■ミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」■
『ウエスト・サイド・ストーリー』『エビータ』『オペラ座の怪人』『蜘蛛女のキス』等々、演出家として、プロデューサーとして、数え切れないほどの名作を送り出している"ミスター・ブロードウェイ"ハロルド・プリンスの新作が、まもなくこの日本の地で、世界初演の幕をあけます。
その作品は『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。
彼が生み出した名作の中から名シーンを選りすぐり紹介していく構成で、プリンス自身の人生を紡いでいく...という、新作でありながら名曲オンパレードのステージになりそう!
出演する俳優も、現在のブロードウェイの第一線で活躍する、豪華スターが揃います。
10月15日、この舞台の稽古場を取材してきました!
まず最初に、ハロルド・プリンス本人から、取材陣に簡単なご挨拶がありました。
曰く、稽古場をNYから日本に移し、1週間ぶりの通し稽古であること、少し忘れているところがあるかもしれないがなるべく止めないで1幕を通す予定であること...。
そして「どうぞお楽しみください」との言葉。
取材陣もゲストとして扱うホスピタリティに溢れるこのひと言、ブロードウェイ流だなぁ、とちょっと感動...。
また、ハロルド・プリンスに加え、共同演出・振付のスーザン・ストローマン(『クレイジー・フォー・ユー』等の演出家!)、さらにハロルドの隣には演出助手として新進気鋭の演出家ダニエル・カトナー(日本では『4Stars』等の演出でおなじみ!)の姿も...。
なんて豪華な稽古場!
こんなビッグネームが揃うこと、ブロードウェイでも珍しいのでは?
アメリカ演劇界最高の名誉・トニー賞受賞者がゴロゴロしています...。
そして始まった1幕の通し稽古ですが、まずは軽快なテンポのオーバーチュアからして、『オペラ座の怪人』や『エビータ』といった聴き覚えのあるナンバーのフレーズが少しずつ織り込まれていて、ミュージカルファンの心をぐっと掴みそう!
続いてオープニングナンバーは『フローラ、赤の脅威』より「ALL I NEED IS ONE GOOD BREAK」。
豪華出演者がワンフレーズずつ歌い継いで登場。さながら顔見世の雰囲気。
ケイリー・アン・ヴォーヒーズさんに始まり、ジョシュ・グリセッティさん、ブリヨーナ・マリー・パーハムさん、トニー・ヤズベックさん、ナンシー・オペルさん、シュラー・ヘンズリーさん、エミリー・スキナーさん、マリアンド・トーレスさん、ラミン・カリムルーさん......それぞれ、ブロードウェイで活躍する人気スターです。
さらに最後に、日本から唯一参戦する元宝塚トップスター・柚希礼音さんが登場、テンションのあがるオープニングです!
日本ではあまり知られていない作品からの曲ですが、「たったひとつのチャンスがあればいい」という明るいナンバーは、市村正親さんの声で語られる「自分のキャリアにとって、運がどれだけ重要だったか」というハロルドの言葉とあいまって、本作のテーマを貫きます。
以下、順不同で、この豪華キャストそれぞれの見せ場をメインにご紹介。
まずは柚希礼音さん。
2009年から今年5月まで6年間、星組トップスターとして活躍。100周年を迎えた宝塚の顔として、宝塚の人気を牽引してきた"トップ・オブ・トップ"。
これが宝塚退団後、初ミュージカル出演になります。
こちらのシーンは、『くたばれ!ヤンキース』より、「WHATEVER LOLA WANTS」。
名ダンサーである柚希さん、キレのあるダンスでトニー・ヤズベックさんを誘惑していきます。大胆かつコケティッシュ、そして可愛い!
そしてセクシーなアルトの歌声は、この豪華キャストの中にいてもひときわ個性的で、よく響きます。
こちらは、第一幕の山場となりそうな『オペラ座の怪人』のシーン。
ファントム役は、もちろんこの人!
続編『ラブ・ネバー・ダイ』のファントム役・オリジナルキャストでもあり、全世界のミュージカルファンの注目を集めたお祭り的な公演『オペラ座の怪人 25周年記念ロンドン公演』(2011年)でも主演を務めた伝説のファントム役者ラミン・カリムルーさん。
そして、クリスティーヌは、現在ブロードウェイでこの役を演じている若手スター、ケイリー・アン・ヴォーヒーズさん。
このふたりが演じる『オペラ座の怪人』、稽古場&稽古着なのに、すでにもう怪しく切ないパリ・オペラ座の地下湖の世界が広がるようでした...。
ラミンさんは上述の『オペラ座の怪人 25周年記念ロンドン公演』のDVD発売のプロモーションや、城田優らと共演したコンサート『4Stars』でも来日していますので、日本のファンにもおなじみですね。
ラミン&ケイリーのカップルは、『ウエスト・サイド・ストーリー』のトニー&マリアとしても登場。
同じ顔合わせでも、こちらはまた、ガラリと雰囲気が異なりますね!
ケイリーさんの弾ける笑顔もチャーミングです。
ラミンさんの出演シーンからはもうワンカットご紹介。
こちらはなんとスーパーマン役!
アメコミヒーローを主人公にした『イッツ・ア・バード...イッツ・ア・プレイン...イッツ・スーパーマン』より「You've Got Possibilities」。
鳥だ...飛行機だ...あっ、スーパーマンだ!というユニークなタイトルの作品ですが、胸筋をピクピクさせたラミンさん、なかなかのスーパーマンっぷりで、共演者たちからも大きな笑い声が。
そして普段は能力を隠し、地味にしている主人公の、ただならぬ魅力を見抜く秘書嬢役はマリアンド・トーレスさん。
くりくりした目が印象的で、キュートかつパワフルにラミンさんに迫ります。
マリアンドさんは、『ウィキッド』全米ツアーのヒロイン・エルファバ役などを演じる注目株!
そしてこのシーン、途中、衣裳を脱ぎ着するようなアクションもあり、本番はどんな感じになるんだろう!?と楽しみになりました!
トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞を受賞しているシュラー・ヘンズリーさんは、『屋根の上のヴァイオリン弾き』の主人公テヴィエのナンバー「IF I WERE A RICH MAN」を、軽妙さと少しの悲しみを織り交ぜ、朗々とした歌声で聴かせます。
シュラーさん、この作品に出演していないとは信じられないくらいに、生き生きとしたテヴィエです!
飄々とした存在感が印象的だったジョシュ・グリセッティさんは『シー・ラヴズ・ミー』より「TONIGHT AT EIGHT」を披露。
街灯をたくみに使い、コミカルにチャーミングに演じていきます。
ジョシュさん、『キャバレー』のMC姿でも、その不思議な存在感をアピールしていましたので、そちらのシーンもお楽しみに。
今年のトニー賞主演男優賞ノミネートもされた、今もっとも"旬"なブロードウェイスター、トニー・ヤズベックさんの印象的なシーンはこちら。
『フォーリーズ』より「THE RIGHT GIRL」。
タップダンスで魅せる、ビッグ・ナンバー!
稽古場からすでに、ショー・ストップを予感させる、大迫力のシーンでした。
ダンスもすごいですがトニーさん、歌声ももちろん素敵ですよ~!
こちらはナンシー・オペルさん(写真右)と、エミリー・スキナーさん(左)。
ナンシーさんは『ユーリンタウン』でトニー賞主演女優賞候補に、エミリーさんは『サイド・ショウ』でトニー賞主演女優賞候補になっている実力派!
ナンシーさんは驚きのカブリモノで場を沸かせたかと思えば、『キャバレー』の「SO WHAT?」をしっとり聴かせます。
エミリーさんも『リトル・ナイト・ミュージック』の「SEND IN THE CLOWNS」を美しい歌声で切ない世界を作り出していました。うっとり。
ドラマチックな歌声を響かせるブリヨーナ・マリー・パーハムさんは『キャバレー』のタイトルソング「CABARET」などを披露。
このシーン、キャバレーのバンドに扮する柚希さんたちの姿にも注目してください!
駆け足の紹介でしたが、"凄い"の感覚が麻痺してきそうなくらい、超・実力派揃いのキャストです!
彼らの歌は、歌声の迫力はもちろん、歌そのものにドラマ性を感じさせる厚みがあるのです。
さすが、本場ブロードウェイ仕込み!
というか、ここ、ホントに日本ですか!? と、めまいがしそうになる豪華さ。
そして改めて、ハロルド・プリンスの功績と、彼が生み出した魅力的なキャラクターの数々を実感。
もしこれらの作品、これらのキャラクターがいなかったら、ミュージカルというジャンル、かなり味気のないものになっているに違いありません。
ブロードウェイの、そしてミュージカルの軌跡と奇跡が詰まった作品『プリンス・オブ・ブロードウェイ』、開幕はまもなく。必見です!!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【バックナンバー】
【公演情報】
・10月23日(金)~11月22日(日) 東急シアターオーブ(東京)
・11月28日(土)~12月10日(木) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
★ぴあ貸切公演特典★
来場者全員に柚希礼音さん生写真をプレゼント。
東京...11/7(土)
大阪...12/3(木)・12/8(土)
※各オリジナルカットです。