オリジナルミュージカルや韓国発のミュージカルを製作してきたatlasによるミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」。9月24日(木)・25日(金)よりオンライン配信を予定している当コンサートの収録が8月下旬、東京・COTTON CLUBにて行われた。歌われるミュージカルナンバーは、『あなたの初恋探します』『Indigo Tomato』『SMOKE』『最終陳述』『カリソメノカタビラ』『アンクル・トム』、そして最新作『BLUE RAIN』の計7作の劇中歌。それぞれの作品に出演していた彩吹真央、池田有希子、上口耕平、大山真志、木暮真一郎、坂元健児、新納慎也、東山光明、水夏希、山田元、吉野圭吾が顔を揃え、MCとして駒田一が盛り上げた。この収録の模様をレポートする。
会場は大人の空間・COTTON CLUB。本来、観客が入るスペースには複数台のカメラが立ち並び、カメラレールも敷かれている。12人の出演者たちはラグジュアリーな会場の雰囲気にふさわしく、フォーマルな装い。ただ、流れる空気はフランクで楽し気。実際には共演経験のない間柄のキャストもいるが、それを感じさせない和やかさがあるのは、atlas製作の特徴だろう。
収録はブロックごとに分けて行われた。オープニングはatlas製作ミュージカルの記念すべき第一作『あなたの初恋探します』より。MCも務める駒田一が本作品のプロローグでもある「DESTINY」を軽快に歌う。ノリの良さそのままに『Indigo Tomato』の「Brain Man」で大山真志がカッコよく決め、『最終陳述』より「ブルーノ」を山田元がしっとりと歌い上げる。本編を未見の方もご安心を。MCコーナーでは、これらの作品がどういった内容のものなのか、駒田が巧みに聞き出している。
続けて水夏希が主演したオリジナルミュージカル、『カリソメノカタビラ』のコーナー。デオン・ド・ボーモン役の水、ボーマルシェ役の坂元健児がムーディに、めくるめく歴史絵巻へといざなう。斉藤恒芳が手掛けた楽曲の美麗さも、改めてかみしめる。さらに、本編では出演していなかった彩吹真央がマリー・アントワネットに扮し、水のデオンとデュエットする楽曲も。ここでしか聴けない組み合わせはミュージカルコンサートならではの"お楽しみ"だ。水と彩吹の仲良しコンビはトークコーナーでも気の合ったところを見せていたので、そちらも乞うご期待。
その後、吉野圭吾&新納慎也が出演はしていない意外な楽曲で踊りまくったり......とファン仰天&垂涎のナンバーなどを挟み、第一部のクライマックス『SMOKE』コーナーへ。『SMOKE』はこれまでに三たび上演を重ねる、atlasミュージカルの代表作。ミステリータッチのストーリー展開の中、芸術家の業や生きることの苦しみと希望を描き出すディープな3人ミュージカルだ。本作に出演経験のある大山真志、池田有希子、木暮真一郎、彩吹真央が劇中ナンバー5曲を続けて披露。本編上演時、俳優たちの魂を削るような熱演も評判だったが、ナンバーがかかるとその時の感覚を思い出すのか、コンサートでもみな火花を散らしあい、大熱唱。浅草九劇バージョンの超:大山真志とシアターウエストバージョンの紅:彩吹真央という、組み合わせを超えたデュエットも披露。ラストの「翼」の高揚感、開放感もひときわ心地が良かった。なお『SMOKE』トークコーナーでは人数が多いためこのご時世らしくパーテーションが登場。しかし構成を手掛ける広崎うらんが「でもこれ、SMOKEの世界よね!」と発言したのを皮切りに、パーテーションを劇中に登場する鏡に見立ててマイムをしてみたり......と、あくまでもポジティブなキャスト陣。ちなみにここのトークも本番中に起きたハプニングのエピソードなど楽しい話題満載だったのでお楽しみに。
続いて第二部の収録へ。二部は『最終陳述』コーナーよりスタート。こちらは昨年上演されたふたりミュージカルで、半年後にはコンサート版も上演された人気作。本作からはガリレオ・ガリレイを演じた山田元が登場。今回は大山真志、坂元健児が加わり、温もりのあるチャーミングな作品の風を伝えた。
ふたたび『あなたの初恋探します』のナンバーを挟み、クライマックスは『アンクル・トム』と最新作『BLUE RAIN』のリミックス。"雨"をキーワードにリンクする2作品、計10曲、約30分ノンストップのパフォーマンスだ。『アンクル・トム』出演経験者は新納慎也、上口耕平、池田有希子、山田元。『BLUE RAIN』からは吉野圭吾、水夏希、東山光明、池田有希子。『BLUE RAIN』では水が扮するクラブ歌手ヘイドンがクラブで歌うタイトルナンバーがこの日の会場であるCOTTON CLUBで歌われる圧倒的リアリティ、『アンクル・トム』で老人役に挑戦した新納が、衣裳やメイクはそのままに声色だけで役柄を蘇らせた迫力、精神的に追い詰められていく役柄を演じた『アンクル・トム』の上口と『BLUE RAIN』の東山がステージ上でクロスする演出......。見どころ多数、「これが見たかった!」と「そうきたか!」がミックスされた憎い構成になっているので、2演目のファンは楽しみにしていてほしい。
公演から時間がたっていても、それぞれの俳優の肌に役がしっくりなじんでいるのだろう、鮮やかにその役が蘇る。数曲のピックアップでも、一気に当時の作品、当時の役に入り込む俳優陣の熱演・熱唱にワクワクしたり、ホロリときたり、胸がキュッとしたり。7つのミュージカルをギュッと濃縮した"いいとこ取り"のコンサート、フィナーレは全員登場、ちょっと意外な作品からのナンバーをみんなで踊りまくり、5時間超にわたる濃密な収録は終了した。コロナ禍という状況の中オンライン配信という選択がなされた本コンサート。もちろん生の楽しさは何物にも代えがたいのは百も承知。ただ、「最後のキメはこのカメラに向かって」といった普段のステージでの演出ではありえない指示や、"あえてカメラの前を横切る"といった演出もつけられていたので、「完成映像はどんなカッコいいものになっているんだろう!?」という期待感も生まれた。今だからこそ実現したオンラインコンサート、7つの作品のファンはもちろん、広くミュージカルファン必見のものになりそうだ。(取材・文:平野祥恵)
ミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」は配信はPIA LIVE STREAMINGにて。視聴チケットは9月18日(金)発売予定。視聴期間や内容の詳細は公式ホームページ(http://g-atlas.jp/amc/)にて。