ミュージカル『ローマの休日』アン王女役 朝夏まなとインタビュー「夢みたい」

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ミュージカル『ローマの休日』が104日(日)から28日(水)まで東京・帝国劇場にて上演されます。

本作は、オードリー・ヘプバーン主演の名作映画『ローマの休日』('53年)を原作に、'98年に日本で製作されたオリジナル・ミュージカル。

公式HP▶▶https://www.tohostage.com/romanholiday/

とある国の王女がヨーロッパ歴訪の途中で立ち寄った"永遠の都・ローマ"で手にした、一日だけの自由な時間と、そんな王女のプライベートをスクープしようとローマ観光をエスコートする新聞記者との交流、そして、生涯忘れえない恋とのめぐり逢いを描いたストーリーで、初演はアン王女を大地真央さん、新聞記者のジョー・ブラッドレーを山口祐一郎さんが演じました。

20年ぶりの再演となる今回もスタッフは初演と同じ、脚本・堀越 真、演出・山田和也、音楽・大島ミチル、作詞・斉藤由貴という布陣。そこに新たなキャストを迎え、装いも新たに生まれ変わります!

そんな本作で主演を務める朝夏まなとさん(土屋太鳳さんとのWキャスト)にお話をうかがいました。

★ 朝夏まなと INTERVIEW ★

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*****

――朝夏さんは公式HPに「帝国劇場の舞台に立つことが夢だった」というコメントを出されていましたね。

「はい。帝国劇場は長い歴史があり、選ばれた人しか立てない場所だと思っていました。だから、演劇をやっている者としては、いつかは立ってみたいなと思っていました」

――その作品が『ローマの休日』であることは、どのように思われていますか?

「嬉しかったです。あの『ローマの休日』ですか!?と聞き返したくらい。誰もが知っている物語ですし、アン王女をまさか自分ができるなんて思いもしていなかったので。夢みたいでした。信じられない感じ」

――「アン王女をまさか自分が」というのは、オードリー・ヘプバーンの役だからですか?

「それもありますし、大地真央さんが初演で演じられたことを知っていたので、ええ!?って」

――大地さんが演じられた役を演じることは、朝夏さんにとって「ええ!?」なのですね。

「そうですね。今思えば、『マイ・フェア・レディ』('18年)のイライザ役も真央さんが演じられた役ですし、そういう意味ではある種のご縁があったのですが、それでもやっぱり『いいんですか!?』という気持ちが大きかったです」

――では、今一番大きな意気込みというと、何になりますか?

「先日出演した帝国劇場の『THE MUSICAL CONCERT』(8月1425日)Program Cで真央さんとご一緒させていただいたときに感じたことでもありますが、真央さんは『ローマの休日』だけじゃなく、『十二夜』だったり、いくつもの日本のオリジナル・ミュージカルに出演して、イチからその作品をつくられていました。それを"受け継ぐ"ということが、自分の中では一番大きいです。海外ミュージカルが数多く上演される中で、日本でもこれほどのミュージカルをつくることができ、これだけ大きな劇場でできるということを、また後に再演されるように受け継いでいきたい。その流れの中に今、立たせてもらっているんだということを思っていて。そこが一番の使命だと思っています」

――映画『ローマの休日』も大好きな作品だとうかがいましたが、どのようなところが好きですか?

「まずオードリー・ヘプバーンがかわいすぎるし、グレゴリー・ペックがカッコよすぎて(笑)。ふたりが、立場ではなくて人として惹かれ合っていく様も素敵です。でも最後は自分のいるべき場所に戻るんですよね。いろんな経験をして、アンが王女として成長していく。そこはミュージカルでも丁寧に描かれている部分ですが、感動します。ふたりの恋にキュンキュンするし、ベスパでローマの街を走るところなんかはワクワクするんですけど、最後はホロッとしてしまう。そういうところを演じられたらなと思います」

――『ローマの休日』は多くの人が知る作品だと思いますが、客席にいる人までもが先の展開をわかっている中で演じるというのは、大変なことだなと思ったりもします。演じる側は何が大事になるのでしょうか。

「舞台上で起きることを新鮮に感じることです。その人物にとっては初めて起きることなので、いかにリアルな反応ができるかが大事かなと思います。これはどんな作品においてもそうですけどね。あとはこのミュージカルと映画版との大きな違いに、歌が入るところがあります。映画で『ここに曲が入ったら面白いのに』と思うところには全部曲が入っているので、それは、映画をご存知の方でも新鮮に観ていただけるはず。その情景にピッタリ合う、素敵な曲ばかりですから」

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――少し脱線しますが、朝夏さんは映画を観ながら「ここに曲が入れば面白いのに」と思われるのですね。

「髪の毛を切るところとかとてもワクワクして、『これ、ミュージカルナンバーだったらな』とか思いました。この作品は、そこが本当にミュージカルナンバーになっているので。すごく面白い曲なんですよ。美容師との掛け合いとかあって」

――歌稽古が始まったばかりだそうですが、歌ってみてどうですか?

「日本で作られたミュージカルなので、言葉とメロディがピッタリ合ってるんですよね。無理がなくて歌いやすいです。あと、メロディがシンプルなので、すごく印象に残ります。頭の中でリフレインするような、キャッチーな曲ばかりです」

――しかも踊るんですよね?

「そうそう、ローマの街でアンがお買い物をしている曲とか。けっこう踊りますよ」

――アン王女を演じるうえで楽しみにしていることは?

「王女だから自由な時間がなくて、常にスケジュール通りに動かされているアンが、ローマの街で、自分の意志を持って、初めての体験をたくさんするんですけど、それを自分もアンとして体験できるのが楽しみです。あとは、ジョーさんがどれだけキュンキュンさせてくれるのかも楽しみです(笑)」

――そうですよね!

「ジョーさん、おふたり(加藤和樹さん・平方元基さんのWキャスト)いらっしゃるので。それぞれどういうアプローチで来られるのかすごく楽しみですね。だって自分がやりたいことを叶えてくれる相手ですよ?」

――最高ですよね。

「最高ですよ!カフェ行きたいって言ったらカフェに連れて行ってくれるし、シャンパン飲みたいと言ったら飲ませてくれるし(笑)」

――(笑)。ジョーを演じる加藤和樹さんと平方元基さんはタイプが違うおふたりですね。

「全然違いますね。和樹くんはまだ全貌が見えないんですよ。一見、すごく寡黙でクールな感じに見えるじゃないですか?でもなんか『俺は本当はこんなんじゃない』みたいなことを言っていたので。どんなの?どんなの?みたいな(笑)。けっこうお茶目な方らしいので、そういう和樹くんが大人のジョーをどうつくるのかなっていうのは楽しみです」

――平方さんはどうですか?

「平方さんもお茶目なので(笑)」

――『マイ・フェア・レディ』で共演されていますよね。

「はい。でもそのときはお芝居を一緒にするシーンはほとんどなかったです。平方さんって弟みたいなキャラなんですよ。だけどジョーってアンよりも大人な役なので。どうやって引っ張ってくれるのかなっていう楽しみはありますね」

――なんだか現場が楽しそうですね。

「年齢が近いんです、ふたりとも。和樹くんは同級生だし、平方さんは一歳下で。普段からワイワイしています。部活ノリにならないようにがんばります!」

――(笑)。土屋太鳳さんとは。

「まだお会いしてないです。でもテレビで拝見すると、がんばりやさんなイメージがありますよね。きっとまた違うアンになるんだろうなと思っています」

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――演出の山田和也さんとは『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』('19年)ぶりですが、作品について何かお話されましたか?

「ちょうど昨日、久しぶりに再会できたのですが、作品についてはまだお話しできてないんですよ。山田さんは真央さんの公演も演出していらっしゃるので、今回どんなふうにしていただけるのかなっていう楽しみがあります。お芝居にとても熱くて、だけど役者がどう思っているかも聞いてくださる柔軟な方なので、稽古場でのディスカッションを楽しみにしています」

――2度目のタッグになると、安心感がありますか。

「はい。今回は、山田さんもそうですし、今までの作品で知り合えた方が多い現場なんです。だから安心して委ねられるので、楽しみです」

――今のお話もそうですが、朝夏さんは'17年に宝塚歌劇団を退団されて、'18年の芸能活動再開からさまざまな作品に出演して来られました。今をどんなふうに感じていますか?

「"慣れてきた"という言い方も違うかもしれないですが、物怖じしなくなったというか。最初は、どういうスタンスでいればいいんだろうというのがありました。宝塚時代の私のことを知ってくださっている方もいるけど、全く知らない方もいますから、『この子、何者なんだろう』と思っている方もきっといるだろうなと思いながらお稽古とかしていたので。でも、自分がやるべきことをちゃんとやっていたら、周りの方も認めてくれるし、知り合いも増えていって、最近は現場でやっとちょっと居場所ができた感じもしています」

――活動再開から2年経って、表現の仕方が変わったりもしましたか?

「(宝塚では男役だったので)女性の役をやるうえで気を付けないといけないことが減っていってるなと思います。仕草を意識しないと女性っぽくならなかったんですよ。役の内面的なことで意識しなくちゃいけないことはあまりないのですが、外見ですよね。歩幅が大きすぎるとか、足を広げてしまうとか、そうしないように意識していたことが、ちょっとずつ身についてきたと思います」

――逆に変わらないものはありますか?

「やっぱり毎公演、新鮮にやることです。慣れてしまわないこと。さっきも話したことですが、その人物にとっては初めて起きていることなので、集中して、聞き逃さないように、感情が動くキューを逃がさないように」

――集中力なんですね。

「そうです。想像力と集中力です、この仕事は。そこは変わらないですね」

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――『ローマの休日』は、アン王女が別人のような1日を過ごす作品ですが、朝夏さんが別人になれるとしたら、どんな人になりたいですか?

「えーなんだろ!迷う!これは1日考えたいな(笑)。うーん......男性の俳優かな」

――どなたのイメージですか?

「綾野剛さん!今、『MIU404』を観てますから(笑)。あのドラマ、最高じゃないですか?」

――私も観てます。最高です!

「いいですよね! 綾野剛さんは以前、『モニタリング』でカメラマンのふりをする企画も面白くて。バラエティ番組の企画とは思えないくらい、役作りがハンパなかったんですよ。ああいう方々の仲間に入ってみたいです」

――仲間になりたいんですね。

「そう(笑)。あとは......(自分で)まだあるんかい!」

――(笑)。聞かせてください。

「ハリウッドで大人気の女優さんに1日だけなってみたいですね。映画の現場を体験してみたいです」

――ハリウッドに進出したいという気持ちがあるのですか?

「そういう願望はないです(笑)。でも見てみたい。ハリウッドの現場とかブロードウエイの現場とか。1日でいいけど(笑)」

――開幕が楽しみです。

「先日、『THE MUSICAL CONCERT』のときに、お客様側も、スタッフ側も、劇場での対策がだんだん明確になってきているなと感じました。もちろん手間もかかりますし、皆さん大変な思いで劇場に来てくださっていると思うのですが、それでも『観たい』とか『やりたい』という思いが勝っているから、できているんだと思っています。大変な時ですが、お客様には、劇場にいる間だけはそういうことを忘れられるようなものを、私たちはお届けするのみです。もちろん無理はしてほしくないですが、こちらの対策はできるかぎりやっているので、そこは信じて来ていただけたらと思います」

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取材・文=中川實穂
写真=南方篤
スタイリスト=加藤万紀子
ヘアメイク=根津しずえ

ミュージカル『ローマの休日』は104日(日)から28日(水)まで東京・帝国劇場にて上演。12月、1月と愛知、福岡公演あり。

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