ウィーン生まれのミュージカル『エリザベート』といえば、間違いなく近年の日本演劇界で、最もヒットした作品のひとつ。
その『エリザベート』が日本に初登場したのは1996年。
それから20年もたたないうちに、〈ウィーン・ミュージカル〉は、日本演劇界に深く根付きました。
現在まで上演されたウィーン産ミュージカル、『エリザベート』『モーツァルト!』『ダンス・オブ・ヴァンパイア』『レベッカ』『ルドルフ』は、軒並み大ヒットしています。
ウィーン・ミュージカル界との交流も盛んで、2007年にはウィーン版『エリザベート』が初来日。その後、ウィーンのミュージカル・スターが来日するコンサートもコンスタントに行われていますし、マテ・カマラス、ルカス・ぺルマンらは日本の舞台に日本語で出演してもいます。
その中でも2008年に行われた『ウィーン・ミュージカル・コンサート』はウィーンを代表するスターが集結、ウィーン・ミュージカルの人気ナンバーをふんだんに盛り込んだ内容でファン垂涎の内容となり、好評を博しました。
その興奮が今夏ふたたび登場、さらに豪華なキャストにより『ウィーン・ミュージカル・コンサート2』として上演されます。
今回の出演は...
エリザベート役で世界一の出演回数を誇り、2012年の来日公演や昨年のコンサート版など、すでに日本でもおなじみのディーヴァ、マヤ・ハクフォート、
同じく『エリザベート』ルドルフ役や『ロミオ&ジュリエット』ロミオ役などで人気、日本でも大沢たかお主演の『ファントム』に出演するなど日本のステージでもおなじみの貴公子、ルカス・ペルマン、
『ロミオ&ジュリエット』のジュリエットなどでキュートな魅力をふりまいているマジャーン・シャキ、
『モーツァルト!』初代ヴォルフガング役として名高いイングヴェ・ガーソイ・ロムダール、
『ダンス・オブ・ヴァンパイア』ではドイツ初演をはじめ、クロロック伯爵役で1000回以上出演しているケヴィン・タート
といった一流のキャストが集結。
さらにスペシャル・ゲストとして韓国でエリザベート、『レベッカ』ダンヴァース夫人などを演じているオク・ジュヒョンも出演します。
そして最注目は、2012年にウィーンで開幕した『エリザベート』再々演でトート役に抜擢されたマーク・ザイベルト!
『エリザベート』は現在もウィーンで上演中ですので、現役のトートが来日するのは、初ですね。
彼の名が一躍有名になったのは2005~6年の『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役。その後、『アイーダ』のラダメスや『ウィキッド』のフィエロなど、様々な役を演じています。
日本でステージに立つのはこの『ウィーン・ミュージカル・コンサート2』が初というマークに、公演に先駆けその意気込みなどを伺ってまいりました。
マーク・ザイベルト インタビュー
――マークさんは今回初来日ですが、今までにウィーンのスターの方々がたくさん日本で公演を行っています。何か日本についてお話を訊いていらっしゃいましたか?
「仰るとおり、日本ツウの仲間から色々な話を事前に訊いてきました(笑)。まず、日本はとにかく公演環境が素晴らしいので、安心して身を委ねて大丈夫だよということ。またコンサートや舞台に関しては、とにかく日本のお客さまは素晴らしい、我々が行って舞台に立っていることに対し、来てくれてありがとうという感謝の気持ちを示してくださること、また我々が良いパフォーマンスをすると、それに対しすぐに反応が返ってくる、とても熱狂してくださるお客さまであると聞いています。何しろ初めて日本に来て、初めて日本のお客さまの前に立つので、知らないこともたくさんあると思うのですが、未知との出会いというのはとても楽しみなので、今からワクワクした思いでいっぱいです」
――初来日ということで、「初めまして」のお客さまも多いかと思います。マークさんご自身のことについて伺わせてください。ミュージカル俳優を目指したきっかけは?
「ミュージカル俳優を志したのは、どちらかといえば偶然です。ミュージカルを観るのはずっと好きだったのですが、けして小さい時からミュージカルスターになろうと思っていたわけではありません。実際にミュージカルをやってみたいという気持ちになったのは非常に遅く、20歳になってからなんです。実は最初は経済学を勉強していました。20歳の年にいくつか(音楽の)学校の試験を受けて合格し、ウィーンで勉強することに決めて、そこから本格的にミュージカル俳優としての道を歩き始めました。言ってみれば偶然の産物のようなところがあるんですが、でも計画していないことの方が上手くいくこともありますよね(笑)」
――そうなんですか! 20歳の時に何があったんですか?
「今振り返ってみると、直接のきっかけになったのは兄との会話だったと思います。その当時、経済をこのまま勉強するべきなのかとちょっと迷いがあって、じゃあ経済学じゃなかったらほかにどういう方向があるかなと考えた時に、兄に会ったんですね。兄は医者で、最初は兄から医学の道はどうだろうとか情報を聞きたくて会ったんですが、その中で「やりたいことってないの?」って訊かれて、「すごくやってみたいなと思うのはミュージカル。面白いと思うんだよね」って言ったら、「じゃあ、やればいいじゃん!やりたいんだったら」と言われたんです。それまではミュージカル好きではあったけれど、具体的にどうこうとは考えていなかった。兄のひと言が背中を押してくれて、こういう結果になりとても幸せだなと思います」
――その後は順調にミュージカルスターの道を歩んでいらっしゃいますね
「たいへん幸運なことに今まで色々な役柄を演じる機会に恵まれてきました。大きい役もあれば小さめの役もあります。もちろん今演じている『エリザベート』のトートはキャリアの中でも非常に重要なポイントになっていることは間違いありません。でも小さい役でも私にいろんなことをもたらしてくれた役はたくさんあります。色々な役を演じ、その積み重ねがあってこそ今の私があると思います」
――〈ウィーン・ミュージカル〉というのは、日本ではとても人気があります。マークさんご自身はウィーン・ミュージカルの魅力はどこにあるとお考えですか?
「ブロードウェイのミュージカルはどちらかと言えばショー的な要素があり、楽しさやエンターテインメント性を押し出している。それに対し、ウィーンのミュージカルは物語に...そして暗い側面にも焦点が当たっているというのが違いであり、一番の魅力ではないかと思います。それはウィーンの文化とも非常に密接に繋がっているのですが、死をめぐる物語だったり、人の運命をめぐる物語だったりという形になっています。それが『エリザベート』『ルドルフ』といった作品にすごくよく表れている。『ロミオ&ジュリエット』もウィーン発のミュージカルではありませんが、ウィーンであれだけ成功を収めているのは物語の深さにあると思います」
――現在マークさんはウィーンで『エリザベート』のトートを演じていますが、ウィーンでは今回のこの再々演版から、「愛と死の輪舞」が加わっていますね。これは日本の初演の際に追加された曲で、日本の『エリザベート』ファンにとっては特別な思いもあるナンバーであり、それが本場のウィーンでも作品に組み込まれた、というのは日本人にとってはちょっと事件です。この曲をどんな思いで歌っていらっしゃるのかを教えてください
「正直、最初はこの曲と向き合うのが少し難しかったんです。内容があまりにもトート自身の気持ちをあらわにしてしまうものなので、全体の流れの中で、こんな早いタイミングでトートの感情をさらけ出すような歌を歌ってしまっていいのだろうか、その後の「最後のダンス」あたりで見せる冷酷さや危険性が削がれてしまうんじゃないかと、役作りの上ですごく苦労しました。でもだんだん自分の中でもうまく踏み込めるようになってきて、けしてこの曲でこれだけ感情をさらけ出してしまっていても、のちのちのソロの曲のなかで、トートの持っている冷酷さや危険性が失われることはないんだなと、上手に向き合えるようになってきました。今では逆に、ドイツ語版で初めてこれを歌うトートが自分であるということがとても誇りに思っています!」
――コンサートでは、この曲の披露を期待しても良いのでしょうか?
「私からはまだお答え出来ませんが、プログラムにのっていれば、私は喜んで歌いますよ(笑)。コンサートでは、"ウィーン・ミュージカルの真髄"といったものをご披露する予定ですので、私はトートとティボルトは必ず歌います。それ以外にも、まだ演じたことのないものも歌う予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください」
――今回共演する皆さんをご紹介してください
「まずルカスは大学時代からの友人ですごく仲が良いんです。学生時代を一緒に過ごした仲で、一緒にバカンスにも行ったりする、プライベートでも非常に親しい友人です。よく一緒に飲みにいったりもしています。
マジャーンは『ロミオ&ジュリエット』で共演して以来の知り合いですが、もちろんルカスを通じてより仲良くなって、彼女も今では私の個人的に親しい友人のひとりです。
イングヴェは、私が学生時代に『モーツァルト!』を観た時から本当に尊敬している俳優です。私、『モーツァルト!』という作品が大好きで、何回も観に行っているんですが、その憧れのイングヴェと共演できるというのは私にとってもとても大きな喜びです。今まで共演したことはないのですが、今回日本で一緒に舞台に立てるのでとても楽しみにしています。
マヤは私はエリザベートとしてそれこそ何度も舞台で観ています。そのころはマテ・カマラスがトート役で、そのふたりのコンビで何度も『エリザベート』を観ていて、すごく尊敬する存在です。今年はオーストリア、日本、ドイツとすごくマヤさんと共演が多いので、たくさん一緒に舞台に立てて非常に嬉しく思っています。
ケヴィンも実はよく知っていまして、シュトゥットガルトで私が『ウィキッド』に出演していた時に、同じ建物の別の階に彼が住んでいました(笑)。言って見れば"お隣さん"ですね。日本でまた一緒の舞台に出演できるので、本当に楽しみです。
また、コンサートはソリストだけで成立するものではありません。必ず優れたアンサンブルがいてこそいいコンサートになります。今回のアンサンブルメンバーの中にもよく知った顔が何人もいますし、非常に素晴らしいアンサンブルなので、最強の布陣で臨めるコンサートです!」
――ウィーンのミュージカルファンが嫉妬しそうですね
「実際、そういう声がすでに届いていますよ!(笑)」
※当記事を掲載後、マジャーン・シャキの出演がなくなり、新たにアンネミーケ・ファン・ダムの出演が決定したことが、主催者より発表になりました。
●公演情報●
7月5日(金)・6日(土) Bunkamuraオーチャードホール(東京)
7月11日(木)~15日(月・祝) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
7月20日(土)~22日(月) 東急シアターオーブ(東京)
チケットはいずれも5月11日(土)に一般発売開始。
なお東京公演は4月20日(土)11:00~30日(火)11:00でインターネット先行抽選販売「プレリザーブ」を受付。