人生の悲哀も苦しみも、ノスタルジーが優しく包む――音楽劇『ライムライト』開幕レポート

チケット情報はこちら

■音楽劇『ライムライト』vol.4■


石丸幹二が主演する音楽劇『ライムライト』が7月5日、東京・シアタークリエで開幕した。喜劇王・チャップリンの晩年の傑作映画を、世界で初めて舞台化する注目の作品だ。
Limelight04_01_0146.JPG
物語は落ちぶれた老芸人・カルヴェロと、若きバレリーナ・テリーの純愛を描くもの。もとが映画作品であることを意識してか、フィルムの回転する音で始まるこの舞台はしかし、"チャップリンの映画"という印象に縛られることなく、物語の本質を掘り下げることで、新たな『ライムライト』の世界を再構築した。たとえば、石丸扮するカルヴェロには、ちょび髭といったいかにもチャップリンなアイコンはない。だが逆に、その純化した物語の中にこそ、チャップリンの精神が浮き彫りになるようだ。それは人生の悲哀を見つめながらも、日々をけなげに生きる人間に深い愛情を注ぐ、優しいまなざしだ。登場人物たちが時に自分に言い聞かせ、時に相手を励ます言葉は美しくシンプルで、心を打たれる瞬間が何度も訪れる。
Limelight04_03_0187A.JPG
音楽も美しい。何度もリフレインされる名曲『エターナリー』は、その都度、甘さや切なさを運んでくる。また、カルヴェロが最後の舞台で歌うナンバー『You are the Song』はとりわけ祈りのような崇高さで響く。もともとチャップリンの未発表作『The freak』のためのこの曲が効果的に活きた。さらにこれらチャップリンが作った音楽に加え、荻野清子が書き下ろしたナンバーが美しく溶け合い、作品世界を色づける。"音楽劇"という手法が物語に見事にマッチした。

その美しい世界の中、少数精鋭のキャストが、それぞれの個性と実力を存分に発揮する。石丸は、かつての名声を失い忘れ去られた老芸人を、諦観と悲哀と、それでも舞台にしがみつきたい舞台人の"さが"と...複雑に重なる感情を丁寧に演じる。足が動かなくなったことを悲観し自殺をはかったバレリーナ・テリーを演じる野々すみ花の透明感と愛の深さも心に響く。ともに舞台に生き、舞台で挫折をしたこのふたりが深い愛で繋がっていくのは、非常に説得力があった。
Limelight04_02_0003.JPGLimelight04_04_0845.JPG
穏やかに綴られる物語だが、その中にも舞台芸術のシビアさなど、ヒリっと胸を刺す感情もある。だがその痛みすら、物語全編にただようノスタルジーがやわらかく包む。それは、苦しみや悲しみさえもひっくるめて、人生は美しいということを訴えかけているかのようだった。

公演は15日(水)まで同所にて。その後各地公演あり。
Limelight04_05_0727.JPG
取材・文:平野祥恵(ぴあ)


【『ライムライト』バックナンバー】


【公演情報】
7月5日(日)~15日(水) シアタークリエ(東京)
7月18日(土)~20日(月・祝) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪)
7月23日(木) 福岡市民会館 大ホール
7月24日(金) アルカスSASEBO 大ホール(長崎)
7月26日(日) 宝山ホール(鹿児島)
7月28日(火)・29日(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
7月31日(金) 富山県民会館 ホール
8月1日(土) ホクト文化ホール 中ホール(長野)

チケット情報はこちら


前の記事「朗読劇「僕とあいつの関ヶ原」8月公演にむけて2014年公演の感想をお届け!」へ

次の記事「"ミスター・ブロードウェイ"ハロルド・プリンスインタビュー!――『プリンス・オブ・ブロードウェイ』」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉