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2月11日(火・祝)より東京芸術劇場プレイハウスにて『ねじまき鳥クロニクル』が幕を開けた。村上春樹の大作を原作に、イスラエルの振付家であるインバル・ピントが演出・振付・美術を手がけ、さらにアミール・クリガーと藤田貴大(マームとジプシー)が脚本・共同演出として携わる。1月、都内の稽古場を訪ねた。

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大友良英率いる音楽チームの生演奏にのせて、稽古が進んでいく。岡田トオルを演じるのは成河と渡辺大知。二人で一役というキャスティングだ。二人は度々言葉を交わしながらタイミングをあわせている。臆することなく演出陣に「トライしてみていいですか?」と相談する渡辺の笑顔が場を和ませる。笠原メイを演じる門脇麦の美声が稽古場に響く。銀粉蝶の華やかさ、吹越満の存在感、場を彩るダンサーたちのなめらかな動き......。場面が変わるたび、別の場所に連れていかれるかのようだ。

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共同脚本として作品に携わる藤田に話を訊いた。

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「今回はインバルとアミールが考えていることを日本語を使って、日本人のリズムで体現していくのが僕の仕事だと思っています。村上春樹さんの小説が、遠くイスラエルのインバル・ピントという振付家の手元に渡り、彼女によって解釈され、演出されて舞台作品になる。そのことがまず、すごく感動的なことだと思うんです。しかもそれを言葉ではなく、身体でやろうとしている。そこに僕が日本語でどう言葉を配置していくかを考えて、適切な言葉を選んでいく」

単行本3冊分の大作を、2時間ほどの演劇にする。脚本づくりの段階で、3人の演出家は密に話し合いを続けてきたのだという。

「1年くらいSkypeで相談しながらプロットを組み続けてきました。原作はほんとうにいろんな読み方ができると思うんですよ。その、ひとつの答えに収束しない感じ、『わからなさ』も重要だと思っています。その『わからない』ことに取り組む姿勢がインバルにはある。春樹さんが書いていないことまで勝手に答えを見つけようとせずに描こうとしているところです」

 セリフそのもの、展開そのものを忠実に追うこと以上に、このカンパニーは小説を読んだときの感触を舞台上に再現しようとしている。

「『ねじまき鳥クロニクル』って、作品のなかでいろんな国や世界に飛んでいく。その状況を、このいろんな国からクリエイターが集まった企画自体が体現しているから描けることがあると思います。たとえばもし僕が一人で脚本と演出をやって、日本人のスタッフとキャストで作っていたら、たぶん作る前から想像できるものになってしまう。いまはヘブライ語と英語と日本語が飛び交って、ふつうの2、3倍も時間がかかる作り方をしている。けれど、このややこしい作り方だからこそ、表現できるものがある気がしています」

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新国立劇場バレエ団『マノン』の上演にあたり、人気コラムニストの辛酸なめ子さんが、今回の公演でデ・グリュー役に初めて挑戦する井澤駿さんへインタビュー!!

『マノン』に向け絶賛リハーサル中の井澤駿のプリンシパルライフに、辛酸さんならではの独特な視点で迫っていただきました!

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現代の王子様? プリンシパルの品格 

<文=辛酸なめ子> 撮影=阿部章仁


「マノン」で魔性のヒロインと恋愛を繰り広げる神学生デ・グリューを演じるプリンシパル、井澤駿さん。レッスン帰りの井澤さんに、ベールに包まれたプリンシパルライフについて伺いました。

バレエダンサーということもあって、背が高くシュッとして、貴公子のような雰囲気。2月下旬に本番を控えた今は、毎日朝から夕方まで稽古場で練習の日々だそうです。

「さっきまで振付を覚えていました」と、熱気の余韻が残る表情でおっしゃる井澤さん。素人からすると振付はメモするのも難しいし、どうやって覚えるのか想像つかないですが......。

「今は振付指導の方が来ているんですが、だいたい2週間で仕上げます。踊り込んで自分のものにするにはまだ時間がかかりますが、今はとにかく振りを覚えて、体に入れ込む作業をしていきます。踊りながら音と動きを体に入れていく形ですね」

「踊り込む」とかはじめて聞く動詞です。振りを忘れてしまうことはないのでしょうか?

「覚えている段階ではたまにありますね。次の動き、なんだっけな、と。ただ体で覚えてしまうとあとは勝手に動いてくれるんです。まだ頭で考えながら踊ってる段階なので、ときどきまちがえたりします。でも本番では忘れることはありません」

ピアノでもダンスでも体が覚えてしまう段階まで練習するのがプロなんですね。若いから記憶力も良さそうです。

「バレエダンサーは踊っていられる寿命が短くて、15、6年くらいでしょうか。そのあとはキャラクターの役柄を演じられる人、振付家になる人や指導者になる人もいます」

プロフィールを拝見したら、井澤さんは今はプリンシパルとのことで、バレエの世界ではランクはどんな感じなのでしょう。

「僕はソリストから入団させてもらいました。新国立劇場バレエ団のランクでいうと、まずアーティストがあって次にファースト・アーティスト、ソリスト、ファースト・ソリスト、プリンシパル、という段階になります。年齢ではなく実力によってランクが変わります」

映画みたいに役を巡って熾烈なバトルがあったりするのでしょうか。

「ライバル心を持っている人もいると思いますが、皆、役をめぐって努力する、お互い切磋琢磨している仲間たちです。新国立劇場バレエ団は皆、仲がいいです。環境が良いからでしょうか。日本では劇場を持っているバレエ団はなかなかありません。レベルの高いダンサーを起用したり、舞台装置を入れられるのが新国立劇場バレエ団の強みです」

環境が良いと、人間関係も円満になるというのはわかります。新国立劇場は来る度にすごく立派できれいな建物で、楽屋食堂もあったりして充実しているのが伝わってきました。マクミランさんという振付家は『ロメオとジュリエット』でも濃厚な男女の愛を演出していましたが、特徴的なものがあるのでしょうか。

「振付指導の方は『ロメオとジュリエット』と同じなのですが、パートナーを本気で愛しなさいとおっしゃいます。できる限り一緒にいて食事を共にしたり、一緒に暮らすくらいがベストだと言われました。演技というより本当に愛し合わないと出てこないものがあり、関係を深めて二人の世界を作っていく。マクミランの振付作品は、お客さんに向かって踊っていないんです。箱の中で起きていることをお客さんが上から見ている感覚。自分の中で起きている物語を表現するんです」

それは、男女の恋愛をのぞき見できるみたいで高揚します。見にいきたい気持ちが急激に高まってきました。パンフの写真を見るだけでも、二人の見つめ合い方に本気が感じられるような......。お互いに実生活で彼氏や彼女がいたり心配かもしれませんが、役が終わったら恋愛感情も抜けていくのでしょう。

ちなみに『マノン』は小説「マノン・レスコー」にも書かれている有名な魔性の女性ですが、魔性の女性に対して怖さとかはあるか伺うと...。

「本気で好きになったらちょっと傷付きそうですよね」と、さわやかな笑顔でおっしゃる井澤さん。なんとなく危ない橋は渡らなさそうな手堅さが感じられます。

「『マノン』は人間の欲望がつまった作品だと思います。愛もお金も欲しかったり。ちょっとドロドロしてますけど、人間ってこういう生き物なのかと考えさせられます」と、冷静に分析しています。

マノンは愛と富、両方とも手に入れようとしていましたが、井澤さんは愛と富、どちらが大切でしょうか。そう伺うと、井澤さんはしばらく上を見つめて考えたあと、

「お金も大事ですけど、愛もないとさみしいですよね。僕は自分が死ぬ時のことをよく考えるんですけど、さみしく死にたくないな、っていう思いがあって。僕はやっぱり愛の方を取るかもしれない」と、答えられました。若いのに自分の臨終シーンまで考えていらっしゃるとは。話を聞くと、食生活や体調管理にかなり気をつけているそうなので、まだまだ臨終シーンまでは先が長そうです。

ちなみにそんな健康的な井澤さんの趣味は、燻製を作ることと、植物公園や深大寺など自然の中を散歩することだそうです。いろいろ伺って、やはりプリンシパルの品格が保たれているというか、俗な要素はほとんど感じられませんでした。そんなクールな井澤さんが、舞台で濃厚な恋愛に溺れるギャップ感をぜひ鑑賞したいです。

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江戸川乱歩の8本の短編を、作・演出家の倉持裕が卓越した構成力で見事舞台化した2017年の『お勢登場』。

この舞台で鮮烈な印象を残した悪女・お勢がふたたび私達の目の前に現れることに。

その最新作『お勢、断行』の稽古初日の現場に潜入。

当日の様子をお届けします!

 

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まずは、出演者とスタッフが勢揃いした顔合わせから。

初日ということもあり、稽古場はちょっと緊張ムード?

 

本作の出演者は、前作『お勢登場』にも出演した梶原善さん千葉雅子さん、粕谷吉洋さんをはじめ、倉持作品に出演経験のあるキャストが多いのが特徴のひとつ。

今回お勢役を演じる倉科カナさんも、『誰か席について』(2017年)で倉持演出は経験済み。

倉持組初参加の上白石萌歌さんの隣に座り、小声で時折楽しそうに会話をしています。

(緊張をほぐしているのかもしれませんね!)

 

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▲作・演出の倉持裕さん

 

 

顔合わせでは、制作スタッフからひとり一人が紹介され、最後に倉持さんが挨拶。

作品についての意気込みを語るのかと思いきや、淡々とした口調で「階段が多いストーリーなので、足腰鍛えてください」と一言。 

稽古場全体から笑いが漏れ、一気に和やかなムードに変わりました。

 

顔合わせと本読みの合間の休憩時間になると、途端に賑やかになりました。

あちこちから「久しぶり~!」という声が聞こえます。

やっぱり、顔合わせ前は皆さんちょっと緊張されていたんですね......。

短い休憩の後、さっそく本読みがスタート。

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「華」と「実」を兼ね備えた歌舞伎俳優たちが各地の劇場を巡り、よりすぐりの歌舞伎舞踊を披露する『伝統芸能 華の舞』が2020年3月、東京含めた全国10カ所17公演が行われる。

主演の市川右團次は古典歌舞伎から新作歌舞伎まで幅広く演じ分け、ドラマ『陸王』等の映像作品でも活躍。ドラマ『ノーサイド・ゲーム』に出演した長男・市川右近とはラグビー・ワールドカップの開幕式で舞踊『連獅子』の一部を披露。今回はこの舞踊を通しで上演する。

この他、市川海老蔵一門の市川九團次と大谷友右衛門の次男・大谷廣松が、椀屋久兵衛と恋人である遊女・松山の幻想の中での逢瀬を描く舞踊『二人椀久』を、市川右團次一門の市川右若、市川右左次、市川右田六が、吉原を訪れた放生会の雀売りの楽しい踊り『吉原雀』を舞う。性質の異なる三演目を通して、歌舞伎舞踊の幅広さ・奥深さを体感することが出来そうだ。

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市川右團次インタビュー
"日曜劇場親子"の奮闘をぜひ応援しに来てください

――右團次さん・右近さんと言えば世間的にはやはりTBSドラマでの印象が強いかと思います。

「『陸王』に出た時は、"シューフィッター"とよく声をかけられました(笑)。息子も同じ福澤克雄監督の『ノーサイド・ゲーム』でお世話になりましたが、或るシーンで、台本に書いていないのに、ぽろっと涙をこぼしたんです。聞けば、父親役の大泉洋さんの演技に感動したって。そういうふうにパンとスイッチが入ることは、歌舞伎俳優にとっても大切なこと。いい勉強をさせていただいたなと思っています」

――そんなお二人が今回初めてご一緒に、日本各地を巡業されます。

「息子にとってもいい修業になるんじゃないかな。僕はブログをやっているのですが、"近くに来てくれるので、やっと生の舞台を観られます"というコメントを幾つかいただいています。チケット代も比較的リーズナブルなので、ぜひ"日曜劇場親子"を応援しに来て下さい(笑)」

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――共演するのは、ラグビーのワールドカップ開幕式で初披露した『連獅子』です。

「開幕式のお話をいただいた時、息子は9歳。体力的にも大変な仔獅子をこなせるのか、実際歌舞伎界でそんなに小さくして踊った例もなかったので、無理なんじゃないかと思いましたが、ワールドカップ2019の公式マスコットがレンジ―という紅白の獅子で、雄雌のカップルの獅子だと思っている方が多くて、ぜひ親子だと知ってほしいというお話で、かくなる上はということで挑戦しました。息子は頑張ってくれましたね。親馬鹿ですが(笑)、芝居のことになると好きだから頑張る子なんですよ」

――今回は抜粋したものではなく通し上演ですね。

「通しですが、お客様が分かりやすいように少し抜いている部分もあるので、退屈するところはないと思います。前半は狂言師として、獅子が我が子を千尋の谷に突き落として子供が這い上がってくる様を踊りで物語ります。親は子を思い、子は小川に映る親の姿に力をもらって登る。僕自身、かつて仔獅子を演じた時は、しんどくても浄化されるものを感じましたね。歓喜の舞でもあるし、文珠菩薩を護る獅子なので、おめでたい舞でもあります。そして後半は獅子の姿で、親子が戯れながら皆さんご存じの毛振りをします。なかなか"生"で見ていただく機会はないと思いますので、それも含めて楽しんでいただけたら」

――今年はオリンピック・イヤーで世界の目が日本に向くかと思いますが、歌舞伎のどんな面をアピールしたいですか?

「歌舞伎は世界にも類をみない文化で、絢爛豪華なものもあれば、民衆の暮らしを描いたものもあるし、最近はアニメも歌舞伎化しています。歌舞伎にはもともと魑魅魍魎や人にあらざるものが登場していて、この多様性がいろいろな表現を可能にしているのです。古典とはいえ、時代を超えて普遍的なテーマを含んでいるのが歌舞伎。同時代の方たちと何かを共感できるよう、今の時代にアンテナを立てながら演じていきたいです」

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伝統芸能 華の舞

■演目
一、『吉原雀』 市川右若、市川右左次、市川右田六
二、『二人椀久』市川九團次、大谷廣松
三、『連獅子』 市川右團次、市川右近

■日程
3月10日(火)福岡:大濠公園能楽堂
3月11日(水)鹿児島:宝山ホール(鹿児島県文化センター)
3月12日(木)宮崎:メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
3月14日(土)大阪:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
3月15日(日)神奈川:関内ホール
3月16日(月)千葉:習志野文化ホール
3月17日(火)東京:北とぴあ さくらホール
3月19日(木)宮城:トークネットホール仙台(仙台市民会館)
3月24日(火)神奈川:小田原市民会館 大ホール
3月25日(水)愛知:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

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「時代を敏感に感知する新たな創作者を受け入れるための、1つの宣言」と、2020年のラインナップより、公募制を導入した東京・本多劇場。そこに、現役大学生の「劇団あはひ」が選出され、史上最年少で本多劇場の舞台に立つ

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2018年に早稲田大学で旗揚げし、落語や能など、古典を下敷きとした作品を中心に活動を行う同劇団。2019年3月に上演した第2回公演『流れる-能"隅田川"より』が、〈CoRich 舞台芸術まつり!2019春〉で全国86作品の中から学生団体として初のグランプリを受賞した。

今回、本多劇場で上演する『どさくさ』は、落語の『粗忽長屋』をベースにした作品で、2018年の旗揚げ公演で上演。作・演出の大塚健太郎は、『粗忽長屋』のオチのセリフにひときわ惹かれたという。「抱かれているのは確かに俺だが、抱いてる俺はいったい誰だろう?」。『どさくさ』のシチュエーションコメディのような、不条理劇のような展開は、次第に落語に接近していく。舞台上で役を演じる彼らは、一体何者だろうか...。古典芸能である落語を演劇に持ち込み、生と死の曖昧さ、人間の自己存在の危うさに迫った処女作が、新脚本、新キャストにより生まれ変わる。第4回公演にして本多劇場の舞台に立つ期待の若手劇団をお見逃しなく。

劇団主宰、作・演出の大塚健太郎コメント

『粗忽長屋』は行き倒れの死体と対面し、ついには彼を自分自身だと勘違いしてしまう粗忽者を描いたナンセンスな噺で、ひときわ私が惹かれたのはサゲ(オチ)のセリフだった。「抱かれているのは確かに俺だが、抱いてる俺はいったい誰だろう?」

そしてその後、私たちは、能『隅田川』、シェイクスピアの『ソネット集』をそれぞれ演劇化した。振り返ってみると、どれも生と死、過去と現在の「あわい」にしか存在できない人々を描いているという点で共通している。

もう一度『どさくさ』に立ち返ってみたい。生きたまま死んだ粗忽者を前にして私たちは、彼のことをただ笑って済ます事を、まだできていない。

公演は、2月12日(水)から16日(日)、下北沢本多劇場にて。

※大塚のコメントは全てチラシより引用&抜粋

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「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」を掲げ、1996年に結成されたダンスカンパニーDAZZLE(ダズル)。ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合した独自のダンススタイルを武器に、これまで数々のダンスコンクールで優勝の栄冠を獲得。さらに、ファジル国際演劇祭での審査員特別賞・舞台美術賞の二冠獲得を始め、世界の演劇祭でも受賞暦を重ねている。そんな輝かしい功績を持つDAZZLEのカンパニー結成に至った経緯から、新作公演「NORA」のみどころまで、主宰の長谷川達也さんと飯塚浩一郎さんにお話を伺った。

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─DAZZLEとはどのようなカンパニーなのでしょうか?

長谷川 今年で結成から24年目を迎えるダンスカンパニーです。元々はストリートダンスの世界で名をあげたいと思い結成したのですが、当時はストリートシーンで抜きんでた存在になるのは容易ではありませんでした。そこで、色々考えた末に独自性が重要なのではないかと思い、物語を軸にしたダンスパフォーマンスを長尺の舞台として披露するというスタイルをとるようになったんです。

─ストリートダンスを長尺の舞台で魅せるのは、かなりの挑戦だったのでは?

長谷川 そうですね。でも踊るだけではなく、音楽であるとか、ファッションや空間や照明、美術であるとか、そういった要素を組み合わせると無限に可能性は広がっていきますよね。その選択の仕方で自分たちらしさを見出していけると考えたんです。とはいえ、ストリートダンスというのは見ていて高揚感はあるものの、長尺で魅せるには難しいことは早い段階で気づきまして、コンテンポラリーダンスの芸術性を組み合わせることでそれが叶うと辿り着きました。

飯塚 僕はDAZZLEが初めて長尺の舞台公演をやるというタイミングでカンパニーに加わったのですが、一番の魅力だと感じたのはダンスに関する考え方の違いでした。ストリートダンスはダンスそのものが目的ですが、DAZZLEは踊ることによって何を伝えるかが重要なんです。その一つとして、物語のキャラクターになり、ダンスを感情表現として取り入れるというスタイルをとっているのですが、これが面白いなと。これならばダンスが好きな人だけではなく、ダンスを知らない人にも見てもらえますよね。

長谷川 そうなんです。結成当初からダンサーとしてだけではなく、アーティストとしても活動していきたいと思っていましたので、これまで通りダンスが好きな人だけに向けて踊るだけではダメだと思ったんですよ。より多くの人に共感してもらうために、ダンスを知らない人にもダンスの魅力を伝えたいという想いが強くなって、違う方向にも視野が広がっていった結果が独自性にもつながりました。

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─結成から24年が経つと、お客様にも変化があったのでは?

長谷川 そうですね。最初はダンサーに向けて踊っていましたので、お客様もダンサーがメインでした。それが今ではダンスは知らないけれど舞台は好きという方が興味を示してくださって、今ではダンスを知らない人の方が多くなりました。

飯塚 確かに、以前はダンスが上手い人の踊りが観たいという人が多かったのですが、今は自分も舞台に出たい、もしくは自分も舞台を作りたいと考えている方も多いと感じています。

─これまでにはないジャンルですから、多くの人が興味を持たれるのもわかります!

長谷川 はい。より多くの人の心が動く表現を目指して活動していますので、その思いが伝わっているのなら嬉しく思います。

─さて、3月に行われる新作「NORA」ですが、どのような舞台なのでしょうか? 

長谷川 未来の東京をイメージしたお話です。規律が厳しくなった社会構造の中で人々が抑圧されながら生きている現実世界と、それとは対極する非現実的なオンラインゲームの世界があって、その2つの世界が主軸になっています。このゲームというのが配信停止のいわくつきのゲームで、そのゲームは誰が何の目的で作ったのかという謎に迫る物語です。

─オンラインゲームをテーマにした理由は?

長谷川 僕自身がゲームが大好きということもありますが、抑圧された世の中でオンラインゲームってそれを解放できる場所なんですよ。それが面白かったり、恐ろしかったりというのを僕自身が感じていて。例えばゲームの世界なら人を殺しても、銃を打ちまくってもいいですよね。そういう本能を解放する場所というところに魅力を感じてテーマとして取り入れました。

─今回はマルチストーリーということですが、舞台で実現するというのは珍しい試みですよね?

長谷川 そうですね。僕も見たことはありません(笑)。ゲームの場合はキャラクターを人が操るわけですが、舞台の場合は人が人をコントロールします。この面白さだったり、恐ろしさを体感する中で、何か感じるものがあったら面白いかなって思って挑戦してみようと思い立ったんです。

飯塚 3年前からイマーシブシアター(体験型公演)という、建物のいたるところで演者が動き、観客もそれについてまわるという、観客と演者が一体になる作品を作ってきたのですが、舞台上でもそれに近い感覚のものが作れるとまた、舞台作品というものが新たなステージに行けるのではないかと思ったんです。一番は、観客を傍観者ではなくしたい、と思って。自分はこっちだと思うんだけど、違う選択をする人もいて、その度に自分が否定されたり肯定されたりっていう多数決の中で、観客の皆さんもきっと傷ついたりとか「あ、自分は多数派だったんだ」という思いが起こる舞台はなかなかないと思うので、今回の作品で新しい体験をしてもらえると思います。

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長谷川 前作(20周年記念公演「鱗人輪舞」)では選択は結末だけでしたが、その選択肢を増やしたのが今回の作品です。従来の舞台では主人公の選択に対して観客が干渉することはできなかったのですが、今回は観客が選んだ道に主人公が進んで行く、しかもリアルタイムに物語が変化していくというのが面白いのではないかと。ゲームなので、誤った選択をするとゲームオーバー...とまでは行きませんが、あらぬ方向に進んでいくという仕掛けがあります。

─では、エンディングもグッドエンドとバッドエンドが存在しているんですか?

長谷川 はい。いくつかの分岐点がありますので、観客の皆様の選択次第で主人公の運命が変わってしまいます。

─ますます面白そうですね!

長谷川 その分、もしかしたら選ばれないシーンもあるかもしれませんが、なんども足を運んでいただき、全てのシーンをご覧いただけると、作り手としてはそうあってほしいという思いはあります。

飯塚 でも練習は地獄です(笑)。

長谷川 練習量は倍どころではないですからね。でも挑戦には痛みが伴うものですし、それを乗り越えることで新しい表現が見つかるかもしれないし、舞台の世界の可能性が発見できると考えているんです。もし世界で初めてだったら凄いことだし価値があることですから!

─そもそも舞台鑑賞は映像作品にはない没入感が楽しめるものですが、またそれとも異質な興奮がありそうですね。観客も翻弄されるというのも是非体験してみたいです。

長谷川 ぜひ。刺激を得るというのは感覚を豊かにしていく行為ですから。例えば、動物図鑑を見るのか、実際に動物を見るのかくらいの違いがあると思うんです。動物図鑑は視覚的な情報しかないですが、実際の動物園に行くと匂いや音や温度とか色々な情報が入ってきますよね。人生を振り返って、どちらが印象に残っているかといえば、実際に動物園にいった記憶だと思うんです。それは刺激の量が多いから。

飯塚 2つは似ているけれど、全く違うものだと思います!

長谷川 今は在宅のまま楽しめるコンテンツが充実していますから、ますます舞台を観に行くハードルは上がっているとは思うんですが。そんな時に、舞台へ行く重要性、面白さというのは、人間が生で踊っていたり演じていることのエネルギーを感じたり、そういったものを刺激として得られるというのは感覚がより豊かになると思うんです。そういう意味でも価値があることだと思うので、だからこそ観に来てほしいなと思います。

─これまでの舞台でも様々な分野のゲストが出演されていますが新体操グループのBLUE TOKYOがご出演されるとのこと。コラボに至った経緯は?

長谷川 実はBLUE TOKYOの結成当社から作品の振り付けを僕が担当しているんです。以前、青森で開催された「BLUE」という新体操の舞台の演出を担当させていただいたのですが、そこで物語と新体操を掛け合わせるというおそらく世界初の試みに挑戦したことがあったんです。そこで世界最高峰の身体能力を誇る彼らの迫力と美しさを目の当たりにしまして、彼らが参加することで、例えるなら平面が立体になるくらいの変化が出てもっと面白い舞台が作れると思い、出演をお願いしました。

飯塚 僕らは振りが揃っているとか、動き自体が美しいことを考えながらダンスをしてきたんですが、彼らはまた違う形の美しさを持っていて勉強になる部分と真似できない魅力もあって。だからこそ一緒にやる価値があると思っています。

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─一見、新体操とダンスには交わりにくいものに感じるのですが、これまでの信頼関係で乗り越えるというか、融合しているところが大きいのでしょうか?

長谷川 最初に新体操と一緒にやると決まった時に、とにかく新体操の演技をたくさん観たんです。DAZZLEの舞台構成は緻密に人の配置を動かしていくのですが、そこに共通するものを感じて「あ! 合うんじゃないか!」と、すぐに感じました。実際にスタートしてみたら、彼らは演技に対する精度が物凄かったんです。僕たちはそこまでの精度のものはできないけれど、舞台に立つものとしての演じる想いは強いので、そこを融合させて、彼らが『演じる』ということを獲得したらもっと高いクオリティーの作品ができると思ったんです。

─想像ができないのでとにかく早く観たいという思いが高まりますね!

飯塚 ありがとうございます。昨年はDAZZLEで浅田真央さんのフィギュアスケートの振り付けもしたのですが、それもいい経験になりました。そもそもスポーツとダンスは身体能力の高さという点では共通していますし、今後は競技とエンターテインメントの融合というのが、もっともっと面白くなっていくんじゃないかなと思っています。

─最後に『NORA』の見所を教えてください。

長谷川 最高の身体能力を誇るBLUE TOKYOが参加してくれるというのは大きな見所の一つですし、マルチストーリーや、感情を揺さぶる物語性も見所になっています。観客の皆様の選択次第で物語が分岐していくという世界でも稀有な作品になると思うので、皆様にも、ぜひ体験していただきたいと思います!

飯塚 DAZZLEのダンスが他と違うのは、そこに伝えたい想いがあること。物語やキャラクターの感情を伝えることプラス、メンバー自身、自分に中にあるものを踊りとして表現することをすごく大事にしています。だからこそ、言葉の通じない海外でも想いが伝わっているのだと実感していますし、それが僕らの舞台の見所だと思っています。みなさんの心を動かすためにダンスしていますので、ダンスを知らない人、見たことがない人もぜひ観に来てください。

ダンスの躍動感、心を刺激するストーリー。この2つの要素が着火剤となって観るものを興奮の炎に包みこむDAZZLEの舞台。ダンスに興味がない人でも不思議と虜になってしまう魅惑的な世界観に、今回さらに新体操とマルチストーリーという要素も加わり、天井も底も見えないほどその魅力は無限大に広がっているように感じた。

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新作「NORA」は、観客をただの傍観者にさせないアグレッシブな体験型舞台。自分さえ知らなかった自分の本能があけすけになるかもしれないスリリングな経験をぜひ多くに人に味わっていただきたい。

取材・文・撮影:浅水美保

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大阪公演を経て、2月1日には東京公演初日を迎えた『CHESS THE MUSICAL』
チェスの世界大会を舞台に、米ソ冷戦という時代背景に翻弄されている人々のドラマを描き出すミュージカルです。

今回の上演ではラミン・カリムルーサマンサ・バークスルーク・ウォルシュ佐藤隆紀(LE VELVETS)をメインにした日英精鋭のキャストが、ベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァースというABBAのふたりが生み出した珠玉の音楽に溢れるこの作品を素晴らしい歌唱力で歌い上げ、客席も大盛り上がり!

東京公演が開いたばかりの2月2日にはラミン・カリムルー&ルーク・ウォルシュ&佐藤隆紀によるアフタートークが開催されました。
その模様をレポートします!CHESS2020-3-01_2163.JPG

劇中ではソ連のチェスチャンピオン、アナトリーを演じるラミンさん。
文句なく、いま世界トップクラスの実力&人気を持つミュージカルスターです!
まずは日本語で「こんばんはございます。きてくれてありがとうございます。あいしてる」とご挨拶し、客席も大盛り上がり!
「毎日毎日楽しく過ごしています。毎回、公演をするたびにちょっと寂しくなる。ひとつショーが減ってしまう、そしてまた帰国する日が近付いているなって思って」と現在の心境を。

▽ ラミン・カリムルーCHESS2020-3-03_2128.JPG


アメリカ代表にしてディフェンディングチャンピオン、フレディを演じるのはイギリスの新星、ルークさん。
「来てくださってありがとうございます。そして(アフタートークに)残ってくださってありがとうございます。今日のお客さまが最高だったと思います!」とご挨拶。
さらに「大阪も大好きですが、東京も好きです。そして本当に昨日(初日)の観客の皆さんが素晴らしかった。たくさん歓声をいただき、キャストも興奮しました。でも今日のお客さまも同じく素晴らしかった。私たちが本当にいい作品だと思って作り上げたものを、このようにご覧いただいてありがとうございます」と話します。
ルークさん、このアフタートーク中、多方面に「感謝」を述べていらっしゃいました。人柄がにじみでますね。

▽ ルーク・ウォルシュCHESS2020-3-05_2114.JPG

 
チェスの審判(アービター)役は、日本から佐藤隆紀さん。
ラミン&ルークのご挨拶の流れで英語で「Ladies and gentlemen,Thank you,I Love you」と英語でご挨拶をし、「本当に今回、アンサンブル含め日本勢も頑張っていて、1月3日頃かな、僕がまだセリフも半分くらいしか覚えていなかったときに、アンサンブルの皆さんが歌詞を暗譜して振付している動画が送られてきて、めちゃくちゃ焦りました。そこから寝られない日々が続きました......。でもみんなの「頑張ろう」「いいものを作ろう」という意識が、この作品を良いものにするパワーになったんじゃないかなと感じています」と現在の気持ちを。

▽ 佐藤隆紀CHESS2020-3-07_2157.JPG

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こんにちは、ゴジゲン松居です。

マスクが欠かせなくなる昨今ですね。
どうか、事なきを得てほしい。。
そんな願いを込めて、
ゴジゲン第16回公演「ポポリンピック」
残すところ京都公演のみとなりました。
東京公演、札幌公演も無事に終わりまして、
ご来場いただいた方、本当にありがとうございます。関西方面に知り合いがいる方はぜひご紹介下さいませ。

東京、こまばアゴラ劇場では、
ゴジゲン初の新年・3週間興行でしたが、
怒涛のようで、
気づいたら全てなくなっていて、カッコつけている男6人と、東迎の形をしたミカンしか残っていませんでした。

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札幌、シアターZOOでは、
室蘭出身の最強を中心に、北海道の皆さまにもご協力いただいて、盛況に終わることができました。

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札幌は、例年より雪が少なかったらしいですが、
西日本出身が多いゴジゲンにとっては、
雪が柔らかくて、眩しかった。
ほぼ毎日銭湯に行ってました。

ポポリンピック、今年の日本でしかできない作品となりました。
どんな行動をしても疑ったり傷つけたり傷つけられたりして、何を大切に生きたらいいんだろう。
主人公のポポが教えてくれました。
数年経って、大切な作品になると思っています。
そんなポポリンピックも残すところ、今週末の京都のみとなりました。
京都は、全員バラバラの地方出身のゴジゲンにとって、初めて一緒に過ごして劇団の未来を思った第二の故郷です。

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ここで公演できることに幸せをかんじます。
そして、関西圏の方、見に来てほしいです。
8日夜の回には
アフタートークで、ヨーロッパ企画イエティを率いる同い年の大歳くんをゲストに迎えます!
シアターイーナインも、去年新しくできた、めちゃくちゃいい劇場です。
まだ全公演予約できます。
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ゴジゲン次回公演は来年3月にスズナリ。

今年の舞台はこれで最後です。

どうか皆さま、劇場に遊びに来てくださいっ!
餃子の王将いこう!!

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ご無沙汰してます、ゴジゲンの松居です。 ゴジゲン第16回公演「ポポリンピック」
寒さが厳しいからこそ、暖かな気持ちをお届けします・今週末開幕・ゴジゲン第16回公演「ポポリンピック」
ゴジゲン最新作は「僕らの不器用さが生きる作品」

【ついに開幕!】ゴジゲン「ポポリンピック」開幕レポート

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ハダカ座公演 vol.2『ストリップ海峡』が2020年3月に上演されます!

本作は、2018年1月に上演された『ストリップ学園』に続く作品で、脚本・演出をgood moning N°5澤田育子、音楽を元・米米クラブのメンバーのフラッシュ金子こと金子隆博が手掛けるオリジナル作品。

前作ゲネプロレポートはコチラ

本作の詳細はコチラ

ストリッパーを目指す生徒たちを男性が演じ、あらゆる感情が混じり合うストーリー&演出で観客を虜にした初演。果たして第二弾はどんな作品になるのか......。

前作に続き、女性ストリッパー役で出演する古谷大和さん石田 隼さん芹沢尚哉さん。そして新キャストの齋藤健心さんにお話をうかがいました!

*****

――今年1月に上演された『ストリップ学園』、とても面白かったです。新キャストの齋藤さんはご覧になられましたか?

齋藤 観ました。カッコいいと思いました。舞台の上には肌を露出した全力な人たちがいて、客席のお客様は「フー!」となっていて。そういう空間がめちゃめちゃカッコいいと思いました。

――お客様もパンツやブラジャーを回したり、紙テープを飛ばしたりしていましたね。

齋藤 そこにも衝撃がありました。ドーパミン出過ぎて頭で考えられず、ただただ「すごい」と思っている感じで。圧倒されました。

――齋藤さん以外は、まさにその舞台に立ったお三方ですが、どんなふうにつくっていかれたのでしょうか?

芹沢 僕らも稽古の序盤は「どうやってつくっていくの」っていう感覚がありましたよ。

古谷 そうだね。ただ、稽古で最初のシーンをやったとき、僕の相手が藤田(記子)さんで(「good morning N°5」は本作の作・演出である澤田育子さんと藤田記子さんのユニット)。藤田さんの芝居のエネルギーを見て、「これなんだ」と思いました。何も飾らず、全力でやってらした。

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――これをやらなきゃいけないんだ、という感じだったのですか?

古谷 そうですね。あるいは超えていかなきゃいけないと思った。

石田 そうね!

古谷 だからとにかく...しんどかった(笑)。

石田 澤田さんとずっと一緒にやってきた、千代田(信一)さんや藤田さん、(小林)顕作さんですら「大変」と言ってたもんね。

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昨年末、代表作の音楽劇リメイクで月刊「根本宗子」旗揚げ10周年イヤーのフィナーレを飾ったばかりの根本宗子が次の展開へ乗り出す。"女子向け"を前面に打ち出す『THE MODERN PLAY FOR GIRLS』をタイトルに掲げ、新旧2作を連続上演。稽古をスタートさせた根本に聞いた。

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なぜこのタイミングで"女子向け"を謳うのか──という問いかけに、根本は「ラジオ(オールナイトニッポン0のパーソナリティ)を1年間やったところ、大学生くらいの男の子が観に来てくれるようになった」と客層が変化したという。一方であまり「女性客は増えていない」と感じ、日ごろ演劇を観ることのない"女の子"に刺さりそうな作品を企画した。

今回根本が重視するのは"ビジュアル"。ニットブランド・縷縷夢兎(るるむう)を手がけるアーティスト・東佳苗による舞台装飾の中、同一セットで2演目が展開される。これまでも自身のステージを彩ったことがある東の仕事に「正統派で王道の演劇作品とは違うところへ行ける」と信頼を寄せる根本は、「佳苗ちゃんがデザインした空間に何を書いたらおもしろいか。(美術に)台本の劇効果を高めてもらう普段とは逆の発想でつくっている」と舞台裏を明かした。

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女子への"目配せ"は各作品にも散りばめられている。日本に暮らす女子が大人に成長するまでに経験する葛藤をポップに描いた『Whose playing that "ballerina"?』は"女子あるある"として共感を呼ぶだろう。派生ユニット・別冊「根本宗子」名義で2016年に初演し、そして2018年に再演された作品を、今回根本は全編英語劇としてアレンジ。「同じ性別で同い年で同じ学校にいるのに全然わかりあえない女子たちがしぶしぶ一緒にいる状況って、日本じゃなくてもありそう」と考え、海外にルーツを持つ者を含めた英語の堪能なキャスト4人を起用した。「純日本人だけが演じるよりも、さらに"バラバラ感"を醸せるかなって」。

対する新作『超、Maria』は、チャラン・ポ・ランタンのボーカル・もも(妹)と根本の二人芝居。ももに聖母マリアを重ね、"許す"をコンセプトに女子を肯定する物語が進むという。そう考えたのは「周囲の期待に応え、要望は全て受け入れる度量を持ちながらも"私は私"の姿勢を崩さない」というもものスタンスを根本が感じ取ったから。「現代を生きる上で強い気がして」と語り、創作のヒントに繋がった様子を覗かせる。

『超、Maria』の音楽は、同じくチャラン・ポ・ランタンのアコーディオン奏者・小春(姉)が担当。2018年の『愛犬ポリーの死、そして家族の語』から数えて4度目のタッグとなるが、小春自身がバッグバンドのカンカンバルカン楽団を引き連れ、劇中で生演奏するのは本作が初めて。なお、根本いわく「セリフを全て楽曲に乗せるのも初めて」──。これまでは根本のリクエストをもとに、小春がスポット的な楽曲を作詞・作曲していたそうだが、今回はどんな創作スタイルが取られるのだろうか。信頼するクリエイターに背中を預け、彼女たちの力を借りながら躍進する根本の新境地を見届けたい。

『THE MODERN PLAY FOR GIRLS』は、1~2月に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。公演期間のうち、前半の1月22日(水)~26日(日)に『Whose playing that "ballerina"?』、後半の1月29日(水)~2月2日(日)に『超、Maria』が上演される。チケットは販売中。

取材・文:岡山朋代

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