9月8日、都内にて宝塚歌劇月組公演『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』制作発表会見が開催されました。
この公演は月組新トップ・珠城りょうさんのお披露目公演。
新生月組が、2017年宝塚大劇場の幕開けを華やかに彩ります!
作品はミュージカル『グランドホテル』と、レヴューロマン『カルーセル輪舞曲』の2本立て。
『グランドホテル』は1928年のベルリンにある超一流ホテルを舞台に、そこに行き交う人々の人間模様を描く群像劇。
日本でも今年、トム・サザーランド演出版が上演され大きな話題になりましたが(当げきぴあでも連載でご紹介いたしました!)、宝塚で上演されるのは、1989年にブロードウェイで初演され、トニー賞5部門を受賞した、トミー・チューンによる演出・振付版。
宝塚ではこのトミー・チューン版を1993年に上演、当時の月組トップスター、涼風真世さんの退団公演として大きな評判と、高い評価を得た作品です。
93年版はトップスターの涼風さんが重い病を患ったオットー・クリンゲラインを演じましたが、今回はトップスターの個性に合わせ、珠城さんがフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵を演じ、男爵とその恋の相手・グルーシンスカヤの愛にスポットが当てられます。
この日の会見にはトミー・チューンさんも登壇。
びっくりするほどダンディです...!(自身、ダンサーでもあります)
また、『カルーセル輪舞曲』は日本初のレヴュー『モン・パリ』誕生90周年を記念したレヴュー・ロマンです。
日本を出発しパリに着くまでを描いた『モン・パリ』に対して、今回はパリから出発して宝塚を目指す世界めぐり形式の作品になるとか...!
会見はまず、珠城りょうさん、愛希れいかさん、美弥るりかさんによりパフォーマンスから始まりました。
『カルーセル輪舞曲』より♪「我がパリ」、♪「カルーセル輪舞曲」
『グランドホテル』より
♪「The Grand Parade」
作品のオープニングを飾るナンバー。ホテルに長く逗留しているオッテルンシュラーグ医師(今回は夏美ようさん)により、登場人物の事情が次々と紹介されていきます。
▽ フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵:珠城りょう
▽ エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ:愛希れいか
▽ オットー・クリンゲライン:美弥るりか
♪「Love Can't Happen」
男爵とグルーシンスカヤのラブ・バラード。
作品を代表する、美しいナンバーです。
♪「We'll Take A Glass Together」
男爵とオットー、そしてその場にいる人々が、自らの、そして相手の幸せを祝いグラスを上げる、軽快なナンバー。男爵とオットーの友情、そしてダンスにも注目のシーンです。
オットー=美弥さん、浮かれていますね~。
少し大きめのジャケット(オットーは病を患っているので服がぶかぶかになっているのです)、いい味出しています!
会見では、まずは小川友次・歌劇団理事長のご挨拶から。
「来年の103周年、その正月公演を新しい月組でやる、と決まった時に何をやろうかということになり、もちろんスタッフで話し合うのですが、私の気持ちの中ではこの大好きな、すばらしい『グランドホテル』をもう一度やりたいという気持ちが強かった」と思い入れを語り、さらに
「2000年の『グラントホテル』ベルリン公演を岡田先生たちと行って、このグランドホテルのモデルであるアドロン・ホテルに泊まりました。これが本当のグランドホテルかと思い、置いてあったマッチを持って帰った」というようなエピソードも話し、後ほどトミー・チューン氏に「マッチのエピソードに感動しました(笑)」と言われていました(笑)。
さて、そのトミー・チューンさん。特別監修を務めます。
「この宝塚でまたお仕事をさせていただけるとは思っておりませんでした。まさに夢のようです。新しいプロダクションでお仕事できるのが楽しみですし、珠城さんという新しいトップスターをどのようにご紹介していけるのかということについて、これからやっていくことを楽しみにしています」と終始笑顔です。
(月組の「ムーン」と「チューン」、韻を踏んでていいでしょ!?というようなことまで...!)
23年前・宝塚初演当時について問われると
「大変だったことを思い出します!! レビュー(併演の『BROADWAY BOYS』)と芝居の両方やるということで、大変難しかった。私と私のチームは本当に頑張りました。すでにこの世にいない方もいますが、たぶんそれが理由だったのかもしれません(笑)」とジョークも織り交ぜて答えていらっしゃいました。
演出は岡田敬二さんと、生田大和さん。
岡田さんは
「何よりも23年ぶりにブロードウェイからトミー・チューンさんをお迎えして『グランドホテル』を再演できることを光栄に誇りに思っています。23年前はトミーさんは50代の半ばでしたね。私たちは1年2ヵ月の打ち合わせと3ヵ月の稽古をやりました。3ヵ月、トミーさんのブロードウェイのスタッフと宝塚のスタッフ、がっぷり組んで作ったこの作品は、宝塚歌劇団にとっても冒険でもあったし、大きなモーメントになりました。今回夢が叶って、トミーさんともう一度お仕事できることをとても嬉しく思います」とご挨拶。
生田さんは
「エンターテインメント作品として極上のものでありながら、かつ芸術的スピリットをもった美しい作品。ここに演出として携わることに感激しています。トミー・チューンさんの名に恥じぬよう、ものにできるよう頑張っていきたい。
私は1993年の初演は中学1年生。実は宝塚を見るようになったのが中学2年生からなので、ちょうど惜しかったところです(笑)。あと1年早くミュージカルに目覚めていたら観る事ができたんですが......。残念ながら観ていませんので、作品にとっては新参者ですが、この作品の資料を紐解いていくと、スピリット、哲学、心、美しい演出...それらは天才のみわざではないかと思うようなもので、感動しました。それを今度、演出という立場で実際稽古場で形にしていかなくてはならないということで、大きなプレッシャーとともに喜びを感じています。
ただ単に形を整えていくのではなく、そこにこめられた心を探求していくように、よき演出家であると同時によき研究者として、1928年のグランドホテルに生きる人々とともに私も生きていきたいと思います」と話しました。
ちなみのおふたりの演出家の分担としては、岡田さん曰く
「私はもう70代ですので後進を育てる立場にいます。そういう意味では生田さん・稲葉さんはいまや歌劇団の新しい力。私は全体を観ますが、ディテールに関しては生田君が頑張ってやってくれるでしょう。全体は責任を持ちますが、細かいことは生田君が汗を流しながらやってくれるだろうと期待してます(笑)。
今回『グランドホテル』の演出をやりたいという人は、歌劇団の演出助手の中にずいぶんいて、たくさん手は上がったのですが、その中でもいまや成長株のひとりである生田先生にお願いしました」とのこと。
さらに生田さんは「稽古場で実働部隊として、『グランドホテル』という作品の骨組みを作っていくのが私の役割だと心得ています。稽古場で実際に人を配置し、動かし、ステージングを振付の御織ゆみ乃さんと作り上げていく。その上で岡田先生にご覧いただき、トミー・チューン氏に監修していただきます。
(主役が変わるということで)演出が変わるということについては、もちろん今回、男爵が主役となります。ただ主役といっても、『グランドホテル』はもともと群像劇。その中で誰を軸にしていくかでだいぶ見え方が変わる。93年の初演ではオットーにフォーカスを当て、その結果、もともと2時間10分の作品から抜粋して形付けられたのが宝塚版。今回は男爵とグルーシンスカヤのふたりに焦点を当てるので、その2時間10分の大元の『グランドホテル』からどう再構成するのかがまず軸になると思います。何か演出をそのために変えるということは基本的にない、あくまでもトミー・チューン氏の作られた世界観を、なぞるのではなく、そのスピリットを掘り下げていければ」と話しました。
レヴュー『カルーセル輪舞曲』の作・演出は稲葉太地さん。
「実は『グランドホテル』はとても大好きな作品で、(一緒に上演されるのが)『グランドホテル』で、トミー・チューンさんもいらっしゃいますと伺ったときに「そっちの助手でいいです~」、と言ったくらい(笑)。23年前、私は劇場で拝見しました。7月の暑い東京公演でした。そのときにエンターテインメントの素晴らしさをとても感じていました。今回、宝塚の定番の"2本立て"という興行の"後物"を務めさせていただくことを大変光栄に思っています」と、『グランドホテル』愛を告白!
そして『カルーセル輪舞曲』については「『モン・パリ』誕生90周年の記念レヴューということで、責任を重く感じています。岸田辰彌先生が作ったレヴュー、たくさんの先輩方のお仕事、作品作りをもう一度勉強しなおして、そこに敬意を表して、私なりにこの新しいレヴューを作っていきたい。
それ以上に課せられている使命は、珠城がこの公演をもちまして新しい月組みのトップスターになりますので、珠城・愛希・美弥を中心とした新しい月組の魅力を最大限に活かすことが。それが私に与えられた一番の使命ではないかと思っていますので、新生月組が繰り広げる"一番素晴らしいレヴュー"を目指して作品を作りたいと思っています」と話しました。
さてお待たせしました、「月組の主演男役として皆さまの前でご挨拶させていただくのは本日がはじめて」という月組新トップ、珠城りょうさん。
「『グランドホテル』という作品と『カルーセル輪舞曲』のショー、どちらも本当に大きなもので、お話を伺ったときは非常に驚きましたし、自分に務まるのかと不安もありました。でも『グランドホテル』の資料を読んだり、この制作発表に向けての稽古を進めていくうちに、この作品に携わらせていただくことがどんなに幸せか、この楽曲を歌わせていただけることがどれだけ役者として幸せかという思いの方が強くなってきました。
ショーもオリジナルで『モン・パリ』90周年という記念すべき年に、私たちのためにオリジナルでショー作ってもらえることがとても光栄です。
個人的な話ですが、私は宝塚初観劇で岡田先生の作品を観て、宝塚受験を決めました。入団してから岡田先生とご縁がなかったのですが、このように新生月組、わたしのトップお披露目で先生とご一緒にお仕事をさせていただけること、深いご縁を感じています。生田先生、稲葉先生には新人公演時代からたくさんお世話になり、色々な引き出しを出していただきました。今ここでおふたりの先生とまたかかわらせていただけます事、またトミー・チューンさんをお迎えして新たな『グランドホテル』を作っていけること、すべての奇跡に心から感謝したいと思います。
まだまだ舞台人としても男役としても未熟ですし、磨いていかなくてはいけないところはたくさんありますが、今の自分に出来る精一杯の努力をして、今の私たちにしかできないふたつの作品に仕上げていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします」とご挨拶。
さらに「つい先日卒業された龍真咲さんトップ時代の月組は本当にエネルギーあふれる組で、下級生にいたるまでひとりひとりが舞台にかける熱い思いがありました。その先頭を走っていくので、自分が一番舞台に向かって、ひたむきに、明るく務めていけたらいいなと思ってます。まだまだ自分も成長段階、月組の皆さんと一緒に、皆さんの思いを受けて、一歩一歩力強く進んでいければ」と意気込みを話しました。
その相手役となる愛希れいかさん。
「ショーの方は、稲葉先生からも少し構成をお伺いして、すごくワクワクしています。お正月の、そして新しい月組のスタートにふさわしい作品になるのではないかなととても楽しみにしています。
そしてお芝居『グランドホテル』は(宝塚で上演されている)多くのブロードウェイ・ミュージカル作品の中でも、特に大切にされてきた作品のひとつではないかなと思っています。こうしてトミー・チューンさんをお迎えして再演させていだきますことを、とても光栄に思っています。演じるのはバレリーナなんですが、生きることに希望を失い、踊ることの情熱を失った彼女が男爵に出会い、愛すること、愛されることの喜びを、また踊りへの情熱を取り戻していきます。そこを大切にしっかり演じていきたいです」。
そして美弥るりかさんは次のように語りました。
「私は涼風真世さんにあこがれて宝塚受験を決めました。私にとってもこの『グランドホテル』と『『BROADWAY BOYS』』は、初めて劇場に観に行った作品であり、男役になりたいと思い、宝塚に入るぞと決めた作品であります。この2本なしでは宝塚を語れないくらいの熱いものを持っていましたので、それを今わたしがいる月組で再演することができ、しかもオットー・クリンゲラインという役に自分が出会えたことに心から感謝しています。
まだ自分がオットーを演じることが夢のようですが、人間の色々な思いがぎゅっとつまった素晴らしい作品ですので、子どもの頃にはわからなかった深いところまで、自分なりに魂をこめて、大切にこの役に出会えた奇跡に感謝して演じていきたいと思います。
これからが新しい月組のスタートです。私も微力ですが力になれるよう精いっぱい頑張っていきたいと思います」
新生月組が挑む名作『グランドホテル』、そして『カルーセル輪舞曲』、公演を楽しみに待ちましょう!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・2017年1月1日(日)~30日(月) 宝塚大劇場(兵庫)
・2017年2月21日(火)~3月26日(日) 東京宝塚劇場