●ヒラノの演劇徒然草●
人気ミュージカルや大ヒットミュージカルというのは数多くありますが、"特別な"ミュージカル、としか呼びようのない作品、というのはあまりありません。
そして間違いなく『RENT』はその数少ない、"特別な"ミュージカルです。
痛みや焦燥感がヒリヒリと伝わってくる内容やシンプルながら奥深いメッセージ性はもちろん、ジョナサン・ラーソンの死を筆頭に作品にまつわる伝説の数々、そういったもの全部をひっくるめて、"特別"な一作。
だからこそ昨年行われた、その"特別"を背負ったオリジナル・キャストを含むブロードウェイ・キャストの来日公演は、もう本当に素晴らしかったし、私は作品の冒頭、マークの第一声「We begin on Christmas Eve...」から泣きました。
ただそれは『RENT』にまつわる外側の物語を知っているからこそであり、前知識なく素直に物語を観たら、さすがに第一声から胸が詰まることはないだろう、とも思いました。もちろん、周辺情報をひっくるめて『RENT』が愛しい作品であることには間違いないのですが。
そして、『RENT』という作品は、作品の力だけで、感動できる作品でもある。
2008年の東宝製作版『RENT』を観て思ったのは、まさにそこでした。
エリカ・シュミットによる演出は、オリジナルの影を追いかけることはやめ、ジョナサン・ラーソンが作った『RENT』という作品自体が持つ力を信じている。
この公演の直前に、12年のロングランを続けたブロードウェイ公演が幕を閉じたこともあいまって、〈ネクスト・ステージに上がった『RENT』〉という印象を強く受けた公演でした。
さて、そんな東宝製作版『RENT』の再演、先日行われた記者会見からのレポートです。
↑会見の冒頭、キャスト全員で披露した「Seasons of Love」より。