■ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』■
『ウエスト・サイド・ストーリー』『エビータ』『オペラ座の怪人』『蜘蛛女のキス』...
数え切れないほどの名作を作ったブロードウェイの巨匠、ハロルド・プリンスの新作が日本で世界初演の幕をあけます。
その注目のミュージカルは、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。
ハロルド・プリンスの名作の中から、名ナンバー、名シーンを選りすぐったものを縦軸に、さらに彼自身の人生を横軸に織り成していくとのこと。
すべてが見どころの作品になりそうな、そんな予感が今からします。
出演者も、ブロードウェイ第一線で活躍している俳優たちという豪華布陣です。
その中で日本から唯一参戦するのは、元宝塚星組トップスター柚希礼音。
絶大な人気を誇った彼女は2009年から今年5月まで6年間、星組トップスターとして活躍。
星組の顔としてのみならず、100周年を迎えた宝塚の顔として、宝塚の人気を牽引してきました。
彼女の退団公演の千秋楽、5月10日には、劇場周辺にファンが1万2千人も集まったほど!
その彼女が宝塚退団後1作目に選んだのが本作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。
柚希さんが作品にかける思いを、伺ってきました。
【バックナンバー】
★ 柚希礼音 INTERVIEW ★
――宝塚退団後、初の舞台がハロルド・プリンスの新作。びっくりするほどのビッグ・ネームです。
「そうなんですよ。私もびっくりしました(笑)!」
――この話が来たとき、どんなお気持ちでしたか?
「私がブロードウェイに憧れていたことを、皆さん知っていたんですか!? と。あまりに希望どおり、ピンポイントに素晴らしいお話でしたので。ただ、さすがに挑戦が過ぎるかなとか、ファンの皆さまは退団後1作目は自分が主役の舞台を観たいのかなとか、色々悩みました。やっぱりファンの皆さまのおかげで、本当に幸せに宝塚を卒業できたので。でも、ファンの方は守りに入っている柚希礼音より、挑戦している姿の方が、何かを感じ取ってくださるかなと思い、出演を決意しました。トップ時代のように出番も多くはないと思いますし、脇役に回ることもあると思います。でもこの作品は出られるだけですごいこと。自分もいっぱい勉強をしたいと思います」
――ブロードウェイに憧れていたというのは、いつ頃からなのですか?
「高校生の時に、アメリカン・バレエ・シアターに入りたくて願書を取り寄せていたんですよ。でも家族が心配してもっと日本で勉強するべきだ、海外はまだダメだということになり、そこから宝塚を知り、今に至ります。いまは宝塚に行って本当に良かったと思っていますが、一方で海外留学を諦めた感じはずっと心の中にあったんです。ですので、宝塚を辞めたあと、どこか(海外のステージ)にちょっとだけでも出られたらいいなとか、留学して勉強しようかとか色々考えていたのですが、その時にちょうどこのお話をいただいて、本当に嬉しかったです。自分としては、まったく違う道に進んだと思っていたのですが、宝塚に行ったからこそ、こんなお話が頂けた。大切なことは、ひとつひとつ、目の前にあることをやっていくことなんだなと思いました」
――ハロルド・プリンスさんの前で、歌われたとか。
「そうなんです。「歌ってみて」と言われ、歌ったら「チタ・リベラ(ブロードウェイの大女優。『ウェスト・サイド・ストーリー』アニータ、『蜘蛛女のキス』オーロラなどをオリジナルキャストで演じている)のキーだね!」みたいになって(照笑)。女性でこういう低い声を出す人はなかなかいないので、それを大切にしよう、と言ってくださいました」
――ハロルドさんが、「柚希さんの役は、50年代にブロードウェイに憧れてやってきた女の子」と仰っていましたが...。
「はい、"ブロードウェイに憧れていたレオン"という場面があるようで、まさに今の私のようです。それを、ハロルドさんの演出、スーザン・ストローマンさんの振付で出来るなんて、信じられないです。男役でやっていた踊りとはまた違うものになると思いますので、クラシック・バレエももう一度やり直して、挑みたいです」
――日本語で歌うシーンもあるとか...。
「ハロルドさんが、「せっかくレオンが出るのだから、日本のお客さまも日本語で聴きたいだろう」と言ってくださって。すごくお客さまの目線で舞台を作られる方なんだなと、その時思いました。やはり日本でやる公演ですので、日本の方がたくさんいらっしゃる。もちろん皆さんご存知の曲ばかりだと思いますが、英語ばかりより、1曲でも日本語があるとほっとすると思います。観る方の心に入っていくように歌いたいです」
――ちなみにたくさんの作品を作っているハロルドさんですが、柚希さんが特に好きな作品などはありますか。
「『オペラ座の怪人』がすごく好きです。あの、地下湖の舟を漕いでいくシーンとかの演出を、すべて作られた方なんですよね...。その方が目の前にいらっしゃる! というのが信じられないです。このお話をいただいて、改めて「この作品もハロルドさんなんだ」「あの作品もそうなんだ!」となっています。そして自分が感動した数々のシーンを、すごい方々が歌われます。それを間近で聴けるのは、感動モノですよね。...えらいこっちゃ、と思っています(笑)」
――このあと、単身NYに行き、お稽古に入るとか。
「はい。語学学校にも、ひとりで電車に乗って通うことになります。宝塚時代は、本当にありがたい生活をさせていただいていましたが、一度それをリセットし、ひとりの人間として歩き出すためにもちょうどいい生活が出来るかなと思います。電車に乗ったり、お米を炊いたり、買い物をしたり...ちゃんと自分の足で立っていきたいです」
――宝塚時代と勝手が違うこともありそうですね。
「このあいだ(湖月)わたるさんにお電話して、「稽古着ってどういうものを使っていますか?」って質問しちゃいました(笑)。わたるさんもNYでお稽古されていたので。「娘役の稽古着みたいなものを着るんですか?」って訊いたら、「そんなもの着ないから!」って言われてしまいましたよ。そんなレベルからのスタートです。...わたるさん、お忙しい方なのに、床はすべるからこういう靴で、こういうものを着なさい、といっぱい教えてくださいました」
――改めて、今の気持ちは?
「また、人生をかけてやることができた...という感じでしょうか。1日が24時間じゃ全然足りません。今までも足りなかったけど、また足りないんですよ。新しく学ぶことだらけだからでしょうか。ちょっと焦りや不安、恐怖もありますが、自分がやるべきことをうまく時間を使いながらやろうと思っています。宝塚時代も常に高すぎる壁をよじ登っていく作業でしたが、今回の壁はもっと高いかもしれませんし、なかなか登れないかもしれません。でも、その高い壁を無理やりにでもよじ登れば、素晴らしい幸せが待っていることは何度も味わってきて知っています。それを信じて、頑張ろうと思います」
――その活力は、どこから?
「自分がやりたいことだ、ということでしょうか。宝塚時代も、すごく忙しくなるとなんとなく「やらされている」気持ちになったこともあったのですが、そんな時は「これは自分がやりたいことだったじゃないか」と自分に言い聞かせていました。自分がやりたいことを、こんなに精一杯やらせていただけている。そう思うと、考え方も変わってきます」
――今後の女優としての目標を教えてください。
「こうなりたい!というはっきりしたものはないんです。そういえば宝塚時代も下級生のとき「どういう男役になりたいか」と訊かれても、ちっともわからなかった。立派な人になりたいと思っても、なれませんでしたし。でもひとつひとつ大切にやっていくうちに、振り返ればすごく幸せな宝塚人生だったので、今回も先を見すぎず、目の前のことを大切にひとつづつやるだけです」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・10月23日(金)~11月22日(日) 東急シアターオーブ(東京)
・11月28日(土)~12月10日(木) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
【ぴあ貸切公演】
・東急シアターオーブ:11月7日(土)12:30
・梅田芸術劇場 メインホール:12月3日(木)18:30/5日(土)12:30
※ぴあ貸切公演に限り、座席選択可能
【一般発売】
7/25(土)10:00~
【 一般発売直前プリセール受付!】
受付: 7/23(木)昼12:00~7/25(土)9:30まで
※東京公演、大阪公演共通。
※東京公演に限り、最終通し稽古付特別販売、終演後バックステージツアー付特別販売も有り!
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