悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』(作・演出:山崎彬)が京都芸術センター・講堂で開幕した。リインカーネーション(再生・輪廻)と銘打ち、多彩な劇団から客演を迎えて、過去作品の"再生"に挑んだ企画だ。過去作品に取り組むのは劇団初。"再生"へ向けDULL-COLORED POP所属で、今回の客演でもある大原研二が山崎彬にインタビュー。生まれ変わる『春よ行くな、』に迫る。
大原 リインカーネーション公演で『春よ行くな』(2013年初演)を選んだのは、何か確信があってなのかな?
山崎 ここんところバンド演奏があって歌ってという、どちからといえば派手でお祭りみたいな作品が多かったので、そうじゃないものをやりたいなっていうのが前提としてあったんです。再演的なものにするか新作にするのかははっきり決めずプロデュース公演にしようとなったとき、まずは客演を呼ぼうと一緒にやりたい人に声をかけていきました。その過程で、昔の作品がいいというのが出てきて、一番いろいろ試せそうだなとしっくりきたのが『春よ行くな』だった。自分の中で完成度は高かったけど、まだまだ可能性があるという不思議な感覚が残った作品やったので。
大原 最近の作風と『春よ行くな』は、ちょっと違う傾向だなと思うんだけど。
山崎 僕的には『春よ行くな』も、『スーパーふぃクション』(2013年)も『キスインヘル』(2014年)も『メロメロたち』(2015年)も、根っこは同じ。ドブの底に溜まったヘドロのちょっと上の水、ヘドロがあるからこそめっちゃ透明な部分みたいなものを描いていると思ってるんですけどね。
大原 初演時は、最初はストレートプレイの芝居をやるように普通に稽古をしていて、それが、だんだんと身体を多用した表現が加わった演出になっていったと話してたよね。
山崎 そうですね。例えば、ファーストシーンだったら、一組の男女が終電を逃して狭い部屋に二人でいて駆け引きがあるというのを、いわゆる会話劇でやってたんです。けれど、稽古していく中で、ただしゃべっているだけじゃ足りないものが見えてきた。伝えたいものが「会話」として出てくるんじゃなくて、「伝えようとすること」を僕は伝えたかったんだと気づいた。それをやるためには役者の身体が揺れているだとか、常に息や呼吸が動いているみたいなものに行き着いた。今回はその方法論を使って、新たなものを作っているという感じです。
大原 僕は初演を観ていますが、キャストの中には観ていない人もいるよね。
山崎 初演に出演している人が3人、初演を観てる人が2人、初演には出会ってない人が3人。良いバランス。一応、みんなに「DVDとか観ますか?」って言ったら、観てない人はとりあえず観る、出てる人は思い出し程度に、観た人は「ちょっと観るのはやめときます」って。
大原 僕も観なかった。
山崎 観るか観ないか、その選択をするってこと自体も人としても愛おしいし、なんかそれが良い効果になると思ったり、ああ再演の面白さってここにもあるなぁと思ったり。今回はスタッフも意図的に変えていて、再演だからこそ作品と面白く戦うっていうのがありましたね。