ヒラノの演劇徒然草の最近のブログ記事
■『ダンス オブ ヴァンパイア』vol.8■
帝国劇場が「帝国劇城」に変わる1ヵ月!
4年ぶりに、『ダンス オブ ヴァンパイア』が開幕しました。
ヴァンパイアのクロロック伯爵と、ヴァンパイア研究の権威・アブロンシウス教授の対決を軸に、ヘンな登場人物が入り乱れる物語。
伯爵様のお城と化した劇場は、今宵も...今昼も...熱狂のダンスパーティが開催されるに違いありません。
さて11月3日に開幕した『ダンス オブ ヴァンパイア』ですが、その初日直前・10月31日には、帝国劇"城"にて、キャスト総出でのハロウィン・イベントが開催されました。
ヴァンパイアとハロウィン、、、相性が良さそうです!
げきぴあは、そのイベントに潜入してまいりました~。
劇場も、ハロウィン仕様!
ジャック・オー・ランタンと本作のマスコット・リー君が並んで飾り付けられています。
■ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」■
ブロードウェイの巨匠、ハロルド・プリンスの最新作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』がついに開幕しました!
ハロルド・プリンスの手がけた作品の名曲群をジューク・ボックス的に見せていくとともに、彼の人生の――同時に、ブロードウェイの歴史を紡いでいく内容になっている本作。
世界のミュージカルシーンで活躍する10名のスターが、圧巻のパフォーマンスを魅せる、豪華なステージになっています。
先日一足先にニュース記事として掲載しましたが、げきぴあではもう少し詳しく公演レポートをお届けします!
ニュース記事はコチラ→★
●宝塚のレジェンド柚希礼音、退団後初ミュージカル出演!
ブロードウェイ・スターに負けない存在感をアピール
オープニングナンバーは『フローラ、赤の脅威』より「ALL I NEED IS ONE GOOD BREAK」。
日本の観客には少々なじみの薄い作品ではありますが、かのライザ・ミネリのブロードウェイデビュー作!
「たったひとつのブレイクがあれば」「チャンスをもらえたらやってみせる」という歌の内容は、市村正親さんの声で語られる、ハロルドのモノローグ(自分の人生において、「運」がどれだけ大事だったか...)ともマッチしていて、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』のテーマをくっきりと浮かび上がらせます。
(2幕でもこのナンバーのフレーズは登場します)
何より、10名の豪華キャストがワンフレーズずつ歌い継ぐ豪華さ!
そして、これだけ個性的なキャストなのに、美しく溶けあうハーモニーの素晴らしさ!
オープニングからノックアウトされること、間違いありません。
ケイリー・アン・ヴォーヒーズから始まり、9名のブロードウェイ・スターが出揃った中、センターを割って登場する柚希礼音さんのカッコよさにも注目!
続けて登場する『くたばれ!ヤンキース』では、柚希さんのセクシー姿も!
トニー・ヤズベックさん扮するジョーを誘惑する魔女ローラを、魅惑的に、かつユーモラスに演じていて、客席も大喝采。
しかし、見事な開脚です。
男性キャストのハーモニー(可愛らしいハミングも♪)も、心が踊ります!
特にジョシュ・グリセッティさんの高音の美しさ、素敵。
原作は累計5900万部を超える大ヒット、アニメ化・映画化もされた、和月伸宏による大人気コミック『るろうに剣心』が、宝塚歌劇団により初のミュージカル化!
幕末に伝説の人斬りとして恐れられ、明治維新後は"不殺"を誓った剣客・緋村剣心を主人公に、個性的な登場人物が繰り広げる歴史活劇です。
演じるのはこちらも話題になった『ルパン三世』の舞台化で、粋でオシャレ、かつユーモラスなルパン三世を作り上げ、大好評を博したトップスター・早霧せいな率いる雪組の面々。
演出は、『エリザベート』等を手がける演劇界の鬼才・小池修一郎です。
これは期待大!
原作で描かれたストーリーを中心にしつつ、宝塚版のオリジナルキャラクターを絡めて描き出すとのこと、どんなものになるのでしょうか...。
10月20日、本作の制作発表会見が開催されました。
なんと、雪組生8名も登壇、扮装姿のパフォーマンスも披露された、豪華な会見でした!
まずは、そのパフォーマンスの模様から。
主人公・緋村剣心はもちろんこの人、雪組トップスター早霧せいな。
"不殺"を誓い、"逆刃刀"を手にする心優しき剣豪。
原作の和月さん曰く、これは「二律背反と贖罪の物語」。
その厳しさと優しさが、すでに伝わってきます。
一方で剣心のキュートな口ぐせ「おろ?」も飛び出ました~!
神谷薫=雪組トップ娘役・咲妃みゆ。
薫は神谷活心流道場師範代でもある、活発な女の子。
演技巧者・咲妃さんが、どう演じるのかも楽しみ。
早霧さん&咲妃さん自身の仲の良さもにじみ出る、いい雰囲気の剣心&薫です。
■ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」■
ウエスト・エンドやブロードウェイで活躍するミュージカル俳優、ラミン・カリムルーが、日本で開幕する新作ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』出演のために来日中だ。
ウエスト・エンドでは史上最年少の28歳で『オペラ座の怪人』の主役に抜擢、その後続編の『ラブ・ネバー・ダイズ』では主人公ファントムをオリジナルキャストとして演じ、さらには全世界のミュージカルファンの注目を集めた、たった2日間のみのプレミアム公演『オペラ座の怪人 25周年記念ロンドン公演』でも主演を務めた伝説のファントム役者である。
ウエスト・エンドでは史上最年少の28歳で『オペラ座の怪人』の主役に抜擢、その後続編の『ラブ・ネバー・ダイズ』では主人公ファントムをオリジナルキャストとして演じ、さらには全世界のミュージカルファンの注目を集めた、たった2日間のみのプレミアム公演『オペラ座の怪人 25周年記念ロンドン公演』でも主演を務めた伝説のファントム役者である。
また2014年にはブロードウェイの『レ・ミゼラブル』で主人公ジャン・バルジャンを演じ、トニー賞主演男優賞にもノミネート。
そんな、世界を代表するミュージカル・スターが、大評判を得た『レ・ミゼラブル』の次の出演に選んだ作品『プリンス・オブ・ブロードウェイ』のこと、そして彼自身のこと...現在の思いを語ってもらった。
★ ラミン・カリムルー INTERVIEW ★
――『プリンス・オブ・ブロードウェイ』は、ブロードウェイの巨匠ハロルド・プリンス氏の新作にして、彼のこれまでの軌跡を辿るショーでもあります。実際にハロルドさんの演出を体験してみて、いかがですか?
「素晴らしい体験です。多くのことを学んでいますし、素晴らしいカンパニーとご一緒できて、感謝以外の言葉はないですね。今まで持っていた情熱に、もう一度火がついた感じです」
――ハロルドさんの代表作のひとつであり、ラミンさんにとっても大きな役であろう『オペラ座の怪人』のシーンもありますね。今回またファントムを演じ、何か新しい発見はありましたか?
「その場その場できちんと自分に対して真実を持とうと思っています。目の前で起こっていることにオープンでさえあれば、日常の中でも新しいことはあり、常に学んでいけます。その延長ですね、きっと。今回披露する『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』は、自分にとっては曲ではなくシーンなんです。毎公演歌うごとに、違うものになっていくんですよ」
――あなたのファントムをまた観ることが出来て、日本のファンも喜ぶと思います。ファントムはあなたの人生にとってどんな存在ですか。
「人生が変わりました。ファントムによって、自分も家族も大きなチャンスをもらった、そういう作品です。最初に日本に来られたのも、ファントムのおかげです。今回は本当に小さなシーンですので、ファントムに戻った...という感じではないんですが、それも、心の中のすごく大事なところをファントムが占めているので、ただそこに「戻る」ということはしたくなかったんです」
――おそらくもうファントムを演じることはないだろうと以前仰っていました。
「これからは『オペラ座の怪人』のファンでいたい、という思いです。ですが、日本では今まで英語版の『オペラ座の怪人』の公演はやっていないそうですね? 日本で英語の『オペラ座の怪人』を上演することがあれば、やりたいですよ! 市村(正親)さんに、いくつか学ばせてもらって(笑)。楽しいだろうな! そもそも、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』も、日本初演だったから「Yes」って言ったんですよ。これこれこういう作品で......とお話を訊いて、最後に「日本でやるんだよ」と言われ「あぁ、だったらやる!」と」
――それは日本の一ファンとして、嬉しいです! でも、どうして?
「もちろん今までの来日の経験から感じたことでもありますし、このような作品を初演する時、日本のお客さま非常によく作品を理解してくださるんじゃないかなと思ったんです。今後、もしこの作品がブロードウェイに乗るようなことがあれば、それは日本のお客さまのおかげだと思う。日本にまず最初に来たということは、本当に重要です」
■ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」■
『ウエスト・サイド・ストーリー』『エビータ』『オペラ座の怪人』『蜘蛛女のキス』等々、演出家として、プロデューサーとして、数え切れないほどの名作を送り出している"ミスター・ブロードウェイ"ハロルド・プリンスの新作が、まもなくこの日本の地で、世界初演の幕をあけます。
その作品は『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。
彼が生み出した名作の中から名シーンを選りすぐり紹介していく構成で、プリンス自身の人生を紡いでいく...という、新作でありながら名曲オンパレードのステージになりそう!
出演する俳優も、現在のブロードウェイの第一線で活躍する、豪華スターが揃います。
10月15日、この舞台の稽古場を取材してきました!
まず最初に、ハロルド・プリンス本人から、取材陣に簡単なご挨拶がありました。
曰く、稽古場をNYから日本に移し、1週間ぶりの通し稽古であること、少し忘れているところがあるかもしれないがなるべく止めないで1幕を通す予定であること...。
そして「どうぞお楽しみください」との言葉。
取材陣もゲストとして扱うホスピタリティに溢れるこのひと言、ブロードウェイ流だなぁ、とちょっと感動...。
また、ハロルド・プリンスに加え、共同演出・振付のスーザン・ストローマン(『クレイジー・フォー・ユー』等の演出家!)、さらにハロルドの隣には演出助手として新進気鋭の演出家ダニエル・カトナー(日本では『4Stars』等の演出でおなじみ!)の姿も...。
なんて豪華な稽古場!
こんなビッグネームが揃うこと、ブロードウェイでも珍しいのでは?
アメリカ演劇界最高の名誉・トニー賞受賞者がゴロゴロしています...。
そして始まった1幕の通し稽古ですが、まずは軽快なテンポのオーバーチュアからして、『オペラ座の怪人』や『エビータ』といった聴き覚えのあるナンバーのフレーズが少しずつ織り込まれていて、ミュージカルファンの心をぐっと掴みそう!
続いてオープニングナンバーは『フローラ、赤の脅威』より「ALL I NEED IS ONE GOOD BREAK」。
豪華出演者がワンフレーズずつ歌い継いで登場。さながら顔見世の雰囲気。
ケイリー・アン・ヴォーヒーズさんに始まり、ジョシュ・グリセッティさん、ブリヨーナ・マリー・パーハムさん、トニー・ヤズベックさん、ナンシー・オペルさん、シュラー・ヘンズリーさん、エミリー・スキナーさん、マリアンド・トーレスさん、ラミン・カリムルーさん......それぞれ、ブロードウェイで活躍する人気スターです。
さらに最後に、日本から唯一参戦する元宝塚トップスター・柚希礼音さんが登場、テンションのあがるオープニングです!
日本ではあまり知られていない作品からの曲ですが、「たったひとつのチャンスがあればいい」という明るいナンバーは、市村正親さんの声で語られる「自分のキャリアにとって、運がどれだけ重要だったか」というハロルドの言葉とあいまって、本作のテーマを貫きます。
以下、順不同で、この豪華キャストそれぞれの見せ場をメインにご紹介。
まずは柚希礼音さん。
2009年から今年5月まで6年間、星組トップスターとして活躍。100周年を迎えた宝塚の顔として、宝塚の人気を牽引してきた"トップ・オブ・トップ"。
これが宝塚退団後、初ミュージカル出演になります。
こちらのシーンは、『くたばれ!ヤンキース』より、「WHATEVER LOLA WANTS」。
名ダンサーである柚希さん、キレのあるダンスでトニー・ヤズベックさんを誘惑していきます。大胆かつコケティッシュ、そして可愛い!
そしてセクシーなアルトの歌声は、この豪華キャストの中にいてもひときわ個性的で、よく響きます。
今年、創立30周年を迎えている劇団スタジオライフ。
男優のみで文学性の高い硬質な舞台を創作するスタジオライフですが、そのスタイルは現在の日本演劇界を席巻しているイケメン舞台の元祖とも言えますし、少女マンガの舞台化なども数多く手がけているという面で言えば、「2.5次元舞台」のはしり、とも言えます!
その彼らが10月7日、都内にて、30周年記念公演 下半期製作発表を開催。その模様をレポートします。
まずは、すでに発表済み・30周年記念公演第4弾『PHANTOM THE UNTOLD STORY』の制作発表です。
原作は、ミュージカルでもおなじみ『オペラ座の怪人』にインスパイアされた、スーザン・ケイの小説『ファントム』。
『オペラ座の怪人』では語られなかった、怪人と呼ばれる青年エリックの苦悩の半生を描く人間ドラマです。
スタジオライフでは前編の『The Unkissed Child』を2011年に、後編の『The Kiss of Christine』を2012年にそれぞれ初演、今回は初の前・後編を一挙に交互上演となります。
演出を手がける倉田淳は
「『ファントム』は、本に出会って10年くらい温めていました。いっぺんではまって、いつかやりたいと思っていたのですが、ファントム=エリックが生まれ落ちたフランスの片田舎から、ゴージャスなオペラ座までをどう舞台に表現するか。ずっと悩み、10年くらいあっというまに経ってしまいました」
と、ずっとやりたかった作品であることを話します。
ウエンツ瑛士&濱田めぐみが演じる、時代の寵児の光と影
『ジキル&ハイド』等を世界的に大ヒットさせ、今年は『デスノート THE MUSICAL』世界初演を成功に導いたブロードウェイの作曲家、フランク・ワイルドホーン。彼が音楽を手がけたミュージカル『スコット&ゼルダ』が今月、日本初演の幕を開ける。主演はウエンツ瑛士と濱田めぐみ。開幕を目前に控えたその稽古場を取材した。
主人公はアメリカを代表する小説家F・スコット・フィッツジェラルドとその妻ゼルダ。フィッツジェラルドと言えば『楽園のこちら側』の大ヒットで若くして一躍名声を手に入れた男で、代表作『華麗なるギャツビー』は今でもアメリカ文学の最高峰と賞されている。そしてゼルダはその彼にインスピレーションを与え続けた運命の女。1920年代、狂乱のアメリカで時代の寵児となったセレブ夫婦だ。さぞかし華やかなアメリカン・ドリームの世界が描かれるに違いない......と思い足を運んだ稽古場だったが、その予想は心地よく裏切られた。
■ミュージカル『CHESS』■
2度のコンサート形式での上演を経て、ついに日本初演の幕を開けたミュージカル『CHESS』。
冷戦下のチェスの世界大会を舞台に、恋愛と政治の駆け引きが絡み合う奥行きのある物語が、ABBAのメンバーが手がけた美しく繊細な楽曲に載せ紡がれる作品です。
何より、カンパニーの『CHESS』への愛情がひしひしと伝わる、熱い熱いパフォーマンスは感動必至!
必見のミュージカルです。
★開幕レポートはコチラ
稽古場からこの作品を追っているげきぴあですが、本日は去る9月28日に行われたアフタートークイベント「CHESS ミュージカル版を語る!」のレポートをお届けします。
出席者は石井一孝、田代万里生、AKANE LIV、戸井勝海、そしてゲストに『CHESS in Concert』初演(2012年)にアービター役で出演していた浦井健治という豪華な顔ぶれです!
まず、作品を観た感想を求められた浦井健治さん。
「もう大感動しております! そして、楽曲が難しい! (難しいことを)思い出した! みんなすごいな~って...」と開口一番の賞賛の言葉でした。
そしてソ連側の代表選手・アナトリー役をコンサート版初演から演じている石井一孝さん。
「長い道のりの3時間ですが、今回コンサートバージョンと一番違うのは、妻のスヴェトラーナが1幕で近くにいること。これがやっぱり、一番違うかな。だから(スヴェトラーナ役の)AKANEちゃんと何度も話し合いました。一番最初に、2階の居間に出てくるじゃない? ...あ、2階の飛び出たところを我々は居間と呼んでいるんですが(笑)。あそこではどんな会話をしているとかも。その段階から亀裂が入っているわけではなく、普通の家庭。ただ試合が近くて、これからメラーノに乗り込んでいくところなので、イライラしている。でも愛してないとか溝があるとか、そんなんじゃない方がいいよねとかも話し合って、演じているのがすごく新鮮。(コンサート版では)失われた、見せていなかったピースだからね。子どもがふたりもいるんだよ?名前も決まってるの。その辺がすごく新しくて。より辛くもあるけれど、よりリアルな感じで挑めているのが嬉しいです」
...と、コンサート版との違いを語ります。
■ミュージカル『CHESS』■
ABBAの魅惑の音楽を堪能!『CHESS』ミュージカル版開幕
ABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが作曲を手掛けたミュージカル『CHESS』が9月27日、東京芸術劇場 プレイハウスで開幕した。過去2度にわたりコンサート形式で上演を重ね、日本でもじわじわと人気を獲得してきた作品のミュージカル版が、ついに本邦初登場。コンサート版にも出演していた安蘭けい、石井一孝、中川晃教に加え新たに田代万里生が初参加、歌唱力の高い実力派が揃い、充実の舞台を展開した。
舞台は米ソ冷戦の時代に行われたチェスの選手権大会。チャンピオンの座を争うのは、アメリカ代表フレディ(中川)とソ連代表アナトリー(石井)。だがその戦いの裏では、国家の威信をかけ、KGB、CIAが暗躍し火花を散らしていた。そのさなか、フレディのセコンドであり恋人でもあるハンガリー出身のフローレンス(安蘭)は、次第にアナトリーと惹かれあい、アナトリーは亡命を決意するが......。
楽曲が何といってもキャッチー。ロックからクラシックまで多彩でまばゆい音楽の洪水が、日本ミュージカル界を代表する歌唱力を持つ俳優たちの歌声に乗り耳に押し寄せる幸福は、多くのファンを掴んだコンサート版と同様だ。メロディが複雑なのに麻薬のように耳に残るのは、さすが稀代のヒットメイカー、ABBAのなせる技。だが1曲ごとに熱狂の拍手が続いたコンサート版とは違い、今回のミュージカル版は、拍手を挟むのが憚られるほどどんどん物語に引き込まれていく。天才ゆえの奔放さと孤独を抱えるフレディ役の中川、国と自身の大切なものの間で苦悩するアナトリー役の石井が好対照の魅力。安蘭扮するフローレンスは、ハンガリー動乱で両親を亡くした過去がしっかりと描かれ、人物に厚みが増した。三角関係を織り成すこの男女のそれぞれの思いが、哀切でやりきれない。そして初参加の田代はチェスの競技を支配する審判・アービター役。ぶれない正しさを持つ厳しさを、うまくロックナンバーに乗せて聴かせる。クラシック出身の田代の今までにない表情も新鮮だ。
初日に先駆け26日には安蘭、石井、中川、田代による会見も。「チェスやABBAを好きな方にとても期待されている作品だと思います。プレッシャーを感じながらお稽古をしていましたが、素晴らしいものが出来たと自負していますので、期待して観に来てください」(安蘭)、「今回は戦争下の物語だということがコンサート版よりクローズアップされています。そういう状況下だと普段生まれない感情も生まれるのだと思う。観る方も、一緒に戦争下で時代に抗っているかのような思いを受け取ってもらえたら」(石井)、「ただ単純に甘い、ドラマチックなラブストーリーではない。お互い牽制し合っている国同士の人間が恋に落ち、葛藤が生まれ、アイデンティティを強く認識し、新しい未来を切り拓こうとする原動力が生まれる。言葉の表面だけではない美しさが新たに見えてきました」(中川)、「ミュージカル界にとっても、すごく斬新な位置にある作品。『CHESS』みたいなミュージカルは他に思いつきません」(田代)と、それぞれ思いを語った。
10月12日(月・祝)まで同劇場にて。その後10月19日(月)から25日(日)まで梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演される。
以上、チケットぴあニュースでもお知らせした内容ですが、げきぴあではもう少し詳しくレポートをお届けします!
◆ 囲み取材レポート ◆
初日前日の9月26日には、ゲネプロが公開されるとともに、安蘭けい、石井一孝、中川晃教、田代万里生の4名が意気込みを語りました。
――開幕を目前にした、現在の心境は。
安蘭「早く幕が開かないかなと、そればかりです。稽古中も、早く舞台に立って(全編)通したいと思っていました。お客様の反応を頂いて、そこから得るものがすごく多いので。私はハンガリー動乱で両親を亡くしたフローレンスを演じます。アメリカのチェスチャンピオンのセコンドという役どころなんですが、その後ソビエトのチャンピオンに出会って恋に落ちてしまう。今回ミュージカルではしっかり、アメリカの彼からソビエトの彼に心が移っていくさまが描かれています。自分でも日によって全然違う感情で心が動きますし、一番最後にフローレンスが「自分たちの生きている人生というのは所詮ゲームだ、私たちはチェスの駒でしかないんだ」ということを訴えるんですが、そこに至るまでのフローレンスの気持ちの動きが、日によって本当に全然違うんですよ。すごく愛に溢れていたり、怒りに溢れていたり。もしかしたら本番があいても色々な気持ちで動いてしまうかもしれないですが、自分に正直に、その時に生まれてくるフローレンスの感情を大切にしながらフローレンスを全うしたいです」
石井「(2度のコンサートバージョンを経て)3度目で、2012年の初演から3年。感無量で、やっとここまできたのかという感じです。最初から一緒にやっているとうこちゃん(安蘭)とアッキー(中川)と僕と、そして新しく素晴らしい才能、(田代)万里生君を迎えて、稽古場が燃えているんです。この燃えているさまを早く皆さんにお届けしたい。
演出の荻田浩一さんが、"ここはこうならなければいけない"、"ここでこういう気持ちにスイッチしなければいけない"ではなく、自分の沸いてくる感情を大事に、と言ってくれていて、泳がせてくれている。日によってもしかしたら変わるかもしれないところを、自由に感じてやろうかなと思っています。2012年から3度目ですが、今回一番クローズアップされているなと感じるのは、戦争下の話なんだなという部分。時代も動いている時ですから、普段なら生まれないかもしれないけれど、こういう時にこういう気持ちは生まれるんじゃないかなということをインスパイアされています。お客さんも一緒にチェスを戦ってるかのような、一緒に戦争下で時代に抗っているかのような思いで受け取ってくださったら嬉しいです」
中川「オケが入り、私たちが実際のセットの中で動きながら今、舞台で稽古して3日目。セットも照明も、コスチュームも、音楽までもが斬新なんですよ。この作品は1980年代に作られ、その当時はアメリカとソ連の冷戦時代であり、まさにその時代がモチーフになって生まれているこの作品を、今のこの2015年に上演するということにすごく意味を感じながら、舞台稽古をやらせてもらいました。きっと観に来るお客さんも何かを感じると思います。国家とか、自分の国とか、心の中にある存在とか、そういうものをこの作品の中で感じ、そして初日の幕が開いた瞬間にそれが手ごたえとなって返ってくることを今とても楽しみにしています。
ミュージカル版ならではの印象は、石井さんとまったく同じ気持ちです。あとこれはラブストーリーでもあるとも感じています。でもただ単純に甘い、ドラマチックなラブストーリーではない。冷戦時代の話ですが、お互い牽制し合っている国同士の人間が恋に落ちたら、その国の人間に例えば自分の大切な人が殺されてしまったら、殺した相手の国の人間を本当にどこまで愛せるのかという葛藤が生まれてきますし、それを乗り越えるエネルギーも生まれるし、アイデンティティを強く認識し、またて新しい未来を切り拓こうとする原動力が生まれる。感動的な、けして言葉の表面だけではない美しさが、コンサート版を経てミュージカル版として新たに見えてきたビジョンなのかなと感じています。そのひとつの駒になったり、フローレンスというひとりの女性を求めるひとりの男になったり...チェスのゲームと人間模様が上手く重なっていくところが、このミュージカルの最大の見所かな」
田代「稽古場での会見で「『CHESS』みたいなミュージカルが思いつかない」とお話したのですが、稽古を重ねるにつれ、ますますその思いが強くなりました。ミュージカル界にとっても、すごくこの作品は、斬新な位置にあると思います。それぞれの役どころや音楽的にも変わったものが多く、それぞれがそれぞれの仕事をしっかり全うする、スペシャリストが集まって、この作品が成り立っていくのかなと毎日稽古で思っていました。これを劇場でお客さんに観ていただいて、どんな風に受け取っていただけるのか、すごく楽しみにしています。演じるアービターは僕が今まで演じた役とはまったく正反対の役。数々の個性際立ったキャラクターに立ち向かっていくので、毎日必死です(笑)」
■『嫌われる勇気』vol.2■
ウォーキング・スタッフ プロデュース『嫌われる勇気』がまもなく開幕します。
フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想を易しく説いた大ヒット同名書籍を原作に、これをなんと大胆にも、スリリングなサスペンスへとシチュエーションを置き換えて緊密な人間ドラマを描く舞台です。
●物語●
娘を事故で亡くし、その死が自殺ではないかと疑っているある刑事。彼は、死んだ娘が熱心に通っていたという、ある大学教授の研究室を訪ねる。
アドラー心理学を研究しているというその教授の語る言葉は、刑事にはなかなか受け入れられないものだった。
"世界はどこまでもシンプルである"
"人は変わることができる"
"そして、だれでも幸福になれる"
刑事は、まさに今抱えている事件とその犯人を思う。その犯人の女は、実の母親と義理の父親を惨殺し、自殺を図ったが死に損ない、逮捕された。
そこに罪の意識はなかった。
その女もまた、変わることが、そして幸福になることができるのか...?
刑事はかつて彼の娘がそうしたように、教授のもとでアドラーの教えについて語り合うことになる。
この作品で、大学教授・香月を演じる利重剛さん、そして両親を惨殺した犯人・下村を演じる愛加あゆさんに、お話を伺ってきました。
● 利重剛 × 愛加あゆ INTERVIEW ●
――原作は超ベストセラーなんですよね。昨年のAmazon書籍部門の1位だとか。ご存知でしたか?
利重「僕はこの本自体は、このお話を頂いてから読みましたが、アドラー心理学はここ2年ほど色々なところで聞くなあと思って調べたりしていました」
愛加「私もこのお話を頂いてから読んだんですが、結構まわりでは、読んでる人がいっぱいいました。買いに行ったら、本屋のすごく目立つところにありましたよ」
――で、お読みになってどんな印象を受けましたか?
愛加「私はこれで初めてアドラー心理学というものを知ったのですが、自分の中で今までもずっと悩んでいたことで、これを読んですごくすっきりした部分があって、思わず親に「これ絶対読んだ方がいいよ! 私、生まれ変わったかも」みたいなことを書いて送ってしまったくらい(笑)。たくさんの人にこの話を知って欲しいなと思いましたし、すごく難しいとは思いますが、本当に理解できたら、誰もが幸せに生きられるんだろうな、と」
利重「うん、僕も納得することがすごく多くて。50数年生きていますと、「これってこういうことだよなあ」と自分の中で納得するために考えてきたことがいくつかあるんですが、それがすごく明快に言葉として書かれていて、「こんな風にちゃんと説明してくれてる本があるんだ」と思っちゃいましたね」