『ミス・サイゴン』#1 2016年版始動! "ミス・サイゴン・スクール"取材レポート 前編

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■2016年版『ミス・サイゴン』 vol.1■


ベトナム戦争を背景に、ベトナム人少女キム、アメリカ兵クリスの悲恋をはじめ様々な愛の形と、戦争の虚しさを描いたミュージカル『ミス・サイゴン』

『レ・ミゼラブル』を作ったアラン・ブーブリルとクロード=ミッシェル・シェーンベルクの美しい音楽が、「生と死」「母子の愛と絆」「理想と悪夢」「戦争と平和」「難民と孤児」等の深いテーマを抉り出し、感動の中にも現代社会でも通じる大きなテーマを突きつける、壮大な作品です。

日本では1992年の初演以降幾度となく上演を重ね、2012年には"新演出版"が登場、好評を博しました。
この作品が2016年もまた、新たなキャストを迎えて上演されます。

10月の上演までまだまだ時間のある中、カンパニーは動き出しています!
8月上旬の某日、"ミス・サイゴン・スクール"を取材してきました。
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"ミス・サイゴン・スクール"とは、公演の本格的な稽古に先立ち行われる稽古の場。
もともとは1992年の日本初演当時、すべてオーディションで選ばれたキャスト...もちろん中には舞台デビューの人もいますので、その基礎稽古のために用意された場でした。
初演当時はこのスクールも、1年の長きにわたって開催されたとか。

今は歌やダンスの基礎練習というよりは、ベトナム戦争とはどういうものだったのか、そもそもベトナムとはどういう国なのか、当時の世界情勢は、アメリカはなぜこの国に介入していったのか...といった作品背景を深く理解するための学びの場、といった色合いが強いようですが、今もなお、上演されるたびに、必ず行われています。

ということで、今年も開催されています、"ミス・サイゴン・スクール"。

ほとんどのキャストが顔を揃えています!
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この日は、まず今期のスクールに遅れて参加した3名(小野田龍之介さん、上原理生さん、華花さん...『三銃士』チームですね)が、自己紹介がてら"自分と『ミス・サイゴン』"をテーマにスピーチ。


中でも、三度目の出演となるジョン役・上原さんのスピーチが熱く、素晴らしかったので抜粋してご紹介しましょう。

▽ 上原理生さん(ジョニー・デップ!? と皆さんから呼ばれていたことはナイショ)
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「ずっと一緒にやっている皆さん、ただいま帰ってきました。初めて参加される皆さんも多くいますが、もうサイゴンファミリーです。来年1月まで長いですが、一緒に戦っていきましょう。

この作品は、精神的にも肉体的にも、キツいです。

今日はくしくも長崎に原爆が落とされた日。僕は被爆された人とエノラゲイのパイロットが対談するドキュメンタリーを見たことがあるのですが、その時に、戦争はどちらにも傷跡しか残さない、と思ったのを覚えています。それはベトナム戦争でもまったく同じこと。ベトナムの方々にも多くの傷跡を残したし、同時に戦地にいったアメリカ兵たちにも、アメリカという国にも大きな傷跡を残した。誰もが悲劇に振り回されたのだと思う。

2幕でジョンは『ブイ・ドイ』というナンバーを歌います。ブイ・ドイは、アメリカ人とベトナム人のあいだに生まれた子どもたちのこと。ベトナム語で、靴の裏についたクソにも劣る存在という意味の子どもたち、あの子たちを救おうという活動が"ブイドイ・ファウンデーション"。
ジョンは1幕の冒頭では、ベトナムで乱痴気騒ぎをしています。その彼が、そんな自分だってあの子どもたちを救わなきゃいけない、あの子たちは俺たちが生み出した存在だと、自分たちの罪を、醜い姿をさらして、でもその罪を償おうとしてあのナンバーを歌っている。『ブイ・ドイ』という曲はとってもいい曲で、カッコよく、歌いがいのある曲なのですが、同時にあれは贖罪の歌。一緒にあのナンバーを歌う男性諸君に、そのことを知っていてもらえたら嬉しい。
彼らは被爆された方や、その子孫の方がたと同じように、混血で生まれたことで、彼ら自身はまったく戦争に関わっていないのに、生まれながらに罪を背負ってしまった。その子たちを救うんだと歌う時、戦争というものは絶対に起こしてはいけないことなんだということを今の世の中に投げかけられたら、それが一番だと思います。
僕にとってそれが『ミス・サイゴン』の意義であるとともに、この作品の魅力だと思います」


この日は、その『ブイ・ドイ』で流れる映像を改めてみんなで観る時間も。
(実際に舞台上に立つと、なかなか映像を見ることができないそうです)
この映像は新演出版になって、音と映像が合うように編集を入れられたとのことですが、映像素材自体はほぼ、初演から同じものが使われているそうです。

そしてこの曲は上原さんの話したとおり、アメリカの贖罪を表すシーンであるとのこと。
また、オリジナル演出では、コーラスの男性陣は聖歌隊のクワイヤ(コーラス隊)のように黒い衣裳で舞台上にいましたが、新演出版からは、男性陣もジョンと同様、スーツを着て歌うようになりました。
それも、みんながジョンたちの活動に賛同している、という意図があるからだそうです。
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ほか、印象的だったのは、そもそものベトナムという国の歴史について。
もともと1000年以上にわたり、中国が属国として蹂躙しており、それは漢字表記の「越南」という文字にも表れている(中国から見て「南」に越えたところにある国、の意)。
その後、フランス統治下に置かれ「仏領インドシナ」と呼ばれたが、これはフランスから見た表現(インドとシナ(中国)の間)。
そんな国名表記にも、他国に振り回された国だということが浮き彫りになっています。
(さらに言うと、サイゴン(現ホーチミン市)という都市名の漢字表記も、日本では柴棍と書きますが、中国では西貢と書く...というようなお話も)

そしてその後は、今度は第二次世界大戦が起こり、日本が支配下に置き、日本敗戦後はまたフランスが介入し、第一次インドシナ戦争が起こる(『アメリカン・ドリーム』で歌われる「ディエンビエンフーの戦い」でフランス軍撤退)。
ここで和平協定であるジュネーヴ協定が結ばれ、南北を分割するとともに、南北統一のための自由総選挙の実施が決められるも、アメリカが南へ本格介入し、ベトナム戦争勃発となった...

...と、ずっと戦火に巻き込まれ、ずっと蹂躙され続けた挙句、いよいよ独立する、という時に起こったのがベトナム戦争なのです
(実際、キャストの皆さんはすでに前日までに歴史をしっかり学んでいるようで、この日は「さらっとおさらい」とのことで簡単にまとめた説明です)
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「ひとつの戦争でも色々な人が色々な見方をすれば、受け取る感覚も、捉え方も違ってくる」
「いまだにベトナム戦争の傷跡は完全には癒えていない」

というお話が印象的でした。
"ミス・サイゴン・スクール"レポート、もう少し続きます。

▽ エンジニア役のダイアモンド☆ユカイさん、駒田一さん
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▽ キム役の昆夏美さん、笹本玲奈さん、キム・スハさん。キムさんがケータイ画面を見ているのは遊んでいるのではなく、上述の漢字表記の説明の際など、皆さんお話を聞きながらスマホ等で各々、調べたりしていたのでした。
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取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)


【公演情報】
・10月19日(水)~11月23日(水・祝) 帝国劇場(東京)
 ※10/15(土)~18(火)プレビュー公演。
・12月10日(土)・11日(日) 岩手県民会館 大ホール
・12月17日(土)・18日(日) 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
・12月23日(金・祝)~25日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
・12月30日(金)~1月15日(日) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
・1月19日(木)~22日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール

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