

11月より『錦秋特別公演2016』が全国で開催。それに先駆け公演の見どころを、僕、中村鶴松がご案内する短期連載の4回目です。今回は主演のおひとりである中村七之助さんのご紹介をします!


僕が感じる七之助さんの一番の魅力は、なんといっても女形としての美しさです。僕も最近は女形を演じさせていただく機会が多いので、体の動きや衣装の着こなし方、それにお化粧の仕方をいつも勉強させてもらっています。七之助さんからはいつまで経っても、「ブス、ブス」って言われてますけどね(苦笑)。また、七之助さんのすごさは、演目ごとに違った美しさを表現できるところにもあります。綺麗さや妖艶さはもちろん、昨年、歌舞伎NEXTの『阿弖流為』で演じたようなカッコいい強さを持った女性も本当に美しく表現される。それに、たとえ派手ではない演目であっても、観る人を惹きつけて放さないオーラがあるんですよね。よく、"歌舞伎の見得には存在感を大きく見せるような力がある"と言われますが、七之助さんの見得にはまさしく迫ってくるような迫力がある。僕も同じ舞台で共演していると、その圧倒的なパワーをいつも感じます。特に今回の公演で七之助さんが演じられる『汐汲』は、切なさや哀愁などさまざまな表現が詰め込まれた演目ですからね。僕が感じている七之助さんのすごさを、皆さんもきっと体験していただけると思いますよ。
【公演情報】







◆ 飯田洋輔 INTERVIEW ◆
Dステがシェイクスピア没後400年に贈る、青木豪×シェイクスピア×Dステの本格的喜劇作品 Dステ19th「お気に召すまま」。Dステにとっては『ヴェニスの商人』『十二夜』に続くシェイクスピアシリーズ3作目です。
本番を目前に、熱がこもる稽古場からキャストの皆さんからメッセージが届きました!
さて、いよいよ今回が当連載も最終回! 最後にメッセージを寄せていただいたのは、


まずは大久保祥太郎さんから。
Q1 Dステ19th「お気に召すまま」のここが面白い!というポイントは?
大久保「言葉が面白いです。これはどのシェイクスピア作品にも言えるのですが。言葉遊びが御洒落で綺麗で滑稽で素敵です。『お気に召すまま』は喜劇的笑いが多く、演じていて楽しいです。初めてシェイクスピア作品をご覧になる方にも楽しんでいただけると思います。観劇後はハッピーな気持ちになっていただけましたら幸いです」
Q2 青木豪さんの演出についてお聞かせください。
大久保「ものすごく楽しいです。役者に直接的な答えは与えず、絶妙な言葉で答えまで御導きくださるので色々試させていただき、一日の稽古があっという間に終わってしまいます。良いものは良い!ダメなものはダメ!と言ってくださるので、答えを模索しながら楽しんでます」
Q3 稽古をしていていかがですか?
大久保「演出の青木豪さんが"人間は嫉妬で生きている"とおっしゃっていたのですが、その言葉を稽古場でひしひしと感じております。僕が演じさせていただくシルヴィアスはフィービー(山田悠介)に恋する羊飼いなんですが、追いかけても追いかけても振り向いてもらえない。それでもあきらめずに好きで追いかけるのは違う方を向いているフィービーへのある種の嫉妬だと思うんです。その嫉妬する姿や恋に悩む姿を表現することで、シルヴィアスに深みが出ると思うので、稽古でいろいろと試行錯誤しています」
Q1 御自身の役どころを教えてください。
山田「マーテクスト/フィービーの二役を演じます。実にマーテクストは三言しかしゃべらない上に、ストーリーのキーにもならない役どころです。三言で存在感を出したいと思います。フィービーは相手役・シルヴィアス(大久保祥太郎)との息の合った掛け合いが見どころです。初の女性役ですが、自由に演じたいです」
Q2 稽古をしてみていかがですか?
山田「石田圭祐さん、松尾貴史さん、鈴木壮麻さん、今回Dステに参加していただく御三方の引き出しの多さには驚かされます。稽古中から笑いが絶えません。僕も御三方のように歳を重ねたいです」
Q3 共演者のここがおすすめというところを教えてください。
山田「今回ロザリンドを演じる前山(剛久)のストイックぶりに感心させられています。気迫がすごいです。今年は彼と仕事で半年くらい一緒にいるんですが、現場ごとに全く違う顔を見せるので僕も負けられない!と気合いが入ります」

大久保「どれだけ振り向いてもらえなくても真心を持って想い続ければ、いつか叶う。恋っていいな、人間っていいなと心から思える作品です。観れば観るほど深みが増し、面白くなる舞台だと思うので、いろんな登場人物に感情移入して純粋な気持ちで何回も楽しんでいただけたら嬉しいです。青木豪さん×シェイクスピア×Dステ×松尾貴史さん×石田圭祐さん×鈴木壮麻さん。この化学反応を劇場でお楽しみください」
山田「マーテクスト/フィービーの二役以外にも、様々な場面で舞台上に登場します。僕のことを探してみてください。体を張って頑張っていますので、見つけてもらえたら至極嬉しいです。見どころ満載ですので、皆さん、ぜひ!」

2016/10/14(金)~10/30(日) 東京・本多劇場
2016/11/19(土)~11/20(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
大阪を拠点に活動する若手俳優集団・劇団Patchが今年4月に上演した2.5次元ミュージカル『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』。原作は週刊少年ジャンプの人気ギャグ漫画で、「あのギャグ漫画をミュージカル化!?」という周囲の不安をよそに大盛況を博した本作が、"天晴版"としてバージョンアップして上演される。初日に向けて稽古場の熱も高まる中、初の通し稽古が行われた。

本作は、立派な武士を目指して江戸の武士道学校に通う磯部磯兵衛とその仲間たちの、のほほんとした自堕落な日常を描いた作品。今回の"天晴版"では配役を一部変更し、脚本、ダンスにも新たなアレンジを加え、5曲の新曲を追加、舞台には2本の花道が通されるなど、初演を観た人も新鮮に映るように大幅に変更されている。

観劇中の注意を促す前説さえも歌に替え、幕開きから"磯ミュ"ワールド全開だ。主人公の磯兵衛を務める井上拓哉や、母上役の中山義紘ら初演からキャラクターを続投するメンバーはもちろん、磯兵衛の親友・中島襄役の納谷健、服部半端役の竹下健人ら新たなキャラクターに挑んでいるメンバーも、役になじんできている様子。特に磯兵衛役の井上はほとんど出ずっぱりだが、初演で演じた経験をもとに、コロコロと表情や声色を変えながらダメっぷりを表現していく。そんな磯兵衛を見守る神出鬼没の超人・母上や、親友・中島とのコンビネーションもバッチリだ。磯兵衛と友人たちとの会話の絶妙なテンポ感や間合い、袖にハケた後の瞬時の早替え、アンサンブルキャストの七変化などが物語に良いリズムを生み出し、笑いへとつなげている。また、新キャラクターのお犬様(山浦徹)が投入されたことによっても新たな笑いが生まれ、宮本武蔵を演じる芸人・お~い!久馬も、さすがの存在感を放っている。

歌やダンスにも磨きがかかり、初演でも大好評を得た上半身裸で踊る『筋肉ええじゃないか』や賽の河原でのスリラーダンスは、アホっぽさを通り越してカッコよく見える。ほか、キャラクター登場シーンに新たに曲がつけられたり、某ミュージカル風の楽曲が加えられるなど、全部で16曲、前回以上にお祭り感のあるステージに仕上がっている。

観る側は、難しく考えることは一切ナシ。「立派な武士になりたい」と言いながら隙あればサボろうとする様、春画(エロ本)の取り合い、好意を寄せる団子屋の看板娘(鎮西寿々歌)への妄想、母上からの異様な愛情...など、漫画から飛び出してきたキャラクターたちによる、バカバカしさあふれる展開をただ観るだけで、「あ~、くだらんけど楽しかった!」と落ち着くのだ。しかも、毎公演終演後には、挿入曲をメドレーで披露するミニライブ「ISO LIVE」も開催。本番までにまだまだキャラクターの作り込みや、早替えのスピードアップ、テンポ感の調整がされていきそう。関西人だけで構成された劇団Patchだからこそできる、吹っ切れたパフォーマンスに乞うご期待!
10月20日(木)~25日(火)までABCホールにて上演。チケットは発売中。
取材・文/黒石悦子
写真/村山北斗
◆上口耕平×駒木根隆介×廣瀬智紀 インタビュー◆