■ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」■
ブロードウェイの巨匠、ハロルド・プリンスの最新作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』がついに開幕しました!
ハロルド・プリンスの手がけた作品の名曲群をジューク・ボックス的に見せていくとともに、彼の人生の――同時に、ブロードウェイの歴史を紡いでいく内容になっている本作。
世界のミュージカルシーンで活躍する10名のスターが、圧巻のパフォーマンスを魅せる、豪華なステージになっています。
先日一足先にニュース記事として掲載しましたが、げきぴあではもう少し詳しく公演レポートをお届けします!
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●宝塚のレジェンド柚希礼音、退団後初ミュージカル出演!
ブロードウェイ・スターに負けない存在感をアピール
オープニングナンバーは『フローラ、赤の脅威』より「ALL I NEED IS ONE GOOD BREAK」。
日本の観客には少々なじみの薄い作品ではありますが、かのライザ・ミネリのブロードウェイデビュー作!
「たったひとつのブレイクがあれば」「チャンスをもらえたらやってみせる」という歌の内容は、市村正親さんの声で語られる、ハロルドのモノローグ(自分の人生において、「運」がどれだけ大事だったか...)ともマッチしていて、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』のテーマをくっきりと浮かび上がらせます。
(2幕でもこのナンバーのフレーズは登場します)
何より、10名の豪華キャストがワンフレーズずつ歌い継ぐ豪華さ!
そして、これだけ個性的なキャストなのに、美しく溶けあうハーモニーの素晴らしさ!
オープニングからノックアウトされること、間違いありません。
ケイリー・アン・ヴォーヒーズから始まり、9名のブロードウェイ・スターが出揃った中、センターを割って登場する柚希礼音さんのカッコよさにも注目!
続けて登場する『くたばれ!ヤンキース』では、柚希さんのセクシー姿も!
トニー・ヤズベックさん扮するジョーを誘惑する魔女ローラを、魅惑的に、かつユーモラスに演じていて、客席も大喝采。
しかし、見事な開脚です。
男性キャストのハーモニー(可愛らしいハミングも♪)も、心が踊ります!
特にジョシュ・グリセッティさんの高音の美しさ、素敵。
●個性際立つ、男性キャスト陣
男性キャスト4名、面白いくらいにキャラクターが分かれているのですが、ジョシュ・グリセッティさんはチャーミング担当。
『シー・ラヴズ・ミー』の「TONIGHT AT EIGHT」の、初デートを前をした男性のドキドキ感......舞い上がったり、上手くいくはずないと落ち込んだり......が本当にキュートです!
2幕『ローマで起こった奇妙な出来事』の「きれいな脚」っぷりもぜひ注目を。
朗々たる歌声と、くるくる変わる表情に人懐っこさが浮かぶシュラー・ヘンズリーさん。
こちらは『屋根の上のヴァイオリン弾き』のナンバーより。
大きな身体をゆらして、「もし自分が金持ちだったら...」と悲哀とユーモアを織り交ぜて歌う姿は、もうこの1曲だけで『屋根ヴァイ』の世界が出来上がっている厚みがあります。
そして、歌声の素晴らしさに加え、素晴らしいダンスで観客を圧倒していたのが、トニー・ヤズベックさん。
9月までブロードウェイにて『オン・ザ・タウン』の主演をつとめ、トニー賞候補にもなったスターです!
圧巻は、『フォーリーズ』の「THE RIGHT GIRL」のタップダンス!
↑跳んでます
『フォーリーズ』は取り壊しが決まった劇場を舞台に、昔を懐かしむ2組の中年夫婦の姿を描く作品。
トニーさん、シュラーさん、エミリー・スキナーさん、ナンシー・オペルさんの4名が、"あの頃を懐かしみつつ、もう戻れないやるせなさ"を、短い時間ながら情感たっぷりに演じていて、物語性の高い場面になっています。
在りし日の劇場の美しさも、必見です!
ショーガール(センター)は柚希さん。
●胸に熱いものがこみ上げる、圧巻の『キャバレー』
『フォーリーズ』フィリスを演じていたエミリー・スキナーさんは、上品な立ち姿と、ブルージーな歌声が印象的。
こちらは『リトル・ナイト・ミュージック』より、「SEND IN THE CLOWNS」の場面。
凝った演出が多い中、押さえた動きの中じっくり歌声を聞かせるシーンになっています。
ドラマチックな歌声を響かせるのは、ナンシー・オペルさん。
こちらは『キャバレー』より、シュナイダー夫人のナンバー。
『キャバレー』は、前半の大きな見どころのひとつになっています。
仕掛けも盛りだくさん、そして迫力のパフォーマンス!
「WILKOMMEN」~「IF YOU COULD SEE HER」では、ジョシュさんのMCのチャーミングさ、そしてナンシーさんのコメディエンヌっぷりが炸裂!
さらに歌姫サリー・ボウルズに扮するブリヨーナ・マリー・パーハムさんが熱唱する「CABARET」は、許されるなら立ち上がって拍手を贈りたいくらい!
ブリヨーナさんの、パワフルさと透明感を併せ持つ歌声に惚れること、請け合い。
...と、綺羅星のような名作・名シーン・名曲で、ハロルド・プリンスの功績を辿っていく旅なのですが、中には「この作品はヒットしなかった...」というモノローグで紹介される場面も(笑)。
こちらはアメコミヒーローを主人公にした『イッツ・ア・バード...イッツ・ア・プレイン...イッツ・スーパーマン』より「YOU'VE GOT POSSIBILITIES」。
普段は地味にしている主人公・実はスーパーマンのクラーク・ケントの、ただならぬ魅力を見抜き迫る秘書嬢をパワフルに演じているのが、マリアンド・トーレスさん。
アメコミ風のドットの背景も、いかにもで素敵です。
ちなみにハロルドさん曰く「失敗とされたのは大抵、脚本に原因があったから。音楽自体は素晴らしい、そんな曲」もあるとのことで(プログラムより)、このショーはそんな不運な名曲の見事な再生の面もある、とも言えます。
マリアンドさんは本当に弾けるような勢いがチャーミング!
2幕では『エビータ』のヒロインに扮し、野心満々の若き日々のナンバー「BUENOS AIRES」と、大統領夫人になってからの名曲「DON'T CRY FOR ME ARGENTINA」を、見事に異なる印象の歌声で演じていました。
クラーク・ケント=スーパーマンは、世界のミュージカル・スター、ラミン・カリムルー!
スーパーマン姿、一瞬ですのでお見逃しなきよう。
●もちろん1幕ラストはこの大名作!
待ってました、ラミン・ファントム
そして1幕のクライマックスは、もちろん大名作『オペラ座の怪人』。
25周年記念公演など、世界のミュージカルシーンにとっても重要な局面でファントムを演じているラミン・ファントムが、あの名曲とともに登場する場面は、鳥肌が立つほど!
クリスティーヌは、ブロードウェイ公演で同役を演じている若き新星、ケイリー・アン・ヴォーヒーズ。
パワフル・ヴォイスの揃う中、彼女の可憐なソプラノが貴重なポジションを締めるナンバーも多数。
そして、問答無用なヒロイン・フェイス!
ラミン&ケイリーのファントム&クリスティーヌは、なんとも言えないセクシーさ。
というか、官能的ですらあります。
ああ、もっと観ていたい...。
ちなみにラミン&ケイリーは『ウエスト・サイド・ストーリー』のトニーとマリアにも扮しています。
ふたりとも過去この作品への出演経験はありませんが、ワンカットを切り取っただけでもトニーとマリアだとわかるこの表情!
上記でもポロポロと2幕の見どころに触れていますが、ほか、柚希さんがブロードウェイに憧れる少女に扮する<TIMES SQUARE BALLET>のシーンでは、彼女を中心とした見応えあるダンスシーンになっているとともに、様々な作品のナンバーをコラージュし、新たな物語を再構築。
名曲の新たな魅力を引き出しています。
単なる名作・名場面のショーケースにはなっていないのが、本作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』の面白さ。
...と、時に名曲の後ろに広がる物語世界に思いを馳せ、時に名曲の新しい顔を楽しみつつ、ハロルドの軌跡を辿っていくと、ラストは新曲『ウェイト・ティル・ユー・シー・ワッツ・ネクスト』。
最後は「道の向こうに何があるのか、次に何が起こるのかを待とう」「やってみよう」「前を見よう」というメッセージが込められた明るいナンバーに、前向きなパワーをもらって観終えることができる素敵なミュージカル・ショーになっています。
しみじみと、このステージが日本で観られるのって、奇跡だなあと思うのでした。
ちなみに冒頭では、やはり日本のファンになじみのある柚希さんへの拍手が大きかったのですが、カーテンコールでは、10名それぞれに大歓声。
初来日のメンバーも、あっという間に日本の観客に愛されてしまったようです...!
なお、初日のレッドカーペットには、ハロルド本人も登場。
「作品は10人のアーティストが、60年のミュージカル史を魅せる舞台。自分の全ての作品をベースにしています」と見どころを語り、「とてもワクワクしています。人生に一度あるかないかの経験」と、初日の心境を答えていました。
数々の名作を生み出してきたハロルドにとっても特別な本作。
ぜひ、お見逃しなきよう!
ぜひ、お見逃しなきよう!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【バックナンバー】
【公演情報】
・11月22日(日)まで上演中 東急シアターオーブ(東京)
・11月28日(土)~12月10日(木) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
★ぴあ貸切公演特典★
来場者全員に柚希礼音さん生写真をプレゼント。
東京...11/7(土)
大阪...12/3(木)・12/8(土)
※各オリジナルカットです。