■『レディ・ベス』2017年公演特別連載 vol.3■
『エリザベート』『モーツァルト!』などの作者として知られるミヒャエル・クンツェ(作)&シルヴェスター・リーヴァイ(音楽)による新作として、日本ミュージカル界が誇る鬼才・小池修一郎演出で2014年に世界初演されたミュージカル『レディ・ベス』が、3年ぶりに上演されます。
今回の再演は、2014年のオリジナルキャストがほぼ全員続投!
あの、陰謀と波乱に満ちた、しかし美しい女王の半生が、最強の顔ぶれで蘇ります。
初演もがっつりとこの作品を追っていたげきぴあ、今回も稽古場に潜入してきました!
来ました稽古場。3年ぶりの『レディ・ベス』の世界です。
稽古も佳境に入っている9月半ばの某日。
まずは入念にボイストレーニングをする皆さん。
初演ではいなかった子役さんもキャスティングされ、
さらに宣伝担当さんからも
「結構、前回から変わってますよ」
という言葉をもらって挑む稽古場取材。
さて!?
この日は、一幕の最初から返しながらやっていきましょう、という日でした。
山口祐一郎さん扮するロジャー・アスカムが、物語の世界へ誘うプロローグ。
天文時計を模した美しい舞台セットと、山口さんの壮大な歌が、時を超えさせてくれるよう......なのは、初演から変わらず!
そんな山口さん、舞台上の段差があるハズのところ(稽古場には段差はありません)でつまづいてみせたりと、ちょっとお茶目。
アスカムはベスの家庭教師ですが、この当時のイギリスの情勢、ベスの周りで何が起こって、彼女はいまどういう状態であるのかを説明してくれる"語り部"的役割もあります。
この時期のイギリス王室は、ヨーロッパ全体で巻き起こっていたカトリック対プロテスタントの宗教対立の流れに巻き込まれると同時に、ベスの父王・ヘンリー8世の個人的事情も絡み、宗教的にはかなり複雑な状況。
(簡単に言うと、ヨーロッパ全体の流れとしてはプロテスタントに傾いている中、ヘンリー8世はもともとはカトリック。その王はメアリーの母・キャサリンと結婚していましたが、ベスの母アン・ブーリンと愛し合い、しかし宗教上キャサリンとの離婚が認められなかったためにローマ(カトリック)教会を離脱します。その両親の影響を受け、ベスはプロテスタントで、ベスの姉・メアリーはカトリックです。......ということを、初演時のレポートで、少し詳しく説明しています→★)
......そんな複雑な政治・宗教の説明を、初演ではこのプロローグのロジャー・アスカムの歌と、実際の肖像画などの映像でしていました。
が、どうやら今回はそこを"芝居"で見せるようです!
ヘンリー8世の心うつり、
ヘンリー8世のカトリック教会からの離脱、
そして因果はめぐる、アン・ブーリン(和音美桜さん)の処刑。
(ベスの母・アンもまた、不義の疑いがかけられ処刑されます。ヘンリー8世は6度結婚したといわれています)
物語前半、ベスとメアリーの対立の原因となる「ティンダル訳の新約聖書」(この本はカトリックであるメアリーの治世では禁書となります)を、ベスが父王からもらう場面も。
初演では、この複雑な宗教問題を映像を使って視覚的にわかりやすく客席に伝えてくれていましたが、
今回は、芝居で見せることで、すっと物語に入りやすくなった......という形でしょうか。
おそらく演劇好きの方は、再演バージョンの方がなじみやすいのではないかと思います!
このプロローグの中で、ベスもメアリーも、大人へと成長。
ここから『レディ・ベス』の物語は始まっていきます......。
レディ・ベス(Wキャスト)=花總まりさん
レディ・ベス(Wキャスト)=平野綾さん
メアリー・チューダー(Wキャスト)=未来優希さん
メアリー・チューダー(Wキャスト)=吉沢梨絵さん
ベスとメアリーの表情の違いにゾクゾクしますね!
稽古場レポート続きます。
★おまけ1★
シモン・ルナール役の吉野圭吾さん。
なぜここでピックアップするかというと...取材中、ルナールの出演場面がなかったからです...。吉野さんファンの皆さまごめんなさい。
★おまけ2★
一部で話題(!?)の、舞台セット模型に設置された、ミニチュアサイズのキャストたち!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・10月8日(日)~11月18日(土) 帝国劇場(東京)
・11月28日(火)~12月10日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)