2020年、帝国劇場に4年ぶりに登場する人気ミュージカル『ミス・サイゴン』。1992年の日本初演から現在間で、通算上演回数1463回を重ねるヒット作です。

舞台はベトナム戦争末期のサイゴン。エンジニアの経営するキャバレーで知り合ったベトナム人少女キムと米兵クリスは、愛し合うようになります。しかしサイゴン陥落により、二人は別れなければならないことに......。戦争によって翻弄される二人の愛と残酷な運命。

そのキム役に、オーディションを経て新たな3名が決定しました!高畑充希、大原櫻子、屋比久知奈。そして、キム役3度目となる昆夏美の4名が演じます。初演からただ一人出演し続け、エンジニア役を演じてきた市村正親とともに、上演に向けてお話を伺いました。

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----キム役4人の顔ぶれをご覧になって、いかがですか?

市村「ビックリしたのは、この2人(昆、高畑)は僕が初めて『ミス・サイゴン』の舞台に立った時に産まれて、こちらの2人(大原、屋比久)はまだ産まれてなかった!稽古ではこの4人と真っ向勝負できるので、新鮮な出会いは刺激です。変なところは見せられないし、こっちも本気でやる」

----昆さんは3度目のキム役ですね。

昆「キム役は雲の上の存在だったので、最初に決まった時は光栄だし嬉しいけれど不安の方が大きかったんです。それは今もまったく変わらない。初出演のお3方と同じ気持ちでドキドキしながらやることになると思います」

----3人は『ミス・サイゴン』初出演です。いかがですか?

高畑「ミュージカルに憧れていた女の子にとって、キムって特別な役。やるなら27歳の今がラストチャンスじゃないかとオーディションを受けました。ミュージカルから離れていた時間は長いけど、ミュージカル愛はずっと心の中で燃えていたので......でも、いざ決まるとドキドキしています。同じ役が4人もいるのも、相手役がいっぱいいるのも、帝国劇場も、初めてづくしなので」

大原「ずっと憧れていた作品でした。1年半前にニューヨークで『ミス・サイゴン』を観た時に、初演のキム役だったレア・サロンガさんに偶然お会いしたんです!通訳してもらいながら「いつか『ミス・サイゴン』をやりたいです!」と伝えて帰国した後にオーディションの話をいただいたので、いろんな奇跡が重なりました」

屋比久「私もレア・サロンガさんの歌うキムの『命をあげよう』が好きで、3年前の『集まれ!ミュージカルののど自慢』で歌ったんです。それがきっかけで、今、舞台のお仕事ができるようになった......私の人生が変わった曲です。またキムの住むベトナムは、私の住む沖縄と通じるものがある。戦争の現場だし、実際に沖縄の米軍基地からこのベトナムに戦闘機が飛んでいました。いつか機会があったらやりたいと夢見ていたので、今の私だからできるキムを精一杯やろうと思っています」

----キムのイメージは?

昆「キムは両親を戦争で亡くして、壮絶な人生を歩みます。でも、当時はキムみたいな女性はたくさんいたはず。歴代のキムを演じた先輩方も敬意を払って演じているのを感じます」

大原「稽古に入ってみないとわからないけど、先日のミュージカル(『メタル・マクベス』)で同じ役を違う年代の人が演じて、同じ役なのに全然違う女性像になったんです。たぶん今回も4人のキムそれぞれ全然違う色が産まれるんじゃないかな」

----2020年、再び『ミス・サイゴン』が上演されることについては?

市村「オリンピックと一緒で、4年おきに上演されています。来年は東京オリンピックもあるし、同じ年にできるなんて、令和の奇跡ですよ!平成の時代は日本の地では戦争がなかったけれど、世界のどこかでは子どもや罪のない人が酷い事にあっています。こんな悲劇のないことを祈りつつ、上演し続けていくのかな」

----キム役のみなさんは、初演から出演されている市村さんとの共演についてはいかがですか?

市村「まだいるんだーなんて言わないでね(笑)」

高畑「いえ、またやってくださって良かったです!『スウィーニー・トッド』で市村さんの娘役を演じて以来のミュージカルなので、ご一緒できて安心です」

昆「前回の『ミス・サイゴン』出演がファイナルだと仰っていましたけど、誰よりもエネルギッシュで、ファイナルじゃない気はしていました。約30年も同じ役をやるという並大抵ではないことをしていて、笑顔で明るく場を和ませてくれる市村さんが『ミス・サイゴン』を引っ張ってくれているのを感じます」

大原「私は正直、今日お会いするまで緊張していて......でも楽屋にご挨拶に伺った時にハグをしてくださって、それが温かくて、安心しました!初演からずっと演じられているのはそれこそ、令和の奇跡」

市村「あはははは」

大原「一緒に奇跡を起こしたい」

屋比久「今日も誰よりもエネルギッシュなので、負けないように、でもゆだねつつ、精一杯ついていきます!」

市村「よしっ。厳しい作品ですけど、みんなで作りあげていこう。『ミス・サイゴン』の世界を苦労しながら楽しんで、キムとして生きてほしい!」

----市村さん、開幕にむけて締めの言葉をおねがいします!

市村「初演から28年出演していますが、劇団四季を卒業して最初に受けたオーディションが『ミス・サイゴン』。その時の気持ちは今でも鮮明に残っています。今回、新しいキム、ジョン、クリスが産まれるので、初心を忘れないでゼロから創りたい。「良い作品だな。考えなくちゃいけないな」と思ってもらえるように、4人のキム達と作品を創っていきたいですね、オリンピック演技種目のミュージカル部門『ミス・サイゴン』強化隊長として!」

一同「(笑)」

キム役4人はそれぞれ雰囲気の異なるアオザイで登場し、華やかな雰囲気。しかし緊張しており少し硬い表情で、それをほぐすように市村正親さんが冗談をまじえながら場を明るくしてくれます。4人も丁寧に言葉を選びながら、役について語る時は熱が入って興奮ぎみ!念願の『ミス・サイゴン』にたいする敬意と情熱がたっぷりと感じられ、舞台への期待がこちらに伝わってきます。新たなキャストで送る2020年版『ミス・サイゴン』への楽しみが膨らんだインタビューでした。

げきぴあでは過去のミス・サイゴンのインタビュー、稽古場レポートなど多数アップしております!

ぜひチェックしてみてください!

取材・文:河野桃子

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(ステージぴあ2019年5+6月号より転載)

カルロ・ゴルドーニの傑作喜劇に、現代に生きる笑いのプロ、福田雄一が挑む話題作。ひとりの召使がふたりの主人に仕えてしまったことで......というドタバタ劇で、その主人公をムロツヨシが演じる。頼れるキャスト陣とともに、福田はいかなる笑いの舞台を生み出そうとしているのか。

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ひとりの召使がふたりの主人に仕えたことで、すれ違いに次ぐすれ違いの大騒動が巻き起こる、イタリア古典喜劇『2人の主人に仕えた召使』。本作が新たに『恋のヴェネチア狂騒曲』と題し、福田雄一版コメディとして、この夏、上演決定!

古典と言われるあの時代のものとしては、とてもよく出来たドタバタ劇なんですよね。台本を手直しする上でも、キャラクターそれぞれの面白味を少しずつ足したくらい。僕がよくミュージカルでやるようないたずらは、今回そんなにしていないですから。というのもゴルドーニが書いている時代感、古典色というものを残していかないと、この作品独特のかわいさみたいなものが出なくなってしまうような気がしたんです。(福田)

本作のドタバタの張本人である召使トゥルファルディーノを演じるのは、いまや福田作品だけにとどまらず、日本のエンタテインメント界に欠かせない存在にまで成長したムロツヨシ。

役的にすごく合っているとは思うんですけど、僕がムロくんに期待することって、常にムロくんであることなんですよね。ムロくんの脱力感と、プラスしていたずら感というのかな。それがちゃんと機能して遊べていれば、絶対に面白くなるはずなので。だから下手に役づくりとかしてくると、「いらない、いらない」って言っちゃうんです(笑)。(福田)

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作・演出の末満健一が2009年に大阪の小劇場で初演し、今や大人気の『TRUMP(トランプ)』シリーズ。その最新作となる『COCOON 月の翳り星ひとつ』が、5月11日(土)から26日(日)まで東京・サンシャイン劇場、5月30日(木)から6月5日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演中です。

吸血種(ヴァンプ)の宿命を描いたゴシック・ファンタジーシリーズで、続き物ではなく、ひとつの時の流れの中にあるさまざまなエピソードを描いていく本作。今回は、アンジェリコとラファエロというふたりの少年の物語を描く「月の翳り」編、原点の作品『TRUMP』の主人公の一人・ウルの物語を描く「星ひとつ」編という2作品が同時上演されます。

げきぴあでは、それぞれの公開ゲネプロに潜入、この記事ではゲネプロ2日目に行われた「星ひとつ」編をレポートします。

◎「月の翳り」編・これまでの作品紹介・末満さんのコメントはコチラhttp://community.pia.jp/stage_pia/2019/05/trumpcocoon.html

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※※以下、ゲネプロレポート※※

※※ネタバレ注意!!!※※

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さて、「星ひとつ編」で描かれるのは、ウルという青年の物語。ウルは「月の翳り」編に登場するラファエロの弟で、名門デリコ家の次男です。

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▲中央がウル

ウル(宮崎秋人)は特級貴族ダリ(染谷俊之)の子息ですが、実は秘密があります。彼は人間種と吸血種の間に生まれた混血種《ダンピール》。生まれてすぐに実の両親を亡くし、ある事情から特級貴族であるダリに引き取られ育てられたのですが、彼がダンピールであること以外、つまり出生の秘密などはウルや兄のラファエロ(荒木宏文)は知りません。

繭期(人間でいう思春期)を迎えたウルが、兄のいる≪クラン≫(繭期の吸血種の少年たちを収容する施設)に入る、というところから物語は始まります。ダンピールは忌み嫌われる存在。ウルは、名門デリコの家名を護るため、表向きは《純血種》として生きることを父に命じられます。また、ラファエロもそんなウルを護るようにと父に命じられます。

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▲クランには、ウルにとっても幼馴染であったアンジェリコ(安西慎太郎/左)も。彼の「月の翳り」からの変化はじわっと感じさせるものがあります

自分がダンピールであることをひた隠して生きるウル。あるとき、同じクランにやってきたダンピールのソフィ(三津谷亮)と出会い、ダンピールであるにも関わらず毅然と生きるその姿に心惹かれていきます。そこに反応したのがラファエロ。弟がダンピールであると露呈することを恐れ、ふたりを引き離そうとします。

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▲中央がソフィ。ウルは言います「ソフィ、君は僕であり、僕は君だ」

 

同じ頃、TRUMP(→永遠の命を持つとされる原初の吸血種「TRUE OF VAMP」の呼称)を監視・守護する《ヴラド機関》の任務にあたるダリは、ソフィがこのクランに入所していることを問題視していました。なぜならそこにはTRUMPであるティーチャークラウス(陣内将)がいるから。ソフィには、クラウスの精神状態に悪影響を及ぼしかねない秘密があるのです――。

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▲左からティーチャークラウス、ダリ。繭期(思春期)の少年たちを描く作品ですが、大人たちの姿から見えるものにもぜひ注目してほしい!

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これまでの作品を観てきた人は、思わずその場で答え合わせをしたくなりそうなエピソードも。ですがそれ以上に、シリーズを通して描かれ続ける「生」と「死」というテーマや、人間の業が濃く描かれているのが本作。この作品だけを観ても、受け取るものは大きいです。

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ウルはダンピールであることを隠し生きているせいで、心に抱えたものをわかちあえる相手がいません。大切なことを言えないまま続くソフィとの交流ですが、すべてが明るみに出たとき、ふたりの間になにを生むのでしょうか。

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そんなウルを必死で護ろうとする兄ラファエロも、実は繭期にいるのです。父親の期待に応えなくてはならないという気持ちが強い彼ですが、その父親ダリの心の内もこの作品では描かれます。それぞれが何を見て、何が見えていないのか、ぜひ注目してみてください。

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▲一番右は転校生・臥萬里(木戸邑弥)。ウルとソフィが一目見て"違和感"を感じる彼は、果たして何者なのか......と書きつつ、この"何者"というのも引っかかるところ。この世界の登場人物には「ヴァンプ」「ダンピール」「TRUMP」「繭期」などなどさまざまな特性がついてまわります。その特性、例えば「特急貴族」からイメージするものは、本人以外の言葉で語られることが多く、それを何度も聞いているうちに、いつのまにかその聞いたイメージを重ねて観る目で見ている。劇中、突然そこに気付かされる瞬間が何度もありました。

美しい美術や衣裳、照明や音楽、迫真の殺陣など、さまざまな面で楽しめる作品。ぜひ劇場やライブビューイングで体感してください。

『COCOON 月の翳り星ひとつ』は5月26日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演後、5月30日(木)から6月5日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。

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作・演出の末満健一が2009年に大阪の小劇場で初演し、今や大人気の『TRUMP(トランプ)』シリーズ。その最新作となる『COCOON 月の翳り星ひとつ』が、5月11日(土)から26日(日)まで東京・サンシャイン劇場、5月30日(木)から6月5日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演中です。

吸血種(ヴァンプ)の宿命を描いたゴシック・ファンタジーシリーズで、続き物ではなく、ひとつの時の流れの中にあるさまざまなエピソードを描いていく本作。今回は、アンジェリコとラファエロというふたりの少年の物語を描く「月の翳り」編、原点の作品『TRUMP』の主人公の一人・ウルの物語を描く「星ひとつ」編という2作品が同時上演されます。

げきぴあでは、それぞれの公開ゲネプロに潜入、この記事ではゲネプロ1日目に行われた「月の翳り」編をレポートします。

◎「星ひとつ」編はコチラ

http://community.pia.jp/stage_pia/2019/05/trumpcocoon-1.html

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<ざっくり!これまでの作品紹介>

◎『TRUMP』

本シリーズの原点。シリーズ関連作は全てこの作品に帰結されるようにつくられているそうで、関連作を踏まえて観ると伏線が回収され、解釈が変わるという作品です。

<補足>劇中に出てくる単語としての"TRUMP"とは?

→永遠の命を持つとされる原初の吸血種「TRUE OF VAMP」の呼称。シリーズでは、不老不死のTRUMPの存在を軸にしてさまざまな真実が浮かびあがります。

◎『LILIUM-リリウム少女純潔歌劇-』

『TRUMP』の3000年後を描いた作品。不老不死となったソフィがファルスと名を変えて登場します。

◎『SPECTER』

『TRUMP』の14年前を描いた作品。ソフィの出生と『TRUMP』でソフィと再会することになるヴァンパイアハンター臥萬里が誕生するまでを描きます。

◎『グランギニョル』

『SPECTER』と同じ『TRUMP』の14年前、ある事件を追う若きダリの血盟議会との確執、ダリの子・ウルの出生を描いた作品。

◎『マリーゴールド』

『LILIUM』に登場するマリーゴールドの過去を描き、母娘の血と愛を巡る作品。シリーズ初の本格ミュージカル作品でもあります。

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※※以下、コメント・ゲネプロレポート※※

※※ネタバレ注意!!!※※

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◎開幕にあたっての末満健一さんのコメント◎

「医者になるには免許がいる。役者に免許はない。飛行機を飛ばすには知識と技術がいる。役者と名乗るものには知識も技術もないやつがいる。そんなピンキリな役者世界の中で、「この人たちは紛れもない役者だ」と思える人たちと、創作の時間を共にすることができた。そんな自分は、脚本家と言えるのか? 演出家と名乗る資格はあるのか? そんなことを自問自答しながら。演劇の可能性はまだまだ無限で、僕のやっていることはその一欠片でしかない。それでも僕は、演劇が好きだ。役者が好きだ。そう思うことが許されるよう、自分なりのやり方で過ごした時間に尽くしたつもりだ。その結果出来上がったものが今回の作品だ。『COCOON 月の翳り星ひとつ』は、やっていて苦しいのだから観るのも苦しいはず。でもとても遠いところまで来られたと思う。想像すらできていなかったような場所に。ひとりの力などちっぽけで、ここまで来られたのは役者とスタッフと観客のおかげだ。せっかくここまで来られたのだから、このままどこにも帰らずに、進んでみよう」

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▲左からラファエロ、アンジェリコ

「月の翳り」編で描かれるのは、アンジェリコ(安西慎太郎)とラファエロ(荒木宏文)の物語。繭期(人間でいう思春期)の吸血種《ヴァンプ》の少年たちを収容する施設《クラン》で、幼馴染だったふたりが再会するところから始まります。

(※ちなみにラファエロは「星ひとつ」編の主人公ウルのお兄さんです)

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▲左から、アンジェリコ、エミール、ディエゴ、ラファエロ、ジュリオ

久しぶりに再会し、「君となら肩を並べて競い合える」と喜ぶアンジェリコ。クランに在籍する生徒の中でも、アンジェリコとラファエロに加え、上級生のエミール(宮崎秋人)とジュリオ(田中亨)とディエゴ(碓井将大)の5人は貴族階級の出自を持ち、クランの生徒から《高貴なる五家》と呼ばれる生徒です。さらにそのなかでもアンジェリコの「フラ家」とラファエロの「デリコ家」は最上級の家柄。アンジェリコは、ラファエロだけを「親友でライバル」だと認めています。ちょっともうこれだけでハラハラしちゃいますね......!

そんな最上級の家柄を背負うふたり。共に父親の存在、家の名前が重くのしかかり、けれど懸命にそれを受け止めようともがきます。父親であるダリ・デリコから名門デリコ家の家督相続者として厳格な教育を受け、父のような立派な貴族にならなければという思いを強迫観念的に抱いているラファエロ。逆に父親であるゲルハルト・フラから期待の言葉をかけられることはなく、不安を感じるアンジェリコ。(※ラファエロの父ダリ・デリコの物語は『グランギニョル』で描かれているので、気になる方はDVDも販売されていますよ!)

家という大きな存在とまっすぐに向き合う彼らの前に現れるのが、ディエゴ。彼はふたりに「家を継がない」という選択を見せつけます。アンジェリコはいつかラファエロと血盟議会でやりあいたいという夢があるのでそこでブレはしないですが、ラファエロは自分にはないディエゴの姿に憧れに近い感情を抱くようになります。アンジェリコは嫉妬心を募らせます。

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▲右がディエゴ

同じ頃、クランでは生徒たちの繭期の症状が著しく悪化していることが問題視されはじめます。繭期の症状を投薬制御する《抑制プログラム》の担当であるティーチャー ドナテルロ(細貝圭)は抑制剤の調整を試みますが、事態は一向に解決する気配を見せない。それどころか繭期を深刻化させ、暴走するディエゴたち。一体何が起きているのか。事態は思わぬ展開に――!

まず印象的だったのは、やはりこの『TRUMP』シリーズならではの世界観。

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美しい美術、美しい衣裳、美しい振る舞いに彩られた、醜いとも言えるほどの感情や欲望の渦巻く繭期(思春期)の少年たち。内側から流れ出しているものが見えそうなほどの姿に、何度も刺されます!

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友情、嫉妬、背負う呪い、疑念、憧れ、現実、約束、記憶、執着、欺瞞、逃避、投影、臆病......さまざまな感情が鮮烈に描かれますが、それをどう受け取るかは、本作がシリーズ初めての観劇なのか、過去作を観ているのか、観る人の年齢や立場によっても変わりそう。そこはこの『TRUMP』シリーズの醍醐味ともいえます!

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その醍醐味は今回の2作を観るだけでもしっかり味わえます。例えばアンジェリコは、「月の翳り」と「星ひとつ」のどちらを先に観るかで見え方が全然違うはず。ほかにも、「あのとき言ってたのはこれか...!」ということも。

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▲左からティーチャー グスタフ(郷本直也)、ドナテルロ(細貝圭)。

繭期は誰もが通る道。クランで生徒たちを指導するティーチャーたちも当然、繭期を経てきた人たちです。

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2作同時上演で半分以上同じキャストが出演するのも今作の楽しみのひとつ。「星ひとつ」で主演を務める宮崎秋人さんは「月の翳り」でなにを演じるのか...ご注目ください!

今回のタイトルにつけられた「星」と「月」に触れる台詞も印象的だった「月の翳り」編。ふたりの友情はどうなっていくのか、その過程をたっぷりとお楽しみください!

そして『TRUMP』シリーズに流れる長い時間の中のある瞬間を描く今作ですが、観ていてわけがわからなくなることは決してありません。だから過去作を観ていない人も心配せずに劇場に足を運んでくださいね。

『COCOON 月の翳り星ひとつ』は5月26日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演後、5月30日(木)から6月5日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。

文章:中川實穂
撮影:遠山高広

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kemuri_seisaku_01.jpg 劇団☆新感線『けむりの軍団』製作発表より

古田新太、早乙女太一、清野菜名、須賀健太、池田成志などが出演する劇団☆新感線の舞台『けむりの軍団』の製作発表が行われた。

今年、39周年を迎える劇団☆新感線の夏秋公演『けむりの軍団』の製作発表が都内で行われ、脚本の倉持裕、演出のいのうえひでのり、出演の古田新太、早乙女太一、清野菜名、須賀健太、高田聖子、粟根まこと、池田成志が登壇した。

動画は挨拶部分を中心に抜粋したもの。【動画11分】

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(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ

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日本ミュージカル界屈指の人気作『エリザベート』
1992年にウィーンで初演され、日本では1996年に宝塚歌劇団雪組で初演、宝塚版と並行し2000年からは東宝製作版も繰り返し上演されている。
 
物語は19世紀末のウィーン、皇帝フランツ・ヨーゼフに嫁いだ美貌の皇妃エリザベートが主人公。しかし自由を愛する彼女にとって宮廷の暮らしは苦痛でしかない。そんなエリザベートを黄泉の帝王トート(死)も密かに愛し続けていた。だがその愛はハプスブルク帝国を破滅へと導いていく......。

東宝版は2015年に演出・ステージング・セットなどが大リニューアルをされた"新演出版"が登場、翌年の続演を経て今年2019年、約3年ぶりに上演される。

2019年版のキャストは、エリザベートに東宝版は2015年のリニューアルから出演、また宝塚版には1996年の日本初演時にも同役を演じていた花總まりが再び出演。
そして東宝版は初出演ながら2018年宝塚月組公演で同役を演じていた愛希れいかがタイトルロールを演じる。

トート役には、2000年東宝版のルドルフ役でデビューし、花總同様2015年のリニューアル版から同役を演じる井上芳雄が続投。
そして前回公演までそのルドルフ役を好演していた古川雄大が、トート役に初挑戦する。

4月、花總、愛希、井上、古川が揃っての取材会が開催された。
その模様をレポートする。1キメ_5973.JPG
 


花總まり
「エリザベート役を演じさせて頂きます。自分の中では(公演は)まだ先のような気がしていたのですが、こうして合同取材会をすると、いよいよ近づいてきたんだなというドキドキ感があり、そしてまた新たなメンバーで『エリザベート』を作るのですごくワクワクしています」2花總_6004.JPG

愛希れいか
「エリザベート役を務めさせて頂きます愛希れいかです。今は緊張の気持ちが大きいのですが、新しいことに挑戦できるという楽しみな気持ちと緊張が入り混じっております。精一杯頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」3愛希_6008.JPG

井上芳雄
「3回目のトート役をやらせて頂きます。またやれるってことは素直に嬉しいです。僕は初舞台が『エリザベート』のルドルフ役で、自分にとっては故郷のような、ホームのような作品。新たなメンバーも迎えて、年号も変わりましたし、新しい気持ちの新しい『エリザベート』をみんなで作っていけたら良いなと思います。昨今、ミュージカルブームと言われて久しいですが、その中でも日本のミュージカル界にとって『エリザベート』は独自の進化を遂げている大切な演目。もちろん今までのファンの方には楽しんで頂きたいですし、初めて『エリザベート』を観る方に、これが俺たちの『エリザベート』なんだというものをしっかりお見せしないといけないという責任感のようなものを感じています......『レ・ミゼラブル』には負けていられないなと。(場内、笑)......競う必要はないのですが(笑)! 『レ・ミゼラブル』と同じくらい、日本を代表する演目になっているので、しっかりとその責任、矜持を持ってやりたいなと思っています」4井上_6017.JPG

古川雄大
「僕は2012年にルドルフ役を演らせて頂いて、その時からこのトートという役にずっと憧れていました。ミュージカルをやっていく上で、死ぬまでにできたらいいなと思っていた役ですが、まさかこんなに早くチャンスを頂けるとは思っておらず、正直びっくりしています。できる限りのことをやって、今までにないトートを演じられたらと思います。芳雄さんがおっしゃったように『エリザベート』は日本を代表するミュージカル。僕の大好きな作品でもあるんですが、またこの作品に参加できる喜びがありつつ、今回はトート役ということで、緊張やプレッシャーや不安などに襲われてはいるのですが、芳雄さんとダブルキャストですので色々と勉強させて頂きながら、楽しみながら、稽古を乗り越えて本番に向かっていけたらと思っています」5古川_6021.JPG

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goldfish_01.jpg 舞台『+GOLD FISH』

清水葉月、松田凌らが出演する舞台『+GOLD FISH』が新宿・紀伊國屋ホールで開幕した。作・演出は西田大輔。/19日(日)まで!

本作は2018年1月に紀伊國屋ホールで舞台版が上演され、同年11月24日に映画が公開となった映画&舞台の連動プロジェクト「ONLY SILVER FISH」シリーズのもう一つのストーリー。

「その魚の本当の名前を知ると、過去を振り返ることができる」という《オンリーシルバーフィッシュ》。この謎を解き、それぞれの過去を振り返るために集まった男女12人を描いた物語だ。

出演は清水葉月、松田凌、樋口日奈(乃木坂46)、伊万里有、神永圭佑、高柳明音(友情出演)(SKE48)、伊藤裕一(友情出演)、西丸優子、大村わたる(柿喰う客)、竹井亮介、川本成、粟根まこと(劇団☆新感線)。演出は舞台『ジョーカー・ゲーム』『どろろ』などを手掛けて来た西田大輔が手掛ける。

 
本作の公開舞台稽古が行われた。動画はこれを収録したもの。【動画1分】

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(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ

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主演の神保悟志さん

元お笑い芸人で、現在は脚本家・演出家・放送作家として活躍している西条みつとしさんが率いる劇団「TAIYO MAGIC FILM」。第13回公演ぼくのタネ 2019が2019年5月24日(金)から赤坂RED/THEATERで再演されます。東京都内で行われている稽古を3時間にわたり、見学させてもらいました。

TAIYO MAGIC FILMは、2012年に劇団太陽マジックとして旗揚げされ、15年に改名しました。
パズルのピースが繋がっていくような伏線回収ストーリーと、劇的に展開する脚本を武器に、泣きたい人、笑いたい人、驚きたい人へ全ての感動を凝縮させて繰り広げられていく人間模様をコンセプトとした作品を作り続けています。

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演出の西条みつとしさん

今回の作品『ぼくのタネ』は、2015年11月に恵比寿エコー劇場で初演されています。「良い意味で想像を裏切られました」「人生ちょっと疲れたなー、って人には元気をもらえる作品」などという感想が寄せられ、好評を得た作品です。今回は、およそ3年半ぶりの再演となります。

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主演の神保悟志さん(右)と、篠原あさみさん 

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主演の神保悟志さん(中央)、篠原あさみさん(左)、由地慶伍さん

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主演の神保悟志さん 

50歳の誕生日を迎える男・桜木優司(神保悟志)が、30年ぶりに広島の実家に戻ってきたところから物語は始まります。

この日は、優司が息子の彼女である茜(西田薫子)に、過去を打ち明けるシーンの稽古がありました。優司を演じるのは、神保悟志さん。低く渋みのある声で、過去の出来事や自分の思いをとつとつと語ります。決して派手な演技ではなく、座って語るだけの演技なのですが、グッと観客の目線を引き寄せる、集中力を感じるお芝居でした。佇まいから中年男性の"哀愁"がよく滲み出ています(とは言え、稽古の合間や休憩中は冗談を言ったり、共演者とお喋りをしたり、笑顔で過ごされていました)。

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演出の西条みつとしさんと話す、杉江大志さん(右)

一方、息子の亮を演じる杉江大志さん。今年に入ってから毎月舞台に立ち続ける売れっ子の杉江さんですが、この日は、父親との距離感をどうセリフに込めるか、どういう空気にするか、繊細な役どころに少々苦戦している様子でした。それに対し、演出の西条さんは、セリフの言い回しや間の取り方、身のこなしなどを自分で実践しながら伝えます。

また、共演する神保さんも「(亮という役柄は)人の痛みが分かる奴なんじゃないかな。生き方が下手な感じが出ればもっと良くなると思う」などと、父親らしい(?)アドバイスをしていました。杉江さんは、それらの助言をもとに試行錯誤を重ねていました。
 
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中村涼子さん

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由地慶伍さん

30分の休憩を挟んで(休憩時間にも、ほとんどの皆さんが動きとセリフの確認を兼ねた自主練をしていました!)、続いてとあるコメディータッチのシーンの稽古。優司の妹の長女・成美(中村涼子)、成美の会社の先輩の恋人・岡宗徹(由地慶伍)らが登場します。

中村さんと由地さんのお芝居はとにかく全力でした。お2人とも声量があるので、一見勢いに任せた演技にも見えますが、より良い言い回しを探ったり、アドリブの改良を重ねたり、丁寧に稽古を積み重ねていることが印象的でした。特に「こうしたら面白いと思う!」と次々とアイディアが出てきて、共演者を笑わす中村さんは、さすがコメディアンヌだと思いました。
 
ちなみに初演時の優司を演じたのは由地さんでした。すでに初演をご覧になった方であっても、キャストが変われば、また違う印象を受けることでしょう。再演ならではの楽しみ方ができそうです。
 
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森林永理奈さん(右)

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演出の西条みつとしさん(左)の話に耳を傾ける、西田薫子さん、杉江大志さん、岩田華怜さん

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小築舞衣さん

この日見学させてもらったのは、ほんの一部分。そのほか、寺坂尚呂己さん、岩田華怜さん、山下容莉枝さん、町田慎吾さん(特別友情出演)、鈴木まりやさん、篠原あさみさんら多数のキャストが出演します(なお、町田慎吾さん、蔭山ひろみさん、畠山U輔さん、仲原由里子さんはWキャストです)。

開幕まであと2週間ほど。まだまだブラッシュアップしていく予感がする稽古場でした。本番でどんな舞台を見せてくれるのか楽しみです。全17公演、6月2日(日)まで。チケット好評発売中!

(文・写真:五月女菜穂)

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湖月わたるさんが舞台生活30周年を記念して、2作品連続上演に挑みます。VOL.1『ドキュメンタリー・ミュージカル わたるのいじらしい婚活』(今年7月)、VOL.2『Song&Dance』(今年10月)。この2作について、囲み取材会でのお話をお伝えします。

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まず、ご挨拶をどうぞ。

湖月 私は今年芸能生活30周年を迎えます。長いこと応援してくださった皆様、関係者の皆様、作品で出会った方々、あたたかくご支援くださる皆様、ありがとうございます。今回、記念公演として2作品を異なるコンセプトで上演する、大変幸せな機会をいただきました。

私は作品と向き合う時に目標としているのは、"挑戦と進化"です。VOl.1『ドキュメンタリー・ミュージカル わたるのいじらしい婚活』では今人気の放送作家・竹村武司さんを脚本、新進気鋭の演出家・永野拓也さんを作詞・演出にお迎えし、ドキュメンタリーミュージカルという未知の分野に飛び込みます。自分自身を演じるということで、役者として何かを掴みたいです。VOL.2『Song&Dance』では私を応援してくださる皆様に心からの感謝を込めて、懐かしい曲で歌い踊ります。『ベルサイユのばら45』では14年ぶりにアンドレとフェルゼンを演じました。また現在、3年半ぶりに『雪まろげ』のアンナ役に向き合っています。再挑戦での私の目標は、今の自分にしかできない表現、進化したパフォーマンスをお届けしたいということです。VOL.2では懐かしい曲とともに、今の私をお楽しみいただきます。

私を応援してくださっている方には挑戦&進化する姿を、まだ湖月わたるをご存知ない方にはこんな面白い女優がいる!と思っていただけるように、作品と真摯に向き合い、初日に向かって頑張ります。

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竹村 脚本を担当する竹村武司です。普段は放送作家の肩書で、バラエティ番組や情報番組、ドラマの脚本などを幅広く手がけています。正直、このお話をいただくまで宝塚歌劇を観たことがなく、舞台公演の脚本も経験がないので、初めての打ち合わせで「なぜ僕なんですか?」と心の中の声を含めて100回くらい伺いました(笑)。その答えを聞いて、僕に白羽の矢を立てた冒険心、何か違うことをやりたいという心意気をひしひしと感じました。僕自身も"ここではないどこか"みたいな作品を作り続けたいので、お引き受けしました。

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永野 作詞&演出の永野拓也です。僕も「僕でいいんですか?」と同じことを聞きました(笑)。湖月さんはすでに人気も実績もお待ちで、30周年記念公演として過去を振り返るショーであれば、僕より確実に上手い演出家がいるはず。そこでお受けする前に「湖月さんと直接お話させていただけますか?」とお願いしました。湖月さんとお会いして感じたのは、僕が思っていたある種のスターのイメージとはいい意味で違うこと。非常にチャーミングで、保守的じゃない。そして、この先を見据えて新しいチャレンジをするために僕なのだ、と。それなら「とことんチャレンジしましょう」とお話しして、脚本を竹村さんにお願いすることにしました。怖がりながらもきちんとチャレンジしたいです。

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ドキュメンタリー・ミュージカルになった理由は?

永野 湖月さんが宝塚のトップスターを経て30年、この世界で活躍し続けているのはすごいことです。また、その実人生を作品に生かしたいというオーダーがありました。僕の個人的な考えですが、ミュージカルは虚構性の高い、飛躍しやすい表現方法です。一方ドキュメンタリーは、ああわかる!そう思うよねと共感を得やすい表現方法で、ミュージカルとは対極にあります。この二つが共存し、作品として成立したら面白くなるに違いない。例えば、ふられたら悲しいし、涙を流して救われる曲を聴きたくなる。そんな入り口のミュージカルがあれば、観客の皆さんはより共感しやすいでしょう。そう考えて、このチャレンジをお願いしました。

"婚活"がテーマである理由は?

竹村 テレビ屋の悪い癖に、パンドラの函を開けたがる習性があります。そしてドキュメンタリーはいくらバリアを張っても、必ずその人となりが出てしまうんです。湖月わたるさんのドキュメンタリーとなった時に漂う恋愛ネタのタブー感。そこにテーマを置いて、今までに見たことがないものを作りたいと思いました。また、湖月さんがチャーミングお化けみたいな方なんです。穴という穴からチャーミングが溢れ出している(笑)。そして僕が知るチャーミングな女性の中で一番背が高い!チャーミング含有量が多いんですね。婚活、恋愛はそのチャーミングさを一番引き出せるテーマだと思いました。

湖月 "婚活"がテーマだと聞いて、最初は戸惑いました。でも竹村さんが構成したテレビ番組『山田孝之の東京都北区赤羽』で、山田さんがおじさんに叱られるシーンがあって、本当に感きわまるというか、彼自身の葛藤が見えたんですね。あの映像を見て胸が熱くなり、涙が溢れて...。あの作品を手がけた竹村さんが、今の私に興味を持っていただけたことが嬉しかったですし、私を題材に何を引き出してくださるのか。また永野さんが演出した『ツクリバナシ』を映像で拝見したら、目から見える出来事だけでなく、目に見えない心の葛藤や戦い、喜びがダイレクトに伝わってきました。その永野さんが「DDD青山クロスシアターという約200席の密な空間で、嘘の芝居はバレてしまう。本当に心が動くものを」と。その上、女優として挑戦、進化したい私にとって勇気をもられる、お客様にもこれからの私をお見せできる作品になると、確信を持って話してくださいました。そこでお二人の才能に身を委ねて、まっさらな気持ちで作品に飛び込もうと決心しました。

竹村さんの作品は、虚構をあたかも現実のように見せる点が魅力のひとつだと思います。今回は、フェイクと現実がどんな割合で進むのでしょうか。

竹村 それはお楽しみとしかいえないですね。というか、全部本当です!湖月さんは今、絶賛婚活中です。実際、撮影が進行中で、それが実る可能性も。

湖月 私、ずっと仕事に夢中でやってきて、本当に不器用なんです。まさか恋愛の可能性のある公演と出会えるとは!もしかしたら素敵なゴールが待っているかもしれません。私が一番、ハラハラドキドキです。

ミュージカルマニアの永野さんは、湖月さんをこの作品でどう引き立たせたい、料理したいと思っていますか。

永野 僕は『ベルサイユのばら45』を拝見していて、湖月さんは直接お話をしたらチャーミングな方なのですが、ベルばらでは超カッコいいんです!これって面白いなと思って。あれほどチャーミングな人が、舞台に立つと愛を叫びながら死ねる。それを見ているお客さんも、ハラハラと涙を流しているわけです。僕はミュージカルを始めた頃に宝塚を見て、お客さんの熱気に圧倒されて、そんな情熱を生むものは僕にあったかなあ?と考えたことがあって。ドキュメンタリーとミュージカルはいわば2次元と3次元。湖月さんが培ってきた舞台上のかっこよさと、素のめちゃチャーミングで可愛らしいさやそこに賭けよう!と思わせる二面性をドキュメンタリーとして、ミュージカルとして描くことにチャレンジしたいです。

宝塚バウホールで公演することへの思いをお聞かせください。

湖月 宝塚バウホールには退団後、初めて立ちます。大劇場の一画にある劇場で、ふるさとに帰る気持ちです。30周年記念公演を湖月わたるが産声をあげた場所で上演できるのですから、ただただ感謝の気持ちを込めてお届けしたいです。チャレンジする姿を街の皆様にお届けしたいです。

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VOL.1の音楽はどのような形になりますか?

永野 現在、全曲、オリジナルで製作中です。湖月さんがチャレンジする紆余曲折にできるだけハマる音楽にしたい。ものすごくエンタメに寄せるというよりは、心情に寄り添う叙情的な音楽を作りたいと話しています。ジャンルに関しては、クラシカルな曲からポップなものまで、アップテンポなものから心情に寄り添うしっとりとしたバラードまで、幅広く取り入れたいです。

VOL.1の共演者には、宝塚から縁が深い朝海ひかるさん、初共演となる廣瀬友祐さん、迫田孝也さんなど。楽しみなキャスト陣です。

湖月 朝海さんは『ベルサイユのばら45』でも"ワタコムコンビ"と呼んでいただきました。今回は私の相談相手だったり、背中を押してくださる役どころ。

永野 基本、お二人の実生活での関係性がそのまま舞台に上がると思います。

湖月 新たな二人の絆をお見せできることでしょう。私たちの名コンビぶりを楽しみにしていただきたいですね。廣瀬さんは...。

永野 これこそお楽しみに!です(笑)。こうなったらという願いはあるけど、進行の様子でどうなるか。

湖月 私の頑張り次第ということですね。廣瀬さんはミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役が印象的。大胆な情熱の中に繊細さが漂い、背が高くて素敵な方です。迫田さんは三谷幸喜さんの作品によく出ていらっしゃいますね。

竹村 僕は三谷作品が大好きでよく見ているのですが、迫田さんは達者な方。

湖月 インタビューを拝見したら、人間的にもとても温かい雰囲気が伝わってきて、助けていただこうと思います。 

VOL.2『Song&Dance』では30年間の懐かしい歌や踊りが繰り広げられるわけですね。

湖月 はい。30年のうち18 年間は宝塚で育てていただいたので、宝塚時代の曲も踊りたいと思っています。そして『DANCE LEGEND』で踊ったラスタ・トーマスさん振付のタンゴやフラメンコをはじめ、退団後に出会った色々な役や歌も。今、構成を考えている最中ですが、色々なダンスにチャレンジしたいです。もちろん、今の私の歌とダンスもお見せしたいですし、スペシャルゲストをお呼びしたいと考えています。お楽しみに!

【公演情報】

DDD青山クロスシアター (東京都)
2019/7/5(金) ~ 2019/7/15(月・祝)

宝塚バウホール (兵庫県)
2019/7/19(金) ~ 2019/7/21(日)

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<おまけ>最後にビジュアル撮影の感想を聞いてみました!

湖月 私が雨女ということもあり、夜に雨が降る中での撮影となりました。ポーズをとるというより、物語の中に自分がいるイメージです。使われているビジュアルは道端に立った写真ですが、雨降る公園に佇んだりもしました。そんな暗い公園での撮影は初めての経験でした。

その時に、「雨って狙っても撮れないよね」という話になって。私は雨に濡れることが結構好きなんです。『雨に唄えば』も大好き(笑)。大人になると、傘をささずに雨の中を歩くことってなかなかないでしょ?雨に濡れながら佇んでいると、自分の心と向き合える気がしました。今回。自分の心をさらけ出す作品ですから、それに合う良い写真が撮れたと思います。

ビジュアル撮影の様子はこちらです!

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文:三浦真紀 撮影:南方篤

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野田秀樹が作・演出を務め、2017年8月に歌舞伎座で上演された歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』がシネマ歌舞伎として4月5日より全国公開された。

公開後、ほどなくして東銀座の東劇を訪ねた。

客席は年配の女性を中心に比較的埋まっている。

若い男女や男性の姿も見られ、客層は広い印象だ。

 

 

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本作はもともとは現代劇だ。

坂口安吾の小説『桜の森の満開の下』と『夜長姫と耳男』を下敷きに野田秀樹が書き下ろし、1989年、当時野田が率いていた劇団夢の遊眠社の第37回公演として『贋作 桜の森の満開の下』という題で初演された。

その後、1992年に同劇団が再演、2001年にキャストを一新して新国立劇場で再演、昨年2018年にはNODA・MAP第22回公演として野田が芸術監督を務める東京芸術劇場のほか、パリ国立シャイヨー劇場でも上演されるなど、野田作品の中でも屈指の人気作品だ。

その『桜の森~』をいつか歌舞伎にしようと野田と話をしていたのが十八世中村勘三郎。
勘三郎と野田は1955年生まれの同い年だったこともあり、ふたりが30代のころに出会ってからすっかり意気投合。

野田作品を歌舞伎として上演したいと考えていた勘三郎(当時勘九郎)からの依頼で、野田が初めて歌舞伎の台本を書き下ろしたのが2001年8月に上演した『野田版 研辰の討たれ』だ。

この時の思い出を野田はこう語っている。

 

「勘三郎と私は、突然怖くなった。

浮かれてこの芝居を作ってしまったけれど、本当に大丈夫か?

四十代半ばだ った私たちが突然半分涙目になるほど、大きな犯罪をやってしまった共犯者の気持ちになった。

初日の舞台が終わっ た。

ありえないことが起こった。

かつて歌舞伎座でおこったことのないスタンディングオベイションが起こったのだ。

その時 の興奮を、私たちは今でも忘れない」

(シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』プログラムより一部抜粋)

  

 

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