現在、日本初演のミュージカル『最終陳述 それでも地球は回る』が好評上演中です。
天動説が信じられている時代に地動説を唱えた偉大な科学者ガリレオ・ガリレイと、今なお生み出した作品が世界中で上演され続けている偉大なる劇作家ウィリアム・シェイクスピア。
同じ1564年生まれのこの偉人ふたりが、天国で出会ったら......という"if"から、自分の信念を貫くこと、夢を追いかけることの難しさや尊さを描く物語です。
出演者は2名のみ。
主人公のガリレオ役の俳優と、
シェイクスピアをはじめコペルニクス、ミルトンからフレディ・マーキュリーまで、ガリレオ以外の登場人物すべてを演じる"マルチマン"役の俳優だけ。
ガリレオ役はトリプルキャストで佐賀龍彦さん、伊勢大貴さん、山田元さん。
シェイクスピア役はダブルキャストで野島直人さん、加藤潤一さんが演じます。
※伊勢さんは2/27に、加藤さんは2/28に千秋楽を迎えます。
稽古場取材、開幕レポートとお伝えしてきたげきぴあ、今回はガリレオ役をトリプルキャストで務めている、佐賀龍彦さん、伊勢大貴さん、山田元さんにインタビュー!
なおインタビューは、伊勢ガリレオ&加藤マルチマンの回の終演後に行われました。
★ 佐賀龍彦×伊勢大貴×山田元 INTERVIEW ★
● 開幕後1週間、現在の心境は
―― 開幕して約1週間です。まずは現在の率直な心境を教えてください。
伊勢「(即答で)大変です! 全然楽じゃない...」
山田「それは、そうだね」
伊勢「1公演終わったら、足がガクガクするし...」
佐賀「イセダイ(=伊勢)、終わった瞬間に倒れこんだりして。...舞台が終わってからもそういう演技するんだぁ、と思って(笑)」
伊勢「ヤメロ。そういうことじゃねぇ(笑)」
佐賀「あれ、そういうことじゃないの!? でも、それだけ入り込んでいるって、すごいことだよ」
山田「そうだね、最終的に描かれるのは「ガリレオの終着点」だから。色々な出会い、歌、すべてを経ての、最後のあのシーン。やっぱり最後はエネルギーを出しつくしますよね。...と言っても僕はまだ1公演しかやっていないんですが。初日やって、それから全然やっていない(苦笑)」
※山田さんは2/14の初日に出演後、1週間ほど登板があいてしまっていました。
伊勢「怖いでしょ」
山田「いま、不安しかない...」
伊勢「ですよねぇ。佐賀さんはどうですか、慣れてきました?」
佐賀「だいぶ仕上がってるよ!」
伊勢「本当ですか、色々きいてるぞ(笑)」
―― まあまあ(笑)。伊勢さんは先ほどガリレオとして生きたばかりですが、今日はどんな心境でしたか。
伊勢「本当に、ガリレオはマルチマンとお客さまに導かれているんだな、というのが、実際にお客さまの前に立って一番わかったことです。みんなに見守られて...ではないですが、みんなと一緒に旅をして、最後にガリレオがどう思うのか、日によって感情が違う。最後に、照明と一緒にひとつひとつの物語が消える、という演出があるのですが、いい思い出も浮かぶし、辛い思い出も浮かぶ。それが日によって違ってくる。役者をやっていて幸せだなと思う最後のシーンをいただいたって思います」
佐賀「いい話だねー」
▽ ガリレオ=伊勢大貴
―― では佐賀さんは、ガリレオとして舞台に立って、どんなお気持ちでしょう。
佐賀「僕も本番が開けてからだいぶ作品に対する印象が変わりました。実は劇場に入って、ゲネプロをやった時に、自分の中で筋が通っていない部分が明らかになってしまって。これはイカン! と、そこから色々修正して、繋げることができた。ガリレオという人物が幕開きから最後のシーンまで旅をしている、というのが自分でも感じられて、今は楽しいです」
伊勢「佐賀さんは毎回、違うんですよ。本当にその日を生きている。安定しないところが魅力的なんだろうなって思う。その分、マルチマンは大変だろうけれど、それも楽しいんだろうな」
佐賀「いや、でも僕だけでなく、マルチマンも毎回違うから、こっちも変わってくるんだよ」
伊勢「佐賀さんは、すごい純粋なんだろうなって思う。芝居自体がピュア。受けの芝居というか、受ける脳がピュアなんだと思う」
▽ ガリレオ=佐賀龍彦
佐賀「でもふたりとも、その場その場で起こったことを、すごいキャッチするじゃん! すごいなーと思うよ」
山田「頑張りたい...」
佐賀「頑張りたい?」
山田「フレッシュでありたい」
伊勢「元さんはでも、対応力が高いよね。ちゃんと脳を通して話しているから、相手がどんな角度からきても、ちゃんと受けて、成立させられる人だと思う」
佐賀「あと元ちゃんは、普通に立っていてもガリレオっぽい!」
山田「ガリレオっぽい?」
伊勢「っぽい! 一番、元さんが科学者気質を持ってるのかもしれない」
山田「あぁ、一見すごく思慮深そうに見える、と(笑)」
―― では山田さん、1週間前の感想になるんですが...。
山田「そうなんですよ...。でも初日の前にゲネプロをやって、その後にメンバーでディスカッションをしたんです。気持ちの持っていき方とか、全体がどう見えているか、というようなことをみんなで話して。それで、俯瞰する視線を持って初日に挑んだら、ゲネプロと本番ではまったく感じ方も、ガリレオとしてのアプローチも変わりました」
佐賀「へぇ~。どう変わったの?」
山田「みんなで話していたことなんだけど、この話はガリレオが宗教裁判にかけられているシーンから始まり、最後もそこに戻っていく。自分が処刑される...という思いを、どこまで引っ張るか、その演技と歌唱のバランスをどう成立させるか。初日はそれが、ここまで難しいのかと改めて感じたんです。今それを咀嚼して、明日からまた自分がどうなっていくのか、楽しみであるし、ちょっと不安もある、というところです」
▽ ガリレオ=山田元
―― 皆さん、ふたり芝居は初めてですよね。
全員「はい」
山田「あたりまえなんですが、やることが多い。俳優ひとりの負担が大きい」
伊勢「いや凄いですよね。家で練習しようと思って最初からはじめたら、通し稽古と同じくらい時間がかかる(笑)。なんだこれ!ってなりました」
―― 冒頭から1時間くらい、出ずっぱりですか?
伊勢「僕らガリレオさんは、1時間20分、(袖に)引っ込まないです」
山田「捌けるのは1回だけだもんね。フレディのソロの間だけ」
伊勢「あの時間は僕らにとって、超大事! なんですよ!! その時に、佐賀さんの買ってきてくれた蜂蜜をよく食べています」
山田「あ、そんなことしてるんだ」
伊勢「蜂蜜はめっちゃ利きます。最後にもうひと踏ん張り頑張るエネルギーのカケラみたいなものがもらえる」
佐賀「即効性があるんだよね」
伊勢「あるあるある。本当に佐賀さんが言ったとおり!」
―― 劇場としても、とてもお客さまが近い作りです。実際に舞台に立ってみていかがでしょう。
伊勢「でも、いいオーディエンスです。最初の裁判のシーンでは、僕は皆さんのことを裁判の傍聴人だと思ってやっている。ひとりひとりの目を見て蔑んでみたり、逆に恋人だと思ってひとりを見つめることもできる距離感。楽しいです」
山田「僕は、お芝居を始めた最初はこれくらいの...もっと小さい、50人・100人のキャパシティの劇場でやっていました。6年ぶりくらいにこの規模の劇場に出演して、俳優としてテンションがあがっています」
伊勢「わかります、それ!」
佐賀「僕も慣れました。皆さんの温度感もすぐ伝わってくるから、何の違和感もなくやっています」
伊勢「いいですよね、この感覚。一体感が生まれやすい環境で。特にこのミュージカルはガリレオの旅路を描いていますし、どこかに向かっているときは応援してもらいやすい。だからこそ最初のシーンで引きつけていかないと、お客さんの気持ちがどんどん離れていっちゃうという緊張感もありますが。でも楽しい」