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「Very very very,Exciting!」

12月13日(金)、日本初上陸が決まったミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」。その主演トニー役を射止めたイギリス人俳優のリチャード・ウィンザーは、オファーの瞬間の興奮を、リアルタイムさながらのテンションでこう明かした。

甘いマスクと悩ましい肉体美。先日、銀座のクラブで行われたプレスイベントでは、全身から汗をほとばしらせ、熱いディスコダンスに酔いしれた彼。会議室で行われているインタビューでさえも、あふれ出す情熱はそのままだ。

早速、サタデー・ナイト・フィーバーに向けた胸の内を明かしてもらった。

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「今回のオファーは、少年時代からの夢の実現でもありました。4年間出演を続けたテレビドラマが終了したタイミングで、今回のプロデューサーからオファーがあったのです。彼はドラマのファンだと言ってくれました。どうやら、その時は僕がダンサーであることを知らなかったようで、知らせると『それならぜひトニー役をお願いしたい』と申し込まれたのです」

その時の興奮を表したのが冒頭の雄叫びだ。リチャードといえば、日本でも話題になったマシュー・ボーンの舞台「白鳥の湖」で主演を務めたあのセクシーな踊り子。イメージはかなり違っているが、魅惑のダンスをもう一度見たいと切望するファンは数多い。

しかし、彼はせっかくのオファーにも、すぐには返事をしなかったという。

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「その理由は、僕自身が長年の「サタデー・ナイト・フィーバー」の大ファンだったから。映画にも夢中でしたし、何より14歳の頃にウエストエンドで上演されたミュージカルを観に行って以来、虜だったんです。だから、今回の公演も原作に忠実でないと受けられないと答えました」

プロデューサーから、作品の内容を聞いて「それならば」と握手を交わしたリチャード。そこからが大変だったという。

「まず映像の撮影があったのですが、なんと準備期間がたったの3週間。しかも、それまでディスコダンスを踊った経験といえば、酔っ払って真似事をしただけで、もうひどいものだったんです。でも、真剣な話、ディスコダンスは、ダンサーしても、そして役者としても新しい挑戦だと直感しました。その後、1年間に3回のUKツアーを行ったのですが、その度にブラッシュアップを重ねて、ダンスはもちろん、物語もどんどん素晴らしいものになっていきました」

憧れの役を手にして、新たな挑戦に意気揚々と踏み出したリチャード。なぜ、そこまでトニーに惹かれているのか理由を尋ねた。

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「彼の人間性に共感ができたから。彼は、人との接し方が良くも悪くも不器用。彼を尊敬して愛している人たちに対して上手く接することができなくて、人生の向かうべき方向を見失ってしまいます。ですが、孤独、悩み、葛藤をダンスで表現し、またダンスを通じて克服していくんです。その姿を見て、やっぱり自分の夢を追いかけることは大切で、真の幸せはそういうところで得られるんだと、少年時代に感じたのです。役者の仕事というのは、自分に鏡を向ける行為と似ています。今回、トニーを演じるにあたって、自分の中にいるトニーをどれだけ投影できるのか、それを大事にしています」

さて、バレエダンサーでもある彼はディスコダンスをどう受け取っているのだろうか?

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「スタイリッシュでありながら、クール! みんなを夢中にさせる素晴らしいダンスです。先日、イベントで初めて日本のファンと一緒に踊って驚いたんです。日本人はもっとシャイなんだと思っていたのに、女性の黄色い声が飛び交って、みんな情熱的で。本当に楽しかったし、いいアドレナリンが流れました! 今回の公演ではカーテンコールで観客の皆さんと踊る機会があるのですが、今からとても楽しみです。皆さんの目の輝きがパッと宿る瞬間、それをまた見てみたい。役者にとって何よりのエネルギーになりますから」

そんなリチャードに、お気に入りのシーンを聞いてみた。

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「う〜ん、迷うなぁ。まず、家族のやり取りのシーンが好きですね。人生の物語の中でエンジンの部分でもあると思うから。そして、イモタリティという曲があるのですが、そこでトニーが人生に迷った孤独なダンサーとして、そして道を失った一人の男として、感情を表現するシーン、そこはとても好きですね。映画では地下鉄のシーンに当たります。ソロで踊りますので、ぜひ注目してください」

最後に日本公演に向けた意気込みを聞かせてくれた。

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「今回のミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』の魅力は、舞台の隅々まで70年代を彷彿とさせる仕掛けにもあります。衣装の中には実際に70年代に作られたビンテージもありますし、70年代のディスコミュージックファンにおなじみのビー・ジーズ役の3人も登場して音楽で盛り上げます。セットも当時のディスコを再現しています。ダンス、音楽、ファッション、インテリア、あらゆる楽しみがありますので、本当にたくさんの方に楽しんでもらえると思っています。もしも今、心配事、悩み、暗い気持ちがあったら、全て玄関に置き去りにしてぜひ劇場にお越しください。きっと、皆さんを気持ちよくして差し上げますし、必ず気持ちよくなります! どうぞ楽しみにしてくださいね!」

インタビューを終え、最後に熱い握手を交わしてくれた彼。その指先、瞳の輝きからも今回の日本公演への期待が現れていた。

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ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」は12月13日(金)〜29日(日)、全22回公演。場所は東京国際フォーラム・ホールCにて。チケットは発売中。

(取材・写真・文=浅水美保)

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 根本宗子が作・演出を手掛ける劇団、月刊「根本宗子」は今年で旗揚げ10周年を迎えたが、そんなアニヴァーサリー・イヤーのラストを飾るのは、清 竜人が劇中歌の作詞・作曲を手掛ける『今、出来る、精一杯。』。2013年と2015年にも上演された劇団の代表作だが、ダンサーやミュージシャンも加わった音楽劇となる今作は、根本曰く「リメイクだけどほぼ新作だと思ってやっていますね」とのこと。清は俳優としても舞台に参加し、同棲している恋人女性に依存している男性・安藤を演じる。

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「清さんは昔からファンでライヴにも行っていたので、一方的に知っていたんです。存在自体のファンなので、どうせお願いするなら作詞・作曲だけじゃなく、俳優としても出てもらいたかった。それを断られたらこの企画自体なくなっていました。事務所を通してオファーをしたんですけど、直筆でお手紙を書いてお願いしました」

 2015年の再演からキャストは一新されており、ベテランから若手まで幅広い俳優が揃っているのも特徴だ。

「初めてご一緒する俳優さんやミュージカルのイメージがあまりない俳優さんとやろうと思っていました。坂井真紀さんや池津祥子さんのような、昔から自分がずっと見ていた方たちから、今井隆文さんや内田慈さんみたいな舞台の土台をしっかり作ってくれる方、未知の才能を秘めている若い方まで、自分の中でこれぐらいのバランスで存在していて欲しいなと思っていることが、明確にキャスティングに出ているかもしれません。語弊を恐れずに言うと、手堅い人だけでやることにあまり興味がなくて。竜人さんが安藤をやることも含め、見る人がどんな舞台になるか予想がつかないキャスティングにしようというのはありました」

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 舞台初経験という清 竜人だが、彼は俳優としても魅力的な存在だと根本は言う。

「アーティストとしての清 竜人像が既に確立されている人なので、普段のそのまんまで舞台にいてくださいって言っています。でも竜人さんは、これは何を表現しているシーンなのかとか、誰に対して何を思っているかっていうことにすごく敏感な人なので、素晴らしいバランスです。あと、竜人さんがやる安藤は、台詞を減らして、歌っちゃってもいいんじゃないかなって思っています。ちなみに、稽古場にピアノがあるので、短い曲だったらシーンを何度か見た竜人さんがその場で曲を弾いてみて、"あ、それが近いかも!"みたいなことを言いながら、その場で作っていくこともあります。音楽家が現場にいるっていうことの贅沢さが半端ないですね」

 公演のチラシは2種類あり、根本と竜人、それぞれが写っているデザインだ。

「竜人さんが主演っていうことをより広く知ってほしかったので、2パターン作りました。音楽シーンに向けてチラシを配る時は、竜人さんのチラシを持って行ったほうが確実にいいですから(笑)。私は普段演劇を観ない人にこそ観にきてほしい、間口を広げたいっていうのが常にあるので、今回も様々な意味で、新しいお客さんが演劇に興味を持つきっかけの作品にしたいなと思っています。本当に竜人さん、楽曲もお芝居も素晴らしいので。」

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平間壮一が主演するミュージカル『Indigo Tomato』 のプレビュー公演が11月10日、福岡・いわきアリオス小劇場で開幕した。昨年5月に初演され、観た人の心にあたたかな気持ちが広がると評判になった作品が、好評を得て早くも再登場。新キャストも加わり、さらに優しさと繊細さに磨きがかかった新鮮な『Indigo Tomato』の世界になっている。作・演出は小林香
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物語は、自閉症スペクトラムなどの障害がある一方で、数学や記憶に突出した才能を持つサヴァン症候群の青年タカシが主人公。その才能に目を付けたテレビマンによってクイズ番組への出演を誘われた彼が、さまざまな人との出会いによって自分の殻を破っていく過程を、繊細な筆致で描いていく。

タカシを演じるのは、初演時も絶賛された平間壮一。自閉症スペクトラム障害を持つ青年を真摯に、丁寧に演じる。さらに"数字に強い"という彼の個性を表現する必要もあり、実際、円周率を200桁近く暗誦するシーンもある。それらの挑戦も、並大抵の努力では成し得なかっただろう。だが何よりも素敵なのは、数字との格闘より、タカシの持つピュアさを自然に出しているところ。しかも喜びや嬉しさといった感情をあまり表に出さないタカシの心情を、表情ではなく全身で表しているのが素晴らしい。平間にとってもタカシ役は当たり役になったに違いない。
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タカシを支える弟マモルには長江崚行が新たに加わった。彼もまたまっすぐ役と向き合い、気持ちの良い印象を残す。苦労を重ね、時に絶望もするタカシとマモルの兄弟だが、平間と長江が嫌味なく素直に演じていることで、作品全体に爽やかな風が吹く。彼らを取り巻く人々もカラフルだ。タカシをテレビの世界へ誘うユーゴを演じる川久保拓司大山真志とのWキャスト)はタカシを利用しようとする野心と、彼自身自分の居場所に違和感を持っている屈折した感情をうまくブレンド。タカシとマモルの行きつけの公園のカフェ店員あやを演じる安藤聖の朗らかさも作品を象徴するかのよう。さらに剣幸彩吹真央とのWキャスト)が演じ分ける5つの役は、それぞれのキャラクターを通して世間の様々な顔を表現し、タカシに深い影響を与える。5人のキャストが生き生きと息づき、出演者がわずか5人とは思えない豊かな世界を作り出した。また堀倉彰が手掛けた音楽も美しく耳に残る。作品全体を通して伝わるキラキラした輝きは、音楽の美しさが担う力も大きいだろう。
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タカシにとって社会は厳しく、時には好奇の眼差しを向けられることもある。自身のことを異星人と表現し、"ふつう"になりたかったとタカシは言うが、最後には自分は"ふつう"じゃないけれどこのままでいい、と話す。本当は"ふつう"というのは人それぞれなのだ。それを自然のものとして受け入れる気持ちを一人ひとりが持つと、世界はより豊かに、美しく色づいていくのだと気付かせてくれる、珠玉のミュージカル。きっとこのミュージカルを観終わったあとあなたも、まわりの人に優しく接したいと思うはずだ。

公演はこのあと札幌、大阪、福岡、石川を経て、12月4日(水)から10日(火)まで東京グローブ座で上演される。
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3部構成でおよそ10時間にもおよぶKUNIO15『グリークス』が、いよいよ11月21日(木)、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場(以下、KAAT)で幕を開けます。第1部「戦争」(11:30)第2部「殺人」(15:00)第3部「神々」(18:30)と、1日ですべての上演が行われる本作。10本のギリシャ悲劇を1つの壮大なストーリーに編み直し、1980年にイギリスで初演されたこの長編戯曲に挑むのは、演出家・舞台美術家でプロデュースユニットKUNIO主宰の杉原邦生さんです。最古のテキスト"Q1"バージョンで上演した『ハムレット』や、2015年読売演劇大賞上半期作品賞にノミネートされた木ノ下歌舞伎『三人吉三』、過疎の村の人間模様を浮き彫りにしたKAATプロデュース『ルーツ』など、知力体力ともに凡百の演出家なら尻込みしそうな作品に対峙してきた杉原さん。「人間と神、正義と過ち、秩序と混沌が入り乱れる一大狂宴演劇」(公式サイトより)と銘打たれた本作でも、世界観をしっかりと支える実力派役者陣と共に、その手腕をあますことなく発揮しています。11月2日(土)、東京・森下スタジオにて上演されたプレビュー公演(第3部のみ)の様子をお届けします。

その前に。予備知識なしで観ても面白いのはもちろんですが、神々と人間たちが入り乱れるこの一大長編を存分に堪能するには、やはり簡単な予備知識を頭に入れておいたほうがいいでしょう。「最も美しい女神へ」と刻まれた黄金のリンゴの持ち主は自分だと認めてもらうため、3人の女神が全知全能の神ゼウスから判定を任されたトロイアの王子パリスの前に現れます。最高位の女神ヘラは財産を、智恵の女神アテナは知恵を、そして愛の女神アプロディーテは最も美しい女ヘレネを与えると言いますが、青年パリスが選んだのはアプロディーテが差し出したヘレネ(パリスの審判)。ところがヘレネは、すでにスパルタ王メネラオスの妻でした。メネラオスとギリシャ軍総大将アガメムノンらはヘレネを奪還するため、大船団を率いてトロイアに向かいます(トロイア戦争)。本作『グリークス』は、それらの因縁から派生する物語を、さまざまな糸口を示しながら綴ってゆきます。

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(上:舞台写真)京都公演より

第1部「戦争」では、ギリシャ軍総大将のアガメムノンが大船団に風を吹かせるため、長女イピゲネイアを生贄に。妻クリュタイムネストラと末っ子のオレステスが帰国する中、アガメムノンはメネラオスと共にトロイア軍と戦い、あの「トロイの木馬」作戦によって勝利します。第2部「殺人」は、トロイアの女王へカペが、息子を殺したトロキア王ポリュメストルを殺害。へカペ自身も呪いで死んでしまいます。10年後、ギリシャに凱旋したアガメムノンは、トロイアの王女カッサンドラを自分の奴隷(情婦)にしており、妻のクリュタイムネストラに殺されます。そんな彼女も、次女エレクトラと末っ子のオレステスに父のかたきとして殺されてしまうのです。

そしていよいよ、この日観劇した第3部。舞台セットはシルバーグレーの色調で整えられた木目風の床と、大きな松の絵。能や狂言の内容・様式を借りた歌舞伎の舞踊劇「松羽目物」で使われるセットです。天井近くにぶらさがる「GODS」の文字は、第3部のタイトルでもあり、人間の頭上に常に"いる"存在でもあり。また、登場した人々の衣裳が簡素なTシャツにサンダルばきなどで驚きますが、これも「松羽目物」と同じく余分な要素をサラリと削ぎ落とすことで、物語そのものの面白さが浮かび上がる仕掛けのようです。

そこはどうやらエジプトの宮殿であるらしく、囚われの女王ヘレネ(武田暁)がひとしきり身の上話をすることで、観客を物語世界にいざないます。ただ、トロイア戦争の元凶となった絶世の美女......というよりは、女子力高めな大人女子というおもむき。やや自分に酔っているところが、不思議にチャーミングで親近感があります。そこへ海を漂流していた夫のメネラオス(田中佑弥)が偶然現れます。トロイアの武将と浮気してあちらの国にいるはずのヘレネが、実はエジプトに連れ去られていたと知ったメネラオスはショックを受けます。「ギリシャ軍からも多くの死者を出した、あの戦争はなんだったのか......」。それはいつの時代も変わらない「自分は誰に振り回されているのか/この戦争の意図はどこにあるのか、誰が知っているのか」と嘆き戸惑う民の声でもあります。

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(上:舞台写真) 京都公演より

セットや衣裳は「松羽目物」でも、劇伴はピアノのクラシック曲やマイクで歌われるヒップホップなど、あくまで舞台と客席が乖離しないようにする配慮は、杉原演出ならでは。物語はさらに、ヘレネとメネラオスがギリシャに帰国した後に続きます。

母クリュタイムネストラを殺したエレクトラ(土居志央梨)とオレステス(尾尻征大)は死刑判決に怯え、今度は戦争の元凶となったヘレネを殺して死刑を覆そうと計画。ところが雷鳴が轟くと、ゼウスの息子でオリュンポス十二神のひとりアポロン(天宮良)と、殺したはずのヘレネが現れます。そのアポロンの姿というのが、歌舞伎の浅葱幕(水色と白の縦縞)のキグルミに、頭にはサクラがあしらわれた分かりやすくめでたいいでたち。神様だけに邪気のない笑顔でエレクトラたちに"大岡裁き"をくだす後ろで、ミス・ユニバースの勝者よろしくヘレネが艶然と微笑みながら無駄に行ったり来たりする様子に、客席からも思わず笑いが。

物語はその後もクライマックスに向けて続きますが、緩急自在に展開するストーリーに、約2時間45分(休憩含む)の長丁場もまったく飽きさせません。

この日行われたアフタートークでは、杉原さんと、今回のために新しく翻訳を手がけた小澤英実さんも登壇。2014年の『ハムレット』以来、常に新翻訳を行っているKUNIOですが、意外だったのはこんなにも楽しめた本作の翻訳がほぼ原作通りだということ。また、小澤さんは現代の言葉に置き換えるにあたり「"ですます調"や"女言葉"(〜だわ、などの言い回し)を極限まで減らした」と語り、杉原さんは「性差が限定されなくなったことで、演出はもちろん俳優にとっても自由度が増した」ことを喜んでいました。現代を新たな方向から照らし出してくれるのが演劇の面白さ。杉原版『グリークス』はまさに、その役割を担う舞台となっていることが感じられました。

取材・文/佐藤さくら

撮影/井上嘉和

1日通し券と各部券をそれぞれ販売中!

【公演詳細】

日程:11月21日(木)~30日(土)

会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

演出・美術:杉原邦生

翻訳:小澤英実

出演:天宮良 / 安藤玉恵 / 本多麻紀 / 武田暁 / 石村みか / 箱田暁史 / 田中佑弥 他

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小川絵梨子芸術監督の2シーズン目が幕を開けた新国立劇場。個人と全体(=国家や社会構造、集団のイデオロギーなど)の関係性をテーマにした"ことぜん"シリーズの第2弾は、

新国立劇場初登場のミナモザの瀬戸山美咲を演出に迎え、2011年にノルウェーで起きた銃乱射事件をモチーフにした『あの出来事』(作:デイヴィッド・グレッグ/訳:谷岡健彦)を上演。

初日を約2週間後に控えた10月下旬、稽古場に足を運んだ。

今年3月に日本でも上映された映画『ウトヤ島、7月22日』でも描かれている、ノルウェーのウトヤ島で起きた、極右思想の青年による銃乱射事件を題材にした本作。

事件の生存者である合唱団指導者の女性・クレアが、事件の輪郭を知るため、そして少年を"人間"として捉えるべく事件後、様々な関係者とひとりずつ対話していくさまを描く。

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 メインキャストは南果歩小久保寿人の2人のみで、南がクレアを演じるが、興味深いのは、小久保が犯人の少年に加えて、

クレアが対話をする人々――精神科医、少年の父親、政治家、ジャーナリスト、少年の友人など、全ての関係者をひとりで演じ分けるという点。

クレアにとっては事件後に出会う人々の顔がみんな、犯人の少年と同じに見えるとも捉えることができる。

この日の稽古では冒頭、乱射事件のシーンを含め、いくつかのアクションの動きの確認が行われ、そのうちのひとつが、

クレアのことを心配する彼女の同性のパートナーとのケンカのシーンだったが、この同性のパートナーさえも小久保がそのまま演じる。

続いて稽古が行われたのが、少年の父親、少年の思想に影響を与えたとされる本を執筆したジャーナリスト、少年が党員として属していた極右政党の政治家、そして少年が通っていた学校で共にいじめられっ子だったという同級生とのシーン。瀬戸山は、この4人とクレアの対話シーンについて「この4人で、(この作品が)何を示しているのかがハッキリ見えてくると思う」と語る。

中でも、少年の父親とのシーンは「被害者」と「加害者の家族」の対峙であり、瀬戸山は「このひと(=父親)をしっかりやらないと、この芝居の根っこができない」と特に重視。

この日の稽古でも様々なパターンを試し、議論を重ね、時間をかけて少しずつふさわしいニュアンスを付け加え、人物像を作り上げていく。

この父親のキャラクターがなかなかのクセモノ。劇中でも語られる彼の言動、態度が少年の人格にも大きな影響を与えたことは想像に難くなく、クレアとの対話の中でも、

どこかふてぶてしさ、傲岸不遜さをうかがわせる。

もちろん、自分の息子が世界を震撼させる大量殺人を起こしたということで、事件後、彼もまた厳しい境遇にあることは間違いないのだが、

瀬戸山が小久保に求めるのは、父親が感じている"つらさ"の質の表現。事件から約1年後ほどではないかという物語の設定を踏まえつつ、

瀬戸山は「現在進行形で泣き出しちゃうような状態はもう通り過ぎてると思う。そうではなく(息子や事件のことが)理解さえできていない苦しみがある」、

「モラハラおやじっぽさ」「男性優位のヒロイズム」「根がマッチョで、その呪縛に息子は苦しんだと思う」など、かなり辛辣な言葉で評し、その人物像へのヒントを小久保に与えていく。

稽古場では南も積極的に発言。日本人と欧米の人々の宗教観、"死"や"魂"といったものへの捉え方の違いや極度の哀しみや苦しさに遭遇したときの人間の感情の出し方などについて、

瀬戸山、南、小久保で語り合う姿も見られた。

本作で小久保は犯人の少年をはじめ、先述の父親以外にも異なる性別、民族、思想の人物を

クレアとの短いやりとりの中で表現せねばならず、

通常の演劇で求められるものより質、量ともに大きいだろう。

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そして、南が演じるクレアは、単に「かわいそうな被害者」などという言葉でくくれない深さを持った人物である。

もともと、難民や移民、シングルマザーなど多様な人物を集めた合唱団で指導をしていたという経歴、そして事件後も、

単なる怒りや悲しみだけを動機に関係者と対話をしているわけではなく、被害者でありながら、時に周囲から心ない言葉を浴びせられることも...。

クレアと彼女が対峙する者たちが繰り出す言葉、感情は、事件の全体像や犯人の人物像のみならず、"社会"の輪郭を浮かび上がらせていく。

ひとりひとりとの対話の積み重ねの末、最後にクレアは刑務所に赴き、少年と面会を果たす。そこで彼らはどんな言葉を交わし、何を見出すのか――?

『あの出来事』は11月13日より新国立劇場にて上演。

取材・文:黒豆直樹

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「70年代、ディスコブームの頃は日本が一番元気だった時代。僕はカッコつけたい年頃で、ジョン・トラボルタにあこがれてDJの世界に入ったんです。あの当時の熱気が蘇るミュージカルにとても期待しています」

そうギラギラと熱気をたぎらせながらマイクを握ったのは、DJ KOO。

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11月6日(水)、銀座にある都内最大級クラブ「CLUB DIANA」にて、12月13日(金)から東京国際フォーラムにて来日公演を迎えるミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』のプレスイベントが開催され、その壇上で熱く語った。

彼の言葉に大きくうなづいたのはモデルのアン ミカ。いつになくセクシーな表情で思い出を語った。

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「私が初めてヒールを履いたのは、ディスコでした。まだモデルになる前です。当時、ディスコはかっこいい大人が集まる社交場。男性とのチークタイムで、私は大人の世界を知りました」

その熱っぽさは、気持ちがすっかり70年代にタイムトリップしていたためだろう。この日、彼女がまとっていたのは、当時ながらのスパンコールドレス。肩に真っ白なマラボーを揺らすゴージャスな装いは、確かに大人の社交場という表現の相応しいものだった。

さて、オープニングトークから2人をここまで熱くしたこのプレスイベント。実は、ただの記者発表ではなかった。会場は巨大なミラーボールが輝く銀座の老舗CLUB。そのフロアには作品のファンで結成された盛り上げ隊がひしめいていた。紫や赤の原色のミニドレスや、花柄のパンタロンに水玉のワンピースなど、思い思いの70年代ディスコファッションの身を包み、今からパーティを始めようというムードに湧いていた。

そんな彼、彼女たちのすぐ横、この日ばかりは、プレス席の雰囲気もいつになくそわそわしていたように思う。この中に1977年公開の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』を知るものが何人いるのかはわからない。でも、いつの間にか盛り上げ隊との境界線が失われ、誰もが前のめりになって、誰もがその人の登場を待ち望んでいた。

そうしてついにその人はやってきた。ステージのさらに上、2階に通じるステップから大きく手を掲げてミュージカルの主演、リチャード・ウインザーがやってきた。

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英国公演を終えたばかりという彼は、想像以上にジョン・トラボルタそのものだった。DJ KOO、そしてアン ミカさえ、胸元をチラりとはだけた純白のディスコファッションの身を包む彼の美貌に釘づけになった。見渡せば、フロアの盛り上げ隊、そしてプレス席の女性陣までも皆、同じ目をしている。

いやいや、これはプレスイベント。そういさめようとする心に、「ディスコは非日常」と、DJ KOOが笑う。追い討ちをかけてアン ミカの言葉も蘇る。彼の登場の直前、アン ミカが語ったその興奮は、「彼はね骨がセクシーなの。しかも、表情も繊細でね...」。

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大きく共感できた。耳からアゴのかけてのラインが、トラボルタを彷彿とさせた。しかも身のこなしのかっこいいこと。ステージに上がってすぐ、リチャードによるディスコダンスのレクチャータイムが始まったのだが、肝心のダンスより彼自身のダンスが気になって仕方がない。一挙手一投足に女性ファンが黄色い声援を飛ばした。今から、この盛り上がりでは、ミュージカル当日はみんな(筆者も含め)失神してしまうのではないか? 

さて、レクチャーに続いて、本番さながらのディスコタイムが始まった。

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DJブースにはDJ KOO、ステージ中央にはリチャード、センターにはアン ミカ。流れる音楽はもちろん、名曲「サタデー・ナイト・フィーバー」。もう目も、耳も幸せすぎる瞬間だった。リチャードは全身から汗をほとばしらせ、アン ミカは恍惚の表情でカップルダンスに溺れ、その熱気に負けじと、盛り上げ隊の皆さんも踊り狂った!

さて、この熱いディスコタイムは、これから誰もが体験できる。ミュージカルの開催中、公演のカーテンコールの後に開催されるのだ。ダンスの経験なんて関係なし。熱気に触れたら、きっと誰もが勝手に踊り出してしまうだろう。なぜなら「ディスコは非日常!」なのだから。

さて、最後に3人のミュージカルにかける思いをお伝えしよう。

「キャスト一同、皆、日本に来るのを楽しみにしています。今日のイベントを通じて、日本の素晴らしさを体感しました。ミュージカルでは、若者たちの人生のエネルギー、悩みをどう解決していくのかを楽しんでいただきたいと思います」(リチャード・ウィンザー)

「リチャードは、髪の先、指の先、心の底までハッピーにしてくれるスーパーダンサー。僕も、側で観ていて一つ一つの動きにしびれました! そもそも、サタデー・ナイト・フィーバーという作品は日本にディスコブームを巻き起こし、今でも日本の音楽シーンに影響が続く名作です。今回のミュージカルは世界中を巻き込んで、40年前の熱気を超えて盛り上がるんじゃないかと思います。日本から世界に元気を送るミュージカルになる事を期待しています。僕は20歳になる娘と一緒に楽しむ予定です!」(DJ KOO)

「制作発表ってかしこまってるものなんですけど、散々踊ってみんな一つになって、ディスコタイムで盛り上がって(笑)。今日のこの勢いを体感して、きっと今回のミュージカルを通じて、日本全体がまた元気になるんじゃないかと思いました。作品では、ダンスシーンはもちろんかっこいいと思いますが、若者の葛藤や悩みや成長もしっかり描かれているいう事。人生って悩むからこそ、楽しみを味わえる、そのこともしっかり感じられると思います。きっと、1回観たら何度もきたくなるんでしょうね。家族や友達など、メンバーを変えて楽しみましょう」(アン ミカ)

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こうして、前代未聞の熱いプレスイベントは幕を閉じた。次に幕があがるのはいよいよミュージカルの本番だ。果たしてどんな興奮が待っているのか、ドキドキが止まらない。

ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」は、2019年12月13日(金)〜29日(日) までの全22回公演。会場は東京国際フォーラム・ホールC。チケットは発売中。

(取材・写真・文=浅水美保)

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劇団四季の人気ミュージカル『キャッツ』が11月11日、日本上演36周年を迎えた。
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『キャッツ』は"都会のゴミ捨て場"を舞台に、24匹の猫たちの生き様を描いていくミュージカル。日本では1983年に東京・西新宿のテント式仮設劇場で産声をあげたが、これは日本初のロングラン公演となり、日本の演劇シーンの記念碑的作品となった。『メモリー』『ジェリクルソング』など、アンドリュー・ロイド・ウェバーが手掛けた珠玉の音楽と、個性的な猫たちのキャラクターも愛される理由。11月11日時点での国内総公演回数は10220回で、これはウエストエンドの8950回、ブロードウェイの7485回をはるかに超えた記録となっている。

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11月8日(金)に初日を迎えた、2.5次元ダンスライブ「ALIVESTAGE」Episode2「月花神楽~青と緑の物語」。初日前に行われた公開ゲネプロの様子をお届けします!

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1幕は芝居、2幕はダンスライブという2部構成で繰り広げられます。2.5次元に存在する芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に所属するユニット・SOARA(ソアラ)Growth(グロース)がメインとなり、特別ゲストとしてサンプロモーション・エンターテインメントに所属するライバルユニット・ZIX(ジックス)も登場!

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小林香が作・演出を手掛け、昨年誕生したColoring Musical『Indigo Tomato』
平間壮一が映像記憶能力や芸術的な能力が非常に優れている「サヴァン症候群」の青年に扮し、彼とその家族が織りなすあたたかな物語を5人のキャストで紡ぎだす、珠玉のオリジナル・ミュージカルと好評を博しました。
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この作品が早くも今年、再演決定!
まもなくツアー公演が開幕しますが、10月某日、その稽古場を取材してきました。
キャストはたった5人。
ただし今年は、初演キャストに加え、新キャストが加わっています!
そのあたりも含めまずはキャスト紹介。

主人公のタカシ=平間壮一さん
数学や暗記に特殊な能力を持つサヴァン症候群の青年。さらに数字に色が伴う "共感覚" の持ち主でもあります。
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「なにを話したらいいのか......」と言葉を探す佐藤隆太。その気持ちもよくわかる。観客参加型の一人芝居というユニークな公演にむけて、その素直な胸の内を語ってもらった。

2020年1月に東京芸術劇場シアターイーストを皮切りに上演される舞台『エブリ・ブリリアント・シング~ありとあらゆるステキなこと~』(作 ダンカン・マクミラン/翻訳・演出:谷賢一)は、観客に囲まれた舞台の中央に、たった一人の俳優が立つ。観客も、配られたカードを読んだり、小道具を貸したり......ただの傍観者ではいられない。「僕だけではできない舞台。一緒に、楽しんでつくってくれたらいいな」

この日は宣伝用のビジュアル撮影。ノーネクタイのスーツでカメラに向かいハイタッチをしたり、紺色の傘を手に雨上がりの空を見上げるようなショットを撮影した。佐藤は自分から積極的に動きの提案をする。空に向けて手をかざしたりと、物語の背景を感じさせるような佐藤のポーズは採用されることが多い。

撮影は全国各地の劇場関係者が見守るなか、おこなわれた。東京、新潟、松本、名古屋、大阪茨木、高知などでツアーする観客参加型の企画ということもあり、関係者の期待も高まる。佐藤自身も、いろんな観客と出会うのを楽しみにしている。「上演中ずっとお客様とのキャッチボールがあるので、どんな上演になるのか、その日のその日のお客様で変わってゆくと思います。どれだけ稽古しても「よしこれで行こう!」とは固まらない。毎公演、覚悟を決めなきゃいけない。でも自由度は高いので、日々の変化を楽しめればきっといい時間になると思うんですよね」

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それでも最初から、この刺激的な舞台出演に迷いはなかったのだろうか......。佐藤は「やらせてください!とすぐ答えました」と言う。「一人芝居も初めてだし、いわゆる一般的なお芝居とは違ってお客様を巻き込んでいく。冷静に考えたらこわいです。新しいことに飛び込みたいという好奇心が湧き、そして何よりもこの作品が持っている力に心を動かされました」

デビュー20周年にして、挑戦だらけの舞台に飛び込むことに決めた。

「役者でありながら、人間性をさらけ出さなきゃいけない。お芝居だけでなく人としての度量も試される作品なので、普段演じている時とはきっと違うんでしょうね。お客様と一緒に楽しみたいです」

取材・原稿/河野桃子

撮影/イシイノブミ

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