平間壮一主演のColoring Musical『Indigo Tomato』 の再演が現在、いわき公演を皮切りに全国で上演中です。
昨年初演され、好評を博した小林香 作・演出のオリジナルミュージカル。
開幕レポートも先日お届けしていますが、独自取材の公演レポートも掲載します!
物語は自閉症スペクトラムなどの障害がある一方で、数学や記憶に突出した才能を持つサヴァン症候群の青年タカシが主人公。
その才能に目をつけたテレビマンにクイズ番組への出演を誘われたことをきっかけに、タカシが一歩踏み出し、また彼を取り巻く人々にも少しの変化が生まれていくさまを、優しく描いていく作品です。
革命や戦いといったドラマチックな出来事はおこりませんが、日常にあるありふれたものが持つきらめきに改めて気付かせてくれるような、そんな素敵なミュージカル。
たった5人のキャストが存分にその魅力を発揮し、オリジナルの美しい楽曲(特に中盤の『青い星座』は名曲!)もとても印象的です。
主人公タカシ=平間壮一さん は、初演時もその熱演が絶賛されていましたが、今回はさらに自然に、タカシ君が"そこ"にいます。
タカシは自閉症スペクトラムで、毎日きまった行動を繰り返すことに安心をする。突発的なことが苦手。そして数学の天才、共感覚の持ち主。
自分の世界に閉じこもりがちだった彼ですが、家族を思う気持ちから、一歩社会に踏み出すことを決意します。
好きなものは、トマトジュース。
どうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうも。
ご無沙汰してます、ゴジゲンの松居です。
元気にしてますか?
風邪を引いてませんか?
僕はと言えば体がもうバッキバキに凝っています。サウナでごまかしても2日と持ちません。偏頭痛が友達です。
今年頭、舞台「みみばしる」に来てもらえた方ありがとうございました。
さて。
なんでここに書いてるかというと。
そうですよ。
どうも、と16回書いたのはそういうことでしょ。
andymoriの16がいい曲だと伝えたいわけではありません、それは常識です!
そう、ゴジゲン第16回公演の稽古が始まったからです!
ポポリンピックというタイトルです!
めちゃくちゃ覚えやすくて面白そうなタイトル!
オリンピックとパラリンピックの狭間、の感じで、選ばれなかった男の人生譚。
モテなさそうな奴らで一生懸命作っています。
なかなかやっぱりどうして1場が難しいです。
というか本が難しい。
今まででいちばん苦戦してるかもしれない。
仕掛けがないから。物語しかないから。
物語しかないんだよな。
さて。
見に来たくなるような稽古場の写真をあげようと思いましたが、全力でやりすぎてる故に写真は撮ってませんでした。
代わりに、この間、劇団員全員で頑張った写真。(抜けにプレステージの城築が映ってるのは、僕や目次のサークルの後輩だから)
※いつもゴジゲンの制作を手伝ってくれる後輩の結婚式で余興を頼まれました。こういうことを頑張る劇団でありたいと、本公演よりも一生懸命コントを作りました。くれなずめ、とは打って変わってウケまくりました。後輩が披露宴でも泣いてないのに泣いていて、僕らは嬉しくなりました。
※今回唯一の稽古場写真がこれでした。稽古中はゴジゲンウェブサイトでもブログを毎日更新してるのですが、僕はいつも「げきぴあがあるから」という大義名分で免れています。
今回は木村、という客演を迎えてまして、ざっくり言うと、演劇界のライアン・ゴズリングです。ララランド野郎がやってきます!
そんなわけで、いま僕たちは劇を作っています。
体は確実に衰えて、確実に上が詰まっていて、確実に下が売れてきている。
時間は残酷にも沢山の思い出たちを連れてきて、体は重たくなるばかり。その重たさを武器に変えるんだ!(ずっとスベってます)
それでも僕らは僕らにしかできない、こんな時代だからこそ、笑えてしまうような物語を作りたいなと思っています。
これからげきぴあ、ちょくちょく更新していきます。
ポポリンピック、劇場に遊びに来てください!
以下、公演情報!
今回は4都市ツアー!赤字爆発です!
ゴジゲン第16回公演「ポポリンピック」
福岡:2019年12月21日(土)~22日(日) イムズホール
東京:2020年1月3日(金)~21日(火) こまばアゴラ劇場
札幌:2020年1月25日(土)~27日(月) 扇谷記念スタジオ シアターZOO
京都:2020年2月8日(土)~9日(日) THEATRE E9 KYOTO
作・演出:松居大悟
出演:目次立樹 奥村徹也 東迎昂史郎 松居大悟 本折最強さとし 善雄善雄 木村圭介(劇団献身)
お正月割引や学割もあります!
チケットはこちらから!
また会おう!
松居
小林香が作・演出を手掛け、昨年誕生したColoring Musical『Indigo Tomato』 の再演が現在、いわき公演を皮切りに全国で上演中です。出演は平間壮一、長江崚行、大山真志・川久保拓司(Wキャスト)、安藤聖、剣幸・彩吹真央(Wキャスト)。
物語は自閉症スペクトラムなどの障害がある一方で、数学や記憶に突出した才能を持つサヴァン症候群の青年タカシが、弟マモルや、出会った人々との関りあいのなかで少しずつ自分の殻を破っていく...というもの。タカシだけでなく、彼を取り巻く人々にもあたたかな変化が表れてくるさまを、繊細かつ優しい筆致で描いています。
物語良し、キャスト良し、演出良し、音楽良しの珠玉のオリジナルミュージカルとして好評を博し、約1年半の短い期間で再演を決めた本作を生み出した小林香さんと、小林作品の常連であり、初演に引続き再演にも出演する彩吹真央さんに作品の魅力を伺ってきました!
彩吹さんが演じるのは、主人公タカシに関る"女性たち"。5役を早替わりもアリで演じています。
◆ 小林香&彩吹真央 INTERVIEW ◆
―― 『Indigo Tomato』は昨年初演、早くも今年再演です。初演時に拝見した『Indigo Tomato』は小林さんらしいカラーがありつつ、"新しい小林香" という印象を受けたんです。小林さんがどんな思いでこの作品を作ったのかということをまずお伺いできますか。
彩吹「作ったのは不惑の年ですか?」
小林「あぁ、そうですね、書いたのは。でも40歳になって何か心境の変化があったというより、自分が仕事を始めて20年近く経って、色々なことがひと巡りし、"作りたいもの" がはっきりしたのかもしれません。色々なものをやってきた中でそぎ落とされたものがあって、自分のやりたいものがくっきりした。もちろん自分に息子が産まれて...ということの影響もあると思うのですが、それより以前から自分に甥っ子が出来たりする中で、世の中の色々なニュースに触れると、やっぱり「若い人が希望を持てる世の中になっていくために、私たち大人は何が出来るんだろう」とすごく考えるんです。そういう意味では "齢" も関係あるかもしれません。今までは足し算で生きてきたんだけど、考え方が引き算にシフトしている。自分たちが色々なものをもらってきた、これからは自分が何をあげられるんだろう、というのを真面目に考えだして、それで産まれたのがこの作品なんだろうと思います」
観客もお芝居に参加する!?そんなユニークな英国発の一人芝居『エブリ・ブリリアント・シング~ありとあらゆるステキなこと~』の日本初演に、佐藤隆太が挑戦する。2020年1月の全国ツアーに向けて、先月までユタで公演をしていた同舞台を観た佐藤は「素晴らしかった!この作品の素敵さを伝えたい!」と興奮気味に語った。
「あっという間の約1時間でした。生身の人間の躍動感があって、舞台の醍醐味がすごく感じられる。味わったことのない演劇体験です。ただただ楽しくて、2回観たんですけどすぐにまたもう1回観たくなりました」
客席には、子ども、年配夫婦、学生など、幅広い顔ぶれが並ぶ。「アメリカの空港で、たまたま出会った女性が「その作品観たよ。今度また行くよ」と言っていたんです。お芝居を観慣れない方でも楽しめると思います」と終始笑顔で振り返る。
物語はひとりの人間の一生を語っていく。「内容は少し重たくもありますが、笑って肩の力が抜けもする。きゅーっと愛おしく、抱きしめたくなる作品です」
大きな特徴は、"観客も参加できる"ことだ。「参加希望の人は番号をもらいます。ユタ公演では僕も受け取って、指示されたことは"「ハンモック!」と言う"だけ。それでも番号が呼ばれるまではちょっぴりドキドキするんですが、そのお陰でより物語にのめり込むことができました。もちろん、苦手な方は参加しなくてもいい。「自分が好きなスタンスで観ていただければ。どんな姿勢の人にも楽しんでもらえるように頑張ります」と待ち遠しいようだ。
しかし、佐藤は出演が決まった当初、不安も抱えていた。「うまくお客さんを巻き込めなかったらどうしようという不安がありました。でも実際の上演を観て、こんなにも素晴らしい時間にすることができる緻密な脚本を信じてやればいいんだと思えたんです」。同行した翻訳・演出の谷賢一に「日本でも全然いけると思いますよ」とさらっと言われたことも、安心に繋がった。
しかし、ユタ公演と同じものを創りはしない。「真似てもダメ。演じる俳優の"人間力"が出る舞台なので、僕らなりの『エブリ・ブリリアント・シング』を創ります。周りの皆さんや、お客さんに支えていただいて完成する作品なので、会場の皆さんとひとつになりたいです」。そのワクワクした表情からは、作品への期待が溢れていた。佐藤隆太というひとりの人間に会いに行きたくなる舞台だ。
取材・文:河野桃子
2020年8月に日本版が初演される、ミュージカル『
売れないロッカーが名門進学校の代用教師になりすまし、小学生にバンドを組ませるアメリカの学園コメディ映画として2004年に公開され、2015年にはアンドリュー・ロイド=ウェバーのプロデュース・音楽によってブロードウェイでミュージカル化された本作。鴻上尚史が演出を手がけ、西川貴教と柿澤勇人がWキャストで主演する今回の日本版には、劇中に12人の生徒役が登場する。
担任しているクラスの子どもたちの音楽の才能に気づいた代用教師のデューイは彼らにロックを演奏させ、バンドバトルに出場する──というストーリー展開から分かるように、生徒役には楽器や歌のできる役者が求められた。現時点で判明している配役は、
①フレディ(ドラム)
②ザック(ギター)
③ローレンス(キーボード)
④ビリー(スタイリスト)
⑤メイソン(ステージエンジニア)
⑥ジェイムズ(セキュリティ)
⑦ケイティ(ベース)
⑧サマー(マネージャー)
⑨トミカ(ボーカル)
⑩マーシー(コーラス・ダンス)
⑪ショネル(コーラス・ダンス)
⑫ソフィー(コーラス・ダンス)
の12人。この日集まった応募者は、楽器演奏や歌唱の様子を収めた映像審査を事前にパスした"つわもの"揃いだ。
実技オーディションにあたったのは鴻上に加えて、音楽監督・前嶋康明、歌唱指導・山口正義、演出補・豊田めぐみの4人。2~3分の質疑応答ではひとりずつ前に呼ばれ、他の応募者が見守る中で、鴻上から「放課後の過ごし方は?」「習い事や芸歴は?」といった質問を受けていく。ユニークな発言をする参加者が多く、はじめは緊張感のあった会場も朗らかな笑い声に包まれていった。
鴻上は一問一答に終始せず、丁寧に問いかけを重ねて回答を掘り下げる。例えば真っ黒に日焼けしている男子には理由を聞いて「釣りが好き」という趣味を、シンガーソングライターの阿部真央を尊敬していると答えた女子に対してはその魅力を聞いて「歌によっていろんな声を使い分けている」と分析力を引き出し、応募者の人柄を探ろうと試行錯誤する様子がうかがえた。
ミュージカル初心者から『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』『ビリー・エリオット』『アニー』など、多彩な経歴の持ち主が集まった参加者が次に挑んだのは演技審査。『スクール・オブ・ロック』の生徒のうち、
ザック(ギター)
ビリー(スタイリスト)
サマー(マネージャー)
マーシー(コーラス)
が登場するオーディション用に鴻上が作成したオリジナルの台本がその場で配布され、4人1組になって審査に応じた。学校の創立記念日に、クラスの出し物として何を行うか話し合う──という3分ほどの短い台本には、セリフに登場人物のキャラクターがにじみ出ていた。鴻上が最初に「サマーはクラス委員のしっかり者」「気弱なビリーはためらいがちに出し物を提案する」とキャラクターの持ち味を紹介すると、参加者はすぐに吸収して自身の演技に取り入れる。
台本を2回繰り返しさせる中で、鴻上は1回目のあとに必ず演出をつけた。「マーシーは"楽しけりゃいい"ってタイプだから、もっと無責任でいいよ」と具体的な指示を飛ばす一方で、「のん気なザックは他人の顔色を見るように提案するかな?」と参加者に自身の演技を考えさせるひと幕も。いずれの組も演出を受けて創意工夫した跡が見受けられ、2回目はぐっと魅力的に映った。
審査員は遅れて到着した応募者へのフォローも欠かさない。この日の全審査を終え、身体測定に入った参加者が退場するタイミングで歌唱審査を再開した。課題となっているのは2曲。ピアノの伴奏に合わせ、対象者が「アメイジング・グレイス」を高らかに歌い上げる。横についていた歌唱指導の山口が「もっと力強く!」とアドバイスすると、会場に見事な歌声が響いた。
最終的にどのようなキャストが選ばれ、
取材・文:岡山朋代
===
2020年8月下旬~9月下旬
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
2020年9月下旬~10月上旬
新歌舞伎座
[音楽]アンドリュー・ロイド=ウェバー
[脚本]ジュリアン・フェロウズ
[歌詞]グレン・スレイター
[日本版演出]鴻上尚史
[出演]西川貴教、柿澤勇人、濱田めぐみ 梶裕貴、相葉裕樹、はいだしょうこ、秋元才加
阿部裕、栗山絵美、多岐川装子、俵和也、丹宗立峰、
石黒祐輔、石原颯也、市川裕貴、歌田雛芽、大前優樹、岡田奈々、
小鷹狩八、近藤匠真、後藤いくり、陣慶昭、竹内彰良、鶴岡蘭楠、
陽唄、洞桃香、松岡芽依、松本三和、モーガンミディー、
累計発行部数770万部(紙・電子含む)の大人気コミックが原作の舞台『暁のヨナ~烽火の祈り編~』が11月16日(金)開幕した。今作は、昨年上演された舞台『暁のヨナ~緋色の宿命編~』の続編。W主演をつとめるのは、前作に引き続き、女優として舞台、ドラマ、そしてバラエティでも活躍する生駒里奈と、ダンスロックバンドDISH//のメンバーとして活躍しながら様々な舞台に出演する矢部昌暉。さらに前作に引き続き、陳内将が出演し、新たなキャストとして、M!LKから塩﨑太智、曽野舜太、山中柔太朗の3人と、堀海登、熊谷魁人という、フレッシュなキャストが色を添える。
ゲネプロの直前に行われた会見で生駒は、「ヨナが様々な人たちとの出会いを通じてさらに成長していくところを見てもらいたい」と話し、矢部は「前作はヨナを守るために戦うシーンが多かったんですが、今回は戦いだけでなく、ハクの人間らしい部分が見られると思います」とコメント。陳内は、「スウォンは、僕の持っていないものを持っている役柄なので、陳内を消すのが大変でした」と役作りの苦悩を告白。さらに、M!LKの3人がそれぞれどれだけ緊張しているかを話すなど初々しさを見せたあと、熊谷が「今日まで座組一丸となって頑張ってきたので、初日はご褒美だと思っています。みんなと楽しみながらいい初日を迎えられたら」と話すと、他のキャストから「いいコメント!」と絶賛されていた。
今作は、謀反により父王を初恋の相手であるスウォン(陳内)に殺された王女・ヨナ(生駒)は、専属護衛のハク(矢部)とともに城を追われるが、その途中に神官に仕えるユンと出会い、伝説の四龍といわれる仲間が集結し、国を守る決意をする物語。
重税による食糧不足に苦しめられている火の部族の民と出会い、奮闘する中で、本当の正義とは何なのか、そして、ヨナとハクの繊細な想いなどが描かれ、熱い物語とともに、涙も誘う展開となっている。ヨナとハクのお互いを想いやる気持ちや、四龍やユンなど旅の一行のコミカルな交流など、前作よりもより暖かみや笑いなどを楽しむことができる。なかでも、ヨナが祭りで披露することになった美しい剣の舞や、全員が激しく剣を交えるアクションシーンなど、見どころはたくさん。見終えた後、さらなる冒険に立ち向かっていく彼らの姿をまた見たくなることだろう。
舞台『暁のヨナ~烽火の祈り編~』は11月23日(土)まで、EXシアター六本木(東京・六本木)にて上演される。チケットぴあでは各公演の前日まで当日引換券を発売中。
「Very very very,Exciting!」
12月13日(金)、日本初上陸が決まったミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」。その主演トニー役を射止めたイギリス人俳優のリチャード・ウィンザーは、オファーの瞬間の興奮を、リアルタイムさながらのテンションでこう明かした。
甘いマスクと悩ましい肉体美。先日、銀座のクラブで行われたプレスイベントでは、全身から汗をほとばしらせ、熱いディスコダンスに酔いしれた彼。会議室で行われているインタビューでさえも、あふれ出す情熱はそのままだ。
早速、サタデー・ナイト・フィーバーに向けた胸の内を明かしてもらった。
「今回のオファーは、少年時代からの夢の実現でもありました。4年間出演を続けたテレビドラマが終了したタイミングで、今回のプロデューサーからオファーがあったのです。彼はドラマのファンだと言ってくれました。どうやら、その時は僕がダンサーであることを知らなかったようで、知らせると『それならぜひトニー役をお願いしたい』と申し込まれたのです」
その時の興奮を表したのが冒頭の雄叫びだ。リチャードといえば、日本でも話題になったマシュー・ボーンの舞台「白鳥の湖」で主演を務めたあのセクシーな踊り子。イメージはかなり違っているが、魅惑のダンスをもう一度見たいと切望するファンは数多い。
しかし、彼はせっかくのオファーにも、すぐには返事をしなかったという。
「その理由は、僕自身が長年の「サタデー・ナイト・フィーバー」の大ファンだったから。映画にも夢中でしたし、何より14歳の頃にウエストエンドで上演されたミュージカルを観に行って以来、虜だったんです。だから、今回の公演も原作に忠実でないと受けられないと答えました」
プロデューサーから、作品の内容を聞いて「それならば」と握手を交わしたリチャード。そこからが大変だったという。
「まず映像の撮影があったのですが、なんと準備期間がたったの3週間。しかも、それまでディスコダンスを踊った経験といえば、酔っ払って真似事をしただけで、もうひどいものだったんです。でも、真剣な話、ディスコダンスは、ダンサーしても、そして役者としても新しい挑戦だと直感しました。その後、1年間に3回のUKツアーを行ったのですが、その度にブラッシュアップを重ねて、ダンスはもちろん、物語もどんどん素晴らしいものになっていきました」
憧れの役を手にして、新たな挑戦に意気揚々と踏み出したリチャード。なぜ、そこまでトニーに惹かれているのか理由を尋ねた。
「彼の人間性に共感ができたから。彼は、人との接し方が良くも悪くも不器用。彼を尊敬して愛している人たちに対して上手く接することができなくて、人生の向かうべき方向を見失ってしまいます。ですが、孤独、悩み、葛藤をダンスで表現し、またダンスを通じて克服していくんです。その姿を見て、やっぱり自分の夢を追いかけることは大切で、真の幸せはそういうところで得られるんだと、少年時代に感じたのです。役者の仕事というのは、自分に鏡を向ける行為と似ています。今回、トニーを演じるにあたって、自分の中にいるトニーをどれだけ投影できるのか、それを大事にしています」
さて、バレエダンサーでもある彼はディスコダンスをどう受け取っているのだろうか?
「スタイリッシュでありながら、クール! みんなを夢中にさせる素晴らしいダンスです。先日、イベントで初めて日本のファンと一緒に踊って驚いたんです。日本人はもっとシャイなんだと思っていたのに、女性の黄色い声が飛び交って、みんな情熱的で。本当に楽しかったし、いいアドレナリンが流れました! 今回の公演ではカーテンコールで観客の皆さんと踊る機会があるのですが、今からとても楽しみです。皆さんの目の輝きがパッと宿る瞬間、それをまた見てみたい。役者にとって何よりのエネルギーになりますから」
そんなリチャードに、お気に入りのシーンを聞いてみた。
「う〜ん、迷うなぁ。まず、家族のやり取りのシーンが好きですね。人生の物語の中でエンジンの部分でもあると思うから。そして、イモタリティという曲があるのですが、そこでトニーが人生に迷った孤独なダンサーとして、そして道を失った一人の男として、感情を表現するシーン、そこはとても好きですね。映画では地下鉄のシーンに当たります。ソロで踊りますので、ぜひ注目してください」
最後に日本公演に向けた意気込みを聞かせてくれた。
「今回のミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』の魅力は、舞台の隅々まで70年代を彷彿とさせる仕掛けにもあります。衣装の中には実際に70年代に作られたビンテージもありますし、70年代のディスコミュージックファンにおなじみのビー・ジーズ役の3人も登場して音楽で盛り上げます。セットも当時のディスコを再現しています。ダンス、音楽、ファッション、インテリア、あらゆる楽しみがありますので、本当にたくさんの方に楽しんでもらえると思っています。もしも今、心配事、悩み、暗い気持ちがあったら、全て玄関に置き去りにしてぜひ劇場にお越しください。きっと、皆さんを気持ちよくして差し上げますし、必ず気持ちよくなります! どうぞ楽しみにしてくださいね!」
インタビューを終え、最後に熱い握手を交わしてくれた彼。その指先、瞳の輝きからも今回の日本公演への期待が現れていた。
ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」は12月13日(金)〜29日(日)、全22回公演。場所は東京国際フォーラム・ホールCにて。チケットは発売中。
(取材・写真・文=浅水美保)
根本宗子が作・演出を手掛ける劇団、月刊「根本宗子」は今年で旗揚げ10周年を迎えたが、そんなアニヴァーサリー・イヤーのラストを飾るのは、清 竜人が劇中歌の作詞・作曲を手掛ける『今、出来る、精一杯。』。2013年と2015年にも上演された劇団の代表作だが、ダンサーやミュージシャンも加わった音楽劇となる今作は、根本曰く「リメイクだけどほぼ新作だと思ってやっていますね」とのこと。清は俳優としても舞台に参加し、同棲している恋人女性に依存している男性・安藤を演じる。
「清さんは昔からファンでライヴにも行っていたので、一方的に知っていたんです。存在自体のファンなので、どうせお願いするなら作詞・作曲だけじゃなく、俳優としても出てもらいたかった。それを断られたらこの企画自体なくなっていました。事務所を通してオファーをしたんですけど、直筆でお手紙を書いてお願いしました」
2015年の再演からキャストは一新されており、ベテランから若手まで幅広い俳優が揃っているのも特徴だ。
「初めてご一緒する俳優さんやミュージカルのイメージがあまりない俳優さんとやろうと思っていました。坂井真紀さんや池津祥子さんのような、昔から自分がずっと見ていた方たちから、今井隆文さんや内田慈さんみたいな舞台の土台をしっかり作ってくれる方、未知の才能を秘めている若い方まで、自分の中でこれぐらいのバランスで存在していて欲しいなと思っていることが、明確にキャスティングに出ているかもしれません。語弊を恐れずに言うと、手堅い人だけでやることにあまり興味がなくて。竜人さんが安藤をやることも含め、見る人がどんな舞台になるか予想がつかないキャスティングにしようというのはありました」
舞台初経験という清 竜人だが、彼は俳優としても魅力的な存在だと根本は言う。
「アーティストとしての清 竜人像が既に確立されている人なので、普段のそのまんまで舞台にいてくださいって言っています。でも竜人さんは、これは何を表現しているシーンなのかとか、誰に対して何を思っているかっていうことにすごく敏感な人なので、素晴らしいバランスです。あと、竜人さんがやる安藤は、台詞を減らして、歌っちゃってもいいんじゃないかなって思っています。ちなみに、稽古場にピアノがあるので、短い曲だったらシーンを何度か見た竜人さんがその場で曲を弾いてみて、"あ、それが近いかも!"みたいなことを言いながら、その場で作っていくこともあります。音楽家が現場にいるっていうことの贅沢さが半端ないですね」
公演のチラシは2種類あり、根本と竜人、それぞれが写っているデザインだ。
「竜人さんが主演っていうことをより広く知ってほしかったので、2パターン作りました。音楽シーンに向けてチラシを配る時は、竜人さんのチラシを持って行ったほうが確実にいいですから(笑)。私は普段演劇を観ない人にこそ観にきてほしい、間口を広げたいっていうのが常にあるので、今回も様々な意味で、新しいお客さんが演劇に興味を持つきっかけの作品にしたいなと思っています。本当に竜人さん、楽曲もお芝居も素晴らしいので。」
平間壮一が主演するミュージカル『Indigo Tomato』 のプレビュー公演が11月10日、福岡・いわきアリオス小劇場で開幕した。昨年5月に初演され、観た人の心にあたたかな気持ちが広がると評判になった作品が、好評を得て早くも再登場。新キャストも加わり、さらに優しさと繊細さに磨きがかかった新鮮な『Indigo Tomato』の世界になっている。作・演出は小林香。
物語は、自閉症スペクトラムなどの障害がある一方で、数学や記憶に突出した才能を持つサヴァン症候群の青年タカシが主人公。その才能に目を付けたテレビマンによってクイズ番組への出演を誘われた彼が、さまざまな人との出会いによって自分の殻を破っていく過程を、繊細な筆致で描いていく。
タカシを演じるのは、初演時も絶賛された平間壮一。自閉症スペクトラム障害を持つ青年を真摯に、丁寧に演じる。さらに"数字に強い"という彼の個性を表現する必要もあり、実際、円周率を200桁近く暗誦するシーンもある。それらの挑戦も、並大抵の努力では成し得なかっただろう。だが何よりも素敵なのは、数字との格闘より、タカシの持つピュアさを自然に出しているところ。しかも喜びや嬉しさといった感情をあまり表に出さないタカシの心情を、表情ではなく全身で表しているのが素晴らしい。平間にとってもタカシ役は当たり役になったに違いない。
タカシを支える弟マモルには長江崚行が新たに加わった。彼もまたまっすぐ役と向き合い、気持ちの良い印象を残す。苦労を重ね、時に絶望もするタカシとマモルの兄弟だが、平間と長江が嫌味なく素直に演じていることで、作品全体に爽やかな風が吹く。彼らを取り巻く人々もカラフルだ。タカシをテレビの世界へ誘うユーゴを演じる川久保拓司(大山真志とのWキャスト)はタカシを利用しようとする野心と、彼自身自分の居場所に違和感を持っている屈折した感情をうまくブレンド。タカシとマモルの行きつけの公園のカフェ店員あやを演じる安藤聖の朗らかさも作品を象徴するかのよう。さらに剣幸(彩吹真央とのWキャスト)が演じ分ける5つの役は、それぞれのキャラクターを通して世間の様々な顔を表現し、タカシに深い影響を与える。5人のキャストが生き生きと息づき、出演者がわずか5人とは思えない豊かな世界を作り出した。また堀倉彰が手掛けた音楽も美しく耳に残る。作品全体を通して伝わるキラキラした輝きは、音楽の美しさが担う力も大きいだろう。
タカシにとって社会は厳しく、時には好奇の眼差しを向けられることもある。自身のことを異星人と表現し、"ふつう"になりたかったとタカシは言うが、最後には自分は"ふつう"じゃないけれどこのままでいい、と話す。本当は"ふつう"というのは人それぞれなのだ。それを自然のものとして受け入れる気持ちを一人ひとりが持つと、世界はより豊かに、美しく色づいていくのだと気付かせてくれる、珠玉のミュージカル。きっとこのミュージカルを観終わったあとあなたも、まわりの人に優しく接したいと思うはずだ。
公演はこのあと札幌、大阪、福岡、石川を経て、12月4日(水)から10日(火)まで東京グローブ座で上演される。
3部構成でおよそ10時間にもおよぶKUNIO15『グリークス』が、いよいよ11月21日(木)、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場(以下、KAAT)で幕を開けます。第1部「戦争」(11:30)、第2部「殺人」(15:00)、第3部「神々」(18:30)と、1日ですべての上演が行われる本作。10本のギリシャ悲劇を1つの壮大なストーリーに編み直し、1980年にイギリスで初演されたこの長編戯曲に挑むのは、演出家・舞台美術家でプロデュースユニットKUNIO主宰の杉原邦生さんです。最古のテキスト"Q1"バージョンで上演した『ハムレット』や、2015年読売演劇大賞上半期作品賞にノミネートされた木ノ下歌舞伎『三人吉三』、過疎の村の人間模様を浮き彫りにしたKAATプロデュース『ルーツ』など、知力体力ともに凡百の演出家なら尻込みしそうな作品に対峙してきた杉原さん。「人間と神、正義と過ち、秩序と混沌が入り乱れる一大狂宴演劇」(公式サイトより)と銘打たれた本作でも、世界観をしっかりと支える実力派役者陣と共に、その手腕をあますことなく発揮しています。11月2日(土)、東京・森下スタジオにて上演されたプレビュー公演(第3部のみ)の様子をお届けします。
その前に。予備知識なしで観ても面白いのはもちろんですが、神々と人間たちが入り乱れるこの一大長編を存分に堪能するには、やはり簡単な予備知識を頭に入れておいたほうがいいでしょう。「最も美しい女神へ」と刻まれた黄金のリンゴの持ち主は自分だと認めてもらうため、3人の女神が全知全能の神ゼウスから判定を任されたトロイアの王子パリスの前に現れます。最高位の女神ヘラは財産を、智恵の女神アテナは知恵を、そして愛の女神アプロディーテは最も美しい女ヘレネを与えると言いますが、青年パリスが選んだのはアプロディーテが差し出したヘレネ(パリスの審判)。ところがヘレネは、すでにスパルタ王メネラオスの妻でした。メネラオスとギリシャ軍総大将アガメムノンらはヘレネを奪還するため、大船団を率いてトロイアに向かいます(トロイア戦争)。本作『グリークス』は、それらの因縁から派生する物語を、さまざまな糸口を示しながら綴ってゆきます。
(上:舞台写真)京都公演より
第1部「戦争」では、ギリシャ軍総大将のアガメムノンが大船団に風を吹かせるため、長女イピゲネイアを生贄に。妻クリュタイムネストラと末っ子のオレステスが帰国する中、アガメムノンはメネラオスと共にトロイア軍と戦い、あの「トロイの木馬」作戦によって勝利します。第2部「殺人」は、トロイアの女王へカペが、息子を殺したトロキア王ポリュメストルを殺害。へカペ自身も呪いで死んでしまいます。10年後、ギリシャに凱旋したアガメムノンは、トロイアの王女カッサンドラを自分の奴隷(情婦)にしており、妻のクリュタイムネストラに殺されます。そんな彼女も、次女エレクトラと末っ子のオレステスに父のかたきとして殺されてしまうのです。
そしていよいよ、この日観劇した第3部。舞台セットはシルバーグレーの色調で整えられた木目風の床と、大きな松の絵。能や狂言の内容・様式を借りた歌舞伎の舞踊劇「松羽目物」で使われるセットです。天井近くにぶらさがる「GODS」の文字は、第3部のタイトルでもあり、人間の頭上に常に"いる"存在でもあり。また、登場した人々の衣裳が簡素なTシャツにサンダルばきなどで驚きますが、これも「松羽目物」と同じく余分な要素をサラリと削ぎ落とすことで、物語そのものの面白さが浮かび上がる仕掛けのようです。
そこはどうやらエジプトの宮殿であるらしく、囚われの女王ヘレネ(武田暁)がひとしきり身の上話をすることで、観客を物語世界にいざないます。ただ、トロイア戦争の元凶となった絶世の美女......というよりは、女子力高めな大人女子というおもむき。やや自分に酔っているところが、不思議にチャーミングで親近感があります。そこへ海を漂流していた夫のメネラオス(田中佑弥)が偶然現れます。トロイアの武将と浮気してあちらの国にいるはずのヘレネが、実はエジプトに連れ去られていたと知ったメネラオスはショックを受けます。「ギリシャ軍からも多くの死者を出した、あの戦争はなんだったのか......」。それはいつの時代も変わらない「自分は誰に振り回されているのか/この戦争の意図はどこにあるのか、誰が知っているのか」と嘆き戸惑う民の声でもあります。
(上:舞台写真) 京都公演より
セットや衣裳は「松羽目物」でも、劇伴はピアノのクラシック曲やマイクで歌われるヒップホップなど、あくまで舞台と客席が乖離しないようにする配慮は、杉原演出ならでは。物語はさらに、ヘレネとメネラオスがギリシャに帰国した後に続きます。
母クリュタイムネストラを殺したエレクトラ(土居志央梨)とオレステス(尾尻征大)は死刑判決に怯え、今度は戦争の元凶となったヘレネを殺して死刑を覆そうと計画。ところが雷鳴が轟くと、ゼウスの息子でオリュンポス十二神のひとりアポロン(天宮良)と、殺したはずのヘレネが現れます。そのアポロンの姿というのが、歌舞伎の浅葱幕(水色と白の縦縞)のキグルミに、頭にはサクラがあしらわれた分かりやすくめでたいいでたち。神様だけに邪気のない笑顔でエレクトラたちに"大岡裁き"をくだす後ろで、ミス・ユニバースの勝者よろしくヘレネが艶然と微笑みながら無駄に行ったり来たりする様子に、客席からも思わず笑いが。
物語はその後もクライマックスに向けて続きますが、緩急自在に展開するストーリーに、約2時間45分(休憩含む)の長丁場もまったく飽きさせません。
この日行われたアフタートークでは、杉原さんと、今回のために新しく翻訳を手がけた小澤英実さんも登壇。2014年の『ハムレット』以来、常に新翻訳を行っているKUNIOですが、意外だったのはこんなにも楽しめた本作の翻訳がほぼ原作通りだということ。また、小澤さんは現代の言葉に置き換えるにあたり「"ですます調"や"女言葉"(〜だわ、などの言い回し)を極限まで減らした」と語り、杉原さんは「性差が限定されなくなったことで、演出はもちろん俳優にとっても自由度が増した」ことを喜んでいました。現代を新たな方向から照らし出してくれるのが演劇の面白さ。杉原版『グリークス』はまさに、その役割を担う舞台となっていることが感じられました。
取材・文/佐藤さくら
撮影/井上嘉和
1日通し券と各部券をそれぞれ販売中!
【公演詳細】
日程:11月21日(木)~30日(土)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
演出・美術:杉原邦生
翻訳:小澤英実
出演:天宮良 / 安藤玉恵 / 本多麻紀 / 武田暁 / 石村みか / 箱田暁史 / 田中佑弥 他