2020年8月に日本版が初演される、ミュージカル『
売れないロッカーが名門進学校の代用教師になりすまし、小学生にバンドを組ませるアメリカの学園コメディ映画として2004年に公開され、2015年にはアンドリュー・ロイド=ウェバーのプロデュース・音楽によってブロードウェイでミュージカル化された本作。鴻上尚史が演出を手がけ、西川貴教と柿澤勇人がWキャストで主演する今回の日本版には、劇中に12人の生徒役が登場する。
担任しているクラスの子どもたちの音楽の才能に気づいた代用教師のデューイは彼らにロックを演奏させ、バンドバトルに出場する──というストーリー展開から分かるように、生徒役には楽器や歌のできる役者が求められた。現時点で判明している配役は、
①フレディ(ドラム)
②ザック(ギター)
③ローレンス(キーボード)
④ビリー(スタイリスト)
⑤メイソン(ステージエンジニア)
⑥ジェイムズ(セキュリティ)
⑦ケイティ(ベース)
⑧サマー(マネージャー)
⑨トミカ(ボーカル)
⑩マーシー(コーラス・ダンス)
⑪ショネル(コーラス・ダンス)
⑫ソフィー(コーラス・ダンス)
の12人。この日集まった応募者は、楽器演奏や歌唱の様子を収めた映像審査を事前にパスした"つわもの"揃いだ。
実技オーディションにあたったのは鴻上に加えて、音楽監督・前嶋康明、歌唱指導・山口正義、演出補・豊田めぐみの4人。2~3分の質疑応答ではひとりずつ前に呼ばれ、他の応募者が見守る中で、鴻上から「放課後の過ごし方は?」「習い事や芸歴は?」といった質問を受けていく。ユニークな発言をする参加者が多く、はじめは緊張感のあった会場も朗らかな笑い声に包まれていった。
鴻上は一問一答に終始せず、丁寧に問いかけを重ねて回答を掘り下げる。例えば真っ黒に日焼けしている男子には理由を聞いて「釣りが好き」という趣味を、シンガーソングライターの阿部真央を尊敬していると答えた女子に対してはその魅力を聞いて「歌によっていろんな声を使い分けている」と分析力を引き出し、応募者の人柄を探ろうと試行錯誤する様子がうかがえた。
ミュージカル初心者から『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』『ビリー・エリオット』『アニー』など、多彩な経歴の持ち主が集まった参加者が次に挑んだのは演技審査。『スクール・オブ・ロック』の生徒のうち、
ザック(ギター)
ビリー(スタイリスト)
サマー(マネージャー)
マーシー(コーラス)
が登場するオーディション用に鴻上が作成したオリジナルの台本がその場で配布され、4人1組になって審査に応じた。学校の創立記念日に、クラスの出し物として何を行うか話し合う──という3分ほどの短い台本には、セリフに登場人物のキャラクターがにじみ出ていた。鴻上が最初に「サマーはクラス委員のしっかり者」「気弱なビリーはためらいがちに出し物を提案する」とキャラクターの持ち味を紹介すると、参加者はすぐに吸収して自身の演技に取り入れる。
台本を2回繰り返しさせる中で、鴻上は1回目のあとに必ず演出をつけた。「マーシーは"楽しけりゃいい"ってタイプだから、もっと無責任でいいよ」と具体的な指示を飛ばす一方で、「のん気なザックは他人の顔色を見るように提案するかな?」と参加者に自身の演技を考えさせるひと幕も。いずれの組も演出を受けて創意工夫した跡が見受けられ、2回目はぐっと魅力的に映った。
審査員は遅れて到着した応募者へのフォローも欠かさない。この日の全審査を終え、身体測定に入った参加者が退場するタイミングで歌唱審査を再開した。課題となっているのは2曲。ピアノの伴奏に合わせ、対象者が「アメイジング・グレイス」を高らかに歌い上げる。横についていた歌唱指導の山口が「もっと力強く!」とアドバイスすると、会場に見事な歌声が響いた。
最終的にどのようなキャストが選ばれ、
取材・文:岡山朋代
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2020年8月下旬~9月下旬
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
2020年9月下旬~10月上旬
新歌舞伎座
[音楽]アンドリュー・ロイド=ウェバー
[脚本]ジュリアン・フェロウズ
[歌詞]グレン・スレイター
[日本版演出]鴻上尚史
[出演]西川貴教、柿澤勇人、濱田めぐみ 梶裕貴、相葉裕樹、はいだしょうこ、秋元才加
阿部裕、栗山絵美、多岐川装子、俵和也、丹宗立峰、
石黒祐輔、石原颯也、市川裕貴、歌田雛芽、大前優樹、岡田奈々、
小鷹狩八、近藤匠真、後藤いくり、陣慶昭、竹内彰良、鶴岡蘭楠、
陽唄、洞桃香、松岡芽依、松本三和、モーガンミディー、