2020年、帝国劇場に4年ぶりに登場する人気ミュージカル『ミス・サイゴン』。1992年の日本初演から現在間で、通算上演回数1463回を重ねるヒット作です。
舞台はベトナム戦争末期のサイゴン。エンジニアの経営するキャバレーで知り合ったベトナム人少女キムと米兵クリスは、愛し合うようになります。しかしサイゴン陥落により、二人は別れなければならないことに......。戦争によって翻弄される二人の愛と残酷な運命。
そのキム役に、オーディションを経て新たな3名が決定しました!高畑充希、大原櫻子、屋比久知奈。そして、キム役3度目となる昆夏美の4名が演じます。初演からただ一人出演し続け、エンジニア役を演じてきた市村正親とともに、上演に向けてお話を伺いました。
----キム役4人の顔ぶれをご覧になって、いかがですか?
市村「ビックリしたのは、この2人(昆、高畑)は僕が初めて『ミス・サイゴン』の舞台に立った時に産まれて、こちらの2人(大原、屋比久)はまだ産まれてなかった!稽古ではこの4人と真っ向勝負できるので、新鮮な出会いは刺激です。変なところは見せられないし、こっちも本気でやる」
----昆さんは3度目のキム役ですね。
昆「キム役は雲の上の存在だったので、最初に決まった時は光栄だし嬉しいけれど不安の方が大きかったんです。それは今もまったく変わらない。初出演のお3方と同じ気持ちでドキドキしながらやることになると思います」
----3人は『ミス・サイゴン』初出演です。いかがですか?
高畑「ミュージカルに憧れていた女の子にとって、キムって特別な役。やるなら27歳の今がラストチャンスじゃないかとオーディションを受けました。ミュージカルから離れていた時間は長いけど、ミュージカル愛はずっと心の中で燃えていたので......でも、いざ決まるとドキドキしています。同じ役が4人もいるのも、相手役がいっぱいいるのも、帝国劇場も、初めてづくしなので」
大原「ずっと憧れていた作品でした。1年半前にニューヨークで『ミス・サイゴン』を観た時に、初演のキム役だったレア・サロンガさんに偶然お会いしたんです!通訳してもらいながら「いつか『ミス・サイゴン』をやりたいです!」と伝えて帰国した後にオーディションの話をいただいたので、いろんな奇跡が重なりました」
屋比久「私もレア・サロンガさんの歌うキムの『命をあげよう』が好きで、3年前の『集まれ!ミュージカルののど自慢』で歌ったんです。それがきっかけで、今、舞台のお仕事ができるようになった......私の人生が変わった曲です。またキムの住むベトナムは、私の住む沖縄と通じるものがある。戦争の現場だし、実際に沖縄の米軍基地からこのベトナムに戦闘機が飛んでいました。いつか機会があったらやりたいと夢見ていたので、今の私だからできるキムを精一杯やろうと思っています」
----キムのイメージは?
昆「キムは両親を戦争で亡くして、壮絶な人生を歩みます。でも、当時はキムみたいな女性はたくさんいたはず。歴代のキムを演じた先輩方も敬意を払って演じているのを感じます」
大原「稽古に入ってみないとわからないけど、先日のミュージカル(『メタル・マクベス』)で同じ役を違う年代の人が演じて、同じ役なのに全然違う女性像になったんです。たぶん今回も4人のキムそれぞれ全然違う色が産まれるんじゃないかな」
----2020年、再び『ミス・サイゴン』が上演されることについては?
市村「オリンピックと一緒で、4年おきに上演されています。来年は東京オリンピックもあるし、同じ年にできるなんて、令和の奇跡ですよ!平成の時代は日本の地では戦争がなかったけれど、世界のどこかでは子どもや罪のない人が酷い事にあっています。こんな悲劇のないことを祈りつつ、上演し続けていくのかな」
----キム役のみなさんは、初演から出演されている市村さんとの共演についてはいかがですか?
市村「まだいるんだーなんて言わないでね(笑)」
高畑「いえ、またやってくださって良かったです!『スウィーニー・トッド』で市村さんの娘役を演じて以来のミュージカルなので、ご一緒できて安心です」
昆「前回の『ミス・サイゴン』出演がファイナルだと仰っていましたけど、誰よりもエネルギッシュで、ファイナルじゃない気はしていました。約30年も同じ役をやるという並大抵ではないことをしていて、笑顔で明るく場を和ませてくれる市村さんが『ミス・サイゴン』を引っ張ってくれているのを感じます」
大原「私は正直、今日お会いするまで緊張していて......でも楽屋にご挨拶に伺った時にハグをしてくださって、それが温かくて、安心しました!初演からずっと演じられているのはそれこそ、令和の奇跡」
市村「あはははは」
大原「一緒に奇跡を起こしたい」
屋比久「今日も誰よりもエネルギッシュなので、負けないように、でもゆだねつつ、精一杯ついていきます!」
市村「よしっ。厳しい作品ですけど、みんなで作りあげていこう。『ミス・サイゴン』の世界を苦労しながら楽しんで、キムとして生きてほしい!」
----市村さん、開幕にむけて締めの言葉をおねがいします!
市村「初演から28年出演していますが、劇団四季を卒業して最初に受けたオーディションが『ミス・サイゴン』。その時の気持ちは今でも鮮明に残っています。今回、新しいキム、ジョン、クリスが産まれるので、初心を忘れないでゼロから創りたい。「良い作品だな。考えなくちゃいけないな」と思ってもらえるように、4人のキム達と作品を創っていきたいですね、オリンピック演技種目のミュージカル部門『ミス・サイゴン』強化隊長として!」
一同「(笑)」
キム役4人はそれぞれ雰囲気の異なるアオザイで登場し、華やかな雰囲気。しかし緊張しており少し硬い表情で、それをほぐすように市村正親さんが冗談をまじえながら場を明るくしてくれます。4人も丁寧に言葉を選びながら、役について語る時は熱が入って興奮ぎみ!念願の『ミス・サイゴン』にたいする敬意と情熱がたっぷりと感じられ、舞台への期待がこちらに伝わってきます。新たなキャストで送る2020年版『ミス・サイゴン』への楽しみが膨らんだインタビューでした。
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取材・文:河野桃子