■『レディ・ベス』世界初演への道 vol.6■
ミュージカル『レディ・ベス』いよいよ明日、プレビューが開幕します!
そんなタイミングではありますが、稽古場レポートの第3弾を更新!
本日はヒロイン・ベスを中心としたシーンをお届けします。
本日はヒロイン・ベスを中心としたシーンをお届けします。
のちのエリザベス1世、レディ・ベスは、平野綾さんと花總まりさんのWキャスト。
開幕直前イベントで、石丸幹二さんが「稽古場からアスカムはあごひげを着けている」と仰っていましたが、ベスも稽古場の段階からカツラをつけていました。
腰まで届くロングのカツラを被るWベス、お人形さんのように可愛い。
そして髪には黄色い花の髪飾りが。
こちらもイベントで、この花は<イモーテル>であり、物語の重要なファクターになっているとの説明がありましたが...。
イモーテル、和名では永久花。
永久に枯れない花...どんな形で登場するのでしょう。想像がかきたてられます!
さて、シーンはどうやらベスの居城のようです。
まずは、花總さんのベスが登場。
美しい。そして気品があります...。
ベスは父王・ヘンリー8世の形見の本を読んでいます。
家庭教師、ロジャー・アスカムは山口祐一郎さん。
涼風真世さんは、ベスの教育係のキャット・アシュリー役です。
ベスを見守る視線があたたかいおふたり。
単純な表現をすると、ベスの<味方>ですね。
もう少し、私の受けた印象を付け加えると、アスカムはベスの聡明さ、そして王となるべき資質を見抜いて、彼女を守らなければという使命感に近い愛情を持っている感じ。
アスカムの愛は少し冷静さもあるのですが、一方でキャットは幼き頃より守り育てたベスに対し母性愛に近い溢れんばかりの無条件の愛情を注いでいる...という印象です。
...あくまでも、印象です。
そこへ突然あらわれたのが、石川禅さん扮するガーディナー司教。
ベスが姉である女王メアリーに対して反乱の意思を持っている、と言ってきました。
さらに、さきほどベスが手にしていた本こそがその証拠であると...。
この本、実はカトリックであるメアリーが禁じた、ティンダル訳の新約聖書。
当時カトリックの教えのもとでは、聖書の自由な翻訳は禁じられていたため、この書は禁断の書なのです。
宗教はこの作品背景を理解する重要なポイントになりそうですのでもう少し詳しく記します。
ヨーロッパではもともとカトリック教会が絶大なる権力を握っていて、それは国王の力を凌駕するほどでした。
が、教職者の腐敗がすすみ、16世紀にはマルティン・ルターによる宗教改革により、カトリック(旧教)から、聖職者が権力を持たず重要なのは聖書の教えのみ、というプロテスタント(新教)へと諸国が移っていきました。
時代の流れは新教へ...イギリスでも同様の風が吹きつつも、諸外国とは違う事情が絡んでいます。
ベスとメアリーの父であるヘンリー8世が、メアリーの母キャサリンと離婚を望んだがカトリック教会からそれを認められず、「離婚をしたい」という超個人的な理由から教会から離脱するのです。
...という状況下で、イギリスの王位は新教・旧教の思惑も絡みヘンリー8世死後二転三転します。
メアリーは敬虔なカトリック教徒。
ヘンリー8世の跡を継ぎ即位した、メアリーとベスの異母弟エドワード6世がプロテスタントだったため、夭折したエドワード6世の跡の王位は同じくプロテスタントの王をという思惑で、王位継承権がメアリー、ベスより低いヘンリー7世の曾孫ジェーン・グレイが就きます。
するとその強引さに反発がおきます。その声に後押しされてメアリーがジェーンを退け王位につきます。
王位についたメアリーは、プロテスタントへと流れていた風を止め、イギリスはカトリックに復帰。今度はメアリーがプロテスタントを迫害、300人をも処刑したといわれる彼女は"ブラッディ・メアリー"と呼ばれていきます。
すると、今度はその強引なカトリックへの回帰に不満を募らせた民衆が、プロテスタントであるベスが王位につくことを期待するようになるのです。
...ということで、プロテスタントであることはメアリー女王への裏切りであり、この書はその証拠...と、書を取り上げられてしまったベス。
とはいえ彼女は王女。司教の態度は王女に対するふるまいではない、と怒りをあらわにします。
怒りの中に、王女としての誇りを描き出す花總さんの凛とした佇まい...。さすがです。
彼女の集中力に、稽古場が飲み込まれていくような気さえしました。
が、シーン終了したその直後のこのキュートな笑顔!
何をお話してるんでしょう?
何をお話してるんでしょう?
次にキャストを替えて、平野さんのベスと、石丸幹二さんのアスカムで。
平野さんのベスは、少女らしさが前面に押し出されているようなベスです。
もちろん、のちに王位につくことを予感させる"特別感"はありつつも...
花總さんが、王女らしい気高さの中に、少女らしい顔を混ぜているとすれば、
平野さんは、少女らしい初々しさの中に、王女としての芯を秘めている...という違いが感じられて、面白い!
先ほど花總ベスの気高さに圧倒されたシーン、
平野ベスに対しては、あーベス泣きそう、かわいそう~!という気持ちになってしまった担当でした。
すでに、まったく違うベスが生まれています。
Wキャストの醍醐味ですね!
小池修一郎さんは、ある一節の言い回し...というか強弱?が気になるようで、平野さんに身振り手振り付きで細かく注文をつけていました。
アスカムさんはふたりでスコアを前に相談中。
花總さんと、涼風さんの笑顔も!
音楽は美しいし、魅力的なキャラクター揃い、本番の舞台がより楽しみになった、稽古場でした。
『レディ・ベス』、いよいよ明日11(金)、<ワールドプレミア>のプレビューが開幕します!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
●公演情報●
4月11日(金)~5月24日(土) 帝国劇場(東京)
※4/11(金)・12(土)はプレビュー公演。
7月19日(土)~8月3日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
8月10日(日)~9月7日(日) 博多座(福岡)
9月13日(土)~24日(水) 中日劇場(愛知)