アメリカが誇る20世紀最大の喜劇作家 ニール・サイモンによる『23階の笑い』を、日本を代表する喜劇作家である三谷幸喜が演出を手がけ、2020年12月に世田谷パブリックシアターにて上演されることが発表になった。

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出演は瀬戸康史、松岡茉優、吉原光夫、小手伸也、鈴木浩介、梶原善、青木さやか、山崎一、浅野和之と三谷作品常連のベテランあり、初めての顔合わせありと多彩な顔触れがそろった。

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ニール・サイモンといえば、その作品だけでなく、脚本家・三谷幸喜の原点を知る上で欠かせない存在として語られることが多い喜劇界の巨星。大学在学中に見た舞台『おかしな二人』(演出:福田陽一郎)が、その作家人生のきっかけのひとつだったという三谷幸喜は、敬愛の念が強いがゆえにニール・サイモン戯曲演出は長く封印してきたという。三谷が初めて"恩師の作品"を演出したのが2013年上演の『ロスト・イン・ヨンカーズ』。それから7年ぶりとなる今回、2度目のニール・サイモン作品の演出に向き合う。

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『23階の笑い』は1993年から1994年にかけてブロードウェイで上演された作品だが、物語の舞台は1950年代のテレビ業界の裏側。
作品に自伝的要素を盛り込んできたニール・サイモンらしく、この作品も彼が実際に大物コメディアン シド・シーザーの下で放送作家・コメディ作家として下積みの時期を過ごしていた体験がリアルに描かれていると言われている。マンハッタンの高層ビルの23階に構えた事務所に行き交うテレビマン、人気コメディアン、若手作家たちが織り成す人間模様、人情の機微、そして何よりも渦巻く笑いの数々。上演を期待せずにはいられない。

<現状の公演概要>
作品名:23階の笑い
(原題:Laughter on the 23rd Floor)
作:ニール・サイモン
演出:三谷幸喜
翻訳:徐賀世子
上演時期:2020年12月
会場:世田谷パブリックシアター (東京公演のみ)
出演:瀬戸康史 松岡茉優 吉原光夫 小手伸也 鈴木浩介 梶原善 青木さやか 山崎一 浅野和之
一般前売開始:2020年11月頃予定

9月12日放送『ミュージックフェア』は、ミュージカルの名曲が勢ぞろいし、新鮮なコラボレーション、演出で新たな光を当てて贈られることがわかった。

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フジテレビ提供


8月に帝国劇場で開催された『The Musical Concert at IMPERIAL THEATRE』で、帝劇で生まれた自身主演のオリジナルミュージカル作品(『ローマの休日』『風と共に去りぬ』『十二夜』)のナンバーを歌って客席を大いに沸かせ、10月から『おかしな二人』でニール・サイモンの喜劇に初挑戦する大地真央
その大地が、2003年以来、17年ぶりに『ミュージック・フェア』に登場。

BR3C4664.JPGフジテレビ提供


大地が演じたミュージカルでの代表曲を、舞台とは異なるアレンジで披露し、トークでは海宝直人宮澤エマ田村芽実ら若手キャストと初めて顔合わせする。


大地は、過去の『ミュージックフェア』で西城秀樹、藤井フミヤらと共演したが、今回も音楽性を追求する同番組ならではの演出と、番組の音楽監督武部聡志氏のアレンジにより、名曲を新たな表現で披露する。
大地が歌唱するのは、宝塚歌劇団トップスター時代の代表作『ガイズ&ドールズ』から「Luck Be a Lady」(訳詞岩谷時子)と、1990年から2010年まで主役イライザ役を演じた『マイ・フェア・レディ』から「踊り明かそう」の英語詞メドレー。
武部氏が大地とのディスカッションを経て施した大人なムードのアレンジにも注目だ。

また『サウンド・オブ・ミュージック』から「私のお気に入り」を、田村芽実とのデュエットにて披露予定。2003年放送の『ミュージックフェア』で大地は故・本田美奈子氏と「私のお気に入り」を披露したが、くしくも田村は本田氏と同じ事務所の女優。大地が収録の合間に「ふとした瞬間が本田美奈子さんに似ている」と思わず口にする、奇跡的なコラボレーションとなった。

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フジテレビ提供


大地真央コメント
「久しぶりのミュージックフェアでしたが、音楽をとことん追求する番組のスタンスも変わらず、楽しくも緊張感のある時間を過ごしました。ミュージカルとも、先日の帝劇コンサートでの歌唱とも違う演出で私が大好きなミュージカルナンバーをお届けします。お楽しみに!」

海宝直人は、ブロードウェイの実力派女優イディナ・メンゼルのトニー賞主演女優賞受賞作『ウィキッド』の「Defying Gravity 自由を求めて」を珍しく男性バージョンで歌唱。宮澤エマは、ミュージカル・コメディ映画『紳士は金髪がお好き』から、マリリン・モンローが歌った「DIAMONDS ARE A GIRL'S BEST FRIEND」を披露する。


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フジテレビ提供

<歌唱曲一覧>
「私のお気に入り」(「サウンド・オブ・ミュージック」より) 大地真央×田村芽実
「EDELWEISS」(「サウンド・オブ・ミュージック」より) 海宝直人×宮澤エマ
「DIAMONDS ARE A GIRL'S BEST FRIEND」(「紳士は金髪がお好き」より) 宮澤エマ
「ポピュラー」(「ウィキッド」より) 田村芽実
「Defying Gravity 自由を求めて」(「ウィキッド」より) 海宝直人
「Luck Be a Lady」(「ガイズ&ドールズ」より) 大地真央
「踊り明かそう」(「マイ・フェア・レディ」より) 大地真央

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ミュージカル『ローマの休日』が104日(日)から28日(水)まで東京・帝国劇場にて上演されます。

本作は、オードリー・ヘプバーン主演の名作映画『ローマの休日』('53年)を原作に、'98年に日本で製作されたオリジナル・ミュージカル。

公式HP▶▶https://www.tohostage.com/romanholiday/

とある国の王女がヨーロッパ歴訪の途中で立ち寄った"永遠の都・ローマ"で手にした、一日だけの自由な時間と、そんな王女のプライベートをスクープしようとローマ観光をエスコートする新聞記者との交流、そして、生涯忘れえない恋とのめぐり逢いを描いたストーリーで、初演はアン王女を大地真央さん、新聞記者のジョー・ブラッドレーを山口祐一郎さんが演じました。

20年ぶりの再演となる今回もスタッフは初演と同じ、脚本・堀越 真、演出・山田和也、音楽・大島ミチル、作詞・斉藤由貴という布陣。そこに新たなキャストを迎え、装いも新たに生まれ変わります!

そんな本作で主演を務める朝夏まなとさん(土屋太鳳さんとのWキャスト)にお話をうかがいました。

★ 朝夏まなと INTERVIEW ★

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*****

――朝夏さんは公式HPに「帝国劇場の舞台に立つことが夢だった」というコメントを出されていましたね。

「はい。帝国劇場は長い歴史があり、選ばれた人しか立てない場所だと思っていました。だから、演劇をやっている者としては、いつかは立ってみたいなと思っていました」

――その作品が『ローマの休日』であることは、どのように思われていますか?

「嬉しかったです。あの『ローマの休日』ですか!?と聞き返したくらい。誰もが知っている物語ですし、アン王女をまさか自分ができるなんて思いもしていなかったので。夢みたいでした。信じられない感じ」

――「アン王女をまさか自分が」というのは、オードリー・ヘプバーンの役だからですか?

「それもありますし、大地真央さんが初演で演じられたことを知っていたので、ええ!?って」

――大地さんが演じられた役を演じることは、朝夏さんにとって「ええ!?」なのですね。

「そうですね。今思えば、『マイ・フェア・レディ』('18年)のイライザ役も真央さんが演じられた役ですし、そういう意味ではある種のご縁があったのですが、それでもやっぱり『いいんですか!?』という気持ちが大きかったです」

――では、今一番大きな意気込みというと、何になりますか?

「先日出演した帝国劇場の『THE MUSICAL CONCERT』(8月1425日)Program Cで真央さんとご一緒させていただいたときに感じたことでもありますが、真央さんは『ローマの休日』だけじゃなく、『十二夜』だったり、いくつもの日本のオリジナル・ミュージカルに出演して、イチからその作品をつくられていました。それを"受け継ぐ"ということが、自分の中では一番大きいです。海外ミュージカルが数多く上演される中で、日本でもこれほどのミュージカルをつくることができ、これだけ大きな劇場でできるということを、また後に再演されるように受け継いでいきたい。その流れの中に今、立たせてもらっているんだということを思っていて。そこが一番の使命だと思っています」

――映画『ローマの休日』も大好きな作品だとうかがいましたが、どのようなところが好きですか?

「まずオードリー・ヘプバーンがかわいすぎるし、グレゴリー・ペックがカッコよすぎて(笑)。ふたりが、立場ではなくて人として惹かれ合っていく様も素敵です。でも最後は自分のいるべき場所に戻るんですよね。いろんな経験をして、アンが王女として成長していく。そこはミュージカルでも丁寧に描かれている部分ですが、感動します。ふたりの恋にキュンキュンするし、ベスパでローマの街を走るところなんかはワクワクするんですけど、最後はホロッとしてしまう。そういうところを演じられたらなと思います」

――『ローマの休日』は多くの人が知る作品だと思いますが、客席にいる人までもが先の展開をわかっている中で演じるというのは、大変なことだなと思ったりもします。演じる側は何が大事になるのでしょうか。

「舞台上で起きることを新鮮に感じることです。その人物にとっては初めて起きることなので、いかにリアルな反応ができるかが大事かなと思います。これはどんな作品においてもそうですけどね。あとはこのミュージカルと映画版との大きな違いに、歌が入るところがあります。映画で『ここに曲が入ったら面白いのに』と思うところには全部曲が入っているので、それは、映画をご存知の方でも新鮮に観ていただけるはず。その情景にピッタリ合う、素敵な曲ばかりですから」

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――少し脱線しますが、朝夏さんは映画を観ながら「ここに曲が入れば面白いのに」と思われるのですね。

「髪の毛を切るところとかとてもワクワクして、『これ、ミュージカルナンバーだったらな』とか思いました。この作品は、そこが本当にミュージカルナンバーになっているので。すごく面白い曲なんですよ。美容師との掛け合いとかあって」

――歌稽古が始まったばかりだそうですが、歌ってみてどうですか?

「日本で作られたミュージカルなので、言葉とメロディがピッタリ合ってるんですよね。無理がなくて歌いやすいです。あと、メロディがシンプルなので、すごく印象に残ります。頭の中でリフレインするような、キャッチーな曲ばかりです」

――しかも踊るんですよね?

「そうそう、ローマの街でアンがお買い物をしている曲とか。けっこう踊りますよ」

――アン王女を演じるうえで楽しみにしていることは?

「王女だから自由な時間がなくて、常にスケジュール通りに動かされているアンが、ローマの街で、自分の意志を持って、初めての体験をたくさんするんですけど、それを自分もアンとして体験できるのが楽しみです。あとは、ジョーさんがどれだけキュンキュンさせてくれるのかも楽しみです(笑)」

――そうですよね!

「ジョーさん、おふたり(加藤和樹さん・平方元基さんのWキャスト)いらっしゃるので。それぞれどういうアプローチで来られるのかすごく楽しみですね。だって自分がやりたいことを叶えてくれる相手ですよ?」

――最高ですよね。

「最高ですよ!カフェ行きたいって言ったらカフェに連れて行ってくれるし、シャンパン飲みたいと言ったら飲ませてくれるし(笑)」

――(笑)。ジョーを演じる加藤和樹さんと平方元基さんはタイプが違うおふたりですね。

「全然違いますね。和樹くんはまだ全貌が見えないんですよ。一見、すごく寡黙でクールな感じに見えるじゃないですか?でもなんか『俺は本当はこんなんじゃない』みたいなことを言っていたので。どんなの?どんなの?みたいな(笑)。けっこうお茶目な方らしいので、そういう和樹くんが大人のジョーをどうつくるのかなっていうのは楽しみです」

――平方さんはどうですか?

「平方さんもお茶目なので(笑)」

――『マイ・フェア・レディ』で共演されていますよね。

「はい。でもそのときはお芝居を一緒にするシーンはほとんどなかったです。平方さんって弟みたいなキャラなんですよ。だけどジョーってアンよりも大人な役なので。どうやって引っ張ってくれるのかなっていう楽しみはありますね」

――なんだか現場が楽しそうですね。

「年齢が近いんです、ふたりとも。和樹くんは同級生だし、平方さんは一歳下で。普段からワイワイしています。部活ノリにならないようにがんばります!」

――(笑)。土屋太鳳さんとは。

「まだお会いしてないです。でもテレビで拝見すると、がんばりやさんなイメージがありますよね。きっとまた違うアンになるんだろうなと思っています」

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――演出の山田和也さんとは『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』('19年)ぶりですが、作品について何かお話されましたか?

「ちょうど昨日、久しぶりに再会できたのですが、作品についてはまだお話しできてないんですよ。山田さんは真央さんの公演も演出していらっしゃるので、今回どんなふうにしていただけるのかなっていう楽しみがあります。お芝居にとても熱くて、だけど役者がどう思っているかも聞いてくださる柔軟な方なので、稽古場でのディスカッションを楽しみにしています」

――2度目のタッグになると、安心感がありますか。

「はい。今回は、山田さんもそうですし、今までの作品で知り合えた方が多い現場なんです。だから安心して委ねられるので、楽しみです」

――今のお話もそうですが、朝夏さんは'17年に宝塚歌劇団を退団されて、'18年の芸能活動再開からさまざまな作品に出演して来られました。今をどんなふうに感じていますか?

「"慣れてきた"という言い方も違うかもしれないですが、物怖じしなくなったというか。最初は、どういうスタンスでいればいいんだろうというのがありました。宝塚時代の私のことを知ってくださっている方もいるけど、全く知らない方もいますから、『この子、何者なんだろう』と思っている方もきっといるだろうなと思いながらお稽古とかしていたので。でも、自分がやるべきことをちゃんとやっていたら、周りの方も認めてくれるし、知り合いも増えていって、最近は現場でやっとちょっと居場所ができた感じもしています」

――活動再開から2年経って、表現の仕方が変わったりもしましたか?

「(宝塚では男役だったので)女性の役をやるうえで気を付けないといけないことが減っていってるなと思います。仕草を意識しないと女性っぽくならなかったんですよ。役の内面的なことで意識しなくちゃいけないことはあまりないのですが、外見ですよね。歩幅が大きすぎるとか、足を広げてしまうとか、そうしないように意識していたことが、ちょっとずつ身についてきたと思います」

――逆に変わらないものはありますか?

「やっぱり毎公演、新鮮にやることです。慣れてしまわないこと。さっきも話したことですが、その人物にとっては初めて起きていることなので、集中して、聞き逃さないように、感情が動くキューを逃がさないように」

――集中力なんですね。

「そうです。想像力と集中力です、この仕事は。そこは変わらないですね」

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――『ローマの休日』は、アン王女が別人のような1日を過ごす作品ですが、朝夏さんが別人になれるとしたら、どんな人になりたいですか?

「えーなんだろ!迷う!これは1日考えたいな(笑)。うーん......男性の俳優かな」

――どなたのイメージですか?

「綾野剛さん!今、『MIU404』を観てますから(笑)。あのドラマ、最高じゃないですか?」

――私も観てます。最高です!

「いいですよね! 綾野剛さんは以前、『モニタリング』でカメラマンのふりをする企画も面白くて。バラエティ番組の企画とは思えないくらい、役作りがハンパなかったんですよ。ああいう方々の仲間に入ってみたいです」

――仲間になりたいんですね。

「そう(笑)。あとは......(自分で)まだあるんかい!」

――(笑)。聞かせてください。

「ハリウッドで大人気の女優さんに1日だけなってみたいですね。映画の現場を体験してみたいです」

――ハリウッドに進出したいという気持ちがあるのですか?

「そういう願望はないです(笑)。でも見てみたい。ハリウッドの現場とかブロードウエイの現場とか。1日でいいけど(笑)」

――開幕が楽しみです。

「先日、『THE MUSICAL CONCERT』のときに、お客様側も、スタッフ側も、劇場での対策がだんだん明確になってきているなと感じました。もちろん手間もかかりますし、皆さん大変な思いで劇場に来てくださっていると思うのですが、それでも『観たい』とか『やりたい』という思いが勝っているから、できているんだと思っています。大変な時ですが、お客様には、劇場にいる間だけはそういうことを忘れられるようなものを、私たちはお届けするのみです。もちろん無理はしてほしくないですが、こちらの対策はできるかぎりやっているので、そこは信じて来ていただけたらと思います」

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取材・文=中川實穂
写真=南方篤
スタイリスト=加藤万紀子
ヘアメイク=根津しずえ

ミュージカル『ローマの休日』は104日(日)から28日(水)まで東京・帝国劇場にて上演。12月、1月と愛知、福岡公演あり。

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オリジナルミュージカルや韓国発のミュージカルを製作してきたatlasによるミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」。9月24日(木)・25日(金)よりオンライン配信を予定している当コンサートの収録が8月下旬、東京・COTTON CLUBにて行われた。歌われるミュージカルナンバーは、『あなたの初恋探します』『Indigo Tomato』『SMOKE』『最終陳述』『カリソメノカタビラ』『アンクル・トム』、そして最新作『BLUE RAIN』の計7作の劇中歌。それぞれの作品に出演していた彩吹真央池田有希子上口耕平大山真志木暮真一郎坂元健児新納慎也東山光明水夏希山田元吉野圭吾が顔を揃え、MCとして駒田一が盛り上げた。この収録の模様をレポートする。

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会場は大人の空間・COTTON CLUB。本来、観客が入るスペースには複数台のカメラが立ち並び、カメラレールも敷かれている。12人の出演者たちはラグジュアリーな会場の雰囲気にふさわしく、フォーマルな装い。ただ、流れる空気はフランクで楽し気。実際には共演経験のない間柄のキャストもいるが、それを感じさせない和やかさがあるのは、atlas製作の特徴だろう。

収録はブロックごとに分けて行われた。オープニングはatlas製作ミュージカルの記念すべき第一作『あなたの初恋探します』より。MCも務める駒田一が本作品のプロローグでもある「DESTINY」を軽快に歌う。ノリの良さそのままに『Indigo Tomato』の「Brain Man」で大山真志がカッコよく決め、『最終陳述』より「ブルーノ」を山田元がしっとりと歌い上げる。本編を未見の方もご安心を。MCコーナーでは、これらの作品がどういった内容のものなのか、駒田が巧みに聞き出している。

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続けて水夏希が主演したオリジナルミュージカル、『カリソメノカタビラ』のコーナー。デオン・ド・ボーモン役の水、ボーマルシェ役の坂元健児がムーディに、めくるめく歴史絵巻へといざなう。斉藤恒芳が手掛けた楽曲の美麗さも、改めてかみしめる。さらに、本編では出演していなかった彩吹真央がマリー・アントワネットに扮し、水のデオンとデュエットする楽曲も。ここでしか聴けない組み合わせはミュージカルコンサートならではの"お楽しみ"だ。水と彩吹の仲良しコンビはトークコーナーでも気の合ったところを見せていたので、そちらも乞うご期待。

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その後、吉野圭吾&新納慎也が出演はしていない意外な楽曲で踊りまくったり......とファン仰天&垂涎のナンバーなどを挟み、第一部のクライマックス『SMOKE』コーナーへ。『SMOKE』はこれまでに三たび上演を重ねる、atlasミュージカルの代表作。ミステリータッチのストーリー展開の中、芸術家の業や生きることの苦しみと希望を描き出すディープな3人ミュージカルだ。本作に出演経験のある大山真志、池田有希子、木暮真一郎、彩吹真央が劇中ナンバー5曲を続けて披露。本編上演時、俳優たちの魂を削るような熱演も評判だったが、ナンバーがかかるとその時の感覚を思い出すのか、コンサートでもみな火花を散らしあい、大熱唱。浅草九劇バージョンの超:大山真志とシアターウエストバージョンの紅:彩吹真央という、組み合わせを超えたデュエットも披露。ラストの「翼」の高揚感、開放感もひときわ心地が良かった。なお『SMOKE』トークコーナーでは人数が多いためこのご時世らしくパーテーションが登場。しかし構成を手掛ける広崎うらんが「でもこれ、SMOKEの世界よね!」と発言したのを皮切りに、パーテーションを劇中に登場する鏡に見立ててマイムをしてみたり......と、あくまでもポジティブなキャスト陣。ちなみにここのトークも本番中に起きたハプニングのエピソードなど楽しい話題満載だったのでお楽しみに。

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続いて第二部の収録へ。二部は『最終陳述』コーナーよりスタート。こちらは昨年上演されたふたりミュージカルで、半年後にはコンサート版も上演された人気作。本作からはガリレオ・ガリレイを演じた山田元が登場。今回は大山真志、坂元健児が加わり、温もりのあるチャーミングな作品の風を伝えた。

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ふたたび『あなたの初恋探します』のナンバーを挟み、クライマックスは『アンクル・トム』と最新作『BLUE RAIN』のリミックス。"雨"をキーワードにリンクする2作品、計10曲、約30分ノンストップのパフォーマンスだ。『アンクル・トム』出演経験者は新納慎也、上口耕平、池田有希子、山田元。『BLUE RAIN』からは吉野圭吾、水夏希、東山光明、池田有希子。『BLUE RAIN』では水が扮するクラブ歌手ヘイドンがクラブで歌うタイトルナンバーがこの日の会場であるCOTTON CLUBで歌われる圧倒的リアリティ、『アンクル・トム』で老人役に挑戦した新納が、衣裳やメイクはそのままに声色だけで役柄を蘇らせた迫力、精神的に追い詰められていく役柄を演じた『アンクル・トム』の上口と『BLUE RAIN』の東山がステージ上でクロスする演出......。見どころ多数、「これが見たかった!」と「そうきたか!」がミックスされた憎い構成になっているので、2演目のファンは楽しみにしていてほしい。

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公演から時間がたっていても、それぞれの俳優の肌に役がしっくりなじんでいるのだろう、鮮やかにその役が蘇る。数曲のピックアップでも、一気に当時の作品、当時の役に入り込む俳優陣の熱演・熱唱にワクワクしたり、ホロリときたり、胸がキュッとしたり。7つのミュージカルをギュッと濃縮した"いいとこ取り"のコンサート、フィナーレは全員登場、ちょっと意外な作品からのナンバーをみんなで踊りまくり、5時間超にわたる濃密な収録は終了した。コロナ禍という状況の中オンライン配信という選択がなされた本コンサート。もちろん生の楽しさは何物にも代えがたいのは百も承知。ただ、「最後のキメはこのカメラに向かって」といった普段のステージでの演出ではありえない指示や、"あえてカメラの前を横切る"といった演出もつけられていたので、「完成映像はどんなカッコいいものになっているんだろう!?」という期待感も生まれた。今だからこそ実現したオンラインコンサート、7つの作品のファンはもちろん、広くミュージカルファン必見のものになりそうだ。(取材・文:平野祥恵)

ミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」は配信はPIA LIVE STREAMINGにて。視聴チケットは9月18日(金)発売予定。視聴期間や内容の詳細は公式ホームページ(http://g-atlas.jp/amc/)にて。

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生駒里奈さんが主演を務める『かがみの孤城』の通し稽古が、開幕初日を約10日後に控えたタイミングで報道陣に公開されました。げきぴあ編集部はこれまで、主人公・安西こころを演じる生駒さんにインタビュー。作品や役柄のイメージを膨らませる稽古前の心境に耳を傾けました。

【ぴあニュース】生駒里奈、役に自分重ね「いじめの経験あるからこそ発信したい」

作家の辻村深月さんが2017年に刊行し、翌年の本屋大賞を獲得した本作。同級生の悪意に傷つき、家に閉じこもる中学1年生のこころはある日、自室の鏡を通じて見知らぬ城がそびえ立つ異世界へ引き込まれてしまう。そこで出会った6人の仲間と望みが何でも叶う"願いの鍵"を見つけようと奔走するうちに、彼らは自分たちが城に集められた理由を目の当たりにして──。

脚本・演出は、同じく辻村さんの『スロウハイツの神様』(2017年初演)を舞台化した成井豊さん。キャストは他に溝口琢矢さん、野田裕貴さん(梅棒)、前田航基さん、原田樹里さん、河内美里さん、渡邊安理さん、多田直人さん、木村玲衣さん、石森美咲さん、稲田ひかるさん、澤田美紀さんが名を連ねています。

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稽古スタートから21日目を迎えたこの日、通し稽古が行われるのは2度目。前日の"初通し"を終えた仲村和生プロデューサーのツイートには「演出家からは1回目の通しとしてはとてもよい、と高評価」とあって、いやがおうにも期待が高まります!

新型コロナウイルス感染症の影響もあって、稽古場は常にソーシャルディスタンス仕様。キャストは全員、マスクの上から透明のマウスシールドを装着し、飛沫防止策を徹底していました。セリフをそらんじるキャスト、段取りを確認しあうスタッフの中で、生駒さんは通し稽古前のわずかな時間を使って黙々とダンスシーンの振付をさらうなど準備万端です!

通し稽古は、こころが"かがみの孤城"で過ごした記憶をたどるモノローグで開幕。同級生からの執拗ないじめを機に心身に不調をきたし、こころが部屋から出られなくなった瞬間、For Tracy Hyde「繋ぐ日の青」のイントロが流れ、オープニングのダンスシーンへ突入します。人がくぐり抜けられるサイズの大きな姿見を効果的に用い、こころと城で出会う6人が揃い踏みするステージング。これから始まる物語の世界観を伝える、印象的な幕開けでした。

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インタビューで「いじめられた経験がある自分だからこそ、役に説得力が出る」「同じ悩みを抱えている全ての方に向けて発信したい」と述べていた生駒さん。周囲へ心を閉ざし、不登校になったこころの"戸惑い"を、マスクをしていてもわかる視線越しの繊細な表情で立ち上げます。孤城の仲間と出会い、母(渡邊安理)やフリースクールの喜多嶋先生(原田樹里)の理解を経て"成長"していく様子も必見です。

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城に集められた他の中学生と境遇は異なるものの、「学校へ通いたかった」気持ちが人一倍強いリオン。演じる溝口さんは、通し稽古後に行われたダンスシーンの確認でリーダーシップを発揮していました。一緒に踊るキャストを代表して段取りを質問すると、振付を手がける川崎悦子さんから「呑み込みが早くて助かるわー!」の声が。潤滑油として稽古場に貢献する舞台裏を覗かせてくれました。

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野田さんは、公演パンフレットの座談会インタビューで見せたご自身の温厚な人柄を役に投影。東京に転校してから学校へ行けなくなってしまったものの、6人をなだめる大らかなスバルとして存在感を示していました。梅棒のメンバーだけあって、ダンスシーンをリードする姿にも注目です。

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前田さんは、ご本人いわく「優しい両親から甘やかされて育ったであろう」ウレシノ役。惚れっぽい性格で、孤城で出会う女性陣の中で恋愛対象をどんどん変えていく節操のなさをチャーミングに造形しました。中学生キャスト最年少だけあって、学ラン姿が誰よりも似合っていたことを伝えておきます(笑)。

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ウレシノから強すぎる気持ちをぶつけられ、困惑するフウカを演じる河内さん。母親の「娘をピアニストに」というプレッシャーに押しつぶされそうになる役どころです。メガネ姿でおとなしそうなフウカが、孤城の仲間に出会って自分らしく青春の日々を取り戻していく様子には心が温かくなりました。

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稲田さんが扮するのは、家庭環境に問題を抱えるアキ。ご本人が「強がったり本心を隠したり、偽りの自分を演じているようにも見える」と分析するように、朗らかなキャラクターながらもアンバランスな一面を覗かせます。それが結実する回想シーンの激情は見どころ。感情を爆発させ、現実に立ち向かう姿には思わず手に汗を握ってしまいました。

それぞれ複雑な事情を抱えつつも、やっぱり学校へ行きたい──。7人の切実な思いが丁寧に描かれるからこそ、彼らが城へ集められ、出会った必然性が浮かび上がります。救いのラストに向けて加速する展開はもちろん、原作を尊重しながら舞台化する成井さんのクリエーションも健在。ところどころに挟まれるFor Tracy Hydeの涼しげな女性ボーカルも、登場人物の心象風景を効果的に彩っていました。

通し稽古の初期段階から高い完成度を見せ、関係者を魅了した『かがみの孤城』カンパニー。音楽・美術・照明・振付・衣裳といったスタッフワークも加わった本番では、どのようなステージを見せてくれるのでしょうか。開幕が非常に待ち遠しくなりました!

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公演は、8月28日(金)~9月6日(日)に東京・サンシャイン劇場にて。その後、18日(金)~20日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、22日(火・祝)に愛知・刈谷市総合文化センター 大ホールと巡演する。

また本作はPIA LIVE STREAMを通じて、収録映像を後日視聴できる「ディレイ配信」と9月6日(日)に行われる東京千秋楽公演の「生配信」が実施されます。


ディレイ配信

[配信公演]2020829日(土)18:00開演回

[視聴期間]202091日(火) 19:3026:30

生配信

[配信公演]202096日(日)13:00 東京千秋楽公演

[視聴期間]202096日(日)13:0023:59

※いずれも開始30分前から配信ページに入場可能となります

2学期が憂鬱な学生さんをはじめ、コロナ禍や猛暑に疲れた大人の皆さんも、劇場での鑑賞と配信サービスで"クールダウン"してみては。

取材・文:岡山朋代

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NAPPOS PRODUCE 舞台「かがみの孤城」

2020828日(金)~96日(日)

東京・サンシャイン劇場

2020918日(金)~20日(日)

大阪・サンケイホールブリーゼ

2020922日(火・祝)

愛知・刈谷市総合文化センター 大ホール

[原作]辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社刊)

[脚本・演出]成井豊

[出演]生駒里奈、溝口琢矢、野田裕貴、前田航基、原田樹里、河内美里、渡邊安理、多田直人、木村玲衣、石森美咲、稲田ひかる、澤田美紀、山本沙羅

※出演予定でした木津つばささんは降板となり、代わりに山本沙羅さんが出演されます。詳しくは公式サイトをご確認ください。http://napposunited.com/kagaminokojo/

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My Story
--素敵な仲間たち--

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『レ・ミゼラブル』『エリザベート』『ローマの休日』『モーツァルト!』 『レベッカ』『ダンス オブ ヴァンパイア』・・・
帝劇で様々な大作ミュージカルに出演し、神秘的な歌声と圧倒的な存在感で、観客を魅了し続けている「ミュージカルの帝王」山口祐一郎が、コロナ後初めて帝劇の舞台に立つ!

題して『 My Story -素敵な仲間たち 』

歴史上初めてとなる帝国劇場で本格的なトークショー公演が決定した。

構成・演出は『ローマの休日』ほか数多くの山口主演ミュージカルの演出を手掛けてきた山田和也

山口と山田のオンライン打ち合わせでは、初トークショー挑戦にもかかわらず、山口から「MCは必要ない」との驚きの言葉が・・・!
90分の上演時間をどのように構成していくか、構成すること自体が可能なのか・・・・乞うご期待!
また、山口が共にミュージカルを創り上げてきた"素敵な仲間たち"が各公演替わりで登場し、共演の思い出やミュージカルの素晴らしさを語り尽くすスペシャルな内容にも期待したい。

【浦井健治&保坂知寿】
2004年に『エリザベート』ルドルフ役で帝劇に初めて出演して以来、山口との共演を重ねつつ、スターダムを駆け上がり、現在 シアタークリエで主演を務めている浦井健治 。
劇団四季時代に数々のミュージカルで共演し、2009年に帝劇で初主演ミュージカル『パイレート・クィーン』で山口と共演し、その後も数多くのミュージカルやコンサートで共演した保坂知寿。
12月のシアタークリエ公演『オトコ・フタリ』で共演する3人が息の合ったトークを展開します。


【加藤和樹&平方元基】
ミュージカル『ローマの休日』 初演(1998年青山劇場 2000年帝国劇場 山田和也演出)で山口祐一郎が演じた ジョー・ ブラッドレー(新聞 記者 を20年ぶりに演じ継ぐ、加藤和樹と平方元基が参加 。 『レディ・ベス』などでの共演もある、3人のブラッドレー記者が語らう回にご期待ください!


【中川晃教】
2002年に『モーツァルト!』日本初演タイトルロールで華々しくミュージカルデビューを遂げ、今月も『ジャージーボーイズ i n コンサート』に主演した中川晃教。『モーツァルト!』でヴォルフガング と対立する コロレド大司教を演じた山口との13年ぶりの共演となります。饒舌な二人の止まらないトークにご期待ください!

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『My Story 素敵な仲間たちー』 構成・演出:山田和也


<公演期間・会場>
公演期間:

9月17日(木)
 13時: 山口祐一郎& 浦井健治&保坂知寿

 17時: 山口祐一郎& 加藤和樹&平方元基


9月18日(金)
 13時: 山口祐一郎& 中川晃教

 17時 山口祐一郎& 中川晃教

会場:帝国劇場
 ※上演時間は各回90分を予定

<チケット料金> ※客席は千鳥配列50%稼働

 S 席¥8,000

 A 席¥5,000

 

チケット情報はこちら

鞘師里保さんが主演する<shared TRUMPシリーズ>音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』が920日(日)から東京・大阪にて上演&配信されます。

HP▶▶https://trump2020.westage.jp/

本作は、劇作家・末満健一さんがライフワークに掲げ、2009年から展開する人気演劇公演「TRUMPシリーズ」の新しい試みとなる「shared TRUMPシリーズ」の第一弾。

ひとつの世界観を複数の作家が共有して創作する"シェアードワールド"の手法を用いた短編アンソロジー形式での公演となり、今回は

<雨下の章>中屋敷法仁(劇作・演出家、劇団柿喰う客 代表)、降田天(小説家・推理作家)、宮沢龍生(小説家)/末満健一

<日和の章>岩井勇気(お笑いコンビ・ハライチ)、葛木英(脚本家・演出家・俳優)、来楽零(小説家)/末満健一

という面々が脚本を手掛けます。

作家の詳しい情報は▶▶こちら

描かれるのは、TRUMPシリーズ2作目『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』('14)の主人公・リリーが不老不死のあてなき旅の中で出会う<雨下の章>と<日和の章>のふたつの物語。二作同時上演です。

そもそもTRUMPシリーズとは?▶▶こちら

本作で、『LILIUM』に続き出演する鞘師さんと、脚本・演出を手掛ける末満さんにお話をうかがいました。

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*****

――おふたりは舞台『ステーシーズ 少女再殺歌劇』('12)、『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』('14)ぶりのタッグとなりますが、会われたのは久しぶりですか?

末満 この作品のビジュアル撮影が5年ぶりの再会でしたね。

鞘師 そうですね! 最後にお会いしたのがNAPPOS UNITEDTRUMP』('15)を観劇したときだったので。

――今作『黑世界』は、TRUMPシリーズ最新作として本来やるはずだったミュージカル『キルバーン』がコロナの影響で上演が難しくなり、生まれた作品だそうですね。

末満 はい。舞台上のソーシャルディスタンスをはじめとするいろんな条件を考えると、朗読劇は一つの手段だとは思ったのですが、僕、もともと朗読劇に対して食わず嫌いなところがあったんですよ。お手軽感のようなものが出ちゃったらいやだなと思って。なのでこの機会に、自分がやる朗読劇というものを探ってみようと思いました。

――リリーを主人公にした"音楽"朗読劇にしたのはなぜですか?

末満 『キルバーン』がミュージカルの予定だったので、歌ものではありたいなと思って。その中でいろいろと考えたときに、シックで落ち着いた世界観のイメージが自分の中に浮かび、リリーのロードムービー的なお話が合うんじゃないかと思いました。TRUMPシリーズではいろいろな時代を描いていますが、『LILIUM』のその後の時間軸は描いたことなかったですし。そういう、いろんな状況に導かれるようにして行き当った作品ですね。

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――鞘師さんは'15年にモーニング娘。を卒業されて、海外留学も経験され、久しぶりの舞台となりすますが、どうして出演を決めたのですか?

鞘師 "決めた理由"というより"迷うことなく"という感じです。もちろんブランクがあるので、尽くさなきゃいけないことがたくさんあると思いますが、やりたいと思いました。

――それは『LILIUM』の経験もあってのことですか?

鞘師 そうです。『LILIUM』という作品は、モーニング娘。として活動をさせていただく中でやらせていただいたもの(作品にはモーニング娘。'14選抜メンバー、スマイレージ、ハロプロ研修生が出演した)ではあるのですが、「新しい一面を見せる」みたいに単純に語れるような出来事ではなかったというか、自分の中ではすごく大きな出来事だったんです。TRUMPシリーズのファンの方に観ていただけましたし、歌や表現に対する考え方も変わるきっかけになった作品だったので。自分にとってすごく大きな経験になっています。

――そんな場所に鞘師さんが6年ぶりに戻ってこられる『黑世界』ですが、まず、<雨下の章><日和の章>というタイトルはどういうことでつけられたのですか?

末満 これ、実はもともと、<100年後編><200年後編>という予定だったです。『LILIUM』の100年後の話、200年後の話、という意味で。それで作家さん達から届いた脚本を読んだら、<100年後編>の話はどれも雨が降っていたんですよ。それで、だったら<雨下の章>とつけようかな、と。『LILIUM』も雨が降っているお話だったので、その名残もありつつ。逆に<200年後編>は雨が降らない世界ということで<日和の章>なんですけど、内容的にも割とハートウォームな感じなんです。TRUMPシリーズって悲劇的な話が多いし、今作でもそういう要素がないわけでもないんですけど、<日和の章>は太陽が温かい感じがある。なので、この世界を楽しむための新しい見え方としてアリかなと思ってつけました。

鞘師 そういうことだったんですね。 実は今、台本を覚えている途中で。新良エツ子さんと会話するシーンが多いので、最近ふたりでリモートで読み合わせをしているんです。

末満 そうなんだ。ひとりでやるより覚えやすいもんね。

鞘師 その読み合わせの初日に、ふたりで「<雨下>と<日和>は対照的な話だね」と話して、悲しいお話が多い<雨下>のほうを先に覚えようってことになったんです。未来に明るいことがあるほうがいいで。「日和が待ってる!」みたいな感じで。

末満 ははは!

――ちなみに『LILIUM』は6年前の作品ですが、新良さんと読み合わせをされる中で感覚はスッと戻るものですか?

鞘師 いえ、最初は舞台に立っている想像もできませんでした。でも読み合わせをしたり、過去の作品を観させてもらって、TRUMPの世界観や空気感を今、身体に取り入れている感覚です。

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――末満さんが現時点で「ここは大切にしてほしい」ということはありますか?

末満 特にないです。

鞘師 (笑)

末満 でも、6年の歳月がもたらすものは確実にあるだろうから。過去作品を観てもらうのもありがたいけど、どちらかというと、自分が経験してきたものを大事にしてもらえたらいいなと思います。

鞘師 はい!

――脚本は読んでいかがでしたか?

鞘師 読んでいてすごく楽しいです。短編アンソロジー形式で、どんどん話が変わっていきますし。お客様には新しい見応えを感じていただけるんじゃないかと思います。

――本当に多種多様なストーリーが楽しいですよね。そしてそれによってTRUMPシリーズの器の大きさも感じられました。岩井さんの脚本なんて、TRUMPの世界観でここまで笑うことできます!?って。

鞘師 たしかに(笑)。

末満 10年やってきましたからね。10年かけてしっかりした土台ができていったんだなと思います。でも実は、岩井さんの最初の脚本はシリアスなラブストーリーだったんですよ。だけど先入観で、僕、それをコメディだと誤読してしまって。

――ええ(笑)。

末満 それで、最初の脚本もすごくよかったんですけど、他にもシリアスなラブストーリーがあったので、岩井さんに「僕はこのラブストーリーをこういうふうに誤解したんです」とお伝えして、その方向で書き直していただいて、今の脚本になりました。だから最初とはガラッと変わったんですけど、僕も読んで、「ちょっと待てよ、これ。おもしろい」って(笑)。TRUMPの設定をうまく利用したコントになってますよね。

――皆さんそれぞれにすごく魅力的な脚本でしたね。

末満 できあがった脚本を最初に読んだ時、「そうそう、こういう俺からは出ないものが欲しかったんだ!」という気持ちでした。宮沢さんのお話は優しいヒューマンドラマだったし、来楽さんのシリーズの設定を巧みに使ったラブストーリーもうまいなと思ったし、降田さんのお話は流石ミステリー作家という驚きもあって。葛木さんのお話は観念的な罪悪と贖罪に関する物語で、お客さんによって捉え方が違うみたいな作品に仕上がっていて、僕はどうしてもわかりやすく書きがちなので、これをこの世界観の中で成立させられたら面白いなといました。中屋敷さんのお話は中屋敷さんワールドでぶっ飛んでいるし(笑)。純粋に読者として、読むのが楽しかったです。

――そして末満さんの書かれた脚本が大きな軸になっていました。

末満 一本の軸として僕の脚本がありながら、他の作家さんの脚本が振れ幅を出してくれるという感じですよね。いろんなストーリーがあるので、キャストたちのいろんなお芝居を観られる楽しみもあるだろうなと思います。

――そのキャストの皆さんもバラエティ豊かですよね。(キャストはこちら

鞘師 私はキャストの皆さんのお名前を拝見してから、考えないようにしています。プレッシャーになるので(笑)。稽古では前のめりに勉強させてもらいたいという気持ちもありつつ、「『LILIUM』に出させてもらった」という気持ちもどっしり持って、やりたいです。

末満 ミュージカルにしても、僕が関わっている2.5次元作品にしても、TRUMPシリーズにしても、「なんかこの顔ぶれよく見るよね」とか「この人はいつもいるよね」みたいなことって見かけると思うんですけど、今回は、そういうことがない、あまり見たことのないようなキャストの並びにしたいなと考えました。ミュージカル俳優もいれば大ベテラン俳優もいて、声優もいて、芸人もいて、モデルもいて......とバラバラになりました。今回、他の作家さんに脚本をお願いしたのもそうですが、TRUMPシリーズを10年やってきて、物語を完結させるまでには多分あと最低10年くらいかかりそうな見通しなので、今までやってきたことをなぞるだけでは、これからの10年を自分の中で楽しめないなと思って。ここまでに固まってきたものを未来でまた強く固めるために、一旦ほぐしたい。今回はそれができる面白い顔ぶれが集まったから、このゴリゴリに固まった世界をかきまわして、また違った見え方を、お客さんにもそうだし、僕自身にも見せてくれるんじゃないかなという期待感があります。

――その中心に立つ鞘師さんは。

鞘師 私は変わらないほうがいいんですかね。

末満 うん。真ん中、中心軸だからね。自然と変わっている部分もあるだろうから、そこは大切にして、無理に変わろうとはしなくていい。

――音楽はどのようなイメージですか?

末満 どちらかというと、落ち着いた大人な雰囲気の楽曲世界になるんじゃないかな?と思っています。極力、生演奏にしたいんですよ。打ち込みも流すとは思いますが。ただ、そういうクラシカルな中でも、ロックのイメージがある松岡充さんに合う曲も、アイクさんが歌うラップの曲もある予定です。作曲の和田さんに「クラシカルな中でそういうことってできるの?」って聞いたら、「できます!」と言っていたので(笑)。

――ちなみに鞘師さん、末満さんってどんな印象ですか?

鞘師 なんか......親戚のおじさんみたいな(笑)。

末満 (笑)

鞘師 撮影で5年ぶりにお会いできたときに、「やっと会えたー!」みたいな気持ちになりました。実は休業していた間も、ファンの方からメッセージをたくさんいただいていて、その中に「もう一回TRUMPシリーズに出てほしい」というものが多かったんです。だからずっと頭の片隅には常に末満さんとTRUMPシリーズのことがあり、やっと会えた気持ちになりました。

末満 『ステーシーズ』で初めて会った頃、鞘師は1314歳とかだったよね?

鞘師 そうです!

――当時はどんな印象でしたか?

末満 僕はアイドルとお仕事するのは『ステーシーズ』が初めてだったんですけど、やっぱり皆さん、何万人、何十万人に見てもらう世界で生きてる人たちなので、自己表現やキャラが飛び抜けている印象でした。でもその中で鞘師はなんか......嵐の中でそこだけ風が吹いてない、みたいな。落ち着いた子でした。

鞘師 本当ですか!

末満 さっきも"中心軸"みたいな話をしたけど、『LILIUM』のときも、鞘師が中心にいると組み立てやすかった。周りのキャラを濃くしても、芯(鞘師)がしっかりしてるから、作品が崩れないなっていうのがあって。でも当時、鞘師は「私、大丈夫ですか?」みたいなことを言ってたよね。

鞘師 え、覚えてないです(笑)。

末満 だから「そのままでいいから」みたいな話をした。鞘師がいると軸が通るというか。その軸があるからこそ、『LILIUM』の凛とした情緒のある世界観ができあがった。だから逆にサブにて暴れる鞘師もいつか見てみたいとも思ってるんだけど。今回は怪物みたいな表現者がゴロゴロしているので(笑)、鞘師を真ん中に置けば一本筋が通るなという安心感があります。

鞘師 今のお話を聞いて、余計なことを考えずにがんばろうと思いました。

――本番を無事、迎えられることを祈っています。

末満 感染者を出さないように気を付けながら。ただ、どれだけ予防しても、かかるときはかかっちゃうので。最大限予防しつつ、運に委ねつつ。

鞘師 こういう時だからこそ楽しみにしてくださっている方もたくさんいらっしゃると思うので。無事に開幕に辿り着けたらいいなという気持ちでいっぱいです!

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920日(日)から104日(日)まで東京・サンシャイン劇場、1014日(水)から20日(火)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演。

ライブ配信は922日(火・祝)、26日(土)、27日(日)、103日(土)、4日(日)の10公演。

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チ
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8/9(日)~11(火)にて配信の~韓流ぴあPresents Kミュージカルシネマ~ 「モーツァルト!」

韓国版 「モーツァルト!」プロデューサー キム・ジウォン(EMK)さんの特別インタビューを掲載いたします!

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1.「モツァルト!」10周年公演おめでとうございます。今年の公演は、過去のものと比べても特別ではないかと思いますが、制作過程で最もを配った部分がありましたら教えてください。そして10周年公演の観覧ポイントもえていただけますでしょうか。

EMKの最初の作品でもあるミュージカル「モーツァルト!」が韓国で10周年を迎えました。このように、10年間愛されることができた理由は、なによりも「モーツァルト!」という言葉が持っている力だと思います。唯一舞台の上でのみ新たに感じることができる、天才音楽家の人生と成長過程、苦痛と喜びを作品を通じて経験して頂きたいと思います。今回の10周年公演はまさに「モーツァルト!」とEMKが積み上げてきた10年のノウハウの集大成だと思います。 5回の韓国公演を経て最も良かった構成を、完全に新しくなった舞台美術の中に溶け込ませてお見せしたと思いました。何よりも、新型コロナウイルスにより全世界的に危機を経験している時期に、「モーツァルト!」が与える慰めと希望のメッセージに耳を傾け、観覧して頂きたいと思います。

2. 10年前に初めて公演した時、このように10年間公演することを期待されていたでしょうか?

一回の失敗を経験して、すべてを注いで準備した作品だっただけに、大きな期待をかけていたのは確かですけれども、このように長い期間大きな愛を受けることは思いもしていなかったです。20年、30年後も愛される作品になることを願います。

3.日本の「モツァルト!」もご覧になったと思いますが、韓国版「モツァルト!」との違いがありましたら教えてください。

もちろん、日本の「モーツァルト!」を拝見いたしました。日本版は作品の中にはっきりと見えるモーツァルトとアマデの関係性、そして各キャラクターたちのドラマが生きる描写に大きな感銘を受けました。キャラクター間の関係性がはっきりしているので、劇の構成がしっかりして、よりドラマチックに感じました。その後、韓国での初演を準備するときに大きな参考になるほど印象深く鑑賞いたしました。

韓国版との違いがあるとしたら音楽的構成ではないでしょうか。日本の「モーツァルト!」がドラマを強調して感情を引っ張って行く作りだとしたら、韓国版は観客が感情表現をすることができるように、曲の中に手拍子するポイントを入れるなど異なった構成になっています。韓国で「モーツァルト!」が公演されている劇場の規模が非常に大きく、また韓国の観客は派手な舞台を好むため、日本の舞台とは違った魅力を感じることができると思います。

4.10周年公演のモツァルト役で、パクウンテ、キムジュンス、バクガンヒョンの3人をキャスティングした理由をえてください。

10周年公演であるだけに、「モーツァルト!」と言えば浮び上がる俳優をキャスティングしたいと思いました。

初演当時、パク・ウンテさんはアンサンブルの一人として、ドラマチックな主演デビューを飾り、今では韓国ミュージカル界に欠かせない代表的な俳優になりました。キム・ジュンスさんは、ミュージカルデビュー作として「モーツァルト!」の舞台に立ち、当時3,000席の世宗文化会館を初めて完売させた俳優となりました。この二人の俳優は「モーツァルト!」に格別な愛情を持ち、今回快く舞台に立ってくれました。この場を借りてお礼を伝えたいと思います。そしてバク・ガンヒョンさんは、10年前にパク・ウンテさんとキム・ジュンスさんが「モーツァルト!」で新たなスタートを切ったように、これからの10年を担う新しいモーツァルトとしての期待を抱いてキャスティングしました。

5.  EMKが制作した「モツァルト!」を、今回初めて日本でオンライン配信をすることになりました。今回の配信をするにあたり、特にを配った部分がありましたらえてください。

新型コロナウイルスによりアンタクト(非接触)サービスが台頭し、世界の公演文化にも映像サービス産業が大きく注目を集めています。 EMKも以前から映像サービスを準備していましたが、今回の「モーツァルト!」が初めての有料のオンライン公演になるので、多くの部分で悩んで準備しています。会場の臨場感をより一層生き生きと伝えるために、シーン別の撮影会議を細かく行うなど、万全を期した事前準備を進めています。今回をきっかけに映像サービスがさらに活性化され、発展をし、より多様な作品を日本の皆さんに紹介することができるよう、多くの応援をお願いします。

6. 海外の作品を選定するとき、基準となるものがあればえてください。

EMKが追求するスタイルの作品なのか、韓国の観客たちの情緒に合った作品かを最初に考えて作品を選びます。 10年前の「モーツァルト!」をEMKの最初の作品として選んだ時、原作元であるVBWはもっと有名な「エリザベート」をすすめました。しかしオーストリアの皇后は、当時韓国人にはあまり知られていない人物でした。しかし、モーツァルトは韓国人なら誰でも知っている人物だと思いましたし、その予想は的中しました。このように、当時の社会的雰囲気や国民が好む人物も一緒に考えながら作品を選定します。

7. EMKの作品の中でキム代表が最も愛着を持っている作品をえてください。そして最も大だった作品をえていただけますでしょうか

最も愛着を持っている作品は、断然「モーツァルト!」です。今一番好きな公演を挙げる時は「モーツァルト!」を最初に挙げます。一番大変だった作品は、EMKの最初の創作作品である「マタハリ」を挙げたいです。初の創作作品だっただけに試行錯誤も多かったですし、EMKの創作作品への観客の期待に応えたいと思い、最後まで悩んで相談して作り上げた作品です。

8. EMKの今後の計と目標をえてください。また、韓ミュジカルのグロバル展開のためにどのようなことを考えていらっしゃいますでしょうか?

新型コロナウイルスにより映像化が必須とされている今、さまざまなプラットフォームを通じて韓国ミュージカルを世界中に知らせて、大きな相乗効果を出すことができるよう多角的な努力しています。映像化だけでなく、海外進出も加速すれば、日本でもすぐにEMKのさまざまな作品を見ることができると思います。

9.「モツァルト!」10周年公演をしみにしている日本のミュージカルファンに一言お願いします

「モーツァルト!」を、そして韓国ミュージカルを愛してくださって誠にありがとうございます。新型コロナウイルスにより、劇場で見ていただくことができませんが、このように映像で披露することになりうれしく思います。誰もが難しい状況である今この時期、「モーツァルト!」の歌を通じて皆さんを慰めることができたら幸いです。

韓国公演を日本語字幕付きで自宅で体験できるチャンス!集大成を飾るべくキム・ジュンス、パク・ガンヒョン、パク・ウンテの豪華キャスト陣が繰り広げる感動の物語を是非お見逃しなく!

チケット情報はこちら

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新国立劇場オペラパレスにて、子どものためのバレエ劇場2020「竜宮~亀の姫と季(とき)の庭~」が開幕した。

オペラパレスでの公演は、2月26日のバレエ公演(『マノン』)以来5カ月ぶりの再開。

初日を前に公開されたゲネプロの模様をレポートする。

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久しぶりに多くの観客を迎え入れる劇場は、マスク着用の要請はもとより、サーモグラフィによる検温、

アルコール消毒液による手指の消毒、客席には1席おきに空席が設けられ、トイレの前には順番待ちの人が密にならないよう立ち位置の目印が記され──と、

観劇時の安心につながるさまざまな配慮が施されている。

そんな中で上演される「竜宮」は、コンテンポラリー・ダンスのダンサー、振付家として知られる森山開次が手がける、

子どもも楽しめる新作バレエ。「森山開次がバレエを?」という話題性もあって、広く注目される舞台だ。

モチーフは「浦島太郎」だけれど、皆の知っている昔話とひと味違うバレエであることは、冒頭から登場する「時の案内人」(貝川鐵夫)の存在で強く印象付けられる。

バレエ化にあたって森山が注目したのは、「御伽草子」(室町時代から江戸時代初期にかけて成立した物語草子)に語られる浦島太郎の物語。
それは、私たちが子どもの頃から知っている昔話とはちょっと違って、

助けた亀が実はプリンセスで、玉手箱を開けた浦島はその後鶴に変化、亀の姫とともに夫婦明神として島の守神に。

また、竜宮城にあるという四季折々の風景を見せる不思議な庭の存在も、森山の心を捉えた。

森山は、浦島太郎「時の物語」と捉え、これをもとにオリジナルのストーリーでバレエを創り上げた。

この物語へと私たちをいざなうのが、顔は白塗り、紋付袴をアレンジした衣裳で現れる時の案内人。

あらゆる場面のそこここで活躍する、狂言回し的存在だ。

主人公、浦島太郎(井澤駿)は心優しい朗らかな青年。彼が亀を助け、翌日海の中からプリンセス亀の姫(米沢唯)が現れて竜宮城へ招く──。

そこはまるで昔話の絵本が立体化したような美しい空間で、亀の甲羅の柄のチュチュをまとったプリンセスの上品な愛らしさ、

群舞のダンサーたちによるダイナミックな波の踊り、映像を巧みに用いた潜水シーンと、退屈する間はない。

振付家・森山開次のバレエへのリスペクト、憧れはいたるところに見え隠れするけれど、

その一つが、第1幕後半の竜宮城のシーン。そこに登場するのは、全幕バレエで活躍する各国の踊り手たちのような、個性たっぷりのキャラクターたち。
たとえば、イカす3兄弟はキレのいいタンゴ、サメ用心棒たちはラテン系のエネルギッシュなダンス! 

さらに、亀の姫はバレリーナの美しさを存分に表現し、バレエってこんなに素敵なんだと思わせる説得力だ。

第2幕も、日本の四季折々の美しさが表現される「季(とき)の部屋」やクライマックスの太郎の変身シーン、

主役二人のデュエットなど、バレエらしい見どころが満載で、大人も思わず感動だ。

何よりも、子どもも大人もすんなりと寄り添える物語の強さと、バレエだからこそ味わえる楽しさ、美しさが大きな魅力。
これから多くの子どもたちが、劇場に足を運び、何の不安もなくこのバレエを楽しめるようになればと思うと同時に、

緊急事態宣言下の活動休止状態を挟んでの創作に、ダンサーとすべてのスタッフに拍手を。

公演は7月31日(金)まで、新国立劇場オペラパレスにて。

(取材・文 加藤智子)

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"ニューノーマル"を具現化する観劇スタイルの確立を目指し、劇場公演とVR配信の2形態で行われる「STAGE GATE VRシアター」シリーズ。現在上演中の第1弾『Defiled-ディファイルド-』において、前山剛久さん・中村まことさんの回をVR視聴してみました!

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立てこもり犯とベテラン刑事の緊迫感あるやり取りが、リーディング形式で繰り広げられる本作。2017年版を手がけた鈴木勝秀さんが引き続き、演出を担当します。出演者は他に猪塚健太さん、伊礼彼方さん、上口耕平さん、加藤和樹さん、岸祐二さん、小西遼生さん、章平さん、鈴木壮麻さん、成河さん、千葉哲也さん、羽場裕一さん、東啓介さん、松岡充さん、三浦宏規さん、水田航生さん、宮崎秋人さん、矢田悠祐さんがキャスティング。2人1組が回替わりで出演するため、組み合わせのバリエーションが豊富に楽しめるのも企画の特徴といえるでしょう。

以前、会場となる東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERでの観劇レポート を届けたげきぴあ編集部。久しぶりの劇場で迫力の朗読劇を堪能した一方で、着席した最後列からキャストの表情や細やかな動きを肉眼でとらえることはできませんでした。しかし、上手・下手と客席正面に3台設置されていた球体カメラのVR映像であれば、キャストに肉迫できるのでは......?劇場でのリアルな演劇体験をスマートフォンでも味わえることを期待し、視聴チケットを手配します。

VR視聴環境チェック&視聴チケット購入方法

本作のVR画像は、動画配信サービスのプラットフォーム「Blinky」にて届けられます。まずはVR配信アプリ「Blinky」ダウンロードし、お手持ちのスマートフォンが対応しているか確認してください。

動作環境に問題がなければ、次に『Defiled-ディファイルド-』公式サイトのVR配信日程表から、応援したいキャストや目当てのペアを探しましょう!

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VR配信全39公演のうち、今回は舞台『刀剣乱舞』シリーズなどで幅広く活躍する前山さんと、猫のホテル創設メンバーで声の仕事にも定評がある中村さんの回をチョイスしました。各回ともにアーカイブや巻き戻し再生機能はなく、毎回19時からの配信"一発勝負"はまるで劇場公演のよう!前後の予定と突き合わせて、時間に余裕のある日程を選ぶとよいかもしれません。

配信日程表の下部にある「チケットぴあ ▶ お申し込みはこちら」ボタンから、視聴チケットの購入手続きページに進みます。購入方法はいつも通りですが、ぴあCloakにおけるチケットの引き取り手段は「Quick Ticket by MOALA」一択。引き取るとスマートフォン上に表示されるVR視聴券に"シリアルコード"が発行されるので、テキストコピーするなどして控えておきましょう。コードはのちほど、シリアルコード入力サイトにて使用いたします。

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なお「STAGE GATE VRシアター」シリーズでは、より臨場感を味わえるようスマホ装着型の"VRグラス"が数量限定で販売されています。VR映像はヘッドマウントディスプレイや専用ゴーグル、グラスがない場合でも"2Dモード"で視聴できますが、今後も続くシリーズを楽しむためにも、これを機に揃えてみてはいかがでしょうか?

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シリアルコードを動画配信サービス「Blinky」アプリに入力

配信時間より前に余裕をもって「Blinky」にて自分のアカウントをつくってください。設定方法はこちらに詳しいので参照しましょう。

アカウントを作成し終えたら、Blinkyのサイトにアクセスし、ログインした後、シリアルコードを入力してください。シリアルコードの登録完了後、アプリを起動すると、アプリ上の「ライブラリ」に『Defiled-ディファイルド-』が登録されました!

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次はVR映像の動作確認をして、スムーズに当日の19時を迎えられるようにしましょう!

③動作確認

(※検証に使用した「緊急事態宣言解除ビフォーアフター 渋谷」映像は、【アーカイブ】コンテンツであり、【ライブ配信】コンテンツである『Defiled-ディファイルド-』とは、再生可能な端末、通信環境が異なります。『Defiled-ディファイルド-』をご視聴の際は、【ライブ配信】対応機種確認コンテンツを必ずご確認ください。)

ステージがどのように映るのか、本番中に"2D"や"VR"モードの切り替えはどうやって行うのか──。少しでも万全な態勢で本番を迎えられるように、Blinky内の映像を活用して動作確認を行いました。使ったのは、話題のニュース"現場"をVRカメラで撮影した「blinkynewsジャパン」チャンネル。新型コロナウイルス感染症の流行下における渋谷のスクランブル交差点を定点観測した「緊急事態宣言解除ビフォーアフター 渋谷」の映像で検証します。

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はじめにiPhone XSの場合、本体の左側面上部にあるスイッチを切って"消音モード"をオフにしましょう。これがオンのままだと、イヤホンを繋いでも音声が聞こえないので注意してください。

視聴モードは3種類あって、それぞれ以下のように見えます。

1.2Dモード......画面スワイプで視野を広げられる

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画面をスワイプすることで、上下左右に360°視野を広げることができます。この映像では寄り引きできませんが、本番の『Defiled-ディファイルド-』には手動ボタンによるズームアップ・ズームアウト機能があります。詳しくは後述する視聴レポートをご覧ください。

2.VRモード(一眼)...画面スワイプまたはスマホの向きを変えると視野を広げられる

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2Dモードに同じく、画面をスワイプすることで上下左右に360°視野を広げることができます。

また、首や体の向きを変えたりスマホ本体を動かしたりするだけで見たい方向の映像が映し出されます。
この映像では寄り引きできませんが、本番の『Defiled-ディファイルド-』ではズームアップ・ズームアウト機能があります。

「VRグラスでの鑑賞は酔ってしまいそう」と心配する方は、この一眼モードでご覧いただくとよいかもしれません。

3.VRモード(二眼)......スマホにVRグラスを装着

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スマホにVRグラスを装着してレンズを覗き込むと、渋谷のスクランブル交差点に立っているかのような臨場感が味わえました。画面をスワイプする2Dモードとは異なり、首や体の向きを変えたりスマホ本体を動かしたりするだけで見たい方向の映像が映し出されます。

周囲が覆われ映像だけに集中できる環境が広がるため、没入感はひとしお。それだけに、SNSをはじめとするポップアップ通知が目立ってしまいました。「本番では各種通知をオフにすべし」と学べただけでも、動作確認した甲斐があったというものです。

いざ本番へ!『Defiled-ディファイルド-』VR視聴レポート

配役ペアの"妙"や意外性も『Defiled-ディファイルド-』を楽しむ要素のひとつ。体験日は、若き元図書館員の犯人ハリー・メンデルソンを前山さん、初老の刑事ブライアン・ディッキーを中村さんが演じます。前山さんは1991年生まれ、中村さんは1963年生まれということもあって、今回のペアは役の年齢に則した比較的スタンダードな組み合わせといえるかもしれません。

動作確認を経て、より強い没入感を味わうべく開演前に以下の準備を行いました。

■スマホの各種ポップアップ通知を「オフ」に

■部屋を薄暗くする

■音質のよいBluetoothイヤホンを装着する

 ※Bluetoothイヤホンは遅延が目立つものもあるそうなので予備があるといいかもしれません。

■家族に向けて「今夜、VR演劇体験する」と告知しておく

 →「集中したいので緊急時以外は入室しないで」と時間指定するなど徹底(笑)

開演15分前から入室できたので改めて各モードの動作確認を行ったところ

1.客席最前列中央

2.ブライアン側

3.ハリー側

の3視点からひとつを選べることが判明。それぞれ画質(標準or高画質)も設定できるサービス精神に感心しながら、同時に「確か劇場公演では暗転板付き、刑事ブライアンのセリフから始まっていたよな......?」と記憶を手繰り寄せます。結果、ブライアン役のキャストが着席する「ブライアン側(高画質)」のカメラ視点を選び、開演時刻を待つことに──。

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もちろん、ハリー役キャストの反応や第一声が気になる方は最初から「ハリー側(高画質)」のカメラ視点を選んでも大丈夫です!

5分ほどの暗転オープニングが終わってステージが照らし出されると、刑事ブライアンに扮する中村さんの姿が浮かび上がります。ここで手動ボタンによるズームアップ・ズームアウト機能があることに気づき、激高する犯人ハリーとの交渉にやって来たブライアンの表情を捕らえようと中村さんへ"寄って"みることに。最大限近づいて、胸元から上の様子が映し出されました。

0706夜公演_上手カメラ4_1 - コピー.png

一方、目録カードに代わるコンピューター検索システムの導入に反対し、建物爆破を予告するハリー。「コーヒーでも飲もう」となだめるブライアンの提案に苛立つ様子を、前山さんは髪をむしる・前傾姿勢になるなど全身で表現します。そこでカメラ視点を「ハリー側(高画質)」に切り替え、ハリーの大きな動きを確認しようと"引いて"眺めることに。すると、貧乏ゆすりで揺れる足元までとらえることができました。イヤホンからは水を飲む時に喉が鳴るリアルな音も聞こえるほど。スワイプして画角を調整すれば、中村さんのリーディング風景も同じ画面に収められます。

0706夜公演_下手カメラ3_1 - コピー.png

その後は「客席最前列中央(高画質)」の固定カメラ視点で最前列の観客気分を。VRモードでは一眼・二眼のいずれも没入しながら鑑賞できましたが、二眼ではズームアップ・ズームアウト機能はないため、役者の表情や動きに注目したいシーンでは、再び2Dモードの「ブライアン側」「ハリー側」視点に切り替えて楽しみました。

0706夜公演_客席中央カメラ1_1.png

劇中で繰り広げられるのは緊迫した心理戦ですが、モードやカメラ視点の変更に気を取られていると、作品の魅力を十分に味わえない可能性も。交渉を通じてハリーとブライアンに芽生える関係性や、各キャストがどのように役を立ち上げるか注目するためにも、VR配信は複数回の鑑賞をオススメします。

上演時間は約70分(休憩なし)。VR配信は8月14日(金)まで。キャストの組み合わせと出演スケジュールは、チケットぴあの販売ページでも確認できますよ!

取材・文:岡山朋代

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