「時代を敏感に感知する新たな創作者を受け入れるための、1つの宣言」と、2020年のラインナップより、公募制を導入した東京・本多劇場。そこに、現役大学生の「劇団あはひ」が選出され、史上最年少で本多劇場の舞台に立つ。
2018年に早稲田大学で旗揚げし、落語や能など、古典を下敷きとした作品を中心に活動を行う同劇団。2019年3月に上演した第2回公演『流れる-能"隅田川"より』が、〈CoRich 舞台芸術まつり!2019春〉で全国86作品の中から学生団体として初のグランプリを受賞した。
今回、本多劇場で上演する『どさくさ』は、落語の『粗忽長屋』をベースにした作品で、2018年の旗揚げ公演で上演。作・演出の大塚健太郎は、『粗忽長屋』のオチのセリフにひときわ惹かれたという。「抱かれているのは確かに俺だが、抱いてる俺はいったい誰だろう?」。『どさくさ』のシチュエーションコメディのような、不条理劇のような展開は、次第に落語に接近していく。舞台上で役を演じる彼らは、一体何者だろうか...。古典芸能である落語を演劇に持ち込み、生と死の曖昧さ、人間の自己存在の危うさに迫った処女作が、新脚本、新キャストにより生まれ変わる。第4回公演にして本多劇場の舞台に立つ期待の若手劇団をお見逃しなく。
劇団主宰、作・演出の大塚健太郎コメント
『粗忽長屋』は行き倒れの死体と対面し、ついには彼を自分自身だと勘違いしてしまう粗忽者を描いたナンセンスな噺で、ひときわ私が惹かれたのはサゲ(オチ)のセリフだった。「抱かれているのは確かに俺だが、抱いてる俺はいったい誰だろう?」
そしてその後、私たちは、能『隅田川』、シェイクスピアの『ソネット集』をそれぞれ演劇化した。振り返ってみると、どれも生と死、過去と現在の「あわい」にしか存在できない人々を描いているという点で共通している。
もう一度『どさくさ』に立ち返ってみたい。生きたまま死んだ粗忽者を前にして私たちは、彼のことをただ笑って済ます事を、まだできていない。
公演は、2月12日(水)から16日(日)、下北沢本多劇場にて。
※大塚のコメントは全てチラシより引用&抜粋