■音楽劇『ライムライト』vol.2■
チャップリン晩年の傑作映画として名高い『ライムライト』 。
その名作を2015年に世界で初めて舞台化、好評を博した作品が、4年ぶりに上演されます。
出演は石丸幹二、実咲凜音、矢崎広ら。
その稽古場レポート、後半をお届けします。
物語は、かつては人気だったが今は落ちぶれた老芸人カルヴェロと、足が動かなくなってしまったバレリーナ・テリーが出会い、心を通わせ、お互いを思いやるがゆえにそれぞれの決意をしていく過程を、人間の優しさと社会の厳しさの中で描いていくもの。
カルヴェロ=石丸幹二さん、テリー=実咲凜音さんは "通し役" ですが、ほかの方々はシーンによって様々な役を演じていくのも楽しいところ。
矢崎広さんは、テリーがかつて恋心を抱いていた作曲家・ネヴィル役。
淡い思い出だけだったふたりですが、才能を開花させた若者たちはのちに再会を果たします。
矢崎さん、ほかに新聞売りなども。
こちらのシーンも可愛かったのでお楽しみに(さて、何役でしょう!?)。
吉野圭吾さんは、劇場支配人のポスタントをメインに演じます。
売れっ子の時代はカルヴェロを持ち上げ、落ちぶれてからはやっかいもの扱いするポスタントですが、それでもどこか同情心が見え隠れするのは、やはり同じ"舞台"を生業にしている同業者だからでしょうか...。
ほか、舞台で口上を言って客席を盛り上げるチェアマンなど、芸達者な吉野さんを堪能できそうです。
植本純米さんは演出家のボダリンクや、カルヴェロのマネージャー・レッドファーンほかを。
彼もまたカルヴェロの浮き沈みを、ともに経験している存在です。
保坂知寿さんは、カルヴェロの住むフラットの家主、オルソップ。
悪気はないものの、ズケズケとプライベートにも踏み込んでくる女性を、保坂さんがコミカルに演じます!
石丸さんとのかけあいはさすがの息の合いっぷりです。
矢崎さん、吉野さん、植本さん、保坂さんは、"観客" "町の人々" などもめまぐるしく演じていきますよ。
佐藤洋介さん、舞城のどかさんの名ダンサーおふたりは、カルヴェロやテリーが語る記憶の中の人物や、劇中劇のメインキャストなどを幻想的に魅せていきます。
さて、カルヴェロの応援もあって、舞台に復帰したテリー。
実咲さんの本格的なバレエシーンもみどころです。
若者は挫折を乗り越え、光の方向へ進んでいく。
老芸人はしかし、そう簡単に栄光の道へ戻ることはできない現実がある。
それでもカルヴェロは、一世一代の舞台に立ちます......。
「ライムライト」は、電気が普及する前に使用された照明器具の名称です。
転じて、その光をあびる人が受ける「名声」の意味もあります。
光と名声に魅せられた舞台人の現実をシビアに描きながらも、人々の優しい温もりと愛情に溢れた、美しい物語。
チャップリンの作品は、どうしても"チャップリンの映画"という印象を強く抱いてしまいがちですが。
その枠組みを少し忘れて、物語の持つ純粋な美しさを追求したのが、この舞台版『ライムライト』。
演劇だからこその表現、演劇の持つ力なども感じられる珠玉の作品。
開幕は、まもなくです。
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:吉原朱美・平野祥恵
【バックナンバー(2019年公演)】
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【公演情報】
・4月9日(火)~24日(水) シアタークリエ(東京)
・4月27日(土)~29日(月・祝)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
・5月2日(木・祝)・3日(金・祝
久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
・5月5日(日・祝)・6日(月・祝)
日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)