまりこちらも、かつての悠介が井上さんの悠介を見守っているわけで...!
ミラ=内藤大希さん
土居さん&畠中さんのレジェンドと一緒に地上に降りてきた宇宙人3人組を演じている内藤さん。
芝居センスの良さを発揮し、絶妙な宇宙人感!
ミラは作品のテーマを背負う役割もありますので、内藤ミラ、ご注目を。
こちらは宇宙船に残っているラス星人・ゼス=上原理生さん。
上原さんは悠介の音楽の先生、早瀬との二役です。
相変わらず重厚感ある歌声!
ワケあって地上に下りてきたラス星人たち、日本語を微妙にズレて覚えていて、それがとってもユーモラス。
でも、その「間違えて覚えてしまった言葉」が、最後には感動ポイントにもなっていきます...。
取材中、本役での登場シーンがなかったのですが、里美=仙名彩世さん。
里美さんは、悠介のデート相手の女の子です。
(前述のとおり、かつて濱田さんが演じた役でもあります)
こちらは別のシーン、ニュースを読むシーンで"声"を担当している模様。
同じく取材中のご登場がなかったのですが、吉野さんとWキャストでマスターを演じる福井晶一さん。
福井さんも、『シャボン玉~』を見てミュージカル俳優になることを決意したとかねてより公言していらっしゃいますね。
同じく取材中のご登場がありませんでしたが、月影瞳さん。
月影さんは全国ツアー公演で、春江さんを演じます。
さて、紆余曲折があってやっと幸せになった...かに思えた悠介と佳代ですが...。
運命は残酷で、さらに多くの試練がふたりにはふりかかります。
でも、最後には、あたたかい気持ちが胸いっぱいに広がるに違いありません...!
▽ 影コーラスに土居さんがいらっしゃる...!と、取材しながら密かに興奮しました
舞台は1989年、ヒロインがスリで生計をたてていたり、今の時代から見るとちょっとどうなんだろう...という一抹の心配はあったのですが、人が人を思いやる気持ち、支えあう姿、普通の暮らしの中にある幸せ...など、作品のテーマは普遍的なもの。
それを力のあるキャストたちが、無理なく自然に演じていて、とても爽やかであたたかな物語になっています。
悠介と佳代のデュエット『ドリーム』など、名曲の色褪せない美しさも堪能。
日本には、誇れるオリジナルミュージカルがちゃんとある!
そんな思いを新たにした稽古場取材でした。
開幕は令和初の正月・1月7日(火)です。お楽しみに。
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
1月7日(火)~2月2日(日) シアタークリエ(東京)
2月7日(金)~9日(日) 福岡市民会館
2月12日(水)~15日(土) 新歌舞伎座(大阪)