声優、俳優、タレントとして幅広く活躍中の山寺宏一さんと水島裕さん、そして演出家の野坂実さんがコメディをやるために2015年に立ち上げた演劇ユニット「ラフィングライブ」。
その第五回公演「Out of Order」が、11月28日(木)から12月2日(月)まで東京・三越劇場にて上演されます。
今回もレイ・クーニーのワンシチュエーションコメディを小田島恒志さんの翻訳で上演。
山寺さん、水島さん、そしてお馴染みキャストに加え、『美少女戦士セーラームーン』月野うさぎ、『新世紀エヴァンゲリオン』葛城ミサト役等の声優を務める三石琴乃さん、『ハイキュー!!』清水潔子、『交響詩篇エウレカセブン』エウレカ等の声優を務める名塚佳織さん、俳優・声優等マルチに活躍する岩尾万太郎さんが初参戦します。
げきぴあは稽古場におじゃまし、山寺さん、水島さん、野坂さんに寿さんも交え、お話をうかがいました。
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――お稽古が始まっていかがですか?
水島 大変だろうと思っていましたが、もっと大変でした。
山寺 (笑)。想像以上だったということですね。
水島 そういうことです!
山寺 大変じゃないと「ラフィングライブ」じゃないからね。
野坂 そうだね。
山寺 ときどき「あと◎日だ!」と思って眠れなくなることもありますけど。まあ、7分後には寝てますけどね。
一同 (笑)
水島 僕は夜中にこむら返りで目が覚める。肉体的な疲労で(笑)。
――寿さんは3度目の参加ですが。
寿 そうです、ありがたいことに。過去を振り返っても、今作はかなり‥‥ですね。役柄的にも、今までは騙される側だったのですが今回は違うので、面白いなと思いながら稽古をがんばっています。
水島 寿さんが演じるジェーンはちょっと天然みたいな感じの役だよね。寿さんの中にその要素ってあるの?
寿 あると思います。
山寺 「年の割にしっかりしてる」というイメージだけど、天然っぽいとこあると思うんだよね。
寿 自分で気付いてないんですけどね。
山寺 それ、周りも気付いてないから、それ、ないんじゃない?
一同 (笑)
野坂 でも普段お喋りしてても、ちょっと抜けてる瞬間はある。
寿 (笑)
山寺 さすが演出家は見抜いてるんだね。「抜けてんな」と思ってたんだね。
一同 (笑)
――野坂さん、山寺さんと水島さんはどんな印象ですか?
水島 怖いこと聞きますね!
一同 (笑)
野坂 おふたりって役者としてすごく違うように見えると思うのですが、根っこが同じなのがおもしろい。山寺さんは基本的には真面目ですし、水島さんは不真面目なような見せ方してて真面目です。
水島 (笑)
野坂 どこかで「最終的には自分でやらなくちゃいけない」ということをわかっていらっしゃるので、自分の場所はしっかり自分でやるよという覚悟がある。でもタイプが違うので、「ラフィングライブ」はうまくいってるような気がします。
水島 本番まであと「20日ある」と思うか、「20日しかない」と思うかの違いがあるね。山ちゃんは「20日しかない」のタイプかな?
山寺 俺、2か月前から焦ってますからね(笑)。
野坂 そしておふたりは、"最終的な目標"は同じだけどアプローチの仕方が全く違うんですよね。なのに一緒にお芝居してると、アドリブかのような台詞回しになる。それが僕はおもしろいなと思います。遊ぼう遊ぼうとしますからね。クリエイトするほうの遊び。それに夢中になってる。
山寺 掛け合いおもしろいよね。
水島 うん、おもしろい。出演者みんなそうなんですけど、根本に持ってるリズム感とか、それが大体みんな一緒のような気がする。
野坂 「ラフィングライブ」は、最初からふたりのテンポ感がとってもいいので、なんとなくそれがベースになって、客演の方々が「このテンポに合わせとこう」という感じになっていった。それは大きかったです。そのテンポが"僕らのテンポ"になって、つくられている感じ。
*
――「ラフィングライブ」は毎回レイ・クーニーの作品を上演されていますが、今作はいかがですか。
山寺 今作は、僕が演じるリチャードが自分の保身のためにみんなを巻き込むのですが、今までに比べて、よりひどい人だよね(笑)。今までは倫理的には道をはずれても法は犯してなかった気がするんですけど。しかも巻き込む人(水島演じるジョージ)も今回は部下だから。言いたい放題言う。だからそこが心地いいですね!
一同 (笑)
山寺 大先輩(水島)に言いたい放題。
水島 俺に言ってるわけじゃないから許す(笑)。
野坂 今まではクーニー作品の中でも「無駄なものが削ぎ落された作品」をやってきたのですが、今回は、少し無駄だなって思うものもついてきてる脚本なんですよ。そのぶん下世話な部分も増えている。それが「ラフィングライブ」色にどう変化できるか、というのは新しい試みだと思っています。
――無駄にみせるものこそ。
水島 ちょっと無駄だなって思える台詞が、より深みを増すための台詞にできればいいなと思って。そこはすごく悪戦苦闘しながら「ここはもしかしていらないんじゃない?」という部分があったほうが、より人間描写が深くなってたりするように持っていこうとしています。
寿 私はレイ・クーニー作品は「ラフィングライブ」で出合ったものしか知らないのですが、今まで演じてきた第二回公演「Run for Your Wife」、第四回公演「パパ、アイ・ラブ・ユー!」って、メインの道がしっかりあって、そこにちょっとずつ参加してくる誰かがいるようなイメージだったんですけど。今作は、野坂さんがおっしゃったように、もちろん軸はあるんですけど、入り乱れる感じ。それがどんどん"天丼"になって‥‥
水島 天丼!?
山寺 お笑い用語で、同じパターンをかぶせていくことです。
水島 え、これ、わかんないの俺だけ?ごめんごめん!
山寺 急にお腹すいたのかなと思った。
一同 (笑)
寿 そうやって重なってくる面白さだったりするので。だから観終わった後、お客様がどんな感覚になるのか未知数だなって思ってます。私も脚本を読みながら毎回感じ方が違って、発見があるので。
水島 それ、まとめると「3回観たほうがいいよ」ってことね。
山寺 そうね!
――水島さんは今作についてどう感じていらっしゃいますか?
水島 「おじさん二人がひっちゃきになる」というのは、「ラフィングライブ」が今までキープしてきたところですし、僕も「あーラフィングライブやってるな」と感じます。でも今作は初めてラブシーンがあるんですよ。それがね、辛くて辛くて。俺、下手なんだよね。
山寺 あれ、ラブシーンっていうの?(笑)
水島 ひどいラブシーンだよ。悩んでます。でもあと20日ありますからね。
山寺 もう20日もないよ。
水島 まあ、20日近くあるからね!
一同 (笑)
*
――先ほど野坂さんがおっしゃった「ラフィングライブ」色ってどんな色ですか?
野坂 レイ・クーニーの戯曲って、意地悪のように、ト書きがちょこっとだけあるんですよ。「〇〇が下手(しもて)にいる」とか。しかもそれが整合性がつかないんです、なかなか。なので他のカンパニーだと「まあいいや」となっちゃってたりもします。でも僕らはそこに真っ向勝負しようとしている。このセットもレイ・クーニーがやってるまんまなんですよ。
――すべて。
野坂 すべて。「これは予算的に難しい」とか「これはギミック的に難しい」とかじゃなくて、僕らはあくまでもレイ・クーニーがやっていたものをやる。そのうえでブラッシュアップして、クオリティの高いものをやろうとしています。台詞の掛け合いも細かく細かくつくっている。"なり"でやったりはしない。だから気が狂いそうになる時が多いですね(笑)。
山寺 うん、気が狂う感じだよね。
寿 (笑)
山寺 ちなみに今「僕ら」と言ってますけど、野坂実が言ってるんですよ。「ラフィングライブはレイ・クーニーと一緒じゃなきゃダメだよ」とか言ったことないですから。
一同 (笑)
山寺 でも彼に言われた通りやると、ちゃんとウケるし、お客さんが喜んでくれる。それを今まで実感してるから。しょうがないなって。だから毎回言ってるけど、野坂塾に通ってるんです(笑)。
水島 脚本読んでて「これ、どうやってやるんだろう」ってところとかあるよね。それでも考えて、ちゃんと成立させるから凄い。
野坂 それと、キャストは声優さんで構成されていますが、僕は舞台ってマイクを入れるのではなく生声でやっていくものだと思っているので、声はかなり大事な要素になってくるんです。なので、その部分は僕らの強みなんだと思っています。声優さんは身体も動く方が多いですし。
山寺 そんなこと言って大丈夫ですか。昨日、劇団四季を観たばかりなので‥‥。
一同 (笑)
水島 しかも『キャッツ』観てるから(笑)。
山寺 僕は初演で肉離れした男なので‥‥。
一同 (笑)
*
山寺 あと、これはぜひ書いていただきたいんですけど、寿美菜子さんがね、来年からイギリスに行くでしょ。そのきっかけのひとつがこの「ラフィングライブ」だと聞いた。
寿 そうです。
水島 え、本当?
寿 ここでレイ・クーニーの戯曲と出合って、やっぱイギリス演劇っておもしろいなと思ったので。
山寺 嬉しいですよね。我々は行く気ないけど(笑)。
寿 なんでですか(笑)。
水島 遠いもの。
一同 (笑)
野坂 イギリスに行く前の舞台はこれが最後なの?
寿 そうです!
山寺 戻ってきたときはまたフィードバックしてほしいよね。
寿 呼んでいただけたらいつでも!
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「今回のパンフレットにもCDがついて、出演者のみんなでラジオドラマみたいにして演じています。僕が適当な話を書いて」(山寺)というラフィングライブ第五回公演「Out of Order」は、11月28日(木)から12月2日(月)まで東京・三越劇場にて上演。