劇団スタジオライフ30周年下半期製作発表会――『PHANTOM』~『トーマの心臓』上演決定も!

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今年、創立30周年を迎えている劇団スタジオライフ
男優のみで文学性の高い硬質な舞台を創作するスタジオライフですが、そのスタイルは現在の日本演劇界を席巻しているイケメン舞台の元祖とも言えますし、少女マンガの舞台化なども数多く手がけているという面で言えば、「2.5次元舞台」のはしり、とも言えます!

その彼らが10月7日、都内にて、30周年記念公演 下半期製作発表を開催。その模様をレポートします。
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まずは、すでに発表済み・30周年記念公演第4弾『PHANTOM THE UNTOLD STORY』の制作発表です。
原作は、ミュージカルでもおなじみ『オペラ座の怪人』にインスパイアされた、スーザン・ケイの小説『ファントム』。
『オペラ座の怪人』では語られなかった、怪人と呼ばれる青年エリックの苦悩の半生を描く人間ドラマです。
スタジオライフでは前編の『The Unkissed Child』を2011年に、後編の『The Kiss of Christine』を2012年にそれぞれ初演、今回は初の前・後編を一挙に交互上演となります。


演出を手がける倉田淳
「『ファントム』は、本に出会って10年くらい温めていました。いっぺんではまって、いつかやりたいと思っていたのですが、ファントム=エリックが生まれ落ちたフランスの片田舎から、ゴージャスなオペラ座までをどう舞台に表現するか。ずっと悩み、10年くらいあっというまに経ってしまいました」
と、ずっとやりたかった作品であることを話します。
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またこの舞台、美術を『レ・ミゼラブル』新演出版を手がけたマット・キンリーが担当したことも大きな話題になりましたが、
「劇団25周年の時に、なんとか舞台化しようと、思い悩みながらロンドンに行きました。そこでちょうど上演されていた『レ・ミゼラブル』の新演出版を見たら、美術が素晴らしくて。スライドと大道具を融合させた美術だった。原作者のヴィクトル・ユゴーが描いた絵を、美術家のマット・キンリーがアレンジして舞台背景にしていたのですが、これは素敵、絶対にこの方と組みたいと、恐れ知らず、猪突猛進でノックさせてもらった。彼がちょうど、大劇場ばかり続けていたので、どこか小さい劇場と組みたいと思っていたときだったそうです。あとはマットさん曰く「僕は暗い話が好きだから、これは大好きだ」と仰って、スタジオライフとタッグを組んでくれた」
といういきさつを明かしました。

「マットさんと、照明のニックさんにえも言われぬ雰囲気のある空間を作っていただきましたが、私たちはその中でアップアップしながら、中身を埋めていくことに努力していった。今思うと、非常に力技で進めていたのを否めない。今回再演にあたり、力を抜いて、もっとドラマが浮上するように、日々稽古に精進しています。また初演では大作なので続けては出来ず、2011年、2012年と順を追って上演しましたが、その時から、マチネはPart1、ソワレはPart2という連続上演をさせていただくことを念頭を置きながらやっていた。今回30年というこの機に連続上演ができて本当に嬉しく思っています。さらなる深みにいけるよう頑張りたい」という意気込みも語られました。


キャストからも、意気込みが。
倉田さんからの、キャスティングの意図とともにどうぞ!

まず、作品は前述のように前・後編ありますが、
Part1『The Unkissed Child』はエリックの半生の前半が、
Part2『The Kiss of Christine』では成長してからが描かれます。


今回は、ファントムと呼ばれた男...エリック役は3名。
Part1のエリックは山本芳樹松本慎也
Part2のエリックは山本芳樹笠原浩夫が演じます。

Part1・2と通してエリックを演じるのは、山本芳樹
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「初演に引き続き、エリックを務めさせていただきます。初演はPart1、Part2と1年あけての上演でしたが、今回は連続上演。未知の世界で自分でもどうなるかわかりません。ただファントムの生涯を演じられるということは、俳優をやっている以上、すごく幸せなこと。大切に大切に務めたい」と話します。


そしてPart1でのもうひとりのエリックは、松本慎也
松本さんは、Part2ではエリックの少年時代も演じるとのこと。
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「Part1では芳樹さんとダブルキャストでエリックを、Part2ではシングルキャストでエリックの少年時代を演じます。『ファントム』という作品は僕たちにとってとても思い入れの強い作品。お客さまもPart1、Part2の連続上演を心待ちにしてくださっていると思いますし、僕たち自身もそれを待ち望んでいた作品なので、今回満を持しての連続上演、すごく興奮しています。
エリックを演じるのは今回初めてなのですが、真摯に役と作品に向き合って、自分がやるからには、自分にしかできないエリックを探して、それを舞台上できちんと体現して、そしてPart2でエリックを演じる笠原さんにしっかりバトンを繋げていきたいと思っています」と意気込みました。


Part2で、Wキャストでエリックを演じるのが、笠原浩夫
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「エリックを再びやらせていただくにあたり、光栄に感じています。こんなに魅力ある役に出会ったのは数少ないこと。真摯に力を抜いて演じきりたいなと思います。山本が少年から大人エリックまで、ひとりで演じますが、私たちは、松本が少年エリック、私が大人エリックをやらせていただきます。そういえば、1月に上演した『大いなる遺産』で私は大人ピップをやり、松本が少年ピップをやっていた。親近感を感じます(笑)。チームワークはばっちりかな! タッグで山本に向かっていきたいです」とのコメントでした。

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△チームワークばっちり、なコンビ

この、エリック3人についての倉田さんの期待は次のとおり。
大人エリックは、私にとって"鉄板"です。エリックは大変な人生。彼は、顔がこうであるだけで普通の人間として生きたいんだ、という願望が絶えずあり、しかし世間の人の見方が違い、歪んだ人生になってしまった。その痛みや苦しみをふたりは共有できる、というところに信頼を置いています。山本と笠原に、このエリックはやってもらいたい。ただ笠原は背が高すぎていくらなんでも子役はできないので、新しいチャレンジとして、Part1のエリックに松本に挑戦してもらおうと思いました。彼は初演・Part2でクリスティーヌを演じていましたが、今の彼なら(期待に)応えてくれると思います」


エリックの母・マドレーヌは、Part1・2とも、関戸博一
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関戸さんは「3年前は『The Kiss of Christine』という副題のついたPart2で、クリスティーヌを演じました。今回は母親マドレーヌとして、新しく『The Kiss of Christine』と副題のついたPart1で、その"キスをしてあげられなかった母親"を演じます。最後、キスをしてあげる立場だった人間が、キスをしてあげられない立場に変わる。エリックの人生の終わりの物語に参加していた自分が、始まりの物語に母親として参加できることが、幸せに思っていますし、興奮もしています。前回、クリスティーヌを演じてエリックから感じたもの、その根源となったものが、マドレーヌからエリック受けとった何だったのかということを考えながら、今回マドレーヌを演じていけたらと思います」と話しました。

関戸さんについての倉田さんの期待は「クリスティーヌという、エリックに愛を与える側にいた人が、このエリックの歪みの部分を構築した、でもピュアな部分もものすごく残っている役を演じる。殺人をするけれどピュアなところも残っているというマドレーヌの複雑さを、(関戸さんは)しっかり落としこんでいってくれるんじゃないかな」とのこと。


さて、Part2で登場するヒロイン・クリスティーヌに新たにキャスティングされたのが、若手注目株の久保優二
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「『ファントム』初参加です。Part2では全世界の女優さんたちがうらやむクリスティーヌをやらせていただきます。この劇団30周年の1年の間、たくさんの女性役をやらせていただいたのですが、その糧をしっかり自分の中で引き出していって、しっかりお芝居できたら」という意気込みを語りました。

久保さんには、倉田さんからはこんなコメントが...。
「(全体として)「とにかくまず、若返る」ということがひとつの目的でした。それで初演のクリスティーヌが母親になり、下からぐぐっと出てきた久保がクリスティーヌになりました。無謀といえば無謀だと思います(笑)。でも(久保さんは)心は流れる水のように、相手によって素直に動いていくので、彼の可能性にかけさせていただきました」と、大抜擢の理由を語ります。


そして、この日の会見の司会も務めていた曽世海司
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Part2では、ミュージカル版でもおなじみ、ラウルを演じます。
「Part1では笠原さんとWキャストで、ジョバンニという、エリックが幼少時代に出会う初老の男、Part2ではラウル・ド・シャニュイ子爵をやらせていただきます。
初演に続いての役柄です。3・4年たって、自分にどれだけ感覚が残っているのかわからなく不安だったのですが、いざ稽古で自分の番になったら、びっくりするくらい、細胞が感覚を思い出しました。スタジオライフはこれまでも『トーマの心臓』や『LILIES』など、再演を繰り返す作品がありますが、その作品が再演に入ったときに、劇団の中におそらく熱が残ってるんだろうなということを肌で感じながら稽古が進むことがあります。『ファントム』でも、きちんと自分の中にも劇団の中にも、熱や温度や匂いみたいなものがきっちり残っていて、それを踏まえて再演の深いところに入っていくという、スタジオライフの今まで代表作となった作品と同じ香りを漂わせながら稽古が進んでいる気がします。またさらなる世界にいけるんじゃないかなと思います」と、素敵なご挨拶でした。


そして会見の後半では、30周年記念シリーズのフィナーレを飾る『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて(※朗読劇)の3作連鎖公演の上演も発表に!
30周年シリーズになぜ『トーマの心臓』が入っていないのかと思った皆さんに、朗報です!
『トーマの心臓』は、言わずと知れた萩尾望都原作のコミックを元にした劇団の代表作。
なんと来年2016年は、『トーマの心臓』初演より20年目の節目だそう...。

会見では、原作の萩尾望都さんと、倉田淳さんのトークセッションも。
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1996年の初演は、萩尾先生は「怖くて、観にいけなくて...」と、劇場に足を運ばなかったそうですが、翌年からは欠かさず観ているそうです。
「倉田さんのビジョンが、最初からブレないので、安心して観ていられる。倉田マジックで、物語の世界がより美しく見える」と、スタジオライフ版『トーマの心臓』を絶賛。
さらにスタジオライフが『トーマの心臓』を再発見してくれたと思っている。1996年にこの作品を見出してくれて、こんなカッコいい、しかも奥行きのある舞台にしてくれた。幸運な作品だなと思います。ありがとうございます」との言葉も。
原作者にも愛されている舞台化って、幸せですね。
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一方で倉田さんからは「萩尾先生の作品は優しくて美しい言葉を使っているのがすごい。先生のリズム感のある美しい言葉に助けられているし、ビジュアルからも役者は多くを読み取っています」と話していました。

ちなみにこちらは、劇団創立30周年を祝して萩尾さんが描き下ろしたというイラスト。曽世さん曰く「屈強なガードマン」に守られて会場に運ばれてきたのでした!
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取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)


【公演情報】
●『PHANTOM THE UNTOLD STORY』
・11月11日(水)~12月7日(月) シアターサンモール(東京)
チケット発売中

●『トーマの心臓』『訪問者』『湖畔にて』
・2016年2月25日(木)~3月13日(日) シアターサンモール(東京)
一般発売:1月予定

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