◆ 瀬奈じゅん INTERVIEW ◆
遂に、12月の公演『Club SLAZY The Final invitation~Garnet~』でシリーズ最終章を迎える『Club SLAZY』。
2013年9月からスタートしたこのシリーズは、深い悲しみを持った女性のみがたどり着ける"Club SLAZY"を舞台にした、
歌ありダンスあり笑いあり涙ありの作品です。
その6作品目となる最終章が発表された日に、「SLAZY」のパフォーマー・Deepとして1作目から出演してきた加藤良輔さん、裏方で店を守るミスティック・Qとして2作目から出演してきた法月康平さんにお話を伺いました。
――最終章は驚きのニュースでしたが、おふたりはそれを聞いていかがでしたか?
法月 「寂しいだけじゃない気持ちです。オリジナルで、みんなで作り上げてきた作品がここまで人気になって、達成感というか、駆け抜けてる感がすごくあるので」
加藤 「そうですね。寂しさはありますけど、康平の言うとおり『やりきった』っていう方が大きいかもしれない。
SLAZYはパッと見かっこいい感じですけど、いい意味で笑えるシーンがあったり、わちゃわちゃしてるのも魅力なので、最後は笑って終わりたいと思っています」
――では改めて、おふたりの役どころから教えてください。
加藤 「僕のDeepっていう役は、(SLAZYのパフォーマーの中でも選ばれし5人が所属する)『LAZY』の4thスターです。
ショーをやらせてもらえるポジションにいるけど、あまりやる気がないと言いますか、ちょっと怠けている役です。
でも、回を重ねるごとに、なぜこうなったのかが明かされてきて。自分を紹介する歌でも『浅く見えて実は深い』って歌詞がありますが、過去にいろんなものを背負っていたから今こうしてる、っていう深みのある役に成長しました」
法月 「僕はLAZYたちと違って、裏方でずっとみんなを見守ってきた役です。あまり自分を出さない役なんですけど、Deepさんと一緒で、作品を重ねるごとにQちゃんが持ってる人間らしい部分だったり、喜怒哀楽というものがだんだんと出てきて。
今は、DeepやBloom(太田基裕)...ハチ、相手によっては感情を出せる。っていうところが演じていてすごく楽しい部分ですね」
――この作品に出演する上での楽しさってどんなところですか?
加藤 「台本にはない部分の芝居作りです。メインの芝居のじゃまにならないところでやる裏のお芝居みたいなのが、俺はこのSLAZYやってて好きなところで。すごく楽しいんですよね。やりすぎると怒られるんですけど(笑)」
法月 「やりすぎる側ですよね」
加藤 「そう、そのギリギリのせめぎ合いを(笑)。時間があくと、遊べる関係性の役の人に『あそこちょっとこれやってみない?』って。そういうことをやるのが俺は好きなんですよね。
あとは楽曲と振り付けが素晴らしい。それをやらせてもらえることはこの上ない幸せです。歌が難しいので、そこは毎回苦戦しますけどね」
法月 「Deepさんはね、大変だと思いますよ。(加藤さんは)歌って踊れて芝居できるって3つ揃ってる人なので」
――歌とかダンスは入る前に訓練したりするんですか?
加藤 「LAZYはないですね」
――じゃあ早いスピードで覚えなきゃいけない。
加藤 「早い早い」
法月 「(笑)。悪ふざけをしてるのを全然笑わないで見れるので」
加藤 「康平が笑うことあんまないもんね」
法月 「いや、楽しいんですよ。楽しいんですけど、割とスンとね」

――加藤さんは1作目から、法月さんは2作目から出られてますが、その中で変化していったことはありますか?
法月 「カンパニー力は本当に強くなっていってると思います、これは胸を張って言えますね」
――なにかきっかけがあったんですか?
法月 「多分、きっかけは3なんですけど」
加藤 「確かにそうかもしれない。劇中で実力を試されるバトルのシーンがあって、SLAZYのストーリーの中でも一番熱いよね。そこで掴んだものは大きかったな」
――どういうところが変わったんですか?
法月「小さなことではあるんですけど、本番前に円陣組むとか、そういうことをするようになった」
加藤 「なったねえ」
法月「それをすることで引き締まるというか、全員でやっていると感じられるポイントかなって思います」
――皆さん仲良さそうですね。
加藤 「ほんと仲いいよね」
法月 「特に12月公演のメンバーはめっちゃ仲いいですよ。怖いもん、俺」
加藤 「あははは!」
法月 「余計、僕が引き締めないと。B(太田基裕)C(米原幸佑)D(加藤良輔)E(井澤勇貴)O(藤田玲)は揃うとすごいんです(笑)」
加藤 「今回、大変だよね、康平(笑)」
法月 「だから僕はほんとにスンとしてますよ」
――お客さんにとって"Club SLAZY"は悲しみを癒してくれる場所だと思いますが、おふたりにとっての「"Club SLAZY"」はどういう場所ですか?
法月 「自分に満足しない人たちが集まる場所。だからそういう意味では...沼にハマってますよね(笑)。
お客さんと一緒で、SLAZYという沼にハマってるかなっていう気がします。ただ、すごくやりがいがあります」
加藤 「憧れの場所です。きらびやかな世界って自分自身の求めてる場所でもあるし、勝負がある世界ですから。自分が進んでいる道と照らし合わせられるし。こういう世界で輝いていたいっていう憧れのポジションであり、憧れの人たちみたいな」
――ご自身にとっても憧れの人を演じている?
加藤 「そうですね。もちろんストーリー的にはいろいろあるけど、でもやっぱりこの選ばれし5人の『LAZY』は憧れです」
――次で最終章になっていますが。
法月 「どうでしょうね。香さんのことだから、すべてが解決することは決してないかも(笑)」
加藤 「確かに(笑)」
法月 「どのようなストーリーになっても最後だからと言って、特別に何かやらなきゃいけないことはないと思います」
――今まで通り。
法月 「はい」
加藤 「そうですね。がんばります」
公演は、12月7日から13日まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演。
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公演情報
『Club SLAZY The Final invitation~Garnet~』
日程:2016年12月7日(水)~13日(火)
会場:品川プリンスホテル クラブex
脚本:三浦 香/伊勢直弘
演出:三浦 香
楽曲制作:Asu(BMI Inc.)
振付:當間里美
出演:太田基裕、米原幸佑、加藤良輔、井澤勇貴、法月康平/藤田 玲/倉貫匡弘(TRASHMASTERS)ほか
公式サイト:http://www.clie.asia/CSL-Fin5
大阪でのライブが決定!
詳細は順次発表!
12月に上演される舞台「パタリロ!」。
きっと誰もが一度は耳にしたことがあるこの作品は、1978年から連載中の、魔夜峰央先生の大人気漫画です。
その主人公・パタリロ殿下を務めるのが、加藤諒さん!
キャスト&ビジュアルが発表されたときは、その完成度の高さに話題騒然。
一気に期待が高まりましたよね。今回、そんな加藤さんは舞台初座長。意気込みを伺ってきました!
――ご自身がパタリロ殿下を演じることになっての感想を教えてください。
「まず、この作品を生身の人間がやるんだということに驚きがありました。しかもそれを自分がやることへの驚きと、ちゃんとできるかなっていう不安が大きかったですね」
――舞台化発表の時点から「パタリロ殿下は加藤諒さんなんじゃないか」と言われていたことは、どう思われていましたか?
「バレてる!って(笑)。でも名前があがることは嬉しかったです。それだけ自分を知ってくれてる方がいらっしゃるんだなってことも」
――原作はご存知でしたか?
「有名な作品なので知ってはいたんですけど、読んだことはなくて。出演させていただくことになって、コミックスを読み始めました」
――これから演じるつもりで読まれての感想は?
「未知数というか、これをどう表現するのかなって。自分が演じるということで不安な気持ちもありますが、僕も『観てみたいな』って思いました、すごく」
――演じたいシーンはありましたか?
「ダンスが好きなので、『クックロビン音頭』はやりたいなって思ってるんですよね。
それと"ゴキブリ走法(パタリロ殿下の特技)"とか、これ本当にできるのかな?みたいなことを舞台上で『こう表現するんだ!』という驚きも、あったたらいいなと思います」
――パタリロ殿下のビジュアル、素晴らしかったです。撮影時のエピソードはありますか?
「パタリロって眉毛がないんですよ。だからこの"眉毛を残すか問題"があって。
僕はつぶしたほうがいいんじゃないかなと思ってたんですけど、スタッフさんから『加藤諒がやるっていうことで眉毛は残しておいた方がいいんじゃないか』という案がありまして。この自眉でいくことになりましたね」
――不自然さを感じなかったです。
「ほんとですか! 僕、眉毛を残したことで嫌がる声とかもあるのかなと思ったんです。でもそこが気にならない完成度だったって言ってくださったから、よかったなって」
――ブランコのビジュアルは世界観をすごく表現していますね。
「ブランコがけっこうミシミシ言ってたのでちょっと不安とかあったんですけど(笑)、しっかり作ってくれていたので大丈夫でした! 撮影のときは周りのお花とか蝶々はいなかったので、出来上がりを見たときにはテンション上がりましたね」
――こういう世界観はお好きですか?
「好きです。僕は元々、きゃりーぱみゅぱみゅさんとかSEKAI NO OWARIさんみたいな、ファンタジックで完成された世界が好きで。
『パタリロ!』もファンタジックだけど、ちょっとリアル。僕の好きな世界観に自分が飛び込んでいけるのはすごく嬉しいです」
――ポージングは原作を参考にしたんですか?
「はい。ちょっとセクシーな目をしたりするんですよね。そういうのを意識したカットと、子供っぽいやんちゃなところを見せるカットと撮りました。あと原作に『美少年パタリロ』っていうのが出てくるんですけど」
――ちょっと修正してあるパタリロ殿下ですね(笑)。
「そうそう! 僕のブロマイドはこれにしてほしいです(笑)」
――修正しなくても加藤さん十分かわいいと思いますよ。
「いやいや、それはないですよ!」
――パタリロ殿下ってどんな人だと思われますか?
「ギャグを言いながらも相手の揚げ足を取ったり、頭が切れて国王的なところもちゃんとあるんですけど、やっぱり子供でかまってちゃんみたいなところがすごくあって。ずるいなって思います! かわいさも頭の良さも両方持ってるから」
――ご自身との共通点はありますか?
「けっこう自分もかまってちゃんなんですよ。そういうところが似てるかなって思います」
――稽古場でもそういう感じですか?
「そうですね。僕、ボディタッチが好きでワーッていっちゃったりするので、パタリロ的な要素はあるかもしれない。でも国王とかそういう、団体の頂点に立つ経験はあまりないので、そういうところは今回の『座長』っていう立場として、国王に近づけたらいいなって思っています」
――座長はひとつの挑戦ですね。
「挑戦です、ほんとに。最初は不安の方が大きかったんですよ。自分なんかが座長という立場になってみんなを引っ張ってくことはできるのだろうかっていうものがあって。周りに須賀健太くんとか松岡広大くんとか座長を務めてきた人がいて、自分の中での座長像っていうのを考えたりはして。
でもやっぱり自分はそういう人じゃないから、自分なりの、須賀氏とも広大くんとも違う座長になる気がするんですよね。
先日、取材で魔夜先生とお会いしたら『あなたならできる!』って言ってくださって。そこで覚悟ができたというか。あとはやるしかないっていう気持ちになって、今はすぐにでも稽古したい気持ちです」
――ご自身としてこういう作品にしたいと思っていることはありますか?
「今回はきっといろんな世代の方、初めて2.5次元の舞台を観に来る方もいると思うのですが、そういう方がちゃんとなじめるような舞台になったらいいなって。ノリについていけなくなる人が出ないような舞台にしたいです」
――そうするにはどうしたらいいとお考えですか?
「『パタリロ!』の世界を僕たちがちゃんと作って、引き込めたらいいなって思っています。
劇場を出て普通に生活しているときにも『パタリロとかマライヒとかバンコランもどこかで生きてるんだ』って思ってもらえるような」
――どうしてそう思うようになったんですか?
「確信を持ったのは残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』ですね。『ライチ☆光クラブ』って設定としては無理なところがいっぱいあるから、そこに真実味を持たせることはひとつの課題で。
そこをみんなで作り上げていった感覚がすごくあったんです。それで観てる人たちも『すごかった』『パワーがあった』って言ってくださって。引き込む力のある作品になったのかなって思っていました。あと、オープニングって大事ということもすごく感じましたね」
――確かにオープニングで一気に引き込まれました。
「それは『ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」』(出演作)でも思ったことで。
今回の演出の小林顕作さんがやられていた學蘭歌劇『帝一の國』でもオープニングがかっこよかったですし、楽しみにしているところです」
――今回はいろんな世代が観に来られる作品になるでしょうね。
「僕のお友達も、親と一緒に観に行くって言ってくれてたりして。舞台の敷居って高いじゃないですか。なかなか観に行きづらいなって思ってる人たちにも、この機会に観に来てもらいたいなって思います!」
ライター:中川實穗
カメラマン:源賀津己
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舞台「パタリロ!」
公演期間:2016年12月8日(木)~25日(日)
会場:紀伊國屋ホール
原作:「パタリロ!」魔夜峰央
脚本:池田鉄洋
演出:小林顕作
CAST:
<パタリロ>加藤 諒
<マライヒ>佐奈宏紀
<タマネギ部隊>
細貝 圭 金井成大 石田 隼 吉本恒生
<魔夜メンズ>
佐藤銀平 吉川純広 三上陽永
柴 一平※Wキャスト 香取直登※Wキャスト
<バンコラン>青木玄徳
★ 浦井健治 ロングインタビュー ★
Dステがシェイクスピア没後400年に贈る、青木豪×シェイクスピア×Dステの本格的喜劇作品 Dステ19th「お気に召すまま」。Dステにとっては『ヴェニスの商人』『十二夜』に続くオールメール3作目です。
来月の本番を前に、熱がこもる稽古場からキャストの皆さんからメッセージが届きました!
今回、メッセージを寄せていただいたのは、


早速、いきましょう!まずは柳下大さん。

Q1 Dステ19th『お気に召すまま』のここが面白い!というポイントは?
柳下「Dステでのシェイクスピア作品は、豪さんの演出によってとてもわかりやすくなっています。『お気に召すまま』は"喜劇の中でも最も喜劇"と言われている作品です。それぞれの関係性、恋の行方、人間模様がとても楽しく描かれているハッピーな物語です」
Q2 稽古はいかがですか?
柳下「初めてのシェイクスピア作品なので本を読んでいて難しいと感じる事もありましたが、稽古に入るととても楽しく進められていると感じています。豪さんがおっしゃっていた"今回はどこかで客観視する目を持って欲しい"という言葉を念頭に置きながら、観てる方も演じている方も面白く、楽しい気持ちになってもらえる作品を作りたいと思います」
Q3 共演者のここがおすすめというところがあれば教えてください。
柳下「共演者の方がみんなすごく面白くて素敵なのですが、個人的に注目しているのは西井幸人のシーリアです。女性としての仕草や、恋に対する所謂"ウキウキ感"が見ていてとても感じられ、こちらまでニヤニヤしてしまいます。加治(将樹)君の二役(チャールズ&ジェイクイズ)の演じ分けもとても面白く、稽古が毎日楽しいです」

Q1 Dステ19th『お気に召すまま』のここが面白い!というポイントは?
石田「私はいい年をして、恋愛コメディが大好きです。毎日毎日暗いニュースばかり流れるこの頃ですが、観ていてハッピーな気持ちになれるからです。この作品はそれが一組のカップルだけでなく、これでもかというくらいに楽しめます」
Q2 御自身の役どころを教えてください。
石田「私は図体が大きいせいか、どちらかというと召使のいる王様とか旦那の役の方が多く、召使の役はほとんどやったことがありません。ですから今回はいい経験。楽しみたいと思っています」
Q3 稽古はいかがですか?
石田「こんなに若い人ばかりの座組みに入るのは初めてなので、彼らのエネルギーについていくのは大変です。自分も若い頃はこんなにエネルギーがあったのかなあと、しみじみ思っている毎日です」

最後におふたりからメッセージを!
柳下「第三弾となるDステ×シェイクスピア。今回も、笑わせます。楽しませます。保笑します。シェイクスピアを観た事がない方も劇場へ観に来ていただきたいです。難しくなく、話もとてもわかりやすい、間違いなく最後に心が晴れやかになる作品です。劇場でお待ちしております!」
石田「若く美しい若者を観に来られる皆さん、3人のおじさんも時々愛情を持って観てくださいませ」

2016/10/14(金)~10/30(日) 東京・本多劇場
2016/11/19(土)~11/20(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』(作・演出:山崎彬)が京都芸術センター・講堂で開幕した。リインカーネーション(再生・輪廻)と銘打ち、多彩な劇団から客演を迎えて、過去作品の"再生"に挑んだ企画だ。過去作品に取り組むのは劇団初。"再生"へ向けDULL-COLORED POP所属で、今回の客演でもある大原研二が山崎彬にインタビュー。生まれ変わる『春よ行くな、』に迫る。
大原 リインカーネーション公演で『春よ行くな』(2013年初演)を選んだのは、何か確信があってなのかな?
山崎 ここんところバンド演奏があって歌ってという、どちからといえば派手でお祭りみたいな作品が多かったので、そうじゃないものをやりたいなっていうのが前提としてあったんです。再演的なものにするか新作にするのかははっきり決めずプロデュース公演にしようとなったとき、まずは客演を呼ぼうと一緒にやりたい人に声をかけていきました。その過程で、昔の作品がいいというのが出てきて、一番いろいろ試せそうだなとしっくりきたのが『春よ行くな』だった。自分の中で完成度は高かったけど、まだまだ可能性があるという不思議な感覚が残った作品やったので。
大原 最近の作風と『春よ行くな』は、ちょっと違う傾向だなと思うんだけど。
山崎 僕的には『春よ行くな』も、『スーパーふぃクション』(2013年)も『キスインヘル』(2014年)も『メロメロたち』(2015年)も、根っこは同じ。ドブの底に溜まったヘドロのちょっと上の水、ヘドロがあるからこそめっちゃ透明な部分みたいなものを描いていると思ってるんですけどね。
大原 初演時は、最初はストレートプレイの芝居をやるように普通に稽古をしていて、それが、だんだんと身体を多用した表現が加わった演出になっていったと話してたよね。
山崎 そうですね。例えば、ファーストシーンだったら、一組の男女が終電を逃して狭い部屋に二人でいて駆け引きがあるというのを、いわゆる会話劇でやってたんです。けれど、稽古していく中で、ただしゃべっているだけじゃ足りないものが見えてきた。伝えたいものが「会話」として出てくるんじゃなくて、「伝えようとすること」を僕は伝えたかったんだと気づいた。それをやるためには役者の身体が揺れているだとか、常に息や呼吸が動いているみたいなものに行き着いた。今回はその方法論を使って、新たなものを作っているという感じです。
大原 僕は初演を観ていますが、キャストの中には観ていない人もいるよね。
山崎 初演に出演している人が3人、初演を観てる人が2人、初演には出会ってない人が3人。良いバランス。一応、みんなに「DVDとか観ますか?」って言ったら、観てない人はとりあえず観る、出てる人は思い出し程度に、観た人は「ちょっと観るのはやめときます」って。
大原 僕も観なかった。
山崎 観るか観ないか、その選択をするってこと自体も人としても愛おしいし、なんかそれが良い効果になると思ったり、ああ再演の面白さってここにもあるなぁと思ったり。今回はスタッフも意図的に変えていて、再演だからこそ作品と面白く戦うっていうのがありましたね。
11月に上演される、ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章。
2015年8月に上演された初演の続編で、原作はあべ美幸先生の同名ファンタジー漫画。(株式会社KADOKAWAよりコミックスは15巻まで発売中。)
初演に引き続き、演出・音楽はOne on Oneの浅井さやかさん、脚本は空想組曲のほさかようさんが手がけます。
今回、前作に引き続き出演する坂口湧久さんと前内孝文さん、今作から出演する松村龍之介さんと山本一慶さんにお話を伺いました。
<超ざっくりな役どころ紹介!>
◎現在14歳の坂口さんが演じる犬塚信乃は、実際は18歳だけれども13歳のまま歳を取らない身体を持つ主人公。幼馴染みである荘介や浜路を家族として大切にしています。
「身体は小さいけど、台詞に18歳な部分があるので演じていて楽しいです」(坂口)
◎松村さん演じる犬川荘介は信乃の幼馴染み兼お目付け役。信乃のためなら命をかけることも厭わないほどです。
「荘介は信乃のことが大好き。自分が抱えている辛いことや苦しいこと、優先しないところもかっこいいですね」(松村)
◎前内さん演じる犬飼現八は、初演では恋人の死に絶望した姿を演じましたが、続編ではそれらを乗り切ったあとの姿が見られそうです。
「現八は表に全て出す人。今作では、自分を想ってくれる人、大切な仲間、家族を守りたい気持ちが周囲に伝わっていくと思います」(前内)
◎山本さん演じる犬山道節は、生き別れの妹に会いたい一心で死なない身体になった過去を持つ人です。
「表向きはしっかりしてるように見えるんですけど、内面がおちゃめだったりするので、そういう部分は舞台でも出せていけたらいいなと思います」(山本)
――松村さんはミュージカルが初ということですけど、出演が決まっていかがですか?
松村 : 「いやー...もう。きたか...と」
――それはミュージカルが?
松村 :「 ミュージカルもですし、これを僕がやっていいのかっていうのがありました。原作も面白いし、舞台も演出が素敵で面白い。
それを観れば観るほど『これを俺がやるのか』と...立ちはだかる大きな壁。でもそれを越える楽しみはできました。
早くみんなと稽古して、絶対にやってやるって」
――山本さんは出ることが決まっていかがでしたか?
山本 : 「僕も久々にミュージカルをやらせていただくのですが、楽しみです。前作を観させてもらったら、歌への入り方がすごくスムーズで。
感情が出るところや、お客さんを楽しませるところが的確にはまっていたので、そこはもう信頼して、歌だからこそお客さんにダイレクトに伝えられる想いとか、キャラクターの気持ちを乗せられるように、楽しんで歌って、伝えられたらいいなと思っています」
――初演から出演されるおふたりは、出演して作品のどういうところが魅力だと感じられましたか?

坂口: 「荘介のために生きるとか、浜路のために生きるとか、誰かを想って生きるとか、最初は全然わかりませんでした。
でも稽古をやっていくうちに、荘介を守るためにとか、浜路を守るためにっていう風にだんだんと...信乃ほどの強い気持ちにはなれなかったかもしれないけど、それに近いものにはなれたかなって思います」
前内 : 「役作りで今までの作品と違ったのは、現場で(役者たちが)尊敬し合って、演出家さんと戦いながら、お互いに刺激し合って役ができあがったこと。作ったというよりは、できあがったという方が僕の中では正しい感覚かなって思います。それは劇場に入っても、幕が開いてもまだ続いていたというか。今までにない経験でしたね」
――音楽がどれも素敵でしたが、その中でもみなさんが一言ずつ歌詞を考えたという『MyWish』は特に素敵でしたね。
坂口 : 「みんなでキーワードを書いて集めて、それを浅井さんに出して。そこからピックアップして、歌詞に入れてくれました」
前内 : 「初演の稽古も中盤くらいのときに、エンディング曲を作りたいってなって。浅井さんがみんなに一言でもいいからワードをちょうだいと。それでみんなが自分の役が思う『八犬伝』の言葉を送って」
山本 : 「それおもしろい!」
松村 : 「素敵!」
前内 : 「浅井さんのすごさを感じましたね。半日とかで作っちゃったし」
坂口 : 「次の日にはもうできてましたよね」




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