【ライムライト #4】人生の哀愁を温かく照らす――音楽劇『ライムライト』開幕レポート

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■音楽劇『ライムライト』vol.4■
 

【開幕ニュース】人生の哀愁を温かく照らす――音楽劇『ライムライト』開幕レポート

 

石丸幹二が主演する珠玉の音楽劇『ライムライト』が4月9日、東京・シアタークリエで開幕する。喜劇王チャールズ・チャップリンが晩年に監督・主演・音楽などを手掛けた名作映画をもとに、2015年に同劇場で世界初演された感動作だ。チャップリン生誕130年に当たる今年、装いも新たによみがえる。limelight2019-4-01_6684.JPG

客電が落ち、チャップリン作曲の名ナンバー『エターナリー』のメロディが流れ始めるや、"ライムライト(舞台上を照らすための器具/「名声」の意も持つ)" の光にいざなわれるかのように物語の世界へ――。limelight2019-4-12_6444.JPG

かつて一世を風靡した老芸人のカルヴェロ(石丸幹二)と、ある傷を負った若きバレリーナ・テリー(実咲凜音)が交わし合う情愛を時に温かく、時に切なく描き出した本作。"奇跡" というセリフが随所に散りばめられ、そう思わされる出来事が折々に展開していくのが印象的だ。例えば踊りを諦め、寝込んでいたテリーが再び立ち上がることができたのは、逆に落胆するカルヴェロを奮起させようとして起きた、ある種の奇跡だろう。また、舞台復帰した彼女の脚が緊張のあまり動かなくなった時、その心を溶かしたのもカルヴェロの優しい抱擁だった。同様に、過去の名声を失い仕事も激減した負い目から、時に自暴自棄になりがちなカルヴェロを献身的に支え、前を向かせたのも、テリーの純粋すぎるほどの思いだった。
 
そんな、年齢は離れながらも強い絆で結ばれたふたりのさまを、石丸は哀愁たっぷりに、しかし茶目っ気満点に魅せている。初演時より、さらにカルヴェロの孤独、そして "芸" への執着やテリーへの情が際立って見えたのは、"俳優・石丸幹二" が重ねた4年という歳月と、荻田浩一の実に緻密な演出の妙か。また、特に1幕のシーンや美術面にも繊細な変化が加えられているのでお楽しみに。
 
新キャストである元宝塚歌劇団宙組トップ娘役・実咲凜音は、テリーが再起し、表舞台で開花していく過程を、その名が示す通り "凜"とした面持ちと澄んだ歌声で披露し、2019年版『ライムライト』に新風を吹き込んだ。
 
彼らを取り巻く面々も個性的で手だれぞろい。テリーに想いを寄せる作曲家・ネヴィル役の矢崎広は、清々しいほど実直な青年に成り切っていて好印象だ。なお、凝縮した人数の出演者で成り立っているこの舞台では、各人があんなところやこんなところ(!?)で別役を担っているので目を凝らしてご覧あれ。また、劇場支配人でカルヴェロとは古くからの縁故があるポスタント役の吉野圭吾は、持ち前の華と吸引力で観客の目を奪う。そして、座付き作家・ボダリングに扮する植本純米は、コメディリリーフかのように登場しては異彩を放ち、元舞台女優でアパートの大家(かつ衣裳係!)をエネルギッシュに演じる保坂知寿も、得意のコメディエンヌぶりを発揮してみせた。さらに、バレエダンサー役の新鋭・佐藤洋介と舞城のどかの息の合った踊り、劇中歌の一部を作曲した荻野清子のピアノほか生演奏も物語を彩っている。
 
『エターナリー』の名歌詞 "若者は輝き、年老いた影は消え、ライムライトは魔法の光" をはじめ、「時間は偉大なる作家だ。常に完璧なエンディング書き上げる」といった名言の数々が散りばめられた音楽劇『ライムライト』。観る者それぞれの琴線を震わされるシーンに、きっと出合えることだろう。
 
公演は24日(水)まで同所にて。その後各地公演あり。

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◆初日を前にしたキャストよりコメントも届きました◆

●石丸幹二
チャップリン生誕130周年という記念の年に再演でき、非常に嬉しいです。今回、新しいキャストが加わりました。また演出も、初演とは特に1幕がだいぶ変わりました。従って、キャスト全員が初演のような気持ちで初日に向けて仕上げていきました。チャップリンの小説からのシーンや、チャップリン作曲の新曲など、映画にはない要素も入り、舞台版ならではの魅力が存分にあります。この『ライムライト』が日本で根付いていけるように頑張りたいと思っています。是非ご期待ください。 limelight2019-4-51_6687.JPG
 
●実咲凜音
私は今回初めて『ライムライト』に出演させて頂きまして、バレリーナ役をさせて頂けることは光栄です。ただ、バレエの技術を見せるということだけでなく、テリーがどういう踊り手なのかというところまで表現できるように頑張りたいと思っています。『ライムライト』という作品は演じていても凄く良い作品だなって毎回思うんです。お客様には是非この古き良き世界観の『ライムライト』にのめり込んで観て頂きたいですし、私自身も集中して役と向かい合って、約1ヵ月後の大千秋楽まで頑張りたいと思います。あと個人的にはまた日比谷の地に戻ってこられたなという気持ちがあります。ホーム感と言いますか「ただいま」という気持ちですね。 limelight2019-4-52_6796.JPG

●矢崎広
今回初参加でしたが、初演のキャストの方々がいてくださるのは心強かったですし、それに加えて、また一から新しいものを作ろうということで演出の荻田さんはじめ一丸となって新しい『ライムライト』を作ってきたなという印象が強いです。物語自体はしっとりした作品ですけれど、中にある情熱であったり、愛の物語であったり、一人一人の個性豊かなキャラクターなど色々な面で楽しめる作品になっていると思います。初演よりも、色濃く鮮やかになっていると僕自身思いますので、是非楽しみに来て頂けたらなと思います。limelight2019-4-53_6671.JPG

==舞台写真==

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取材・文:山田美穂
撮影:平野祥恵(ぴあ)


 
【バックナンバー(2019年公演)】
#稽古場レポート Part1
#稽古場レポート Part2
#ネヴィル役 矢崎広インタビュー
 
【バックナンバー(2015年公演)】

#顔寄せレポート
#稽古場レポート Part1
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【公演情報】
・4月9日(火)~24日(水) シアタークリエ(東京)
・4月27日(土)~29日(月・祝)
 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
・5月2日(木・祝)・3日(金・祝
 久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
・5月5日(日・祝)・6日(月・祝)
 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)

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