『嫌われる勇気』出演 利重剛 × 愛加あゆ インタビュー

チケット情報はこちら

■『嫌われる勇気』vol.2■

ウォーキング・スタッフ プロデュース『嫌われる勇気』がまもなく開幕します。

フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想を易しく説いた大ヒット同名書籍を原作に、これをなんと大胆にも、スリリングなサスペンスへとシチュエーションを置き換えて緊密な人間ドラマを描く舞台です。

●物語●

娘を事故で亡くし、その死が自殺ではないかと疑っているある刑事。彼は、死んだ娘が熱心に通っていたという、ある大学教授の研究室を訪ねる。
アドラー心理学を研究しているというその教授の語る言葉は、刑事にはなかなか受け入れられないものだった。

"世界はどこまでもシンプルである"
"人は変わることができる"
"そして、だれでも幸福になれる"

刑事は、まさに今抱えている事件とその犯人を思う。その犯人の女は、実の母親と義理の父親を惨殺し、自殺を図ったが死に損ない、逮捕された。
そこに罪の意識はなかった。
その女もまた、変わることが、そして幸福になることができるのか...?

刑事はかつて彼の娘がそうしたように、教授のもとでアドラーの教えについて語り合うことになる。


この作品で、大学教授・香月を演じる利重剛さん、そして両親を惨殺した犯人・下村を演じる愛加あゆさんに、お話を伺ってきました。


利重剛 × 愛加あゆ INTERVIEW ●

kiraware02_01_8176.JPG
――原作は超ベストセラーなんですよね。昨年のAmazon書籍部門の1位だとか。ご存知でしたか?

利重「僕はこの本自体は、このお話を頂いてから読みましたが、アドラー心理学はここ2年ほど色々なところで聞くなあと思って調べたりしていました」

愛加「私もこのお話を頂いてから読んだんですが、結構まわりでは、読んでる人がいっぱいいました。買いに行ったら、本屋のすごく目立つところにありましたよ」


――で、お読みになってどんな印象を受けましたか?

愛加「私はこれで初めてアドラー心理学というものを知ったのですが、自分の中で今までもずっと悩んでいたことで、これを読んですごくすっきりした部分があって、思わず親に「これ絶対読んだ方がいいよ! 私、生まれ変わったかも」みたいなことを書いて送ってしまったくらい(笑)。たくさんの人にこの話を知って欲しいなと思いましたし、すごく難しいとは思いますが、本当に理解できたら、誰もが幸せに生きられるんだろうな、と」

利重「うん、僕も納得することがすごく多くて。50数年生きていますと、「これってこういうことだよなあ」と自分の中で納得するために考えてきたことがいくつかあるんですが、それがすごく明快に言葉として書かれていて、「こんな風にちゃんと説明してくれてる本があるんだ」と思っちゃいましたね」

――具体的には、例えばどんなことが?

利重「一番は、「性格はライフスタイルだ」という考え方。気質や性格のことをライフスタイルと呼ぶってことかな。性格って変えられない気がするけど、ライフスタイルというと選び直せる。だから人間は変われるんだということなんかは、すごく納得しました。自分も昔、映画で「性格の80パーセントは癖だ、癖は直せる」って書いたことがあるんです。自分ももともと怒りっぽいところがあって、それを直したいとずっと努力していたんですね。で、ある時思ったんです。性格って癖なんじゃないか、癖だから直せるんじゃないか、と。それが、本でこういう風に説明してくれているんだ、とすごくすっきりしたし、変われるんだよと言っている人が本当に昔いたんだな、ということにも感動しました。
あとは若い頃はやっぱり自分が世界を変えたいと思っていましたから、でも自分ひとりの力じゃ世界全体なんか変わりはしない、では人が幸せになるためにはどうするかと考えて「やっぱりコツコツと、焦れずにやらなきゃいけないんだよな」と40歳過ぎたくらいから自分の中で考えてきたことも、ここに書いてありました。「他者の課題と自分の課題」というところですね。自分の課題を守り続けて、やり続けることだとあって、あぁそうなんだよなって。だから...僕は、この歳で出会って良かった本。若い頃より、ちょうど今出会って良かったなって思いました。...「わかるよ、アドラー君!」みたいな。(一同笑)
でも一歩間違えると、自己啓発方向に行っちゃう。ちゃんと読まないと、便利なところだけ抜き出して使われるとものすごく危険。でも、くよくよ悩んだりしている人には、とてもいい特効薬なんじゃないかな」
kiraware02_04_8194.JPG

――その専門書のような書籍が、芝居になる。ちょっと想像がつきません。

利重「ですよねぇ(笑)」

愛加「私も、ぜんぜん想像がつかなかったです(笑)。本には登場人物がふたりしか出てこないので。それがどういう風に話が広がっていくのかというのが、全然想像できなかったです」


――和田憲明さん(作・演出)も、よくこんな物語を思いつきましたよね。

利重「面白いです。でも、和田さんもすごく苦しんだらしいです(笑)。最初の時に「今回は難航しています!」って言ってましたもん」


――サスペンスフルな物語です。実際稽古をやってみてどうですか?

利重「楽しいですよ、俺はね...フフフ。苦しいでしょ?(と、愛加さんに)」

愛加「(笑)。苦しいですよ!」

利重「毎日、愛加さんが苦しそうな、憂鬱そうな顔をしています」

愛加「いつも利重さんが、「...どうですか?」って訊きにきてくれるんです」

利重「俺だけニコニコしてね」

愛加「「......。頑張ります。」という会話を毎日しています。頑張ることしか私にはできないので...(苦笑)」


――確かに、飄々とした利重さんが教授だというのは、なんとなくわかるのですが、愛加さんの役柄がかなりハードで。今までの愛加さんのイメージでは、なかった役ですよね。

利重「ね、ハードですよね!」

愛加「本当にこんな役、初めてです。でも役者ならきっと、絶対こういう役をやってみたいなって思うようなものが、ギュッと詰まったような役どころ。私は今までずっとミュージカルをやってきて、今回ストレートプレイも初めてなんです。特に宝塚は"作り上げた夢の世界"、言ってしまえば"嘘の世界"ですから、今、いかにリアルに、その人がそこに生きているかのように演じるという難しさを、痛感しています。宝塚を辞めて1年になりますが、これをきっかけに新しい自分が出せたら。いい意味で"宝塚の娘役"というイメージを崩せたらと思って、今頑張っています」
kiraware02_06_8193.JPG

――和田さんの演出も厳しいと、伺っています。

愛加「厳しいです~! でも、難しいことがたくさんあるのですが、わからないことは、絶対に時間をかけて、私が自分で解決するまで、その方向に導いてくれる。ありがたいです。
私は自分も「何がわからないかわからない」時があるのですが、それをわからないで済ませるのではなく、どう解決していけばいいのかという解決方法まで、自分で考える力をくれる。和田さんは答えを言わないんです。自分がどう答えを導くかという方向を示してくれる。その考える時間が、脳みそがパンクしそうになってしまうんですが(笑)。
そして解決したものを、ちゃんと和田さんに言葉にして伝えなきゃいけないんですが、私、もともと言葉にするというのが苦手だったんです。でもそれだと和田さんも、自分がどう教えたらいいのかがわからない、細かく言わないと伝わらないよということも仰って。そういうことをきちんと言って頂くことが今まであまりなかったので、それもありがたい。ちゃんと言われたことを理解して、わからないことは言葉にして伝えて、教えて頂く。お芝居だけじゃなく、そういうことも今、勉強していますね。色々な言葉が考えが駆け巡って、まとまらなくて、ダメな部分もまだまだあるんですが。でも考えることは、嫌じゃないです。その分「これだ!」というものを見つけた瞬間の気持ちよさ、気付かなかったものがわかった瞬間は、すごく嬉しい」

利重「まあ、難易度の高い演出ですよね。だから...楽しいですよ。俺は追い込まれてはいませんが(笑)」

愛加「利重さんはいつも笑顔で、稽古場を和やかにしてくださってます(笑)」
kiraware02_03_8166.JPG

――利重さんは利重さんで、すごく説明的なセリフが多く、別のご苦労がありそうな。

利重「確かに、説明セリフが多いですね。ただ説明的に言うと、和田さんは許してくれないので(笑)。自分の言葉で喋れるように努力しています」


――自分の言葉で話すためには、脚本に書かれている表層だけでないところまで、勉強しなければいけないのでは?

利重「それはもちろん、当然です。アドラー心理学、かなり詳しくなってると思います(笑)。やっぱり心理学に興味のある方も観にいらっしゃるでしょうし、原作の岸見一郎先生もいらっしゃるでしょうし、「あそこちょっと違うんだよな」って思われたくないじゃないですか。和田さんが書いてきた脚本でも、自分でひっかかったら「和田さん、ここの部分、この本のこのページに書いてあることとちょっと違うけど大丈夫ですかね」「いやこれは、精神科医ではなく哲学科の先生が自分の気持ちで言ってるところだから、これは大丈夫だと思う」...とか、やってますよ。単純にセリフを覚えて...という作業より、面倒くさいことをやっています」

愛加「利重さんのそういうところも、見ていて勉強になります。...もう、全てが勉強になります!」

利重「愛加さん、ストレートプレイ初めての上に、すごいリアリティを求められていますからね」

愛加「まず「生きるとは何か」というところですね...」

利重「試練の毎日ですよね」

愛加「いやぁ...頑張ります(小さい声で)...。もう、行きたいです、香月先生のお部屋に!」
kiraware02_02_8183.JPG

――そうそう、劇中、実はほとんどおふたりは接点がないとか。

愛加「はい。最後にようやく、利重さんのお部屋に行くんですが、それまではずっと別の次元でお芝居しています。私に関わる刑事さんが、そこに導いてくださって、私も最後にようやく、ちょっと救われる、光が見える。...そんな物語です」


――やっていて、どのあたりに面白さを感じていますか?

利重「僕は舞台が10年ぶりなので、毎日同じセリフを違うように言えるのが楽しいです。映像の仕事は、セリフを言い終わったら、次の日は同じセリフを言わないので。今日はどんな言い方してみようかなって。毎日、同じセリフを言う幸せ...。楽しいなぁって毎日思ってます(笑)」

愛加「私はやっぱり、アドラー心理学によって、色々な人が救われていく...というのが面白い。私の演じる役もですし、刑事さんも、色々な人が救われていくので、観る方も観終わった時に光が少しでも見えたらいいなって思います。...演じている時はまだいっぱいいっぱいで、そんなこと考えられないんですけど(笑)」


――色々な興味を持ったお客さんが来そうですね。

利重「そうですね。あらゆる人に来て欲しいなあ。相当幅広い人に伝えられる内容だと思うんですよね。それこそ普段、演劇を見ないような人たちにも来て欲しい」

愛加「稽古場でも、利重さんたちのシーンの話を聞いていると、やっぱり自分に言われているかのようなことがたくさんあります。アドラー心理学に初めて触れる方が観てもわかりやすいと思いますしね」

利重「説教臭い話じゃないのでね。もう単純に、サスペンス好きな人でも、ね。泣いて笑ってためになるタイプの話じゃないですけど。すごく面白いですよ」



取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)

kiraware02_05_8159.JPG

【『嫌われる勇気』バックナンバー】

【公演情報】
9月26日(土)~10月4日(日) 赤坂RED/THEATER(東京)

★当日引換券 発売決定!★
9月29日(火)0:00~各公演前日の23:59まで
※詳細はチケットリンク先にてご確認ください。


チケット情報はこちら

前の記事「『嫌われる勇気』稽古場取材レポート」へ

次の記事「フランス発のステージに注目!世界を魅了した作品が今秋日本に初上陸」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉